なお下記表中の項番 1〜4 は、初期の古典回路によるバリエーションであり、また項番 5〜9 は、その後の超三結または類似回路による音質改善等、改造と追及の記録となりました。 以前は毎回の回路図を記載しましたが、今回の改訂では項番 8/9 の回路だけを残して除去しました。(2003/01)
作 |
(+帰還管等) |
+終段の構成 |
回路概要 |
付加回路素子 |
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1989/2/2 | 12AX7/2 | UY76+6AC5GT | タンゴ H5S | OVERALL(OPT二次側→ 初段 カソードにNFB信号) | 低音が締まらず バスレフを密閉に | ||
1989/4/12 | 12AX7/2 | 同上 | タムラ | OVERALL=↑ | 低域の強化 | ||
1992/11/24 | 12AX7/2 | 同上 看做し一体化↓ | H5S ** | OVERALL=↑/ CNF→(備考2 参照) | Head Phone 用兼 Trアンプ 様の音 | ||
1995/6/10 | 6AU6 (6V6GTs) | UY76+6AC5GT ユニット プラグイン | タムラ F475 | OVERALL=↑ | 初段LNR は 二極管接続↓ | 試作例 3 と変らず | |
1997/12/2 | 12AX7→6DJ8 SRPP | UY56+6AC5GT 看做し一体化 | 春日 54B | P-G/P-K NFB 併用 SRPP ドライブC/R 結合 | 初段LNR 12AX7 出力トランス B側 SD | 歪み感改善 ややhigh上がり | |
1999/2/20 | 6U8A(p)/ 12AT7/2(VFT) | 同上 (嵩上げ Rk 併用) | 春日 | 看做し一体化直結 超三結V1(多極管扱い) | 初段LNR 6U8A(t) OPT B側 SD | 多極管 超三結V1なみ | |
2001/4/15 | 12AX7/2 12AU7/2(カソフォロ) | UY56+6AC5GT | 東栄 5S | 看做し一体化 P-G NFB カソフォロ drive C/R 結合 準超三結V1 | 初段LNR 廃止→ →初段K P-K NFB OPT B側 SD | >試作 6 より改善 | |
2001/5/17 | 12AX7 SRPP SD 先のBから | 上記 カソフォロ drive が冗長 | 東栄 | DC ドライバ 直接 P-G NFB C/R 結合 準超三結V1 | 初段 P-K NFB OPT B側 SD | 試作 7より 単純化改善 | |
2002/1/3 2002/8/3 | 6AU6 (試験) 6AS6 (実用) | 12AU7パラ+〜 12BH7A/2+〜 | ノグチ 6W | 上記 8構成 準超三結V1 DC ドライバ 適用品種拡大 | 初段 P-K NFB OPT B側 SD | 試作 8と同等 最終構成 |
回路形式 | |||
SRPP ドライブ | (1) 初段 SRPP カソードフォロワ に、終段 P から P-G NFB を適用。 (2) C/R 結合にて直結課題を回避、 (3) 終段 P から初段 K へ P-K NFB を併用。 | 出力トランス伝送 特性影響回避。 | |
終段の出力トランス B電源側に SD 1N4007 を挿入。 | 電源 インピーダンス 影響除去を意図。 | ||
ショットキー・ダイオード1N5823 または初段同型管 (12AX7) の 二極管接続 リニアライザを初段 P へ挿入。 | 初段自乗特性を改善。 | ||
初段 SRPP および二極管接続 リニアライザを 6DJ8 に変更。 | 聴感上改善あり。 | ||
倒立μフォロワ ・ドライブ | 五極電圧増幅管〜三極電圧帰還管による超三結前段に変更、 ドライバ段+終段を一体化し単一多極管と看做し、カソード に 嵩上げ抵抗を挿入、多極管なみの直結超三結V1 とした。 | 多極管超三結様の 聴感上改善あり。 | |
カソード フォロワ・ドライブ | ドライバ段+終段を一体化し多極管と看做し、P-G NFB 併用 カソードフォロワ・ドライブとして、C/R 結合の準超三結とした。 | 音質は直結と変らず、 低 B 電源を実現。 | |
初段 リニアライザを廃し、終段 P から初段 K に P-K NFB を適用。 | 試作 6 より 相対的に効果あり。 | ||
ダイレクト・カップルド ・ドライブ | (1) 試作 7 の P-G NFB を ダイレクト・カップルド・ドライバに直接適用。 (全 K 電流にて終段ドライブするカソードフォロワ・ドライブの特殊例。) (2) 初段 SRPP の B 電源は SD 経由とし P-K NFB を正常化。 | 試作 7 より効果あり。 | |
(1) 情報入手にて ダイレクト・カップルド・ドライバ適合球範囲拡大、 12BH7A/2, 6350/2, 12AU7 パラレル につき動作確認。 (2) 初段 の B 電源は SD 経由とし P-K NFB を正常化。 | 試作 8 同等。 構成自由度向上、 小形化実現。 |
特にμ=58 と高い増幅度の 6AC5GT をカソード NF(CNF) にすると、デキの良いトランジスタアンプの様な、しかし遥かに澄んだ音が得られました。 動作は安定で OVERALL NFB / CNF 共に一切の発振抑止措置は必要としませんでした。 6AC5GT のダイレクト・カップリング・ドライブ球には 1940 年代製の虎の子のマツダ (東芝のブランド) UY76 を使用しましたが、性能は落ちておらず、よく揃っていました。
しかし CNF と OVERALL NFB を併用した古典回路では、とり切れない歪感が少し残るのが壁となっていた他、OVERALL NFB だけではまだ出力インピーダンスが大であり、調整不十分なバスレフ型スピーカシステムでは fo 付近に盛大なピークを持つので、密閉型に変更したことがありました。(1998/02)
とりあえずは前段を一般的な SRPP 回路としてドライバーの間を C/R 結合とし、SRPP 回路の上の三極管には、終段プレートから P-G NFB 信号と B 電圧を供給しました。 この回路は超三結に到る途中の構成とも考えられます。 このように変更した構成が前記「表1 6AC5GT アンプ変遷史」の項番 5 です。 (注:この回路を 2000年秋に「P-G NFB jointed SRPP ドライブ」と、私の独断にて正式命名しました。(2001/04)
この「みなし三極管」のバイアス電圧は 6AC5GT のカソード基準では本来ゼロのままであり、UY56/76 の標準的動作時のカソード電圧 +13.8V が 6AC5GT のグリッドに掛かるけれど、それは「みなし三極管」の {内部事情} です。 従って直結化するため追加した自己バイアスは、単に前段五極管のスクリーングリッドとプレートに適正な B 電圧を供給するだけの目的に限定されます。 では固定バイアスにすれば?、とは思いますが超三結 V1 の特徴を活かして、前段五極管への直流負帰還による動作の安定化効果を期待し、かつ前段五極管にて電圧配分の調整を可能としたものです。
ドライプ信号の peak to peak 振幅は、UY56/76 の標準的動作時のバイアス電圧+13.8V をそのまま「みなし三極管」の自己バイアス電圧と想定すると、大体 20V 程度なので 6V6/6L6 並みのドライブ電圧で充分と考えました。
折角の 6AC5GT の特長である、自己バイアスが不要の回路に、わざわざ目的外の嵩上げ自己バイアスを加えるのは残念至極ですが、一応は多極管の超三結 V1 と同じ直結回路になりました。 自己バイアスのデメリットと直結のメリットのどちらが勝つでしょうか。
このように変更した構成が前記「表1 6AC5GT アンプ変遷史」の項番 6 (超三結 V1) です。
ストッピング・ダイオード (SD) の効果をうまく引き出すために、少し工夫しました。 初段の B 電源供給をナマ B から貰うと、P-K NFB を掛けた場合には SD によって生じた信号とキレイな B 電源とが整合せずに、SD が却ってノイズ発生の原因になるのです。 そこで初段の B 電源供給は SD の先、出力トランスの電源側入り口から貰うのが正解です。
但し、6AC5GT の直結カソフォロ・ドライバーである UY56/76 のプレート電圧供給はキレイな B 電源から貰わねばなりません。 この段はあくまでも信号に対してトランスペアレント (透明) であるべきであり、単にインピーダンス変換を行うだけが目的ですから、SD の影響を回避しました。
このように変更した構成が前記「表1 6AC5GT アンプ変遷史」の項番 7 (P-G NFB jointed カソフォロ・ドライブ) です。
実は、上記回路の実験は、前記「3 P-G NFB jointed SRPP ドライブ」(項番 5) 時代の段階 (1998/02) にて一旦済んでいましたが、音質が暗く固くて優れずボツにしたものでした。 当時はまだ P-K NFB による終段の歪み補正に着目しておらず、また SD を併用した場合の SRPP への B 電源供給は SD の出力トランス側からの SD の影響が含まれた統一 B 電源による動作が必要なことも思いつかず、出力トランスの品質、B 電源の装備キャパシタ容量なども併せて、SD 効果が活用できていなかった見たいでした。 もうちょっと考察を続け、深読みして実験を続ければ現段階に到達していたかもしれませんが、その後三年も経過してしまいました。
今回の項番 8 の回路では、一見すると項番 5 の回路の単純化みたいですが、上記課題を解決して P-G NFB jointed SRPP と P-G NFB jointed Direct Coupled driver とでは P-G NFB の効果 〜超三結効果とでも言いましょうか〜 が全く異なることを確認しました。
どうやら、P-G NFB jointed SRPP driven では上の driver と下の amplifier
ユニットで P-G NFB 信号電圧=終段プレートからの信号電圧を1/2 ずつ配分するだけで、波形も乱れる可能性がありますが、P-G NFB jointed Direct Coupled driver driven では、全 P-G NFB 信号電圧が driver でフル活用されるため、より深く掛けられ、かつ波形の乱れも少ないものと考えます。
このように変更した構成が前記「表1 6AC5GT アンプ変遷史」の項番 8 (P-G NFB jointed Direct Coupled driver ドライブ) です。 回路図を以下に示します。(2001/05)
浅野 勇 氏の「魅惑の真空管アンプ」の記載例では、シングル動作の場合のドライバー管は UY56/76, 6P5GT, 6AE7GT となっており、プッシュプルの場合は 6J5 にてやや深いバイアスに設定してあるのみなので、これまで私は原典に忠実に UY56/76 で構成していたのです。
それで急遽、前記の「項番 8」と全く同一の回路にてドライバー管を 12BH7A/2 に交換したアンプを仮組みして、殆ど UY56 と同様の動作であることを確認し、ついでに類似の 6350/2 も確認し、併せて 12AU7 パラレル接続、および相当管の 5814, 5963 各のパラレル接続も確認しました。(2002/02)
その後、初段を 6AS6 に変更、コンパクトなアンプに更新しました。
このように変更した構成が前記「表1 6AC5GT アンプ変遷史」の項番 9です。(2002/08) 回路図を以下に示します。(2003/01)