23 竹箆圏チクヒケンの人々と竹〈竹の諺コトワザ〉
 
 や行
                                                                              
 屋敷内に植えてある竹が絶えるとその家は亡ぶ:竹は直で神の依代ヨリシロになりますの
  で,特別視していいます。
 屋敷内の竹が繁茂すると,その家は栄える前兆である:東北地方でいわれています。
 屋敷に竹が生えると,馬鹿な子が生まれる:秋田でいわれています。
 薮医者が七味を調合するよう:手間どって,らちがあかないことです。
 薮医者の玄関:医術よりも,玄関に金をかけて立派にして,患者を引き寄せる喩です。
 薮で馬鍬マンガ:馬鍬とは牛馬に引かせて農地を地均しする道具です。馬鍬では薮を地
  均しできませんので,無理な道具を使うことなどの喩です。
 薮に黄金:薮などでは黄金は拾えませんので,棚からボタ餅と同じで甘いことを考え
  てはならないということです。
 薮に蛇なかれ,村にことなかれ:蛇は水辺の薮中に棲むので,薮には草を生やしては
  なりません。また村には事件があってはなりません(薮には危険がないように,村
  にも災いが起こらないように,との願いではないでしょうか。SYSOP)。
 薮に目:壁に耳の喩と同じく,悪口は必ず漏れるものです。
 薮に目くばせ:よそみをすること,やぶにらみのような目つきをすることです。
 薮に香のもの:日本武尊が東征の折,名古屋近郊の草カヤの社ヤシロで東征成就を祈願さ
  れました。この社は一面竹薮に包まれ,神前には土瓶が置かれ,キュウリ・ナスな
  どの初成りを供え,それで漬物が作られる習わしとなっていました。武尊をお迎え
  した村人は旅情をお慰めするために神前の瓶から漬物を出して献上しました。武尊
  は「竹薮に神物を見出した」と仰せられました。
   このカミノモノがコウノモノ(香の物),さらに香々,新香へと変遷したといわ
  れます。
   薮中の雑然としたようななかにも,ときに優れたものが見つかるという喩です。
 薮の頭にも理屈がつく:盗人にも三分の理に同じです。
 薮の外でも若竹育つ:親はなくても子は育つに同じです。
 薮の中で屁をひる:人のいないところで醜行悪行をすることをいいます。
 薮の中のウバラ:交わる友が悪いと,草薮中のバラが絡んできます。
 薮をいう:高知県では子供のいたずらごとをいいます。
 薮をたたく:長野県では無意味なことをいいます。
 薮をつついて蛇を出す:しないでもよいことをして,かえってまずいことになるとい
  うことです。
 山で食事をしたときに箸を折らないと足に竹が刺さる:宮城県でいいますが,事実で
  はないでしょう。
 山の竹は固く,平地は粘い:このことによって桶屋などは山林のものを好むといわれ
  ています。そこで京都の地方の人々は,平地に土入れして竹を固くするともいわれ
  ています。
 四の日に竹伐るな:四を死に通わせて,竹は四の日(4日,14日,24日)に伐ると絶
  えてしまうという伝説です。
                                                                              
ら行
                                                                              
 両岐竹は瑞竹なり(桂園竹譜):二又竹が生じるのは,好運上昇の兆なりといわれて
  います。日光東照宮,竹島神社などをはじめ,各地の神社などでこの竹を宝物にす
  る風習があります。
 両枝竹は豊作の兆:千葉県安房郡岩井村(富山町)の満能寺の境内の竹は,豊作の年
  には必ず対生のものが出るといいます。村人はこの竹の生ずるのを豊饒の兆として
  います。
 両枝竹を生ずると主を殺す(怡顔斉竹品):二又の竹ができると主人公が死ぬ前兆で
  ある,という迷信があります。
 良竹は生い出ずれば直なり,センダンは双葉より香し(曾我物語):良質の竹は初め
  から真直ぐで,センダン(日本には産しません)は小さいときから香がよいです。
                                                                              
わ行
                                                                              
 若竹が親竹より伸長すると台風がある:二年生以上の竹は枝葉を繁らせて重いので下
  垂しますが,筍の伸長した5〜6月の姿は薮中に突き出て高いです。この様を村の
  長老が知っていて,秋に台風がくるとまことしやかに結びつけたものでしょう。
                                                                              
                   参考 「竹類語彙」農業図書株式会社発行
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