8月17日(火)

そしてきょうも変らぬ一日。

そして朝はやってきた。
いつもとおなじ朝。
「う〜ん!!今日会社いく日だっけ?」わたしは布団の中で大きく伸びをした。
ふと気づくと、横に見知らぬ男が寝ていた・・・・らビックリして飛び起きるのであるが、
現実にはそんな訳も無く、動かない頭を整理してみる。
「エット、土曜日は、コンサートいって、日曜日は、ミュージカル見て、昨日有給でやすんだって事は・・・」
「・・・会社か。」
エイ!と跳ね起き、階段を降りて行く。時計を見ると、8月17日(火) 5:41
そうなんだ。きょうは・・・・

とりあえず、寝起きの一杯。
いいねえ、迎え酒・・・じゃなぁ〜い!!アイスコーヒーです。
いつもと同じ朝。いつもと同じ部屋。いつもと同じコーヒー。全てがいつもと同じだけど、今日は、何かが変る日。
変らなきゃいけない日・・・・
6時すぎまでボーッと過ごして、お風呂入らなきゃ。とやっと動き出す。いつもの事ながら、体だるいです。
いつもと同じシャンプー。いつもと同じ入浴剤。
髪を乾かしながら、髪形も変えたいなあ・・・って思うけど、なかなか美容院へいけないんだなあ・・・
いつもと同じ髪型・・・
そうこうしているうちに7時が過ぎ、朝御飯の準備しなきゃ、と思ってると、
音楽が聞こえてきます。
「♪Happy birthday To You〜〜」
「なに?」
どこからか流れてくる、ハッピーバースデイのメロディ。ふと気づくと、携帯電話です。
「はい?」
電話に出るわたし。
「あ、おね〜ちゃん、げんき?おか〜さん」
母からです。
こんな朝早くに電話なんて何事かと思い、
「なに?何かあったの?」
というと、
「何も無いけど、今日何の日か分かる?」
「ああ、当たり前じゃん。めでたくも無いけどね。」
「何だ、知ってたのか。じゃ、いいや、おめでとう、気をつけてね」
・・・といって、電話は切れました。
母からのコール。携帯電話のお祝い。少しビックリです。

そうこうしていると妹からのメールがやってきました。
「ますます年齢不詳のねーちゃんへ・・・」
そう、きょうは・・・

いつもと同じ通勤。
いつもと同じ会社。
いつもと同じ仲間。
おはようの挨拶。部内メール。わたしの席にやってくる人。
みんなが口々に言う。おめでとう!
きょうは・・・

そしていつもとの違いに気づく。
あの人は、イナイ。

ここにも、そして、わたしの心にも。

あの人は、同じ職場の先輩だった。会社こそ違っていたが、同じビルの同じフロアで、同じ仕事をする人。
わたしが一番辛いとき、励ましてくれた人。
わたしが彼に引かれるのは、当然の成り行きだった。仕事も出来て、やさしくて、毎日毎日、どんどん好きになってく自分がいた。
でも彼は、そんな私の気持ちを受け入れてはくれなかった。
「同じビル内で付き合って行くほどの、リスク背負える女じゃない」と。
それでもわたしは、好きだった。
遠くから、見ていられれば、よかった。・・・・相手にとっては、迷惑だったとしても・・・・
一度目の今日は、長期休暇中だった。振られて、でも好きだったとき。
プレゼントしようと思っていたお酒を、渡せず、1週間後ぐらいに、彼の前で、彼の友達にあげて、怒られた。
「何で、そういうことするの!どんな気持ちがするか、分かるだろ!」と。
その時に力強い腕を感じた。あたたかい胸を感じた。でも、幸せは、続かなかった。
2度目の今日も、長期休暇中だった。どうすることも出来ない、もどかしさを感じた。
3度目の今日は、出張中だった。電話がかかってきた。結構ノリノリで、楽しそうな語り口調だった。
でも、あの一言は、言ってはいけないものだった。
それは、自分に対しての、ある事を強要してしまう言葉だから。

そして今日は、出会ってから、4度目の、今日。
彼は何か、変ろうとしている。
これ以上、追いかけては、いけない気がした。先週、わたしは、気持ちを断ち切る決心をした。
そして、それを実行するには、今日がいいと思った。

彼のいない今日。
わたしが生まれた今日。
そして、距離が縮まることがなく、彼も一つ大人になる今日。
年齢の距離が縮まることが無いのと同じで、心の距離は、縮まることの無いわたしたち。

心の中を空っぽにして、新しいわたしになる日。

そして、いつもと変らぬ一日がすぎて行った。

「結局、何か、夢中になれるものが無いと、忘れられないわ。・・・・今週は、とりあえずいいけど。」
そんなことをつぶやきながら、帰宅の途に就く。
「こんな日は、やっぱあれでしょ」
デパートによるわたし。ケーキやさんの前で、ショーウインドに並んだケーキを物色。
「チョコレートは、嫌いだったんだよね〜」
モンブランと、イチゴの乗ったミルフィーユを注文。一人なのに。何、チョコ避けてんだか。
そして、お寿司。
「定番よね」
家に帰り、さっそく夕飯。一人で食べることにもなれたよね。
そんな事になれても仕方が無いんだけど。
御飯作ったら、食べてくれる人がいるんなら、作るんだけど、1人だと、買い食いで済ませちゃうこと、多いんだよね。
ここ5年ぐらい、御飯作ってあげるなんてしてないかもね。

「とりあえず、おめでとう!」
最近、独り言の増えたわたし。
日曜日に録音したけど失敗して途中までしか入っていない音楽を聴きながら、ヘッドホンで最大ボリュウム。
現実逃避しながらの食事です。

「オオノサトシに、逃げてる?」
ま、それでもいいか。人生いろいろ。

今日はわたしの誕生日。29回目の誕生日。
今日はあなたの誕生日。30回目の誕生日。

今日、きょう・・・・
後少しで終わる今日。
来年も、再来年も、10年後も、50年後も、
きっと、一緒に年をとるあなたのことを、思い出すでしょう。
想い出に・・・

そして、いつもと変らぬ夜が、わたしを深い闇の中へ運んで行く。
目覚めなくてよいのであれば、どれだけ幸せなのだろう。
でも。

また、いつもと変らぬ朝がやってくる。



H11.8.17 23:23


メール ホーム