02a 高山植物の生い立ちと分布
[参考]
△環境による植物の形態変化
ボニエールによるタンポポの1種を使った有名な実験があります。一株のタンポポを
二つに分け,一方を高山に移植し,もう一方を平地で栽培したところ,高山のタンポポ
の地下部は,平地のものの2倍以上の長さになり,反対に地上部は平地のもののほぼ
1/6にしかなりませんでした。
木本植物ではアホーネンの研究があります。彼女の研究によりますと,同系統の湿原
に生えるクロマメノキの場合,日当たりのよいところでは日陰地より葉が厚く,気孔の
数も多く,また日照条件がほぼ同程度でも,湿地のコケモモに比べて,ヒース内のコケ
モモの方が葉の表面のクチクラ層が厚いことも分かりました。
このように植物は,それぞれの環境に適応した形態変化を起こします。厳しい環境に
生きる高山植物の一般的な形態の特徴は次のようになります。
@根が長く太い
高山帯の砂礫地に生えるタンポポ属,オヤマノエンドウ属,コマクサなどは乾燥,砂
や礫の移動など,厳しい環境に耐えられるよう,根が長く,太くなります。
A葉が毛で被われる
ウラジロキンバイ,チョウノスケソウ,ユキバヒゴタイ,ユキバトウヒレンなどは葉
の裏面が白い綿毛で被われ,過剰な蒸散から身を守ります。
B葉の縁が裏面に巻き込む
ツガザクラ属やミネズオウ属などは葉の縁が裏面に巻き込み,細い溝が残るだけです
が,ガンコウラン属では完全な筒状になっています。ツガザクラ属の葉の縁は生長する
につれて巻き込む訳ではなく,最初から巻き込んだ形で発生します。これも毛の場合と
同様,蒸散が過度になるのを防ぐためと考えられます。
C葉が多肉になる
イワベンケイ属やキリンソウ属などは葉が多肉になって,乾燥に耐えます。
D葉の柵状組織が発達し,表面のクチクラ層が厚くなる
コケモモ,ツルコケモモ,キバナシャクナゲ,イワカガミなどがあります。
以上のほか,高山上の強い紫外線から身を守るため,サクラソウ属などのように,葉
にフラボンを含有する黄色や白色の粉状物があるものも多いです。
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