BCPには耳慣れない言葉がいくつも出てきます。
 一般に使われる言葉であっても、BCP独特の意味が含まれていて、戸惑うことが多くあります。
 それら「BCP用語」をやさしく解説しました。

 

【BCP】(Business Continuity Plan)

 「事業継続計画」と訳す。
 企業の事業存続を脅かす緊急事態に見舞われたとき、重要業務を維持し早期に事業を再開するために、事前に行う対策と事後の復旧計画または取り組みのこと。
 中小企業庁は「緊急時企業存続計画」という訳語を提唱している。
 行政のBCPについては「業務継続計画」と訳す。



【BCM】(Business Continuity Management)
 「事業継続管理」と訳す。
 BCPを策定、運用し、災害リスクに強い組織作りを目指す取り組みのこと。
 BCPを計画書そのものと狭義に捉えた場合、BCMはBCPに関連した活動全体を表す。
 厳密な区別をする必要のない場合は、BCPという言葉で代用することが多い。



【RTO】(Recovery Time Objective)
 「目標復旧時間」と訳す。
 「中核事業や重要業務をいつまでに復旧するか」という目標とする時間のこと。
 あらかじめ目標を定めて、その目標に向かって計画を組み立てる。
 従来の防災活動にはなかった考え方。
 一般に、サービス業は短く、製造業は長くなることが多い。



【RPO】(Recovery Point Objective)
 「目標復旧時点」と訳す。
 コンピュータのデータ復旧について、いつの時点までさかのぼってデータを復元するのかという目標のこと。
 1週間前の状態に戻す場合は、RPOは1週間ということになる。
 これにより、日常のデータバックアップの頻度が決まる。



【BIA】(Business Impact Analysis)
 「事業影響度分析」と訳す。
 重要業務に影響を及ぼす経営資源を洗い出し、その経営資源が災害によりどの程度のダメージを受けそうかを分析すること。
 経営資源の重要度を評価し、対策の優先順位を確定することが目的。



【中核事業】(Core Business)
 災害によりダメージを受けた場合、企業の存続に大きな影響を及ぼす重要な事業のこと。
 BCPにおいては、どの事業よりも最優先で復旧させられるように対策を立てる。
 中小企業においては、独立した事業をいくつも持っているケースは少ないので、事業という言葉を使わず、単に「重要業務」と言うことが多い。
 行政においては「中核業務」または「重要業務」という。


【重要業務】
 中小企業や行政においては「中核事業」と同義。
 大企業においては、中核事業を構成する重要な業務のことを言う。



【経営資源】
 重要業務を行うために必要となる様々な要素のこと。
 ヒト・モノ・カネ・情報のくくりで検討することが多い。
 たとえば「この業務にはこの資格を持った社員が必要」「この業務にはこの機械が必要」と検討しながらリストアップする。



【ボトルネック】
 重要業務に多大な影響を及ぼす恐れのある重要度の高い経営資源のこと。
 その経営資源がダメージを受けると重要業務の停止が避けられないことから、BCPでは最優先で対策に取り組む対象となる。



【サプライチェーン】
  原材料の調達から生産・販売・物流を経て最終需要者に至るビジネスの流れのこと。
 BCPでは、サプライチェーンの中で自社の置かれた立場を認識し、取引先と協力しながら復旧計画を立てる必要がある。
 最近では、取引先からBCPに関連する問い合わせや要望が寄せられるケースもあり、BCPの有無が通常の取引にも影響を及ぼすようになってきた。



【社外連携】
 BCPは自社単独の内容で完結することはない。
 通常業務がタテヨコの取引関係の中で行われている以上、災害時の復旧業務も、他社と連携した活動が求められる。
 救援隊の派遣、原材料の融通、作業スペースの提供、代替調達、代替生産など。
 取引先や同業他社と情報交換や経営資源の貸し借りをしながら復旧活動を進める。



【代替生産】
 災害の影響で生産拠点が停止し短時間での再開が見込めない場合に、他社に代わりの生産を依頼すること。
 取引先への供給責任を優先する考え方。
 代替生産にスムーズに移行するためには、事前に信頼できる代替先を選定し、対応策を話し合っておく必要がある。
 時には、事前協定として覚え書きや契約書を交わすこともある。



【BCP発動フロー】
 災害が発生してから完全復旧に至るまでの取り組み手順を表した流れ図のこと。
 災害が起きてから何をすべきかを考えていたのでは対応が手遅れになりがち。
 特に災害発生直後は、やらなければいけないことが分刻みで発生するので、事前に行動手順を決めておかなくては、迅速な行動をとることができない。
 また、緊急時の行動だけではなく、完全復旧に向けた行動手順も決めておくことで、誰がどの時点で何をしなければいけないのかを理解することができる。



【行動マニュアル】
 災害発生直後の緊急行動マニュアルのこと。たとえば、地震が発生したときはどのように行動すべきかをあらかじめ決めておき、会社からの指示がなかったとしても全員がそのルールに則って行動できるようにしておく。
 最低限の内容は携帯カードに印刷して、全社員が常に持ち歩くようにする。



【地域貢献】
 企業といえども社会の一員であり、災害発生時には、地域の人々を無視した独善的な復旧活動は受け入れられない。
 BCPの内容にも、自社の復旧ばかりではなく、地域にどのような貢献ができるかという視点を取り入れるようにする。
 CSR(企業の社会的責任)の考え方をBCPに取り入れたもの。



【BCP文化】
 BCPは一部の人がこっそり作ってしまっておくものではなく、社員全員がその内容を理解し、共通の認識で行動できるようにしておく必要がある。
 BCPの基本的な考え方が、自然に社員全員に浸透するような組織風土づくりを目指すのが望ましい。
 教育や訓練を行うとともに、経営トップが社員とのコミュニケーションを通してBP文化の定着をはかる。



【BCPサイクル】
 BCPに取り組む一連の流れのこと。
 @自社業務の分析、ABCPの策定、B教育訓練、C見直し更新といった流れになる。
 BCPは一度作ってしまえばそれで終わりということはなく、このサイクルを繰り返すことで、少しずつバージョンアップを重ね、完成度の向上を目指す。
 業務改善のPDCAサイクルと同じ考え方。



【インシデント】
 アクシデントにまでは至っていないが、重大事故に至る可能性がある事態のこと。
 BCPにおいては、地震や風水害など、企業経営に重大なダメージをもたらす恐れのある事象を指す。



【地震と震災】
 地震は大地の揺れを引き起こす自然現象そのものを指すのに対し、震災はその地震によって引き起こされた災害全体を表す。
 東日本大震災を引き起こした地震は「東北地方太平洋沖地震」と命名された。
 阪神淡路大震災は「兵庫県南部地震」によって引き起こされた。



【マグニチュード】
 地震エネルギーの大きさを表す指標。
 単に「M」と表記することも。
 マグニチュードが2増えると、地震エネルギーは1,000倍となる。
 気象庁では、M7以上を「大地震(おおじしん)」、M8以上を「巨大地震」、M9以上を「超巨大地震」と呼ぶ。
 


【震度】
 その地点の揺れの大きさを表す指標。
 震度0から震度7までの10段階に分かれている。
 (震度5と震度6は弱と強に分かれる)
 日本独自の基準であり、海外では通用しない。
 一般に具体的な被害が出るのは震度5弱以上とされる。
 このことから、BCPの発動基準を「震度5弱以上」と設定するケースが多い。



【海溝型地震】
 海側のプレートと陸側のプレートがぶつかり合う海溝やトラフ付近で発生する地震のこと。
 震源は海中であり、津波を引き起こすことが多い。
 比較的広範囲に影響を及ぼす。
 緊急地震速報から揺れが始まるまで余裕がある。
 東日本大震災は海溝型地震の典型。



【内陸型地震】
 陸側のプレートの内部で断層がずれることで発生する地震のこと。
 震源は陸地であり、津波を引き起こすことは少ない。
 被害地域は狭い範囲に集中する。
 直下で発生した場合は緊急地震速報が間に合わない。
 阪神淡路大震災は内陸型地震の典型。



【南海トラフ巨大地震】
 南海トラフ沿いで発生が想定されている海溝型地震のこと。
 想定震源域は、静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘にかけて西日本の広い範囲に及ぶ。
 マグニチュード9クラスの超巨大地震になる可能性があり、最悪の場合32万人規模の犠牲者が予想されている。
 


【首都直下地震】
 東京湾北部で発生が想定されている内陸型地震のこと。
 首都圏は過去の発生周期からそろそろ地震活動期に入るのではないかと予想されており、マグニチュード7クラスの直下型地震の可能性が指摘されている。
 東日本大震災の影響からその時期が早まったのではないかという見方もある。



【新型インフルエンザ】
 人から人へ急速に感染が広がる強毒性のウィルスによる集団感染のこと。
 鳥インフルエンザがヒト型に変異した場合が最も重大な被害をもたらすと心配されている。
 既に、東南アジアでは、鳥インフル感染による死亡例が発生しており、ヒト型に変異するのは時間の問題と指摘する専門家が多い。



【風水害】
 台風、大雨、洪水、竜巻など気象災害全般を指す。温暖化の影響により異常気象が頻発するようになったと指摘する専門家もある。
 気象庁の予報により、ある程度の事前準備をする余裕がある。



【火災・爆発】
 主に過失によって単独事故として引き起こされる災害。
 自然災害よりも狭い範囲にとどまることが多く、周りの救援を得やすい。
 一方で、重大な過失責任を問われ、企業の信用失墜を招く恐れがある。
 BCPとしては、事前対策の徹底と、早期発見、初期消火がポイントになる。



【広域停電】
 原発事故をきっかけにクローズアップされたリスク。
 原発の停止により電力需給が逼迫した場合、突発的なブラックアウトが引き起こされる可能性があり、企業も対策が求められる。



【広域テロ・暴動】
 主に政治的な目的を達成するため引き起こされる暴力行為。
 広域かつ無差別に騒動を起こすことで人々の恐怖心を煽り社会的な混乱を狙う。
 爆弾テロ、バイオテロ、サイバーテロ、反日暴動などがある。
 海外展開をする企業にとっては、BCPの新しいテーマになりつつある。

平野喜久(ひらの・よしひさ)
中小企業診断士
上級リスクコンサルタント
ひらきプランニング株式会社
代表取締役

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