(1) 6AS7G/6080 のプレート負荷として出力トランス代用チョークからタップダウンして直結ドライブした
ゼロバイアス(電圧降下分だけわずかにマイナス)単ユニット・シングルおよびパラレルシングル、
(2) または同上ドライブ球によるインダクター負荷カソードフォロワ出力・ドライブまたは CV18 カソードに入力の
グランデッド・グリッド (GG) によるプラスバイアスのパラレルシングル、
(3) 6Y6G_GT/6CW5 超三結ドライブによる直結 GG によるゼロバイアス・パラレルシングル、
(4) ある人による 6V6GT の標準的オーバーオール NFB 併用アンプの 8Ω端子の出力を 600Ω/8Ω出力トランスを
一次二次の逆使用にてドライブするゼロバイアス・パラレルシングル、
しかし二段ものトランスのカスケード接続には、流石に筆者は抵抗を感じて追試験は遠慮・・・。
その後 2000 年の夏以来、筆者は フィリップス製のオーディオ・アンプ用パワー IC TDA1552Q を使ったIC メイン・アンプを三台試作して試聴比較用リファレンス・アンプとして使ってきましたが、この IC アンプを利用して簡単に CV18 のトランスドライブができそう・・・ A2 級/ B 級アンプの実験に使えそう、と考えていました。 また、筆者は B 級専用球によるアンプの試作経験が全くなかったので、A2 級アンプの追実験とセットにしてカバーすることにしました。(2002/03)
●構成と構造
初期 (2002/03) にはドライバ、本体、電源のバラ構成にて試験し、次に (2003/02) 一体化しました。
その後、電源を共用外部化とする機会に強化して、本体 (パワー IC ドライブ段およびファイナル段) とは分離しました。 外部電源は CV18 の場合、スイッチ選択により Ebb=190V に設定しました。 (2004/07)
●ドライブ・トランスとその接続方法
本アンプを構成する上で重要なのは、パワー IC によるドライバー出力をグリッド・インピーダンスに整合させるドライブ・トランスです。
真空管によるドライバー段であれば 5kΩ/600Ω等の高価な特別仕様のトランスが必要ですが、8Ω出しのパワー IC アンプ出力があれば 600Ω/8Ωの構内放送用マッチング・トランスを一次二次逆に使って 8Ωに入力して、600Ω出力をグリッド入力として流用できます。
そこで愛用の小形出力トランスの 0〜300Ω〜600Ω/8Ωバージョンを採用しました。 動作試験の結果、二次側は 0〜300Ωの方が音質的に好ましいのでタップダウンしました。 0〜300Ω間の巻線抵抗は 17Ω弱でした。 パラレルシングル構成では、上記トランスをチャネル当り一個使用してドライブします。
●出力トランスとシャーシ、回路図、音
出力トランスには 70mA 級の 3.5kΩ〜8Ωのものを使いました。
シャーシはタカチ YM250 です。 シャーシ上部配置は文頭の写真をご覧ください。
回路はカソードは単に接地、グリッドにもプレートにもトランス以外のものは入らない、極めてシンプルなものです。
音には迫力があります。 入力トランスの直流抵抗分がグリッド電流の影響を受けて、ドライブ波形に上乗せされるのでしょうか。
●外部電源
この外部電源にはパワー IC 用電源を含むほか、ヒーター電源には余裕を持たせ、後述の 6N7/6N7GT/UZ79 プッシュプル・アンプ兼 CV18 プッシュプル・アンプの他にも、6.3V3A/Ebb=250V で賄える小型アンプ (例えば、6BM8 超三結アンプおよび 6AC5GT 準超三結アンプ等) の外部電源としても利用できるようにしました。
B電源には 100V-200V/50VA のセパレーション・トランスを使用しブリッジ整流、合計 6,000μFのフィルタ・キャパシタを装備し 250V/150mA 程度の出力を得ました。
CV18 パラレルシングル・アンプまたはプッシュプル・アンプを運用する場合は、リップル・フィルタの抵抗値をスイッチにて切り替えて 190V に低下させます。
ヒーター電源には 6.3V/3A を用意、 パワー IC 用電源には 15V1.5A のスイッチング・レギュレータ式の AC アダプタをケースごと利用しました。
安全確保のため AC OFF 時には B電源を 3kΩ20W でショートさせる、キャパシタのチャージを放電させる AC100V リレーを装備しました。 AC ON 時には接点を開放とし、AC OFF 時または停電時に、また誤って動作中にコンセントを抜いても接点は接続となります。 OFF 後 30 秒程度で数十V まで放電します。
●構成と構造
初期 (2002/03) にはバラ構成にて試験し、次に (2003/02) 電源を含め一体化しました。
その後電源を強化し、その電源を他のアンプとも共用するため、本体 (パワー IC ドライブ段およびファイナル段) および外部電源とに分離しました。 (2004/07)
●ドライブ・トランスと接続方法
小形出力トランスの 0〜300Ω〜600Ω/8Ωバージョンを採用しました。 これを一次側 0〜8Ωで二個並列接続とし、しかもその一方は 8〜0Ωと逆の接続、二次側は同じく 300Ω〜0Ω間を使った、個別トランスによる位相反転回路としました。
通常考えらる、一次側を共通の 8Ωはホット、0Ωはコールドの並列接続とし、二次側にて 300Ω〜0Ω/0Ω〜300Ω とする位相反転方法よりも、インピーダンスの低い一次側の一方を逆にして、二次側は同条件にするほうが、巻線分布容量などが関係する周波数特性が一致しやすいのでは?と考えました。 配線ストレー容量などに若干の不平衡が生じ得ますが・・・目をつぶります。
動作試験の結果 600Ω〜0Ω間よりも 300Ω〜0Ω間が音質的に好ましく、ゲインも十分たりるので選択しました。
6N7/6N7GT B 級プッシュプルおよび UZ79 B 級プッシュプルとは、ドライブ入力条件はほぼ同じ、出力トランスは最適インピーダンスが異なるだけです。 さらに CV18 A2 級プッシュプルのドライブ入力条件は動作試験の結果 6N7/6N7GT/UZ79 B 級プッシュプルに近いものと考えられます。
●出力トランスとシャーシ
ノグチ PMF-15P を使用しました。 UZ79 が要求する p-p 間 14kΩには届かないけど、他の p-p 間 5kΩ級のプッシュプル用出力トランスに比べて p-p 間 8kΩタップにてかなり音質が改善できました。 CV18 の場合は p-p 間 5kΩタップを使用します。
シャーシはタカチ SL702623 です。
●外部電源との関係
6N7/6N7GT の各プレート電流 (Ip) は、規格表によれば無信号時 35mA、大信号時 70mA とあり最大振幅時には 280mA となります。 また、UZ79 の無信号時プレート電流は規格表によれば12mA 強、プッシュプルでの 4ユニット合計にて 50mA 程度、信号入力時の単一プレート当りの最大電流がナント 90mA とあり最大振幅時は 360mA です。 いずれのピークに対しても到底足りませんが、大容量キャパシタにて勘弁してもらうことにしました。
●音と回路図
◇6N7/6N7GT B 級・・・電流振幅が大きいらしく超三結に似た感じもあります。
◇UZ79 B 級・・・6N7/6N7GT と同種ですが、やや固さが感じられます。
◇CV18 A2 級・・・B 級よりも制動が効いて端正な感じですが、パラレルシングルより賑やかです。
B 級アンプで心配されたスイッチング・トランジェント歪は、小信号の範囲では感じられず、やや軽い感じの素っ気ない音で気に入りました。 しかし、内部インピーダンスが高いらしく、低域がやや制動不足、以前に試作試験した 6AC5GT のA2 級無帰還アンプとも類似の性格を持った音となりました。 とは言うものの、どれも流石に三極管らしく多極管のように不快な歪みは耳に付きません。
本体部分回路図は下記の通り、極めてシンプルです。(2004/07)