ブッシュの戦争 ボブ・ウッドワード著 伏見
湾岸戦争時の国防長官、強硬派・単独行動派 国連の新たな決議を求めることは、国連の手続きという、見込みもなく、いつ果てるともなく、煮え切らない厄介な事態にふたたびはまるだけだ。フセインは悪党であり、これまで、国連の決議を故意に無視し、違反し、踏みつけにしたのだから、アメリカは一国で行動する権利がある。 |
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チェイニー副大統領 |
湾岸戦争時の統合参謀本部議長、国際協調派、戦いたがらない勇士という役割を演じている。 国連はわれわれにいわれるままに、フセインは悪であると宣言したり、アメリカの軍事攻撃を承認したりはしない。大統領はすでに国連に機会を与えると決定している。その唯一の方法は決議を求めることだ。孤立した場合、世界中のアメリカ大使館を閉鎖しなければならないかもしれない。 イラクに対する行動を起こすためには連合を形成することを考える必要がある。イギリスはわれわれの身方だが、多国の連合の隠れ蓑がないと、支援は脆弱になる。 |
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パウエル国務長官 |
湾岸戦争時の国防次官、強硬派・単独行動派 | |
ラムズフェルド国務長官 |
ホワイトハウスで毎朝八時に行われる情報説明会(ブリーフィング)でCIAに流れ込んでくる最新・最重要の機密情報を大統領にじかに伝える。 | |
テネットCIA長官 |
国家安全保障問題担当 強硬派・単独行動派のチェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官と、国際協調派のパウエル国務長官との間の調整役 |
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ライス大統領補佐官 |
アフガニスタンでのCIAの潜入工作チームとアメリカ特殊部隊チーム
チームがばらまいている数百万ドルの秘密資金は、魔法のような効き目があった。タリバン兵数千人を買収した計算になる。北部同盟もタリバンからの離脱を誘いかけていたが、CIAがそこえ現金を提供した。下級部隊の指揮官と配下数十名には一万ドル、より上位の指揮官と配下数百名には五万ドルといった具合。あるとき、五万ドルで離脱するようにという提案が、ひとりの指揮官に対してなされた。しばらく考えさせてほしいと、その指揮官は答えた。そこで、特殊部隊Aチームは、指揮所のすぐ外にGPSで精密誘導を行うJ−DAM滑空爆弾を打ち込んだ。翌日、指揮官を呼び戻した。四万ドルではどうか?指揮官は承諾した。
イラク対策でのCIA
フセイン追放を目的とするCIAの秘密工作に割り当てた予算は一億ドルないし二億ドルで、CIAがアフガニスタンで費やした七千万ドルをはるかに上回る。イラクの反政府勢力支援を強化し、イラク国内の情報収集を増強し、アフガニスタンで使用したのと同じCIA潜入工作チームおよびアメリカ軍特殊部隊の展開を視野に入れた準備を始めた。
少数の戦争反対派
アル・ゴア前副大統領、エドワード・ケネディ上院議員
フセインに関する懸念はたしかに存在するが、フセインはアメリカその他の国を直接攻撃したわけではない。フセインを差し迫った脅威とする証拠は確信を抱かせるものではない。また、先制攻撃という現実の試練を経ていない新政策は、中東の他の国々を不安定にし、フセインその他によるテロリズムを誘発するばかりでなはなく、イスラエルを攻撃に対して無防備な状態に置くことになり、さらに、ふつう、自分のほうから攻撃しないというアメリカの伝統を覆すものである。