08 高山植物花旅ガイド1
高山植物花旅ガイド1
参考:山と渓谷社発行「日本の高山植物」
〈礼文島〉
礼文島は「花の浮島」と呼ばれるほど,全島至るところで花見ができます。東海岸の
車道沿いでも花を楽しめますが,歩いてたっぷり楽しめるのは南部の桃岩の周辺と西海
岸です。
桃岩展望台へは香深カブカから車道左手の山腹を歩いて30分程です。標高250mの草原台
地から利尻山を望む風景はポスターなどでよく目にします。ここから右手に海を見なが
ら,灯台を経て知床へ出る歩道が続いています。このコースで見られる花は,レブンコ
ザクラ,レブンソウ,ミヤマオダマキ,リシリソウ,レブンキンバイ,チシマゲンゲ,
エゾウスユキソウ,シコタンソウ,チシマフウロ,カラフトハナシノブ,チシマゼキシ
ョウ,エゾノハクサンイチゲ,ハクサンチドリ,チシマリンドウなどで,礼文島の主要
な植物が殆ど揃っていますが,礼文島特産のレブンアツモリソウは少なくなってしまい
ました。知床には民宿もあり,また香深へのバスの便もあります。
西海岸にはスコトン岬から元地までのコースがあり,10時間程かかりますが,花を見
て歩きますと5割増し程時間がかかりますので,宿の車などで鉄府か西上泊まで送って
もらうとよいでしょう。このコースには桃岩周辺で見られる花のほか,アナマスミレ,
トチナイソウ,チシママンテマ,フタナミソウ,レブンタカネツメクサなどがあります。
鉄府付近にはレブンアツモリソウが多いです。
〈利尻山〉
同じ離島でありながら,海岸近くから高山植物が生えている礼文島とは対称的に,利
尻島では山の上部でしか高山植物は見られません。
登山道は鴛泊オシドマリ,沓形クツガタの2コースがあり,鬼脇コースは通行禁止です。此処
では鴛泊コースを紹介します。
鴛泊港から針葉樹林に囲まれた3合目の北麓野営場まで車が入ります。10分程歩きま
すと唯一の水場甘露泉カンロセンで,此処から登山道が始まります。8合目までは単調な道で
すが,エゾイチヤクソウやミヤケラン,ホソバノヨロイグサなどが見られます。8合目
近くになりますと岩場があり,イワギキョウが多くなります。8合目は長官山とも呼ば
れ,避難小屋があります。9合目までの尾根沿いにはリシリブシ,シコタンハコベ,マ
ルバギシギシ,サマニヨモギ,リシリトウウチソウなどが見られ,特産のリシリヒナゲ
シは9合目近くの火山礫地に咲いています。9合目から頂上までは高山植物のお花畑が
続く核心部です。ボタンキンバイ,チシマイワブキ,リシリリンドウ,チシマリンドウ,
リシリゲンゲ,リシリオウギ,ツクモグサ,フタマタタンポポ,エゾツツジ,シロサマ
ニヨモギ,ミヤマオグルマなどが咲き乱れています。しかし,右は崩壊地,左は草付き
の急斜面なので要注意です。
〈増毛山〉
この山域では,暑寒別岳の山頂付近のお花畑と雨竜沼の高層湿原を彩る花が魅力です。
雨竜町から登山口の南暑寒荘まではタクシーを利用します。ペンケペタン川沿いでは
エゾワサビ,エゾノチャルメルソウなどが見られます。雨竜沼湿原に出ますと,様々な
湿原の植物の世界です。池塘にはオゼコウホネ,エゾヒツジグサ,ミツガシワ,木道の
周囲にはワタスゲ,エゾゼンテイカ,タチギボウシ,ヒオウギアヤメが群落を作って登
山者を楽しませてくれます。湿原の端から南暑寒岳へは1時間30分です。チシマザサと
ダケカンバの単調な道ですが,オクエゾサイシン,ウスバスミレ,コミヤマカタバミな
どが見られます。南暑寒岳の山頂から暑寒別岳までは2時間です。尾根道の北側は残雪
が多く,残雪の傍らにはイワイチョウが大群落を作り,フギレオオバキスミレの小さな
群落もあります。暑寒別岳への急登崩壊地にはキクバクワガタが多く,山頂部の台地は
標高の低い割りには快適なお花畑となっています。下山は増毛コースが近くて楽ですが,
湿原がないだけ植生は単調です。
〈大雪山〉
広大な大雪山には幾つもの登山コースがあります。此処では一寸贅沢な花の縦走路を
設定してみました。国立公園の中心部沼ノ原から入山し,トムラウシ山を往復した後北
上して,白雲岳経由で層雲峡か旭岳温泉に下山するコースです。日数に応じて,トムラ
ウシ温泉,天人峡温泉,大雪高原温泉,銀泉台へ途中下山も出来ます。
層雲峡からタクシーで沼ノ原登山口クチャンベツ川まで行きます。林道入口にはゲー
トがありますので,必ず大雪営林署から入林許可を受けて下さい。林道終点が登山口で
す。歩き始めて直ぐに二つの川を渡ります。後は10分程の急な登りが一個所ある位で,
あっけなく沼ノ原に出ます。沼ノ原は広大な高層湿原で,トムラウシ山や東大雪の山々
の眺めがいいし,ナガバノモウセンゴケ,ツルコケモモ,ミツガシワ,ホロムイソウ,
スゲ類などの湿原植物が木道を歩きながら楽しめます。
沼ノ原の大沼を過ぎますと,道はアカエゾマツの森に入っていきます。30分程でこの
森は尽き,急な登りが始まりますが,直ぐに緩い傾斜に変わり,やがて冷たい雪解け水
の流れる小川沿いの道になります。ところどころに雪田跡のお花畑が展開し,ツガザク
ラの仲間やチングルマ,キバナシャクナゲなどがカーペット状に広がっています。更に
登りますとエゾノハクサンイチゲ,チシマノキンバイソウ,ホソバウルップソウ,エゾ
ノコザクラなどが群落をつくる五色ガ原のお花畑に出ます。
登り詰めたところが五色岳,右に忠別岳への道を分け,西の化雲カウン岳へ向かいます。
ハイマツ林を抜けますと再び広いお花畑が広がります。岩塔のある化雲岳は天人峡とト
ムラウシ山の分岐でもあります。トムラウシ山に向かい,直ぐの二股を左に入りますと
ヒサゴ沼の避難小屋です。トムラウシ山往復は4時間程です。この間,特に珍しい花は
ありませんが,岩と水と植物が織りなすロックガーデンが落ち着いた佇タタズまいを見せ,
日本庭園と呼ばれているところもあります。大きな北沼を過ぎますと山頂は近いです。
トムラウシ山から再び五色岳まで戻り,北上します。五色岳を下り切りますと広い礫
地で,コマクサの見られるところです。右に忠別小屋への道を分けます。忠別岳は登り
応えのある山です。頂上付近の草原にはナガハキタアザミやエゾウサギギクが群落を作
っています。北へ下って,ワタスゲの揺れる忠別沼に出ます。次の小高い丘にはタカネ
オミナエシが多く,緩い下りの礫地ではタカネシオガマやコマクサが散見できます。下
り切れば湿地ですが,少し行くとコマクサの群生地があります。ハイマツ林を抜けます
とカラフトイチヤクソウの多い草原です。エゾコザクラの群落に気をよくしているうち
にササ原となり,やがて表大雪の大展望が目の前に広がります。高根ガ原です。
高根ガ原の右手崖下には沼が点在し,広大な礫地にはコマクサ,シロサマニヨモギ,
チシマツガザクラ,エゾオヤマノエンドウ,エゾハハコヨモギ,チシマゲンゲ,リシリ
リンドウなどが多いです。1時間程でホソバウルップソウ,キバナシオガマが咲く大雪
高原温泉への分岐となります。更に北上してヤンベタップ川源頭のお花畑を過ぎますと
白雲岳避難小屋です。この辺りも絶好の花見どころです。この上の白雲分岐は銀泉台,
白雲岳,北海岳への分岐で,チシマクモマグサの多い白雲岳の山腹を巻きますと,北海
岳への広い礫地の尾根に出ます。展望のいい北海岳から黒岳経由で層雲峡へ向かいます。
黒岳の下りは北海沢や赤石川出合のお花畑が楽しいです。北海岳から西へ向かう道は火
山礫地です。間宮岳で北にカーブして,中岳分岐から広い裾合平へ下りますと,ハクサ
ンボウフウやチングルマの大群落が広がります。裾合平分岐からロープウェイの姿見駅
へ下山します。余裕がありましたら愛山渓へ向かうと沼ノ平の湿原を楽しめます。
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