「2000年インフレ」
であなたの資産が半減する 大田晴雄著 インフレの芽はすでに顔をのぞかせている。特に問題になるのが、「国債の乱発により2005年には税収よりも借金の利払いが多くなる」という事実だ。デフレ経済から抜けだそうと国債を財源にして、公共投資を増やしてきた。大蔵省の長期見通しでは今後10年以上も財政支出の伸びがゼロ、または1、2%の低い伸びとしても、毎年30兆円分の国債を出し続けることになる。国は借金を止められない。この借金を返済する方法があるだろうか。ひとつの方法としては、「増税」だが、国民の収入増が期待できないいま、増税などできるわけがない。残された手段は人為的なインフレである。
2000年3月には、国債発行残高342兆円、地方債160兆円、隠れ借金115兆円に達する。合計では617兆円が国の借金となる。これに対して1998年度の税収はすでに50兆円を割っている。
2005年3月には、国債発行残高530兆円、地方債270兆円、隠れ借金150兆円に増加する。その結果、借金総額は950兆円となり、この時の金利がたとえ今のままとしても50兆円以上の利払いをしなければならない。
単位:兆円
年度 |
国債発行残高 |
政府保証債・ |
隠れ借金 * |
合計 |
1998 |
311 |
140 |
110 |
561 |
1999 |
342 |
160 |
115 |
617 |
2000 |
380 |
180 |
120 |
680 |
2001 |
410 |
195 |
125 |
730 |
2002 |
440 |
210 |
130 |
780 |
2003 |
470 |
225 |
135 |
830 |
2004 |
500 |
250 |
140 |
890 |
2005 |
530 |
270 |
150 |
950 |
* 特別会計などから借り入れをして支出を繰り延べている“簿外債務”
インフレの兆候
国債のさらなる増発
長期金利の上昇原材料の上昇
金利とエネルギー価格の上昇は、あらゆる物品コストに跳ね返る。
資本コストの上昇
これまでは金利が低いために資金が安く集まった。
メリット
企業の借入れ負担が相対的に軽減される 税収が増える 賃金が上がる 住宅ローンなどの個人の負担が軽減される(固定金利の場合) 個人や企業に投資意欲が生まれる 金融機関の不良債権が正常債権化し、金融機関の負担が減る 年金運用にメリットが生じるディメリット
物価の上昇により家計が圧迫される 預貯金が目減りする 円安を招く アジア通貨安が起こる コントロールが難しいその時どうなる
さまざまな場面で二極分化が起こり貧富の差は一層拡大する。一億総中流階級などという意識は霧散し、勉強をした人が生き残り、無関心な人が取り残される。 日本人は金融資産の50%を預貯金で保有しているが、インフレが進行すると、これら資産は大きく目減りする。資産を海外へ出すなどのインフレヘッジ対策が、ぜひとも必要だ。 企業は時価主義の国際会計基準によって決算を行う。国際会計基準を選択したということは、アメリカンスタンダードを選択したということと同義語である。企業は余計な人材を雇っている余裕はなくなる。あるいは年功序列のように長く勤めれば給料が上がるというシステムは通用しなくなる。 勤労者に企業が欲しがる特技、つまりスキルがない限り給料は上がらない。次のインフレ時代にあがるのは物価だけである。当然、生活は苦しくなる。 国の借金を軽減するために人為的に起こすインフレで、年率10%以上の物価上昇を伴う。 2005年には、為替は1ドル=175円、株価は日経平均5万円になる。投資対象としては、特に日本経済の動きとは関係なく、アメリカ・欧州・アジアに海外生産拠点を数多く持ち、国際企業としてグローバルスタンダード基準で行動している企業は注目しておくべきだ。ハイテク株、海外資産株、通信工業株、通信ソフト株、薬品株、医療関連株、ゲームソフト、ソフト・ネット株などはこれから有望だ。「超インフレ来襲」
週刊朝日9月24日号より郵便貯金の大量流出が引き金となって、長期金利が上昇、日銀が国債引き受けを実施、手のつけられないハイパー(超)インフレが起きる。こんな恐怖のシナリオが専門家の間でささやかれ始めた。
武村正義元蔵相(超党派の国会議員137人でつくる「財政赤字を憂える会」会長)の発言この秋から来年にかけてのこの国の最大の政治経済テーマは国債問題だという予感がします。郵便貯金の大量流出が引き金になるかどうかはわかりませんが、今後、大型補正予算や来年度当初予算で赤字国債の増発が決まれば、長期金利は急上昇する可能性があります。長期金利が上昇したときに、現政権の無責任な姿勢の延長線だと、日銀が新規国債を直接引き受けるという事態になる可能性は非常に高いと考えています。そうなれば、亡国の道を突き進むことになる。インフレにつながるし、為替も急速な円安に振れるなど救いがたい事態に陥ってしまいます。
郵貯流出 郵政省は八月末、2000年と2001年に集中的に満期を迎える定額貯金106兆円(三月末郵貯残高252兆円の四割強)のうち、約半分の49兆円が流出するとの試算を発表した。
郵政省の試算の根拠は、106兆円から、利子にかかる課税分、利子がついて郵貯の預け入れ限度額(一千万円)を超える分を引いた81兆円の七割(57兆円)が郵貯商品に再び預け入れられると踏んだことにある。
試算に使用した七割という数字がかなり疑わしい。前回の集中満期時には預け入れ限度額を三百万円引き上げ、金利の落差も「約8%→約6%」だった。ところが今回の金利は「約6%→約0.2%」とケタ違いに落ち込む。事実、最近、満期を迎えている定額預金の実績は五割にすぎない。五割で流出額を試算すると65兆円になる。
郵貯資金は原則として全額、大蔵省資金運用部に預けることになっており、その資金の多くは、さまざまな特殊法人に投融資される。郵貯の大量引き出しに対応するためには、保有する有価証券などを売却して現金化するしかない。資金運用部は現在行っている国債の買いオペを続けることができないばかりか、保有している国債の一部を市場で売却しなければならない事態も予想される。国債を売却すれば、国債の値段は下がり、金利は上昇する。
郵貯の大量流出や赤字国債のさらなる増発で国債の需給が悪化すれば長期金利が上昇し、「日銀の国債引き受け・買いオペ拡大」論が政府・自民党から再燃する。日銀の速水優総裁は、「国債の引き受けを実施すると国の財政の規律が失われ、悪性インフレを起こす。また内外の信認を失い、国債の格付け低下、長期金利の上昇を招きかねない」と拒否している。日銀の国債引き受けの恐ろしい点は、市場の需給を考えずに新規国債をどんどん発行でき、歯止めがきかない点にある。