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第14回 『私のスペクトラム』
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それからはもう、寝てもさめてもスペクトラム。何がそれほど気に入ったのか、自分でも説 明は付かない。その演奏の素晴らしさ、リーダー新田一郎氏の見目、バンド名のロゴの斬 新さ、ポスターやレコードジャケットのセンスの良さ、色々な要素がないまぜになって、好き という感情になっていた。音楽に関して言えば、管楽器自体の音色が好きだったし。 どういう方法を採ったか覚えていないが、レコードの発売やコンサートの日にちを調べ、 ファンクラブに入った。漫画家という立場もフルに活用。ちょうど連載していた作品にロック グループが出てくることになったので、彼らをモデルにして描き、それが載っている雑誌を 持ってファンクラブの事務所に遊びに行ったり。まだデビューしたばかりのグループだった から、面白がってくれて、おかげでメンバーと対談することもできた。 それまで私は何かに熱中することはあっても、その対象物に対してこちらから働きかける ようなことをしたことはない。それがスペクトラムに限って、出来ることは何でもした。北海 道から倉敷まで、地方の公演にもいったし、グループ解散後に新田一郎氏がアニメのアル バムを作るときは、出版社のコネを使って見学にも行った。 それで何かを得たわけではない。メンバーと個人的に友達になったわけでもなければ、 チケットを優先してもらったりしたわけでもない。何処までもただの“ファン”。けれどこの時 の体験は、好きなものに向かって全力でアプローチする楽しさと、自分で自分をアピールす ることの大切さを教えてくれた。それが後に、サッカーを見るために中央アジアやフランス まで行く私を作ったのである。こうしてホームページを開設して、自分のまんがや文章を紹 介しているのも、あの時のことがあるからだ。じっとしていても何も始まらないし、黙ってい ては誰にも何も伝わらない。 そのスペクトラムのホームページがあると知ったのは、昨年の11月。私と同じようにあの 頃彼らに熱中し、未だ忘れずにいる人達と、当時は考えてもみなかったインターネットとい
う世界で繋がっている。グループの解散から17年、その長い時間が時を越えた関係を可 能にしたのである。 (なお、スペクトラムに興味をお持ちの方は、リンクのページから彼らのファンが開いているホームページに行っ
てみて下さい) |
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99年2月28日UP
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