6360 Semi-STC pp アンプの試作

2004/05 -2004/12 宇多 弘
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1 いきさつ

 別項に掲げた 6Y6GT C/R 結合 STC pp (プッシュプル、以下 pp に統一) アンプを Semi-STC pp に変更して、良好な結果を得たので以前から計画していた、双ビーム送信管の 6360 の Semi-STC pp に着手し、一応完成しました。 Semi-STC pp の回路構成は Semi-STC シングルと同様に、終段の前に双三極管を配備し、そのプレートを終段プレートにて吊ったカソードフォロワ・ドライブ段を配備することになります。

2 回路

● 位相反転および初段:
 位相反転段を省略するため、代用ライン入力トランスとして山水の ST-75 の一次二次逆使用にて 600Ω/10kΩ とし、二次側10kΩを 50kΩ ポテンショにてシャントし、そのスライダー〜接地間を抵抗にて二分、そのセンターを接地する簡易トランス反転回路とした完全 pp 回路としました。
 上記の「代用」ライン入力トランスによる位相反転回路は、大変簡単であるため以前から愛用していますが、一般にアンプ製作記事などでは殆ど見かけないものです。 一寸見ると上と下とは不平衡みたい・・・確かに若干の浮遊容量の差がありそうですが、トランス・ポテンショ・分割抵抗を一体構造に配置して、浮遊容量などの影響を極力避けるように配慮すれば問題なしと判定しました。 
 この位相反転回路では一つの信号を抵抗にて二分するので、二巻線またはオートトランス式の入力トランスよりも遥かに問題がすくないと思われ、また一般の能動素子による位相反転回路よりも優れた定位が得られたので、筆者は低域の低下などの周波数特性上の若干の課題は無視して、この方式に惚れこんだ次第です。
 最近の CD プレーヤの出力インピーダンスは相当低く取られているので、ライン入力トランスに直接入力しても殆ど問題はありませんが、例えば 10kΩの定抵抗アッテネータ等を通すと、動作はやや疑わしくなります。 万全を期すならばカソード・フォロワ一段のバッファ・アンプ経由にてライン入力トランスに入力するのが正解であろうと考えています。
 初段は極めて一般的な 12AT7 による抵抗負荷の電圧増幅です。

● 電圧帰還段:
 準超三結回路とするため、 12AU7/5814/5963 を、初段プレートから直結したカソードフォロワ動作とし、そのプレートを終段のプレートで吊りました。 すなわち、P-G NFB 併用カソードフォロワ・ドライブです。

● 終段:
 6360 の pp 化では、SG およびカソードが共通であり若干の不安がありました。 DC バランスは個々のプレート電流を監視して固定バイアス調整するのが正しいのでしょうが、本機では手抜きしてシンプルな共通の自己バイアスにて構成しました。 幾分かでも不平衡=Ip のアンバラおよび二エレメントの相違を吸収すべく、出力トランスの中点にストッピング・ダイオード (SD) を挿入しました。 出力トランス一次側の抵抗値を予め計っておき、動作時の電圧降下をチェックすると僅差なので OK としました。

● 電源回路:
 外付けの共用電源から、180V〜200V160mA 以上、および 12.6V3A の供給を受けます。  

● 回路図:
 下記を参照願います。

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3 できぐあい

 6Y6GT Semi-STC pp アンプより、若干荒い感じの音ですが余り気にはなりません。 無調整にしたため生じた DC バランス不平衡および SD を挿入しても取りきれない AC 不平衡によるものでしょう。 十分な余裕のある不平衡に強い大きな出力トランスなら、より緩和されるものと思われます。 音質的には先行の Semi-STC pp アンプに似ており、再現性試験としてはほぼ成功です。
以上

改訂記録
(2004/05) 初版:試作
(2004/12) 改訂第一版:分解・転用