● ダーリントン構成 Tr のメリット:
初期の終段はエミッタ共通回路とし、入力トランスの二次巻線はコレクタ〜接地間に設定したブリーダによるバイアス回路の引き出し点、およびベースとの間に挿入して信号入力しました。 一旦完成後の試聴では音質が気に入らず、前掲の回路図のとおりコレクタ共通回路(エミッタ・フォロワ)に変更して OK となりました。
この変更に際しては、さしたるゲイン低下がない・・・ドライブ振幅が確保されていて、ダーリントン構成 Tr のメリットを認識しました。 また上記の変更にてバイアス回路が丁度 10kΩのシャント抵抗を兼ねて音質改善にも寄与したようです。
結果的には 2SK117 のソースフォロワおよび ST-75 逆接続による 2SD864(K) のトランス・ドライブはエミッタ・フォロワもこなせる好適な組み合わせであり、ほぼ正解らしいと感じました。(2005/09)
● 電源まわり:(2005/11 改良)
◇ アンプ部電源トランス:(2005/11)
24V の L/R 独立電源。 二次側 20V(10V中点)1A 二巻き線のトランスを二個使用、
20V 二巻き線並列としたブリッジ整流から、直列とした両波整流に変更。(2005/11)
◇ 冷却ファン電源:
アンプ部電源と同時に「メイン・スイッチ」にてパワー on 操作。
24V0.3A トランスの 18V-24V 端子をブリッジ整流して約 8V を供給、
◇ タイムディレー・リレー駆動電源:(2005/10)
上記トランスの 0-18V 端子をブリッジ整流、47uF35V を並列にて供給。
◇ スピーカ保護用のタイムディレー・リレー等の仕様と動作:(2005/11)
◇◇タイムディレー・リレー:
オムロン MY2V DC 24V 仕様、二回路、設定可能動作開始時間10〜60秒 (30 秒に設定)
◇◇追加の通常型リレー:
オムロン MY4N DC 24V 仕様、四回路
◇◇動作:
アンプ部電源 on 状態の下に「スピーカ・スイッチ」on によりタイムディレー・リレーを動作開始させる。
スピーカ on インディケータの LED をスピーカ接続状態のみに点灯させて、動作状態を明示するには
タイムディレー・リレーの接点二回路では足りず、連動する通常型リレーを追加して駆動し、スピーカを接続した。
● ヒートシンクと冷却ファン:
50x110x30 程度のサイズのヒートシンク一個に、L/R 各チャネルのパワー
Tr 二個を取り付けました。 放熱する電力は 12V0.5A x 2 =12W となり、エミッタ電流= Ie の抑制措置が不十分で自然空冷では不足、小型ファン (仕様概要:W/D=80mm/80mm, H=25mm, 12V0.18A) にて向かい合わせてチムニー状にした L/R のヒートシンクの上から吸い上げました。 ファン電源はアンプ本体側にて full (8V)− low (通常位置=抵抗を挿入 5V)− off のスイッチ切り替えとし、温度上昇、冷却効果等を確認しました。
● シングル OTL 動作:
モード変更スイッチをシングル側に切り替えてみたら、SEPP モードの最大出力と音質には及びませんが、一定の入力振幅の範囲内ならば殆ど同じ音量と音質で問題なく動作し「これで十分」とさえ感じました。 それは下記の効果によるものと思われます。
(1) 動作点が概ねA級に設定されたこと、
(2) SEPP 下半分のユニットが定電流性の出力信号に対する負荷、兼直流バイパス抵抗となったこと、
(3) ドライバは上半分のユニットのドライブに全力投入、SEPP では若干ドライブ力が不足かも→改善しました。
但し SEPP モードでは殆ど感じなかったリップル・ハムが盛大に現われ、アンプ部電源のCを倍増、小抵抗による二段π型フィルタに変更して対処しました。
7.1 接地キャパシタの効果
シングル・モード時のベース接地キャパシタを on/off して、on 時にはクリップ開始の信号振幅が、接地キャパシタがない場合に比較して大きい、すなわち無歪出力より大きいことを確認しました。
但し、SEPP→/←シングルへのモード切り替えでは、チャージされていないキャパシタがベースに直接接続されたり離れたりします。 そのような場合、電圧配分〜動作点がどのように遷移して影響するか、が気掛かりでしたが「案ずるより生むが易し」、若干のトライ&エラーにて下記のようにフィックスしました。
7.2 動作中のモード変更スイッチ操作による動作点浮動およびスピーカへの影響と対策
(1) SEPP→シングル
下のエレメントのベースに接続したCへのチャージ開始によりバイアス電圧が深くなり、一旦
上下エレメントのエミッタ電流が減少し、チャージが進んで SEPP 時の状態に戻ります。
(2) シングル→SEPP
エミッタ挿入抵抗に並列Cが接続されてチャージする一瞬、わずかにエミッタ電流が増加して直ちに安定します。
いずれのモード変更時にもスピーカが接続された状態にて出力端子に 1.5V/0.5V 程度の短時間の上下エレメントのアンバランス電圧が出力端子に発生しスピーカから音が出たりコーンがフワッと動きます。 そこで動作中のモード変更は諦め、アンプ停止時または後述のスピーカ・スイッチ off 状態にのみに限定することにしました。
7.3 モード設定位置によるメイン・パワー on/off 時のスピーカへの影響と対策
SEPP モードにてメイン・パワー on/off の際には、立ち上がり/停止ともにスムースで対策は不要です。
一方、シングルモードにてメイン・パワー on/off の際には、出力端子に上記の動作中のモード変更スイッチ操作と同様の短時間のアンバランス電圧が発生します。 そこで、タイムディレー・リレーおよび駆動電源を用意し、タイムディレー・リレーの共通端子および解放接点端子接点を出力端子ホット側に挿入して、リレーが動作した場合のみスピーカが接続されるようにして、接点動作の遅延を 30秒程度に設定しました。
● メイン・パワー on
同時にタイムディレー・リレーを起動させると、動作点が落ち着いた頃に
接点が閉じてスピーカが接続され、全く問題ありません。
● メイン・パワー off
同時にタイムディレー・リレー駆動電源を切ってスピーカを外そうとしても、リレー電源の
チャージが残って間に合わず、50mV 程度の短時間のアンバランス電圧による「ポツン」音がでます。
そこで若干煩雑になることを覚悟で、パワー on/off 操作は「メイン・スイッチ」および「スピーカ・スイッチ」の二段操作にてスピーカ保護機能を実現しました。
◇操作手順、但し () 内は操作、[] 内は状態遷移
◇◇動作立ち上げ手順
(1) メイン・スイッチ on によりアンプを動作開始させる。
(2) スピーカ・スイッチ on によりタイムディレー・リレーを起動させる。
[3] 約 30秒の設定遅延時間に達し、接点が「入」に転じてスピーカが接続される。
◇◇動作終了手順
(1) スピーカ・スイッチ off によりタイムディレー・リレー動作を止める。
[2] タイムディレー・リレーの接点が「切」となりスピーカが切り放される。
(3) メイン・スイッチ off によりアンプを動作終了させる。
上記の二段操作化により、下記各項のモード変更スイッチ操作が可能になりました。
(1) アンプ停止時。
(2) メイン・スイッチ on 後、スピーカ・スイッチ on 前。
(3) メイン・スイッチ on 状態にて、一旦スピーカ・スイッチを off、
モード変更スイッチ操作、スピーカ・スイッチ on にて運転続行。
7.4 初段ドライバの強化、その他
前掲の回路図に示す通り、ドライバ段の 2SK117 をダブルに強化し、併せてカップリング・キャパシタ類を増量して不足気味の低域を強化しました。(2005/10)
7.5 電源回路の改良
電源回路のブリッジ整流に用いた 200V4A 仕様のダイオード・ブリッジが若干暖まるのが気に入らず、バラのシリコン・ダイオード 1N4007 による両波整流に変更したら、低域がより力強くなりました。(2005/11)