プラナリア原色図説 (川勝正治)
Japanese Freshwater Planarians in Color (Dr. M. Kawakatsu). By Gen-yu SASAKI.

Last update: 2002/12/30
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(連絡先: 佐々木玄祐 gen-yu@mtc.biglobe.ne.jp)


このページは、日本の淡水生三岐腸類=ウズムシ綱ウズムシ目ウズムシ亜目 (Turbellaria: Tricladida: Paludicola)について、以下の文献から一部を引用してまとめたものです。原図の使用を許可され、原稿を校閲していただいた川勝博士に感謝いたします。

なお、原図は水彩画です。また、下表の右端に"-"を入れた8種類は、図版には含まれていません。移入種については当サイトの「水槽のプラナリア」情報 が参考になると思います。

  1. Kawakatsu, 1969. An illustrated list of Japanese freshwater planarians in color. Bull. Fuji Women's College, (7), Ser. II: 45-91 (+ pls. VII-VIII).
  2. 川勝正治, 1973. プラナリアの分類と生態(2). 動物と自然, 3(6): 11-16頁.
  3. 川勝正治, 1991. その他の無脊椎動物概説<ウズムシ(渦虫)類>. 環境庁編 日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック−. 233, 241, 249, 259頁.
  4. 川勝正治, 1998. 扁形動物門・ウズムシ綱(渦虫綱). 環境庁編 日本産野生生物目録 無脊椎動物編III: 19-22頁.

注意 Notice

プラナリアの分類では生殖器官の構造が決め手となります(固定標本にして連続切片を作り、顕微鏡で観察する:アマチュアには困難)。虫の形・大きさ・色などについてはかなり変化があるため、外見だけではなんとも言えない場合も多いようです。従って、これらの図はあくまでも目安にしかなりませんので、ご利用に当たっては注意してください。

図に描かれた標本の産地については、大部分省略しました。分布については、文献1のほか、下記の報文も参考になります。

日本産の虫のうち、Rhodax sp. (ブラジルウズムシ) だけは、他の虫とは別の低亜目 (Infraorder) "Cavernicola" に属します。この件については下記の論文を参照してください。

追加・訂正 Additions and Corrections

2002/12/30 追記: 川勝博士から、<亜科・科・属の新称追加(「日本産淡水生プラナリア類一覧」)と、表の三岐腸類の部分の訂正・追加(稿末)が望ましい>との連絡がありました。種類数の表については、下記の通りです。亜目を低亜目として扱う分類法もあります。(f.: 科, sf.: 亜科, g.: 属, sp./spp.: 種)

海生三岐腸亜目:2f. 2sf.6g. 7spp
淡水生三岐腸亜目: 3f. 2sf. 8g. 27spp.
陸生三岐腸亜目:3f. 3sf.7g. 15spp. ( +12 "unidentifiable" spp.)
地下水生三岐腸亜目:1f.1g. 1sp.


日本産淡水生プラナリア類一覧 Japnese freshwater planarians: Taxonomy

("Turbellaria": Seriata: Tricladida) : 主に文献4による

Paludicola Hallez, 1892 淡水生三岐腸低亜目
Dugesiidae Ball, 1974 サンカクアタマウズムシ科(*)
Dugesia Girard, 1850 ナミウズムシ属
Dugesia japonica Ichikawa et Kawakatsu, 1964ナミウズムシ1a, b.
D. ryukyuensis Kawakatsu, 1976リュウキュウナミウズムシ-
(R)D. izuensis Kato, 1943イズウズムシ2.
(ET)D. austroasiatica Kawakatsu, 1985トウナンアジアウズムシ(*) -
Girardia Ball, 1974 アメリカナミウズムシ属(**)
(ET)Girardia tigrina (Girard, 1850)アメリカナミウズムシ-
Planariidae Stimpson, 1857 ヒラタウズムシ科(*)
Phagocata Leidy, 1847 ホソウズムシ属
Phagocata vivida (Ijima et Kaburaki, 1916) ミヤマウズムシ3.
Ph. kawakatsui Okugawa, 1956コガタウズムシ4.
Ph. teshirogii Ichikawa et Kawakatsu, 1962トウホクコガタウズムシ5.
Ph. iwamai Ichikawa et Kawakatsu, 1962エゾコガタウズムシ6.
(R)Ph. papillifera (Ijima et Kaburaki, 1916) カントウイドウズムシ7.
Ph. albata Ichikawa et Kawakatsu, 1962ソウヤイドウズムシ8.
Ph. tenella Ichikawa et Kawakatsu, 1963ヒダカホソウズムシ9.
Ph. suginoi Kawakatsu, 1974ホクリクホソウズムシ-
Polycelis Ehrenberg, 1831 カズメウズムシ属
Polycelis (Polycelis) sapporo (Ijima et Kaburaki, 1916) キタシロカズメウズムシ12.
Seidlia Zabusov, 1911 キタカズメウズムシ属(**)
Seidlia auriculata (Ijima et Kaburaki, 1916)カズメウズムシ10.
S. schmidti (Zabusov, 1916)キタカズメウズムシ11.
S. akkeshi (Ichikawa et Kawakatsu, 1963)アッケシカズメウズムシ13.
Dendrocoelidae Hallez, 1892 オオウズムシ科(*)
Kenkiinae Hyman, 1937 ホラアナウズムシ亜科(*)
Sphalloplana de Beauchamp, 1931 ホラアナウズムシ属
Sphalloplana sp.1ヤツガダケイズミウズムシ14.
Sphalloplana sp.2ヒメジメナシウズムシ15a, b.
Dendrocoelinae Hallez, 1892 オオウズムシ亜科(*)
Bdellocephala de Man, 1875 オオウズムシ属
Bdellocephala annandalei Ijima et Kaburaki, 1916ビワオオウズムシ16.
B. brunnea Ijima et Kaburaki, 1916イズミオオウズムシ17.
B. borealis Kawakatsu, 1978リシリオオウズムシ-
Dendrocoelopsis Kenk, 1930 キタオオウズムシ属
Dendrocoelopsis ezensis Ichikawa et Okugawa, 1958 エゾウズムシ18.
Den. lactea Ichikawa et Okugawa, 1958キタシロウズムシ19.
Den. ichikawai Kawakatsu, 1977リシリウズムシ-
(R)    Den. kishidai Kawakatsu, 1978キョウトウズムシ   -

Cavernicola Sluys, 1990 地下水性三岐腸低亜目(**)
Dimarcusidae Mitchell et Kawakatsu, 1972 メキシコチカスイウズムシ科(**)
Rhodax Marcus, 1946 ブラジルウズムシ属(**)
(ET)Rhodax? sp.ブラジルウズムシ(*)-

注) (R): 文献3で希少種, (ET):移入種, (*)文献4で新称, 番号は掲載した文献1の図に対応, (**)本Webページで新称。



Plate VII

文献1: Plate VII

1a. The Matsumoto stock (sexual race). 1b. The Kyûshû stock (asexual race).
共にナミウズムシ Dugesia japonica

Plate VIII

文献1: Plate VIII

15a. The Himeji stock. 15b. Adhesive organ. 共にヒメジメナシウズムシ Sphalloplana sp. 2


参考 Notes

日本産の淡水生と陸生のウズムシ綱 ("Turbellaria")の目・亜目と種類数

以上のリストは「狭い意味のプラナリア=淡水生の三岐腸類」に限ったものです。プラナリアの属する扁形動物門には、寄生生活をする吸虫や条虫などもいますが、それらを除いたウズムシ綱だけ見ても色々なものがいます。文献4は、

「国のレッドデータブック(環境庁編 日本の絶滅のおそれのある野生生物 無脊椎動物編, 1991年8月刊行)の基礎資料としてまとめられたもので、1998年現在の修正が加えてある。淡水生と陸生の群だけを対象として、海生の群は含まれていない。例外として、カブトガニは産卵のために砂浜へ集まるので、その外部寄生者であるカブトガニウズムシは含まれている」

…ということです。この文献4でリストアップされている各分類群と科・種(亜種含む)の数を以下に示しました。

CATENULIDA(=NOTANDROPORA)カテヌラ目(小鎖状目)2f. 6spp.
MACROSTOMIDA(=OPISTHANDROPORA)ヒメウズムシ目(多食目)2f. 6spp.
LECITHOEPITHELIATAヒラウズムシ目(卵黄皮目)1f. 2spp.
Prorhynchidaプロリンクス亜目(原有吻亜目)1f. 2spp.
PROLECITHOPHORA(=HOLOCOELA;=CUMULATA)プラギオストームム目(原卵黄目)1f. 1sp.
PROSERIATA(=SERIATA)ヒメヒラウズムシ目(原順列目)1f. 1sp.
TRICLADIDAウズムシ目(三岐腸目)7f. 57spp.
Maricola(=Retrobursalia)ウミウズムシ亜目(海生三岐腸亜目)1f. 5spp.
Paludicola(=Probursalia)ウズムシ亜目(淡水生三岐腸亜目)3f. 27spp.
Terricolaコウガイビル亜目(陸生三岐腸亜目)3f. 25spp.
NEORHABDOCOELAヤドリウズムシ目(新棒腸目)4f. 20spp.
Dalyellioidaダリエリア亜目(たる咽頭亜目)1f. 10spp.
Typhloplanoidaティフロプラーナ亜目(無吻亜目)1f. 8spp.
Kalyptorhynchiaカリプトリンクス亜目(隠吻亜目)2f. 2spp.
TEMNOCEPHALIDAテムノケファーラ目(切頭目)2f. 3spp.

計: 8目, 20科, 96種類 (93種, 3亜種).

なお、川勝博士のお話では、ウズムシ綱そのものが“単系統群ではない”ということも明らかになってきて、この表とは多少異なる分類体系も使用されているということです。

三岐腸類の種類数については、本Webページの「訂正・追加」を参照してください。


公開: 2002/12/30 (初版: 2001/02/15, 改訂: 2001/04/22)