クライナー教授の加計呂麻島見聞記



多少とも民俗学をかじった人でヨーゼフ・クライナーを知らない人はいないでしょう。

かれはウイーン大学在学中に昭和30年代の加計呂麻島(奄美大島の南部にある島です)にやってきて、奄美の神様や日本文化の古層について研究しました。
その回顧的要約によると
1.稲作文化が中国南部から伝わってくるより前に芋(サトイモ)の文化があった。稲作文化(例えばアラホバナ)を象徴する祭りのほかに芋作文化を象徴する祭り(例えばフユウウンメ)もあるし、稲作の道具(例えばカマ、エブリ)のほかに芋作の道具(例えばヘラ、ティル)が多い。
2.耕作の季節に山から田んぼにやってくる田の神、収穫後には山に帰っていく山の神といった「来訪神」(奄美では海の向こうのネリヤカナヤからやってきて海の向こうに帰る)のほかに、「村を一年中守ってくれる」と人々が考えている神様(奄美ではシマタテガミなどと呼ばれる)としての「常在神」があった。  というようなことを発見したそうです。
 このほか、柳田国男の『海南小記』という本は日本の近現代の文学の傑作であると同時に日本民俗学の原点であるといっています。

参考文献:ヨーゼフ・クライナー「昭和30年代の加計呂麻島の見聞について」
                 『瀬戸内町立図書館・郷土館紀要約 創刊号』(1998年3月)



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