11b 水辺に想いを寄せて〈水草の世界〉
 
〈水草の扱い方〉
 水草はその茎,葉,根とも軟らかく傷つき易いものです。最初からのものはやむを得
ないとしても,自分の手に入ってからはできるだけ大切に扱って下さい。
 △水草を抜き取る場合
 茎や葉の一部を摘んで引き抜くようなことは禁物であり,必ず毛根部の土や砂を静か
に掘り起こして行います。
 △水草の移動
 採取したり,購入して運ぶ場合,ナイロン袋に入れるか,濡れ紙に包むなどの配慮を
行い,夏期は余りにも高温にならないよう(ナイロン袋に入れて日射の中に放置するよ
うなこと)に注意します。
 また冬期は凍らないように紙,ナイロン,鞄,ボール箱等に入れて静かに運ぶことが
大切です。
 △移植するときの注意
 移植は新旧の環境が余りにも違い過ぎることのないよう,水温,水質,光線,用土,
砂等に注意を払って下さい。またいくら安価な水草だからといって数本を1束にして植
え込んでしまうようなことや,茎を小石に結び付けて沈める等の乱暴な扱いは禁物です。
できれば植えようとする水に1日間位は静かに浮かべ,根茎を新環境に馴染みやすくし
ておきます。そして,砂を掘り,根を拡げて,側面からの光が入射する側に植物の葉の
多い方を向け,静かに砂をかけて植え込んでやる優しさが必要です。
 なお水草の茎の節々から根や新芽を出すことは,即ちこの部分に強い生命力を働かせ
ている訳です。そしてよく観察しますと,茎の腐敗進行は,必ずこの節の部分でくい止
めていることが分かります。そこで未だ毛根のない水草を植える場合,茎節の下を約5
o〜7o位から切除し,できれば1日か2日清澄な水に浮かべてから,切口を痛めない
ようそっと植え込むとよいでしょう。大方の場合元気に活着します。活着するまでの間
は余り激しいエアーレーションによる水の撹拌は差し控えます。施肥はよく根付いてか
ら行って下さい。
                                                                              
〈水草の増殖〉
 水草の増殖は,野外と室内とでは随分と相違があります。野外では空中葉をつくり,
花を咲かせて実を結び,それからこぼれ落ちて繁殖します。室内の,特に沈水型で生育
している水草では,このような繁殖は行われず,従って次のような方法で増殖を行うこ
とができます。
 △側枝を切り取って行う場合
 はじめ頂芽を摘み取り,茎節から側枝が出たものを約7p以上になってから側枝の節
の下から切り取り,挿し木をするように水中の砂に植えます(テンプルプラント,ハイ
グロ,ルドウイジア等の場合)。
 △茎を切断して行う場合
 側枝を出している茎を側枝を残して上部を切り取って独立させます。
 △横倒しの茎を切断する場合
 長い茎を横倒しに植え,各節から芽を出し枝となったものを横倒しの茎の節と節との
間を切断して独立させます(ハングロ等)。
 △葉柄の付け根をとる場合
 成葉の葉柄の付け根を茎から取り外し,明るい光の中で発芽させます。その後母葉の
養分を吸収して成長した個体を独立させます(ウイステリア,ハイグロフィラ,テンプ
ルプラント等の葉が可能です)。
 △ランナーによる場合
 アマゾンソードのように砂や土の上にランナー(繁殖茎)を伸ばしていくものの場合,
各節に生じた新葉が充分に根を出し,活着の用意の整った頃,ツルを痛めないよう親株
に近いものから順に取り外してやります。そうすればツルの先端側に残っている幼株の
その後の発育を妨げることはありません。
 またバリスネリアのように水中の土や砂の下,又はこれに平行してランナーを伸ばし,
次々と根を下ろしていくものは先端の子株を一つ又は二つ手前の活着を終えている株に
栄養源をゆだね,ツルを切断して独立させてもよいです。
 △株分けの場合
 クリプトコリネの仲間のように,子株を親株の側面に付ける場合,株分けは子株が少
なくとも親株の1/2以上の大きさになってから行う方がよいでしょう。
 △実生の場合
 室内の場合でも条件さえ備われば,開花結実して実生による発生をみることがありま
す。アポノゲトン(レースプラントを含みます)がその例です。この場合,できるだけ
親株の生育する同一の水槽か,又は同一水質中で発芽させる方が好成績が得られるよう
です。
                                                                              
〈水草の肥料〉
 「水草には魚の排泄物などがありますので,改めて肥料は不要です」という人がいま
すが,これは間違いです。やはり積極的に肥料を施さなければ,植物の葉が小さくなっ
たり,葉色も退色を見せます。特に現今のように優秀な上部フィルターを使用する場合,
そのような現象が起こりやすいです。ところが水草のみを栽培目的とする場合を除き,
大抵の場合,魚や他の水棲生物と同一水槽内で栽培していますので,一般の植木に与え
るような化学肥料は施すことができません。肥料のなかには生物に有害なものも多いか
らです。そこで安全で手近な肥料としては次のようなものがあります。
 △身欠きニシン,煮干(ダシジャコ)
 これを2p角くらいに切り,水草の根がよく活着した頃を見計らって茎の近くに静か
に埋めます(60p水槽ならば2〜3個が限度です)。
 △牛肉の脂肪
 これも小指の先程に切り取り,身欠きニシンの場合と同じ用い方で施します。
 △水棲生物に無害な人工肥料
 最近よく研究された,水棲生物に無害な肥料を配合したものが市販されていますので,
関係販売店でよく尋ねて購入使用されるのが良いでしょう。
 
                       参考 「水草の世界」緑書房発行
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