どんぐり
問二十 どうしてどんぐりは足もないのに赤いズボンを履いていたのか。
どんぐりに顔を描き、楊枝などで足を付けて遊ぶことは、子供の世界ではあるようである。どんぐりの尖っていない方の半分は少し赤みがかっているのでそれを「赤いズボン」と言った。どんぐりの擬人化である。
問二十一 どうして裁判の時のどんぐりたちがおみやげとして渡されたのか。
問二十二 何故もらった黄金のどんぐりがもとに戻ってしまったのか。
本文には「黄金(きん)のどんぐり」とあるが、「黄金で作られた」(made
of gold)とは書かれていない。どんぐりの描写をよく読むと、「あっちにもこっちにも、黄金いろの円いものが、ぴかぴかひかって」、「空が青くすみわたり、どんぐりはぴかぴかしてじつにきれいでした」などと書かれているように、どんぐりは金色に光っていたのである。
一郎は、森で拾ったばかりのどんぐりを、どきどきしながら、「うつくしい黄金いろの草地」の日当たりのよい場所に広げ、それらを一つ一つ見比べて楽しんでいるのである。一郎の目には、これらのどんぐりが、秋の青空の下で、金色に光って、生きていて、言葉を話し、どれが一番偉いか、互いにけんかをしているように見えても不思議ではない。
しかし、遊び疲れて夕方家に帰れば、どんぐりを拾った時の感動は薄れ、金色の草地は既に目の前にはなく、日も沈んでいる。自分の部屋の中で、電灯の光で見るどんぐりは、普通の茶色のどんぐりになってしまうのである。
問二十三 何故どんぐりだけが消えなかったのか。
問二十四 何故一郎は「ます」を持っていたのか。
どんぐりと、どんぐりを入れた「ます」が最後に残った。この二つは、幻想の世界と現実の世界の橋渡しをしたことになる。また、どんぐりは幻想の世界で一郎の前に現れ、現実の世界に持ち帰られた。「ます」は、たぶん現実の世界から一郎によって持ち出され、幻想の世界でどんぐりの量をはかる役目を果たし、また、現実の世界に戻った。「ます」は、この物語の中で、一番現実的な登場人物(道具)である。だからどうということもないが、小森陽一氏あたりなら、何かこじつけるだろう。
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