10a 森林の土を掌に〈土壌動物〉
〈土壌動物調査法〉
△大形土壌動物
体長2o以上の無脊椎動物を大形土壌動物と呼びますが,トビムシとダニは2o以上
でも含めない場合が多いです。
・方形枠法
25,50,又は100pの方形枠内の土を掘りあげてビニルシートの上に広げ,土を少し
ずつ崩して肉眼で見える大きさの虫をピンセット又は吸虫管で拾います。掘る深さは有
効土層の厚い土壌では30〜50p,薄い土壌では5〜10pとします。一つの対象林分当た
り数個〜数十個,平均的な林床状態のところを選定します。この方法は土壌環境を完全
に破壊することとなりますので,問題があるとされています。
・単位時間拾い取り法
吸虫管,ピンセット及び移植ごてを持って調査林分内を歩き,一定時間(20〜60分)
内に可能な限り多数の土壌動物を採集します。この方法は眼につきやすく,個体数の多
い種類に片寄って採集されること,及び面積当たりの生息数に換算できないなどの欠点
がありますが,短時間で調査林内に優占する大形土壌動物の見当をつけるには有効です。
・重量の測定
採集したものを80%アルコール又は5%ホルマリン液で保存し,湿重量は濾紙で保存
液を吸い取らせた後に,乾重量は80〜100℃で一昼夜乾燥後に測定します。
△土壌小形節足動物
体長0.2〜2oで主としてツルグレン装置によって採集される節足動物を土壌小形節
足動物と呼びます。林内の数地点から土壌層位別に採集します。
ツルグレン装置は底が2oの網目になっている円筒に試料(100ml)を入れ,上から
熱を加えて乾燥し,下方へ移動した虫をロートで集める仕組みになっています。弱った
虫や卵は抽出されません。時間は試料が完全に乾燥するまでとし,普通24時間とします。
△土壌小形湿性動物
体長0.2〜2oで,土壌水中又は水に接して生活している線虫やヒルミミズ,ソコミ
ジンコ,クマムシなどを土壌小形湿性動物と呼びます。これらの動物はすべてベールマ
ン法で捕らえられますが,線虫はふるいわけ法と併用し,ヒメミミズはオコーナー法で
採集することが多いです。
・ベールマン法
直径10〜15pのロートの端にゴム管をつないでピンチコックでとめ,ロートに満たし
た水の中に紙などに包んだ試料を沈め,室温で24〜48時間静置します。紙の目を通った
虫を抽出しますが,運動の不活発なものや非移動性のものは抽出されません。
・オコーナー法
基本的にはベールマン法と同じですが,上方から熱を加えて3時間で抽出を完了しま
す。運動性の大きいヒメミミズの抽出に適しています。
・ふるいわけ法
線虫と土壌の比重の差を利用した方法で,ボールに土壌試料を入れ,水を強く注いで
かき立て,網目0.15o又は0.04oのふるいに捕らえられたものを検鏡します。
△微小土壌動物
原生動物やワムシなど,体長0.2o以下で顕微鏡下でなければその存在すら確認でき
ないような動物のことを微小土壌動物と呼びます。
微小土壌動物の個体数を数える場合,土壌抽出液や乾草浸出液を寒天で固めて,0.5g
の試料を加えて数週間培養後に検鏡する方法などがあります。
△哺乳動物
ネズミ,モグラなどの哺乳動物は調査地内に一定間隔で,ハムやピーナツバターなど
を餌としたわなをかけて個体数を推定します。このほか,密度の比較的大小の見当をつ
けるために,糞,かじり跡,足跡,なき声,目撃頻度,餌の消費量などの生息証拠を使
うこともあります。
△土壌動物の野外調査計画
目的によって調査の内容を変える必要があります。土壌動物を環境悪化の指標,種々
の薬剤散布や施肥の効果判定の場合は,対象とする動物の種類を限定し,しかもその種
類が最も増加する時期に,いちばん多くいそうなところについて調査し,比較する方が
いいでしょう。
土壌動物が土壌に与える影響に主眼をおく場合は,土壌動物の調査と平行して調査地
点の土壌やA0層の堆積量,及び年間の落葉落枝量も調査しておく必要があります。
参考 「森林土壌の調べ方とその性質」林野弘済会発行
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