青春の墓標再生計画
よみがえれ!APS2
 
 これが今回の弄りネタ、APS2SV:道東担当青春カスタムである。
 金満M24チューンの手間賃代わりにSF道東担当氏が提供してくれたものである。断っておくが、チューンにあたり、決してこちらからはなんの見返りも要求していない。この銃の提供は、道東担当氏の方から申し出てくれたのであって、強奪したものではないことを強調しておく、念のため。

 さて、今やモノホン以外見向きもしなくなった氏にあーんな事やこーんな事をされてしまったこのAPS2。細部については氏の名誉のため敢えて申すまい。若気の至りというのは誰にでもあることで、私だって今まで一体何丁成仏させた事やら・・・。そんな青春の墓標を現役に復帰させようと言うのが今回の企画である。もっとも墓標とはいえ、肝心の心臓部は思いの外、程度が良好である。部品に少々の欠品と破損があるものの、各部にはカスタムパーツが組み込まれていたりもする。弄り方によってはちゃんとしたものになりそうである。さて、チューンの方向性はどうしたものか・・・

 デイゲーム用ライフルとしてはVショートが文句無い仕上がりになっている。一方、夜戦用には10/22BPRがこれまた良い感じに仕上がっている・・・んが、夜戦にもエアコキライフルがあった方がこれからの季節、重宝するのは間違いない。充電もガスボンベ交換も不要なエアコキの方が準備も楽チン。それにカミさんの手前、夜戦には一回あたり多くても3ゲームくらいしか参加できないから、Gガスが勿体ないというのも正直なところである。デイゲーム用ライフルはとにかく機動性を優先させるため軽さと短さが第一命題。ところが、夜戦用として考えればAPS2の長さもさほど問題にならない。
 というわけで、夜戦用を念頭に中距離精度と消音に重点をおいたチューンを施していくことに決定である。

 まず、手を入れたのはトリガーユニット。
 トリガーボックスの元々の材質が柔らかすぎるため(ストックと同じファイバー混入樹脂製)、レシーバーとの固定部分が前後とも破損していた。コッキングしたときの力が全て集中する部分なのに、ここにこの材質は無いでしょう、マルゼンさん。いくらパワー改造対策といってもコレはさすがに弱すぎると思うぞ。で、カスタム品を調達するのは値段が値段なのであっさりパス。幸い、左側のフレームに付いているベースの下側部分は健在だったので、そこにABS材とプラリペアで補強。トリガー支点の両サイド、薄くなってる部分も逝ってしまっていたので、こちらもABS材とプラリペアで作り直し。

 弄くりついでに、トリガーストロークの調整機構も追加してみた。トリガー後端部が接触するボックス底部を一段削り込んで、あらかじめネジを切ってある5mm角の鉄板を埋め込む。そこにM2のイモネジを入れて外部からトリガーストロークを調整出来るようにしてみた。シアーはノーマルでも充分使える。というより、ピストンの摩耗を考えたらノーマルの方が良いのだが、Vショートに対抗して「超軽ショートストローク」に設定するためステンレス製に交換した。御存知の方も多いと思われるが、APS2はトリガーシアの支点を入れ替えてシアーの設定を変えることが出来る。写真では「ストロークが短めで少し重い」パターンになっているが、現在はシア前方の支点を使い「ストロークが長いが軽い」パターンで組んである。接触距離を1mm弱に抑えることにより、かなーり軽くて短いトリガープルに設定している。

 スプリングガイドストッパーの底にはネジを切ってビスを入れ、トリガーガードにも対応した穴を開けて、分解しなくてもシリンダーが外せる機構を追加。この部分はVSRではかなり困難だが、APS2ではストッパーとトリガーガードの位置関係で簡単に出来るのは有り難いところである。ただ、そのままだと撃っているうちにストッパーが徐々に下がってしまうことがある。VSRと違ってガイドと噛み合う凹凸が無いのだから当然である。そこで、トリガーボックス内にABSのパイプを固定し、その中にスプリングとプランジャーを入れた。ストッパーにも固定位置でプランジャーが当たる場所に窪みを付け、撃発の衝撃でずり落ちないように工夫してみた。
 あとはお決まりの接触部分の研磨とグリスアップ、スプリング類のテンション調整で一丁上がり。

 シリンダーユニットは悩みの種である。APS2のノーマルシリンダーはアルミ製。しかもVSRとは違ってサポートリングなるものは入っていないため、亜鉛合金のレシーバーやアウターバレル内部とシリンダーが直接接触する。従って、コッキングの感触はアルミが擦れるときの独特の抵抗がもろに感じられてしまう。まあ、SS9000に始まる昔からエアガンのノーマルシリンダーはアルミ製というのが相場だったので文句を言っても仕方ないところではある。この点、メクラピン付きとはいえ最初から真鍮製のシリンダーを導入したVSRは初期投資額が抑えられるという意味においては画期的な商品だと言えるのでは無かろうか。うーむ、何とかしたい、ここは。かといって、カスタムパーツは高い、高すぎる。せっかくタダで本体が手に入ったのだから金は掛けたくない。と思っていたところ・・・オクで一部破損したカスタムシリンダーを発見、3kで落札出来た。モノはおそらくOK製。破損個所はエンド部分の固定ピンが一部欠けているのと、外面にちょっと深い傷があるだけ。傷の方はせっせと磨き、エンドの固定はメクラピンを一本増設で対応。内部はピストン後部と擦れる部分が多少荒れていたので、これもペーパー掛け。てな感じで、意外とあっさり再生加工は終了。大した金も手間もかけずに交換できたシリンダー、組んでみると・・・こりゃ、ええわぁ。アルミのジョリジョリ感が無くなり実によい感触。内径やヘッドのネジピッチがノーマルと同じなのでパーツも全て互換性アリというのが実に嬉しい。

 スプリングガイドは破損していた。で、何か使えるものはないかなぁと手元のパーツ入れを見回していたら・・・おお、丁度良いものがあるではないか。取り出したるはVSRのノーマルSPガイド。台座の部分が若干径が大きいので電動ドリルのチャックに付けて回転させながら削り、底部の突起を削り飛ばしたらノーマルと寸分違わないものが出来上がりである。
 ピストンは道東担当氏がライラクス製とノーマルをつけてくれた。両者をスプリングやカップを入れ替えながら引き心地や撃発ショックをじっくり比べる。うーむ、どうもライラクスのは、重量がノーマルよりあるためか撃発ショックが僅かに大きいようだ。しかも、このピストン太径仕様なのだが、手元には太径スプリングが無い。VSRで色々試した細径スプリングなら文字通り山とあるのだが。細径スプリングを使うためには、内部にスペーサーを入れなければならず、さらに重くなる。ということで、ノーマルを選択。
 ピストンカップも「かなり硬い赤(ライラ製?)」と「柔らかめ青(OK製?)」の2種類。こちらは多少気密が緩くても、弱めのスプリングでピストンスピードを稼ごうと赤をチョイス。
 シリンダーヘッドはPDI製の旧型テーパーヘッドが付いてきた。テーパー形式は、エア効率が良くなる反面、シリンダー内部の反響音を増幅することもあるので一長一短である。もっともこのAPS2の場合、シリンダー内部パーツの組み合わせの関係からピストンの初期スピードがそれほど速くないので、撃発時の反響音はほとんどしない。むしろ、ダンパーのOリングとカップのヘリが微妙なかみ合わせになってかなり静かである。
 以上の組み合わせにPDI製のVSR用Ezy140%+スペーサー5mmを組んで初速95m/s誤差ゼロとなった。手元に揃ったパーツが偶然にも絶妙な組み合わせになったお陰で、手間とコストの割には実によい撃ち心地のセッティングが出来てしまった。うーむ、XPやVSRにさんざん苦労したのは何だったのかといささか複雑な心境。

 チャンバー部分はノーマルの固定HOP形式でも実用性に問題はない。つーか、安定性の面では固定式の方が安心である。しかし、変なものが格安で手に入ったので試してみることにした。クラシックアーミー製M24用の可変HOPチャンバー&インナーバレル。0.5kで落札(^^)
 このチャンバー、PDIと同様のマルイ電動用バレルとパッキンを利用する形式で、ぱっと見た目なかなか良さそうである。んが、細かく寸法を採ってみるとそうでもなかったりするのはお約束といったところか。当然、そのままでは組み込めないので加工が必要である。ノーマルのSV用チャンバーは根元が外径22.2mmで途中から一段細くなり前半分の外径は20.8mm。SVのアウターバレルはチャンバー固定部分で一段内径が細くなっているのだ。一方、クラアミM24は内部がほぼストレートらしく、チャンバーブロックの根元外径は一緒だが前半分の外径は21.2mmとSV用に比べて太い。そこで、お馴染み電動ドリルの代用旋盤で軽くサンダーを当てながら少しずつ削って外径を揃えた。調整用のテンションは、クラアミ仕様では大型のOリングで掛けているが、スペースの関係上、太いゴムリングは使えないのでピアノ線で締めバネを自作して組み込んだ。

 バレルはチャンバーに付いてきたクラアミ製509mm。残念ながら先端から10cm程がかすかに曲がっている。まあそもそも、そのままの長さではサプレッサー先端まで行ってしまいトレーサーが使えなくなるので、360mmにカットして使用する。内径や仕上げはマルイのものにほぼ同じなので問題はないはず。
 HOPの調整幅があまり無いのでテンションラバーの選定にはかなり手こずったが、試行錯誤の結果、「電動用ノーマルテンションラバーに1mmシリコンチューブの芯入り」で落ち着いた。今のところ弾道はかなり素直。35mはまっすぐ飛び、変なフライヤーもあまり出ない。この辺は、パワーバランスというか何というか、VSRに比べると持てるパワーがしっかり生かされている。さすがAPS2といった感じである。気密は殆どスカスカなのに弾道に伸びが出るんだなぁ。どうやったらVSRでこの伸びが出せるだろうか?

 APS2SVで発売当初から難点とされているのがマウントベース。ノンHOP精密射撃用のORと共通のため、前傾している。で、殆どの人が買い替えるなり、加工するなりしている。ビンボーチューナーの私は当然、後者を選択。ワッシャーを噛ませて高さを出したら、マウントベースとレシーバーに貼ったガムテープの隙間にプラリペアを流し込んで成型。固まってから余計なバリを取れば水平マウント完成です。

 分解&組み立てを数限りなく繰り返されたであろうレシーバーのネジ穴。お約束通りに前方の結合部分は潰れていました。ネジ山を再生加工するのも面倒なので、そのまま強引にM5タップでネジを切ってしまいます。ストックのネジ頭が収まる穴を拡げてスペーサーを噛ませVSR用の結合ボルトを流用しました。まあ、ここはしっかり固定できれば何でも良いのだが、個人的には六角レンチを使用した方がドライバーより締め付けトルクを安定させ易いと思う。

 あと、APS2チューニングでポイントとなるのがベディング、レシーバーとストックの結合ですな。ストックに余計な干渉をさせないフルフローティングが理想らしいが・・・そうもいかない場合もある。このSVの場合、レシーバーとアウターの結合部分に微妙な製作誤差がある。シリンダースペースのセンターに対してアウターをねじ込む部分のセンターが僅かに右下に偏心している。そのため、アウターをレシーバーに完全にねじ込んで固定すると、アウターのセンターががわずかにずれる。すると、ノズルとチャンバー内部、およびシリンダーとアウター内壁ががゴリゴリと擦れてしまう。コレはイカンとアウターの固定を色々と工夫したり内部を研磨してみたりしたのだが、どうも上手くいかない。うーむ旋盤か回転作業台が欲しいぞ。アウターが半回転ほど弛んでいればスムーズに動くのだがねぇ・・・。しかし、それではノズル長が足りなくなる。それに、弛めたままでは精度も出ないし、ノズル延長加工をするのもタルい。そこで逆転の発想。しっかり締めた状態でストックに組み込むのだが、ストック先端のアウターと当たる部分に薄いプラを貼り付けて、ストックに強制的にセンターを保持させることにした。結果は・・・神か仏か偶然か、バッチリ決まった。まあ、結果良ければということでココはお茶を濁す。

 ベディングにも関係するチューニングのツボをもう一点、シリンダーのガタ取りである。初期状態でキチンと仕上げられていれば問題ないのだが、残念ながら今回の個体のようにセンターが出ていないことが多い。そのため、レシーバー内部を削って研磨したりするわけだが、すると当然ながらクリアランスが大きくなりシリンダーがガタつくようになる。シリンダーがガタつくと当然、ノズルも動くわけで命中精度に大きく影響する。この部分のチューン手法としては、コッキングピース下面かレシーバーに銅テープなどのスペーサーを貼り付けることが多いのだが、作動面に貼ることは耐久性や操作性の点で難がある。そこで、コッキングピースの後端、レシーバーと噛み合わさる段差部分に0.2mm厚のプラ版を貼ってガタを無くした。段差の垂直面に貼ることでシリンダーが前進しきったときだけガタ防止措置が効果を発揮し、作動には一切影響を及ぼさないで済む。側面がスムーズなレミントンタイプ等では出来ない手法だ。
 しかしだ、やはりSVのノーマルハンドルはかなりの難物である。ハンドルノブが異様に大きく、しかも長い。普段、コッキングする時は、エンドボスへの負担を減らすため親指をエンドピースにかけるスタイルを採っているのだが、ハンドルのでかさとエンドピースの長さが相まって手首の動きが非常にぎこちないモノになってしまう。
 ココはサンプロ以来、使い慣れたレミントンタイプにしたいが、金満ライフル製作ショップのモノはえらく高い。ガスブロが一丁変える値段である。どうしよう・・・と悩んでいる所へ、またもオクで変なモノ発見。チャンバーと同じく、クラアミ製M24用のシリンダーセットである。財政難の折、これでも部品代としては少々高い、が国産のハンドル単体よりは安いな・・・というわけで逝ってしまいました(w
 このハンドル、ぱっと見た目は格好イイが、細かく見ていくと実際の仕上げは値段相応というのはチャンバーと一緒。取り付けは、各部に加工が必要なので少々手間と工夫が必要である。まず、レシーバーをレミントン風にサンダーでガバッと削る。ただし、接地面積が減れば当然ガタは大きくなるので、デザイン的に許せる範囲に留めておいた。エンドボスの軸もハンドルに合わせてカットし、固定用の面取りをする。軸内部も固定ビスの入る穴を深くしてタップを切り直し。ハンドル内部のクリックパーツが入る穴3箇所もノーマルパーツが入るように拡張。問題はガタつき防止である。ノーマルのステアータイプと違って、レミントンタイプはエンドピース側面に段差が無い。となると、レシーバー側に一工夫せねばなるまい。そこで、レシーバーのセイフティレバーがある部分、ハンドルの後部に当たる壁面内部にロック機構を入れた。直径2mmの穴を左右にぶれないように慎重に開け、内部にスプリングとプランジャーを入れて、側面からイモネジで留めている。写真で、ハンドル付け根の上にポツッと光っているのがプランジャーの頭である。こうすることでシリンダーのがたつきを最小限に抑えることが出来るようになった。ちなみに、エンドピースはCA製だとかなり短いので、ノーマルを削ったモノを使用している。外周を削る際にセンターがずれてしまったが、ぱっと見た目はわからないから、ここもまあイイかと。

 ストックは若かりし頃の道東担当氏によってタクティカル風の味付けがなされていた。引渡された時には「うーん、太いなあ。でも、削り込めばなんとかなるかな」と思っていたが・・・甘かった。青春カスタムの造型に、切削加工に耐え得るような硬質材が使われるはずもない。ストックへの張り付き具合を確認しようと精密ドライバーで表面を削ってみたら、ん?ズブズブと刺さっていく。刺さりきったところでグイッとひねったら、こ、これは・・・全部剥がしですね(^^;
 一通り造型と塗装を剥がしたら、せっせとペーパー掛けをして下地をならす。個人的にはノーマル状態からさらに削り込んでスレンダーなストックに仕上げてみたいところだが、APS2の肉厚なレシーバーラインには似合いそうもないのでやめた。今回はあえて小型軽量路線はとらず、珍しく重厚長大路線で行くことにする。
 フォアグリップ部分をFRPとレジンで肉盛りして、サンダーで大まかに成型。細かい傷や道東担当氏が削り込んだ跡はアクリルパテで埋めてヤスリとペーパーで均した。レジンに硬化剤を入れすぎたため、肉盛り作業中に硬化が始まってしまいポツポツと気泡が出来てしまったのが悔やまれる。かといって、やり直すのも気が遠くなるし。アクリルパテでそこそこ誤魔化したが、キリがないので途中でまあいいやということにしている。何となく勢いで盛っていったら横幅がかなり付いてしまった。段差より前の部分が左右合わせて1cmちょっと太くなっているが、本物のM24のストックは見た目ほど太くなく、同じ部分は左右合わせて6mmくらいしか太くならない。まあ、こちらはあくまでも「タクティカルライフル風のAPS2」なので、これでイイヤということにした。
 肉盛りしたお陰で、タダでさえ重いのにますます重くなった。道東担当氏あたりには「軽いじゃないですか」と言われそうだが。


こんな感じで出来上がり





 写真では昼間のゲーム用に道東担当氏が付けてくれた桑田製サイレンサーが付いているが、夜戦時にはトレーサーに交換している。どちらにしてもフロントがさらに重くなり長くなるので本当は付けたくないのだが・・・夜戦はトレーサー必携だし、そもそもサイレンサーの類を外すと、アウターから6cmほどインナーが飛び出すので致し方ない。
 また、スタイル的には無い方が格好良いのだが、敢えてスリングスィベルを取り付けた。重いのでタクティカルスリング無しでの運用は体格が貧相な私には出来ないから(w
 マガジンは故障中のものが付いてきたので、修理&改造して48連にした。おそらくコレ1本で夜戦1回分は完全にもつはず。壊れたり無くしたりしたときのために予備マグも2本中古で購入したが、まず使わないだろう。
 スコープは失業していたS2Sの3-9X40FFを載せておいた。本当はダットの方が夜戦では実用的なのだが、まあ暫くは雰囲気重視ってことで・・・
 実戦に投入した感触はなかなか良い感じ。静かだし、遠距離もしっかり獲れます(^^)v。重さと大きさには閉口するが、ゲット率はすこぶる良い。特に30m超を狙うときには撃ってる本人が驚くほどの弾の伸びを見せる。チャンバーパッキンの違いからVショートより温度変化の影響が少ないような気がする。今度真面目にグルーピング計ってみる予定。

   ここでちょこっと今回の改造をしてみての感想など。APSユーザーから見たVSR評は良く見受けるので、逆の立場、VSRユーザーから見たAPS2評といったところか。ボルトライフルとしてはVSR以前にサンプロを愛用していたが、アレを引き合いに出すのはちょっと酷なので・・・
 まず、全体の設計は非常に良く出来ていると思う。太古のSS9000でエアガンの記憶が停まってしまい、その後一気に電動時代へとワープしたサバゲ出戻り世代の視点で見ると、発売開始時期を考慮すれば実に画期的なトイガンであったと思われる。特に金属部品の使い方は、当時のエアガン=銀玉に毛が生えた程度のオモチャの鉄砲という世界観を一気にひっくり返したのではないか。亜鉛合金製のがっしりしたレシーバーはプラとは一線を画した高級感を与え、精度向上や消音に大きく貢献している。また、レシーバーとアウターのねじ込み部分もVSRに比べて数段しっかりした造りになっており、アウターの着脱に不安感はない。アウターのチャンバー収納部分より前の方は、スムーズな表面でバレルスペーサーの出し入れにも全く問題はない。ボルトハンドルとレシーバーのかみ合わせ部分もしっかりしておりハイパワー仕様にするのでなければノーマルで充分な強度と精度があるだろう。また、トリガーシステムもよく考えられたもので、亜鉛合金のノーマルパーツを使用していても軽くかつ切れのある設定をすることが出来る。この辺はつるっと落ちてしまうVSRのノーマルトリガーよりはるかに良い感触である。
 従って、図面通りに出来ていれば全く弄る余地がないはず・・・なのだが、そこはやはりマルゼンである。単なる個体差じゃないだろうなぁと思われる部分が随分見受けられる。アウターバレル前方の綺麗な仕上げに比べ、チャンバー固定部分から後端にかけての部分、シリンダーが前後に動く所の内面処理のいい加減さは目を覆いたくなる。今回チューンした個体のようにレシーバーとアウターのセンターがずれていると(そもそもずれていること自体問題だが)、ものの見事にアルミ製のノーマルシリンダーは削られてしまう。各部のネジ山も綺麗に切られているが、その垂直がずれているところが何カ所もある。また、マガジン固定パーツがチャンバー固定の役割を兼ねているのだが、動いてもらっては困る部分と頻繁に力が掛かる部分が一緒というのは設計としてマズイだろう。アウターおよびそれに内蔵されているインナー&チャンバーの固定がレシーバーとアウターのねじ込みに頼るというのも、ショートカービンならともかく長いライフルの造りとしては不安である。キチンと組まれていれば素晴らしい精度を発揮する構造なのだが、キチンと組むのがかなり難しい構造でもある。この辺が「一流のAPS2使い=それなりのガンスミス」という図式が出来上がった要因ではなかろうか。また、金属の使い方は実に良い感じなのに対し、各部プラ部品の材質選定は流石マルゼンと言ったところである。耐久性など全く考慮されていないと言っても過言ではない。この辺りがカスタムパーツメーカーが暴利をむさぼることになり「ボルトアクション=金が掛かる」というイメージを生んだ要因の一つではなかろうか。その点では、VSRは製造誤差を部品同士の組み合わせで、良く言えば上手く吸収、悪く言えばコッソリ誤魔化している。シリンダーとチャンバーのセンターが多少ずれていても、チャンバーラバーの厚みとサポートリングのクリアランスで簡単には分からないようになっている。つまり、素人が分解組み立てを繰り返しても「それなりの」レベルで噛み合うようにVSRは出来ているのだ。しかしながら、その許容値の大きさ故、VSRは一定レベル以上の精度を追求するのはAPS2以上にスキルと資金が求められるとも言える。
 まあそもそも、基本コンセプトが全く異なる銃なので、両者をあまり厳密に比較してもあまり意味はないかも知れない。VSRは価格の手ごろさが物語るようにガンガンとゲームやプリンキングで使う普及モデル、一方のAPS2はもともとは精密射撃に主眼をおいた高級ライフルである。無理に対抗させたりせずに、用途によって使い分けるのが一番ではなかろうか。

追記:その後、ウェスタン路線がメイン装備になった都合上、ドナドナされました〜。SFさん、ゴメン!


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