インターネット・バブルの光と闇

シャボン玉に限らず バブル(bubble:泡)は いつか必ず破裂する運命にあります。 「バブル」とは
株や土地などの資産価格 即ち ものの値段が「本来あるべき価値」より値上がりした部分を言い
ます。 「本来あるべき価値」とは 実体に裏付けられた「適正価格」です。 余談ですが 17世紀末
の英国で バブルとは 詐欺をはたらくことを意味し 株式市場を 抜け目のない連中と詐欺師が 
バブル(いかさま)で金儲けする世界 と描いていたそうです.

このページでは インターネットを軸とするIT関連会社の株価が 何故バブル化し暴落したのかを考察
します。  私は 平成12年12月までの4年半 某ベンチャーキャピタル(政府系)に出向していました
ので その総括として いわば卒業論文のつもりでまとめたものです。

浅学非才で曲学阿世の私如き者が 取り上げるテーマとしては 高邁過ぎるので 荒唐無稽な内容
になるかも知れませんが その際は「便所の落書き」に免じ許して下さい。

1. バブルの歴史

歴史は繰り返します。 経済史の中でバブルと暴落は 17世紀オランダのチューリップ・ブーム崩壊に
始まり 18世紀イギリスの南海泡沫事件 1840年代の米国鉄道バブル 1920年代アメリカでの
大恐慌 1980年代の日本での土地バブル 最近のインターネット・バブルなど 何度となく繰り返され
ています。 バブルを産む背景には 通常 新産業の創出があります。 新しい産業や技術が登場し
その期待が投機の熱狂になり バブル化し弾けています。 米国のニューエコノミー下で インター
ネット関連の株価高騰は バブルでない という説もありましたが 暴落を避けられませんでした。
全てに通じることは ファンダメンタルズ(実体)に裏付けられた「適正価格」より過大評価され 投資
がいつのまにか投機となったことです。 欲がからむと人間は 過去から学べない動物のようです。

「バブル」の語源は 1711年 英国に設立された南海会社(South Sea Company) が引き起こした
南海の泡沫事件(South Sea Bubble)に端を発しています。 南海会社は スペイン領南アメリカでの
奴隷販売を含めた独占的交易権を与えられた国策会社でした。 1720年 英国議会で ほとんど全て
のイギリス国債を 南海会社に引き受けさせることを承認した為 株価が急騰したものの 同社の
利益改善見込みがないことから 1720年に暴落し 恐慌に発展したのが南海泡沫事件です。 この
時期 英国政府は 戦争などでの債務(国債)を抱え困っており 南海会社の株価が上がり続ける
前提で 国債を整理させる巧妙なスキーム(国債を同社の株式に転換 同社は対価として政府から
金利を受け取る)を作ったものの 本業である交易からの利益が出なかったことから 国家的金融
サギ事件に終わりました。 議会は事件後 泡沫禁止法 (The Bubble Act) を成立させています。

バブル伝説は 投機の落とし穴に落ちないよう 警告する役割を果たしています。 バブル伝説として
「南海の泡沫事件」と並び称されているのが それ以前からあった「チュウリップ狂」の伝説です。
1720年のSouth Sea Bubble事件より前は チューリップがバブルと同じ意味に使われていました。

1630年代 所得水準がヨーロッパで最も高かったオランダで チューリップは顕示欲と富への強い
欲求を満たすものでした。 トルコからヨーロッパに持ち込まれたチューリップは 富みの象徴であり
貴族か植物学者の庭園にしか見られない貴重品でした。 当時もっとも珍しいと言われた品種
「無窮の皇帝」は アムステルダムのタウンハウスを買える額でした。

チュウリップの球根は 投機に適した商品です。 誰でも売買でき 栽培は簡単であり 極く普通の
球根を植え 「無窮の皇帝」の花が咲く可能性もあるからです。 1634年頃になると 専門家だけで
なく 「ど素人」である一般市民も 球根価格の上昇を知りチューリップ市場に加わった結果 実体
以上に高騰しました。 1637年2月 チュウリップ市場は突然暴落しました。 チュウリップ市場の
熱狂が いつまでも続かないことを人々が気付き パニックになったからです。

2. インターネット・バブルの崩壊

日米のインターネットバブルは 平成12年4月14日に 米国ナスダックが史上最大の暴落を記録し
同時に 日本国内市場もIT・ネット株を中心に下がった時点をもって 崩壊したという見方が一般的
です。  このネットバブル崩壊を 約半年前に予言したとして話題を呼んだ本が Michael/Tony
Perkins兄弟による共著 「The Internet Bubble」(出版は米国で平成11年11月 日本語版は平成12
年4月)です。

本書は インターネットバブルを数量的に把握する為に 株式を公開している米国インターネット企業
133社(時価総額1憶ドル以上の企業)の時価総額を 平成11年6月の時点で 4099億ドルと計算
その内バブル相当部分を 32〜58%と推定し 結論として一般投資家に対し インターネット株を直ち
に売却するよう警告しました。 インターネット・バブルについて 議論が活発になるのは この本の
出版後であり ネットバブルを崩壊させる一因になったとさえ考えられます。

バブル崩壊を予言しただけでなく 本書は 起業家 ベンチャーキャピタル 投資銀行(証券会社)
機関投資家など 米国でベンチャー企業の株式公開(IPO)に関る いわゆるインサイダーが 巨額の
キャピタルゲインを独占し アウトサイダーである個人投資家は 最終的にババを掴まされるだけの
運命にあるという 辛辣な指摘もしており注目されます。

この指摘が正しいか 某ベンチャーキャピタルに身を置いたことがある私としては 微妙な立場なので
肯定も否定もしませんが バブルが膨らむ前の投資に参加できるインサイダーと バブルが膨らんだ
ゲーム後半に参加する個人投資家では どちらが有利で バブルが弾けたとき どちらが貧乏クジを
引かされるのか 自明ではないでしょうか。

繰り返されるバブルの歴史から学ぶべき教訓は 実体に裏付けられた「本来あるべき価値=適正
価格」を越えた「投資」は 「投機」であり 投機であれば誰かが いつか必ず 損失を被るということ
です。

Edward Chandlerの書いた本のタイトルで  "DEVIL TAKES THE HINDMOST: A History of Financial
Speculation" というのがあります(日本語訳は「バブルの歴史」日経BP)。 DEVIL TAKES THE
HINDMOST は 「遅れた者は悪魔の餌食」 という意味であり 「損したくない賢い投機家は早く株を
売り 遅れて来る愚かな投機家に損を被って貰うしかない」 ことを示唆しています。

3. バブルは「投資」と「投機」の混同に起因

株式を買う際の 「投資(investment)」と「投機(speculation)」は どう違うのか 明快に説明すること
は困難です。

概して言うと 「投資」はプラスサムの世界  「投機」はゼロサムの世界にあります。 「投資」は
短期的には 価格が変動するリスクがあっても 長い目でみれば価値が高まるだろう というものに
お金を投じる行為(売買に参加している人の合計の損益がゼロ以上)であるのに対し  「投機」は
売買に参加したうちの誰かが儲かれば ほかの誰かが損をする(売買に参加している人の合計の
損益がゼロ以下となる)世界です。

投機とは 通常 市場価格の変動から利益を得る試みとされています。 投機は 投資より一般的に
リスクが高く キャピタルゲイン(値上がり益)を狙う代わりに 市場価格の変動により元本を維持
できなくとも構わないという判断が 前提にあります。 借金をして株を買うのはリスクが高く常識的
に投機です。 Speculation(投機)という英語は 「しっかりした事実の裏付けを持たない思索や
理屈」 を意味します。 思いつきで投資するなら投機です。 失敗した投資は投機  まずいやり方
の投機は賭博とされることもあります。 投資にも ある程度のリスクと賭博性はありますが 
「賢明な投資」と「向こう見ずな賭博」の間に位置するのが 「投機」です。

「バブル」とは 株価が実体に裏付けられた「本来あるべき価値」より 値上がりした部分であると 
冒頭に定義しました。 バブルが発生するのは 「投資」と思って大勢の人が加わり買っていた株式
が 実は上記で説明した「投機」であった時です。 キャピタルゲイン狙いで  しっかりした事実の
裏付けを持たない価格で 大勢の投機家が株を求めているなら バブルとなる恐れがあります。
バブルかどうかは ブームで株を買っている中心が 投資家or投機家 何れなのかで分かります。

4. インサイダーによる新規公開株価を形成する仕組み

ベンチャー企業向け株式公開市場として 店頭市場 マザース ナスダック・ジャパン の3市場があ
ります。 従来 株式公開基準のハードルは非常に高く 公開可能な会社は限られていましたが
最近では公開審査基準が下げられ インターネットやIT関連を中心に株式公開する 実績の無い
アーリーステージの企業が急増しています。 最近好調な米国経済は ベンチャー企業の輩出による
と言われています。 日本でも ベンチャー企業向け株式市場の創設に加え ベンチャーキャピタル
未公開株投資ファンド ストックオプション制度 といったベンチャー企業を支援するインフラが整備され
ベンチャー企業を躍進させる上で不可欠な 直接金融による資金調達を可能にしています。

未公開企業が新規株式公開(IPO: Initial Public Offering)するまでの間 いわゆるインサイダーと呼
ばれる 起業家 ベンチャーキャピタル 監査法人 主幹事証券会社などが 資本政策の中で関り
ます。 資本政策とは 公開時における株式構成 持ち株比率 資本金 発行済株式 資金調達額
公開価格等の目標を定め その目標を達成すべく公開時までのファイナンス計画を立てることです。
ベンチャーキャピタルは ハイリスク・ハイリターンの事業として ベンチャー企業が株式公開するまで
の間 必要なエクイティー・ファイナンスを提供します。 創業間もなく 売上げや利益など ほとんど
実績の無い段階で ベンチャー・キャピタルが出資するインターネット関連の株価は ほとんどの場合
経済的に余り根拠ありません。 何故なら 実体(利益・配当・純資産の実績)に裏付けられた伝統的
な株価の評価手法(例えば 類似業種比準方式)を適用できないからです。

伝統的な評価手法である 株価収益率PER(Price Earnings Ratio: 株価がその会社の1株当り税後
利益の何倍になっているかを示す指標)は 過去の利益(黒字)実績が無いと使えません。
(株価)=(PER)X (EPS) というのが教科書に載っている株価の計算方式ですが PERで評価でき
ない株価を正当化するのは 一般的に困難です。 ちなみに EPS(Earnings Per Share)は 1株当
りの税後利益であり PERは株価が利益に対して割高かどうかを判断する一つの尺度です。 伝統的
な評価手法として DCF(ディスカウンテッド キャッシュフロー)を 使う方法もあります。 将来の利益
(キャッシュフロー)を予測し 現在価値に割り引いて換算し株価を計算するのがDCF方式ですが 
未だ実績がほとんど無く 将来の成長が不確実なベンチャー企業に適用するのは 無理があります。

こうした状況で ベンチャーキャピタルが出資時に多く採用する評価方法は 公開できるかどうかの
リスクを考慮した上で 公開(IPO)時に想定される大まかな時価総額から株価を算定し 出資時の
株価が 例えば その十分の一なら妥当とするものです。 公開時の時価総額を想定するのは実際
問題として難しく この評価方法には限界があるものの 他に余り良い方法が無いというのが実態
です。 ベンチャー企業が株式公開する際に 公開価格(公募または売出し価格)は 一般的に
ブックビルディング方式で決められています。 この方式は 機関投資家等の需要状況をヒアリング
した上で 公開価格を決めるものです。 嘗ては幹事証券会社が高値に誘導しがちだった入札方式
に代わり  ブックビルディングは 機関投資家がイクラなら買うかという目安なので 概ね安く決まり
ます。 機関投資家によるこの評価は もっと早い時期に出資したベンチャーキャピタルより判断材料
は多いものの 同じ難しさがあります。

いずれにしても 公開審査基準が下げられ 株式公開が増えることは インサイダーにとっては望まし
いことですが アウトサイダーである一般投資家(個人投資家)のリスクは ハードルの高かった時
よりズット増しています。

5. ケース・スタディーとして(株)まぐクリックの株価を評価

抽象的な説明ばかりでは退屈なので 具体的なケースとして (株)まぐクリック社 を材料に考えて
みます。 同社は国内大手のメールマガジン配信サイト 「まぐまぐ」のネットワークを利用して メール
広告を配信するサービスをしています。 「まぐまぐ」が配信するメールマガジン19200誌 読者数240
万人は 2位の配信サイト「メルマ」を大きく引き離しています。

まぐクリック社は 平成11年9月8日に設立され 平成12年9月5日にナスダック・ジャパン市場(グロ
ース基準)で株式を公開しました。 会社設立から1年足らずで公開を果たせたのは 創業者である
西山裕之社長(36才)の快挙です。 公開した直前期である 平成11年12月期(9月創業のため
4カ月決算)は 売上高 5094万円 純利益 389万円の損失 でした  この実績に対し 公開価格 300
万円 初値 376万円でしたが 平成12年11月1日時点の株価は 95万円にまで下がっています。
株価評価のプロである10数社の機関投資家が ブックビルディング方式で決めた公開価格(公募
価格)が 短期間で急落した一因は 公開価格そのものが 利益など実績の裏付けも無いまま決め
られているからです。

未公開会社の株価は 通常 評価される会社の実績 具体的には 利益 配当 純資産等を 既に
株式公開し市場株価が存在する類似業種(会社)と比較し 決められます。 (株)まぐクリックの
場合は 比較できる類似会社が無い上に 実績がほとんどない赤字会社なので 通常の評価方法を
公開価格に適用できません。 では インサイダーや機関投資家が どうやって公開価格(公募価格)
を決めるかというと インターネット関連銘柄なら 公開時にこの程度の市場評価額(時価総額)に
なるであろうという推測 によります。 まぐクリックが公開準備をしていた頃(平成12年夏) 既に公開
したインターネット関連会社の時価総額は 最低200憶円という相場があり まぐクリックの事業内容
や実績から 最低レベルの時価総額200憶円程の会社価値と 判断されたのではないでしょうか。
随分と大雑把な決め方ですが ファンダメンタルズが健全でなく 実績の無い会社の株価評価とし
ては こんな方法しかありません。 投資対象の会社価値を時価総額で先ず判断し 発行済株数で
割り算すれば 一株当りの株価が出ます。

まぐクリックの公開価格300万円/株に発行済株数8000株を掛け算すると ナスダックJに公開された
際の時価総額は 240億円と評価されていたことになります。 公開時の初値376万円が 何故2カ月
も経たない時点(平成12年11月1日 )で 95万円になってしまうのか 株式市場全体の動き 浮動株
の少なさ 公開後の業績など 色々と原因はあるにしても説明困難です。 公開価格の決め方その
ものに 合理性(根拠)がないので 公開後の株価も根拠なく乱高下するとしか言えません。

仮に 株価95万円が現時点での妥当な市場評価として 長期的にどう評価されるべきかとなると
個人的な意見として 私は まぐクリックのビジネスモデルを考慮して 以下の如く悲観的です。

1)  「まぐまぐ」や「メルマ」等は 個人が個人に発行するC2Cのメールマガジンで 質が低く 情報
   を得る手段として期待できない。 情報を得るならメルマガより ロボ ット型検索エンジンの方が
   便利である。
2) 広告媒体として メルマガはウェッブサイトより劣っている。 メルマガを受け取った読者は 広告
   に興味なく 通常 オフライン状態で読むメルマガに掲載される広告は見ない。 従い メール
   マガジン広告市場の成長を期待できない。
3)  平成12年12月期決算予想は 売上げ14億円 当期利益1憶7千万円 一株当り利益(EPS)
    21250円であるが これが達成された場合でも 株価95万円を前提とした株価収益率(PER)45
    を妥当と判断できるか 疑問である(PERは同じ利益が何年続けば現在の株価に等しくなるか
    を示し この場合は45年という計算)。

6. まとめ

冒頭で このページは荒唐無稽な内容になるかも知れない と警告しましたが 支離滅裂になって
いないか心配です。 結局  このページで 何を私は言いたいのか 最後にまとめます。

1) 投資対象についてほとんど知識なく 大きなリスクを好まない個人投資家には インターネット
   銘柄への投資を勧められません。 公開審査基準が下がり  IPO企業の質は昔より大幅に低下
   しています。 IPO銘柄は 一般的に浮動株が少なく 株価が乱高下し易く 多産多死の世界で
   長期的に生存し成功するのは極く限られます。
2)  株価は 経済的なファンダメンタルズ 即ち バランスシート上の有形資産を重視して 本来なら
   評価すべきです。 株式公開するインターネット関連企業は 多くの場合 創業間もなく 売上げ
   も利益もほとんど無い状態なので 有形資産の代わりに無形資産である その企業の将来の
   収益力 技術(知的所有権) ブランド力が重視されます。 こうした無形資産を重視した株価
   評価は 将来の利益が期待された程にはならないと認識された途端に 暴落します。
3)  ネットバブルは既に崩壊したものの 個々のインターネット銘柄について 現在の株価を底値と
   判断するのは困難です。 株価は過去の実績と 将来生み出すであろう利益への期待から形成
   されます。 株価収益率PERが尋常でない程に高い株は 将来への期待が先行し過ぎており
   投資ではなく投機対象です。
4)  インターネットが画期的な技術として 21世紀の産業革命 IT革命 の骨格となることは 確実
    です。 バブル崩壊で 画期的な技術も否定された訳ではありません。 インタ ーネットは 
   活版印刷 家庭用電気 自動車 電話 ラジオ TV に等しい 100年に1度 の技術革新として
   我々のライフスタイルを変えるものです。
5)  個人投資家がIPO銘柄を買うなら  ロックアップ期間中でないか 留意すべきです。
   公開前1年以内(公開基準決算期末より一年以内)に株式を保有した者は 株式公開後半年
    あるいは株式保有後1年の遅い日が到来するまで 株式の売却が法律上出来ないルールに
   リクルート事件後 なっており これをロックアップと呼びます。  キャピタルゲインを狙う
   インサイダー(中心はベンチャーキャピタル)が保有する大量の株が ロックアップされているなら
   売り圧力が控えているということであり 株価の値上がりを当分の間 期待できません。
6)  新規公開企業の株価が 公開直後に急落するケースが 最近では少なくありません。
   上記5のロックアップに拘束されない インサイダー(大株主)による大口売りが 公開直後に
   集中し起きるものです。 公開直後の株価急落を防ぐ対策として 主幹事証券会社によっては
   大株主に対し株式公開後 一定期間(例えば6カ月) 株式を売却しないという契約を結ぶことが
   あります。 新たなロックアップとして こうした動きを理解すべきですが 一定期間後に株価は
   急落するかも知れません。

結論として ビジネスモデルがしっかりしていないインターネット・ビジネスは 駄目です。 
実績のないネットビジネスに 個人が投資するなら 市場の評価や人気で決めるのは危険です。
投資先のビジネスモデルを 個人的に評価できるかが ポイントとなります。

例えば (株)まぐクリック社のビジネスモデルを評価できるかどうかは 情報を得る手段として
メルマガの人気は将来更に高まる傾向にあるか 広告媒体としてメールマガジンは他の媒体と比べ
効果的か 等です。 この点について 私は個人的に否です。

ついでに もうひとつ例を挙げます。 平成12年4月に店頭市場へ公開した楽天は 平成10年12月
から連続2期経常黒字を達成し 「優良企業」とされています。 楽天市場というインターネット上の
ショッピングモール(仮想商店街)に 5050店(平成12年11月時点)の出店数です。 楽天の収益
基盤は 各店から得る月5万円のテナント料です。 ビジネスモデルとして良く出来ていますが
懸念材料として二つあります。 一つは 店舗数の増大により 出店企業の満足度が下がりかねない
ことです。 店舗数が100店だった時と同じ満足度を 5000店になっても得られるか疑問です。
もう一つは 出店者(中心は個人や中小企業)のほとんどが 赤字経営という実態です。 楽天市場に
出店しても テナントは儲からず赤字経営 ということが定説になれば 楽天のビジネスモデルが成り
立たなくなります。 対応策として 楽天は サイバー・ショッピングモールに続く 事業の多角化を
株式公開時に集めた495億円の資金を活用して進めており 成否が注目されます。 

楽天は「Infoseek」を90億円で買収したと平成12年11月末に発表しました。 Infoseekは平成12年
9月期決算で6億5千万円の赤字であり 検索機能は他のエンジンと比べて見劣りしていることを
考慮すると 90億円は高すぎる買い物ではないでしょうか。 楽天市場に出店している店舗
(テナント)の内 何%が赤字か 実は問い合わせたのですが 楽天から得た丁重な回答は以下
でした。

  「 赤字というのが何をもって赤字なのかを定義することが非常に難しいです。 店舗によって
   楽天への出店への目的が違います。 物販をしていない店舗もあれば、販売することが
   目的でなく新商品のマーケティングに場を活用している店舗もあります。 従い 赤字店舗率に
   関する回答は控えさせてください」

投資は自己責任で行うべきであり 情報開示がその前提ですが 肝心な情報はなかなか得難い
ものです。 IRというのは株価を上げる活動であり 株価を下げかねない情報を出すことについて
各企業とも慎重です。

ご意見ご感想を下記宛にいただければ幸いです。

Eメールアドレス*123hakuzouszk@kha.biglobe.ne.jp (注意*正しいアドレスは数字123を除く)

        参考文献:    「インターネットの経済学」 佐々木スミス三根子著 東洋経済新報社
                   「インターネット・バブル」 A.B.パーキンス M.C.パーキンス共著 日本経済新聞社
                   「バブルの歴史」エドワード・チャンセラー著 日経BP出版センター
                   「ネットバブル」 有森隆著 文芸春秋

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