国体論菊と星条旗 白井聡著
ポツダム宣言受諾の際、日本側が付けようとした唯一の降伏条件は「国体護持」だった。ここにおいて、「国体」とは天皇が統治の大権を握る国家体制」のことである。
マッカ―サーは、アメリカ国内ならびにほかの連合諸国から上がった天皇の訴追を求める声や「危険極まりない日本の君主制を廃絶せよ」という要求から、天皇を守った。
天皇の戦争責任追及よりも、東西対立が激化するなかで共産主義に打ち勝たなければならなかった。
昭和天皇の玉音放送では「国体護持」は、「朕はここに国体を護持し得て」と宣言している。
ポツダム宣言受諾から占領、サンフランシスコ講和条約、日米安保条約を通じて国家主権の放棄と引き換えに、国体護持が得られたもである。
沖縄が日本から一旦除かれ、米軍が完全に自由に使用することのできる「基地の島」と化すことが、戦後日本が平和主義を新たなナショナル・アイデンティティにしながら、同時にアメリカの軍事的利害にかなう存在であることが可能となるための条件であった。つまり、天皇制の存続と平和憲法と沖縄の犠牲化は三位一体を成しており、日米安保体制にほかならない。
「戦後の国体」、すなわち世界に類を見ない特殊な対米従属体制が国民統合をむしろ破壊する段階に至ったいま、その矛盾が凝縮された沖縄において、日本全体が遭遇している国民統合の危機が最も先鋭なかたちで現れている。