そこで手始めに製作したのが、6AU6 - 12B4A 構成の出力トランスにはタンゴ U608 (7kΩ) を使用したシングルアンプでした。 このアンプがことのほか定位がよく、説得力があり、一気に宗旨替えしてシングルに傾くキッカケとなりました。 その後、手持ちの球を次々と試作して完全にシングル派に鞍替えしたのです。(1998/12)
でもその一方では pp アンプにも未練があり、 6L6GC 三結 pp (嘉穂無線の TU892) をバスアースの引き方が気に入らないなどと勝手に modification しながら組上げて CD レコードを一生懸命聴いていた時代です。 しかも、まだ、伝統的な、overall NFB 一本で試作していた頃ですから、EL34 を料理するには三極管接続(三結)のシングルアンプが最上で、次が UL 接続アンプでした。
その後、1996 年になって超三極管接続に挑戦したのですが、最初は直結の V1 (バージョン 1) アンプで失敗している例をたくさん見るにつけ、怖くなって C/R 結合の807 超三結V3 (バージョン 3) アンプはうまく動作し、これが超三結アンプ試作一号機となりました。 その経験を得て急遽 EL34 の三結アンプを種として、試作二号機の EL34 超三結V3 アンプに組み直しました。(1997)
初期のV3 以来、約三年間に多種の球につき次々と超三結V1 アンプにトライし、一周したところで最初にチェックした 807 と EL34 に辿り着き、振り出しに戻りました。 その間 6L6GC/EL33 などは何となく 6V6G などの尻馬に乗って差し替えテストを経ているので何時の間にか実質的に超三結V1 アンプに変身していたのですが、807 や EL34 等、ソケット接続に互換性のないものは後回しになっていたのですね。
ここまでくれば、前例が沢山あるので、回路図は予め正式には書かず、完成したら書くことにします。 唯一つ決めなければならない値は EL34 の自己バイアス抵抗値ですが、Ik=80mA, Ek=65V を目標に 800Ωとしました。 手持ちの 820Ω3W が沢山あるので、2シリーズ 2パラすれば、12W となり十分な放熱効果が得られると考えました。 下記の構成を決めたらもうアンプは完成した気分です。(1998/12)
初段 Linearizer 電圧帰還管 出力段 出力トランス Stopping
Di PT
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6U8A-p 1N5823 6U8A-t 直結 EL34 やや大型 Silicon Di ST220
問題は EL34 超三結V1 アンプの音です。 EL34 固有の、幾分固めの端正な感じを残しながら、ユッタリとしながらキレアジの生きた音となりました。 一方、規格表をツラツラ眺めると EL34 と 6L6GB/GC が非常に接近していることが判り、本機にて 6L6GB/GC を無調整挿し替えすることを思いつきました。
ヒーター電圧 | Eh (V) | 6.3 | 6.3 |
ヒーター電流 | Ih (A) | 0.9 | 1.5 |
<<最大規格>> | |||
最大プレート(P)電圧 | Epmax (V) | 500 | 800 |
最大プレート損失 | 30 | 信号時 27.5 | |
最大遮蔽グリッド(G2)電圧 | Esgmax (V) | 450 | 500 |
最大遮蔽グリッド損失 | Psg (W) | 5 | 8 |
<<動作例>> | |||
プレート電圧 | Eb (V) | 250 | 250 |
遮蔽グリッド(G2)電圧 | Esg (V) | 250 | Rg2=2kΩ |
制御グリッド(G1)電圧 | Eg1 (V) | -14 | -14.5 |
負荷抵抗 | RL (kΩ) | 2.5 | 3 |
制御グリッド入力電圧 | E0 (Vac) | 10 | 9.3 |
無信号時プレート電流 | Ib0 (mA) | 72 | 70 |
信号時プレート電流 | Ibsig (mA) | 79 | |
無信号時遮蔽グリッド電流 | Isg0 (mA) | 5 | 10 |
信号時遮蔽グリッド電流 | Isgsig (mA) | 7.3 | |
相互コンダクタンス | Gm (mS) | 6.0 | 11.0 |
プレート抵抗 | Rp (kΩ) | 22.5 | 20 |
G1G2 増幅率 | μg1g2 | 6.2 | 11 |
出力 | PO (W) | 6.5 | 8 |
歪率 | KF (%) | 10 | 10 |
手持ち球は 6L6GC と言っても背の低い浅いベースの WESTERBN NATIONAL とプリントされた CV586 です。 これを挿し替えて動作して見ると、EL34 より少し太めでポッテリだけど結構な鳴り方です。 音の相違は Gm の相違が NF 量に反映されるためと判定しました。すなわち 6L6GC の方が Gm が少で、制動力に現われたためと思われます。
動作状態を当って見ると電圧配分等が 6L6GC の値と EL34 の値とで 2〜3 %しか変わらないので、OK としました。 なお、かなり内輪の動作となるため測定はしていませんが、この状態で KT88/6550 に挿し換えて動作させても特段の支障はありませんでした。 但し 6L6 〜 6L6GB 規格ではほぼ目一杯の動作になるでしょうから、点検確認したほうがよろしいでしょう。
規格表の指示では、もともと EL34 の G3 = ピン#1 はグランドに落とすようになっていますが、カソード電位が高い超三結V1 アンプではカソードに落とすしか無いので、そのように配線しました。 若しメタル管の 6L6 を挿し替える場合にはメタル外被 = ピン#1 をカソードに接続することになり、塗装が禿げているとカソード電圧に感電するおそれがあるので、シャーシにはボンネットを被せるなどの実装上の注意が必要です。(1998/12)
今回新たに EL34 パラレル超三結V1 アンプを製作した理由は、何回か参加した各種アンプのデモンストレーション会場にてパワー不足を経験した訳ですが、それを回避したいというのがソモソモの動機です。 50人位入る会場にて米国系の大型高能率スピーカ・システムで鳴らす場合は、EL34 シングル超三結V1 アンプでも何とかなるのですが、能率が 90db 以下の16cm 一本等を鳴らす場合は大変厳しいことになり 6550 シングル超三結超三結V1 アンプを上回るパワーが欲しくなった訳です。
回路そのものは何の変哲もありませんが、低コストで適当な容量を持つ出力トランスとして東栄変成器の OPT-10S をチャネル当たり二個、一次並列二次直列にて使うことにしました。 シャーシはタカチの組み立てシャーシ SL992643 の天板をアルミ板に交換し、鉄製の底蓋は一部を切り抜いてパンチング・メタルにて塞ぎ、通風を考慮しました。 本機のシャーシ上の配置は本文の最初に示した写真の通りです。(2000/12)
その後、本機の音がどうもイマイチなことに気がつきました。 色々考えて見て、フト気がついたのが並列にした EL34 のスクリーン・グリッドに直列に挿入した SD=ストッピング・ダイオードを共通にしてあったことです。 これを独立にしたらどうか・・・で早速試験してみました。 これがまさに正解であり、シリコン・ダイオードを L/R チンネルに各一本追加するだけで、純粋シングルに近いスッキリした音になりました。(2001/03)
回路図を下記に示します。(2001/06)
外部電源は、別項に示したユニバーサル超三結V1 アンプに使用中の 350V500mA/6.3V5Ax2 を共用します。 回路図を下記に示します。(2001/04)
EL34 を 6550 パラレル超三結V1 アンプにての挿し換え動作確認を経て OK となったので本機は運用終了となり、分解・転用しました。(2002/02)