ブランド価値の創造       石井淳蔵著

 ブランドが、他のブランドとのきびしい競争の中で長い年月に渡って、消費者の愛顧を獲得し、それぞれの企業に高い成長性と収益性とを与えてきた。ブランドは国を越えて富の源泉となりうるものである。ブランドに対する2つの考え方がある。

ブランド自然選択説

市場には毎年毎年、多数の商品が発売される。その中から、消費者に気に入られた商品だけが残る。その商品名がブランドである。

ブランド・パワー説

ブランドの核心にはつねに、制作者や経営者のそのブランドにかける思いや夢、世界観やビジョンがある。消費者にいかに選ばれるかよりも、制作者がそのブランドに込めるところの価値を消費者にたいして首尾一貫した形で伝え、啓蒙するかが重要だという。

ブランドのタイプ

ブランドタイプ ブランドタイプの説明 ブランド事例 ブランドの説明
製品指示型ブランド 製品名としてのブランド。
製品の新しさを際立たせるために、導入される製品にそれ独自の名前がつけられる。
画王(松下電器)
かわりばん庫(東芝)
遠心力洗濯機(松下電器)
静御前(日立)
NCAA(サントリー)
熱さまシート(小林製薬)
減塩みそ汁(永谷園)
ポテトチップス(カルビー)
写ルンです(富士写真フィルム)
 
使用機能ネクサス(枠)型ブランド
(技術横断型ブランド)
異質の技術カテゴリーを横断する製品群を含んでいるが、使用機能は、限定されたブランド。 植物物語(ライオン) ボディ・ケア
エリクシール(資生堂) 歯磨きやメークアップ
アイヴォリー(P&G) 石鹸
パンパース(P&G) 紙おむつ
GUM(サンスター) 歯周病菌とたたかう
どん兵衛(日清食品) カップ麺、冷凍麺
フェラーリ スポーツカー
技術ネクサス(枠)型ブランド
(使用機能横断型ブランド)
複数の使用機能を横断する製品群を含んだブランド。技術は不変で使用機能をかえてきたブランド。 VAIO(ソニー) パソコン
ペンタックス(旭光学) レンズ技術
ポカリスウェット(大塚製薬) 水分補給飲料技術
ブランドネクサス(枠)型ブランド ブランドのみが技術群や使用機能群をつなぐ基本ネクサスとなるブランド。 無印良品(良品計画) 「わけあって安い」
「シンプルな生活」
ダンヒル 英国上流の紳士の伝統を表現。
アルマーニ ヨーロッパのヤング・エグゼクティブのテイストを表現。
ベンツ(ダイムラー・クライスラー) 大型車から小型車まで「ベンツ」という統一したブランド名で売られている。
シャネル
ラルフ・ローレン

*ネクサス(NEXUS):BOND,LINK,CONNECTION

ブランド・マネジメント

ブランド価値を測定することによってブランド・マネイジメントを行う。ブランド価値を測定する指標によりブランド・パワー偏差値を算出し「今、どのブランドに力を入れるべきか、投資すべきか」というブランド資源配分の意思決定を行う。

指標 ブランド知名度 そのブランドは、どれだけ消費者に知られているか
ブランド理解度 その内容を、消費者はどれだけ理解しているか
トライアル喚起力 それは、どれだけの試行購入を喚起するか
商品満足度 消費者は、それを使用した後、どの程度、満足しているか
リピート喚起力 それは、どれほどの再購入意図を生み出しているか
情緒尺度 消費者は、それに、どれほどの新しさや驚きを感じているか
相対価格 それは、価格面で、他のブランドにひけをとらないか

消費者とブランド価値

選択ルールの選択 有名ブランドはたんに他の商品との差異性ばかりでなく、そのブランドのうちにすでに市場における買い物の選択ルール(争点)を決めてしまう能力をもつ。
ライフスタイルの選択 ブランドは、それを消費する者にたいして、その者のライフスタイルをかえ、そして新たな消費欲望を生み出す。

インターブランド社のブランド価値
世界企業ランキング

1999年

順位

企業名 金額に換算
(億ドル)
コカ・コーラ 838
マイクロソフト 567
IBM 438
GE 335
フォード 332
ディズニー 323
インテル 300
マクドナルド 262
AT&T 242
10 マルボーロ 210
18 ソニー 142
20 トヨタ 123
24 本田技研 111
2000年

順位

企業名 金額に換算
(億ドル)
コカ・コーラ 725
マイクロソフト 701
IBM 531
インテル 390
ノキア 385
GE 381
フォード 363
ディズニー 335
マクドナルド 278
10 AT&T 255
15 トヨタ 188
18 ソニー 164
20 本田技研 152
54 パナソニック 37

 時価会計の導入により、ブランド価値を資産計上しようという動きが出てきている。