私の好きな島尾敏雄の本


1 奄美の作家としての島尾 

 島尾敏雄は東北地方の出身ということになっているが,奄美大島なくしては彼の文学はありえなかったのではないかと考えている。その意味では島尾は奄美の作家である。私が最初に島尾の文章に出会ったのは,15才の時であった。現代文解釈の参考書に彼の文「出発は遂に訪れず」から出題引用されていたからである。戦争というものを随分内面からみているなという感じであった。 大岡昇平の「俘虜記」とともに日本の戦争文学の2大傑作といわれているが,どちらも一発の弾丸も撃たない戦争文学である。 島尾の作品は戦争をあつかったものばかりではないのだが,その原点は奄美大島(正確には加計呂間島)での不発に終わった特攻体験であると考える。 強烈な一度限りの体験をいろいろな角度からみなおしているものともいえるし,東欧紀行にしてもどこかに贖罪意識のようなものがあるのではないかと感じた。 少しずつ島尾の本を読むようになったが,その真意はまだまだ理解してはいない。

 

2 私の読んだ島尾敏雄の本

そのうち,読後感想をまとめたいと思っています。 下記のものは,いくつもの古本屋を回って少しずつ集めたものです。

「出発は遂に訪れず」新潮文庫 昭和48年

「出孤島記」新潮文庫 昭和51年

「魚雷艇学生」新潮文庫 平成元年

「はまべのうた/ロング・ロング・アゴウ」講談社文芸文庫 1992年

「硝子障子のシルエット」講談社文芸文庫 1989年

「死の刺」新潮文庫 昭和56年

「日の移ろい」島尾敏雄全集第10巻 晶文社 1981年

「続 日の移ろい」中央公論社 昭和61年

「特攻体験と戦後」(吉田満との対談)中央公論社 昭和56年

「夢のかげを求めて 東欧紀行」河出書房新社 1975年

「名瀬だより」農山漁村文化協会 昭和52年

「新編・琉球弧の視点から」朝日新聞社 1992年

「西郷隆盛と南の島々」(橋川文三との対談) 『伝統と現代』昭和52年8月臨時増刊号所収

「加計呂間島敗戦日記」『新潮』1997年9月号

「島尾敏雄詩集」深夜叢書社 1987年

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