04 森林の土を掌に〈土壌の調べ方 その1〉
森林の土を掌に〈野外における土壌及び生成環境の調べ方 その1〉
〈はじめに〉
山を歩いていますと,足元の土壌がしまっていて堅い感じのするところや,湿ってい
て軟らかい感じのするところ,あるいは礫レキがゴロゴロしているところや,落葉のじゅ
うたんで厚く覆われているところなど,場所によって土壌の様子がいろいろと異なり,
また,その色も赤味や黄色味の強いものから,褐色のもの,あるいは黒色のものまで場
所によっていろいろと異なるなど,山にはいろいろな種類の土壌が分布していることを
うかがい知ることができます。
これらの土壌がどのような材料から,どのような過程を経て生成され,そして現在ど
のような特徴や性質を持ち,またどのような分布をしているかなど,土壌の表面だけで
なくその内部についても詳しく調べる必要があります。
このため現地で孔を掘り(この孔を試孔といい,その孔の位置を試孔点といいます),
その山側の断面をきれいに整え(これを土壌断面といいます),そこに見られるいろい
ろな形態的特徴を詳細に調べるとともに,必要に応じてその土壌断面から試料を採取し,
実験室に持ち帰り,いろいろな角度から検討を加えることが行われます。
また野外調査にあたっては,付帯調査として土壌の生成に関連の深い気候,地形,地
質及び植生なとについても調査します。
本章では,農林水産省林野庁森林総合研究所において行われている方法に基づいて,
野外において試孔を掘り,土壌断面の形態的特徴を調べ,土壌研究の”原点”ともいう
べき土壌の調べ方について記載します。
〈土壌断面のつくり方〉
△試孔点の選び方
ある一定の調査区域内において,土壌の種類ごとのそれぞれの特徴がよく備わってい
る標準断面を持っている試孔,またそれらの土壌の広がりを調べるためにA層とB層が
観察できる程度のいくつかの簡易試孔も必要です。
△試孔の掘り方
孔を掘る位置が決まりましたら地表の低木やササなどをナタなどで刈払い,観察用の
土壌断面をつくる予定線を斜面の方向と直角になるように設定し,その線から約1m下
がったところから掘り始めます。まず断面予定線の手前の部分の表層部を鍬でかき取り,
次に徐々に前進しながら掘り進み,土壌断面予定線のところでは横幅約1m,深さ約1m
の垂直な観察用断面ができるようにします。その際,断面予定線より山側の部分を鍬で
ひっかいたり,足で踏みつけることのないようにしましょう。
・
・
・
・ |
・ |
面 ・ |
・ 観|
斜 ・ 察|1m
・ 断|
・ 面|
・ |
・ |
・――――――――――
・ 1m
・
掘り上げた土は,調査後は埋め戻しておきましょう。
△断面の整え方
素掘りが終わりましたら,コテ,スコップ,せん定バサミなどで断面の表面を上から
下に向かってきれいに整えます。
表層部の落枝落葉などがあるところは手で軽く押さえながら切り揃えます。礫などは
できるだけ断面に残し,根も断面から0.5pぐらい残して切ります。
断面全体をやや手前に傾斜させて仕上げますと断面が明るくなり,観察や写真撮影な
どに便利です。
△断面の撮影及び写生のし方
10p間隔に色分けしてある折尺を断面左側に立て掛け,直射日光を避けて,ストロボ
撮影します。
スケッチは,断面最上部に別の折尺を水平に置いて座標軸の要領で,A0層,根,礫,
土壌動物の穴,斑紋,割れ目,層界など断面内に見られるいろいろな形態的特徴を断面
記載用紙の方眼上に落としていきます。
〈土壌断面の調べ方〉
△層位の種類と区分
土壌断面層位の模式図
L -------- 落葉層
A0 F -------- 植物組織を認める有機物層
H -------- 植物組織を認めない有機物層
A A1 -------- 腐植の多い鉱質土壌層
A2 -------- 腐植のやや少ない鉱質土壌層
B B1 -------- 腐植の少ない鉱質土壌層
B2 -------- 〃
C -------- 母材層
-------- 基岩
※ AとBは,土壌生成で発達した層です。
[次へ進んで下さい]