★トキワ署ピカピカ日記★ |
〜序章 インターネットでピカピカ!?〜
ポケモンリーグ開催地としても知られるセキエイ高原。ポケモントレーナーなら誰もが一度は目指すポケモンリーグ。だが、ポケモントレーナーの誰もがそこにたどり着けるというものではない。
そんなストレスからか、チャンピオンロードが地下を通るセキエイの草原を我が物顔で暴走する車両が急速に増えてきている。もともとはポケモンリーグに到達できなかったトレーナーたちがせめてもの慰みに自分のポケモンとともに草原を訪ねるだけだったものが、エスカレートしてバイクや車といった乗り物を乗り回すようになり、今ではトレーナー志望でなくともセキエイを暴走するのが暴走族の1つのステイタスとなっていた。
そうした傾向に伴い、カントー地域の平和と安全を守るカントー警察署は各地に分署を設置し、こうした暴走ドライバーの取締りと、市民と野性ポケモンたちの安全を守る交通課の設置を各署に義務付けた。ことにセキエイへの公道をもつトキワではポケモントレーナーとしてもドライバーとしても一流の警官を交通課に配属するよう務めた。
そして時は流れ、トキワの交通課職員はカントーでも一流のドライビングテクニックを持つ警官たちが集うことで有名になったが、そうした事実が思わぬ事態を引き起こすことになった。ポケモントレーナーたちがポケモンリーグで勝利を手にすることを目指すように、過激なドライバーたちがトキワ署の交通課職員を超えることを目指すようになってしまった。すなわち、トキワシティ周辺における暴走車両の著しい増加である。それに伴い、トキワ所管轄内での犯罪発生件数も急速に大幅な増加を見せた。平和だったトキワシティはカントーきっての犯罪都市へと変貌を遂げつつあった。
こうした事態に対処すべくカントー警察ヤマブキ本署では本署の精鋭を続々とトキワに送り込んだ。だがトキワに一点集中した犯罪対策はカントー各地への犯罪者の分散と秩序の乱れを招き、様々な犯罪に対応すべく個性的な警官が各地で個性的な活躍を繰り広げるようになったのである。この物語はそんなご時世のトキワ署に勤務する警官たちの物語である。
「おはようございまーす。」
トキワ署の交通課オフィスに明るい声が響く。今年からトキワの交通課に勤務しているイエロー・デ・トキワグローブ巡査だ。
「おはよう、イエロー。」
同僚のイイヅカ・カスミがイエローに寄ってくる。彼女は水系ポケモンのエキスパートであるハナダジムのジムリーダーであるカスミの姪に当たる。彼女のように優秀なトレーナーになるようにとの願いを込めて名づけられたが、正義感が強い本人は昨今の社会に憤りを感じて警察官になってしまった。
「あれ、ブルーは?一緒じゃないの?」
イエローとコンビを組んでいるツジモト・ブルー巡査はトキワから程近いマサラタウンに住んでいる。彼女を迎えに行ってから出勤するのがイエローの毎朝の日課となっているのだ。
「ボクが迎えに行ったときにはもう出た後みたいでしたよ。」
「どうせまたレッドと飲み比べでもして二日酔いでうめいてるのよ。それより、こっち来て。」
カスミがイエローを引っ張ってパソコンのデスクに向かう。そこには既に出勤してきている交通課職員たちが集まっていた。
「何かあったんですか?」
「おおあり。」
人だかりの中で大和撫子風の美人がキーボードを叩いている。今年タマムシ署からこのトキワ署に移動になったアオイ・エリカ巡査だ。彼女がディスプレイに表示しているのはどうやらどこかのホームページのようだ。
「“今日のピカ”?何です、これ?」
今ディスプレイに表示されているのはヤマブキ本署から講習会の講師として出向してきているトーカイリン・レッド巡査長が猛然と自転車をとばして速度違反のバイクを追っている写真だった。
今日のピカというコーナーで、“ピカ度90ピカ 刑事さん自転車で暴走バイクを追う。かっこいいでちゅー!\(^∇^)/”とのコメントがついていた。
「相変わらずすごいパワーですね、レッド巡査長。」
「何を呑気なこと言ってるのよ、イエロー!これは大事件よ、私たち警察官が誰かに監視されている上に盗撮されて、しかもそれに気付かずにいたんだから!警察の信用形無しよ、これは由々しき事態だわ!!」
「はぁ・・あの、エリカさん。これ一体どういうホームページなんですか?」
一人熱弁を振るうカスミの勢いを逃れてイエローはエリカに尋ねた。
「私たちトキワ署の職員の行動をチェックし、一般公開しているものです。内容は・・まぁ、警察に好意的な方針のようですけれど、放置しておくべきではないでしょう。今は警察官の活躍を公開していますが、いつどんな情報が流れるか分かりませんもの。」
「そうですね。プロバイダーから契約者を聞き出すことはできないんですか?」
「今グリーンがやってくれています。でも、すぐに分かるかどうか・・」
そう言っているところにオーキド・グリーン警部補が渋い顔でやってくる。
「駄目だ、プライバシーに関わると言って口を割らない。」
「じゃあ、こっちのプライバシーはどうなるって言うのよー!警官にだって、プライバシーはあるでしょうが!!」
カスミがものすごい剣幕でまくし立てる。彼女も叔母と同じく水系ポケモンを専門とするが、本人の気性は水とは遠いようだ。
「俺に噛み付くな。文句があるなら自分でプロバイダーに問い合わせるんだな。」
グリーンはにべもなくカスミの抗議をはねつけると自分のデスクへと戻って行った。
「おーっす。」
“今日のピカ”の受賞者であるレッドがブルーを抱えて交通課のオフィスに入ってくる。カスミが予想したとおり、ブルーは夕べレッドと飲み比べをして二日酔いでへろへろになっていたのだった。
「もう、ブルーったら。こんなことばっかりしてると“島流し”にされるわよ。」
イエローと二人掛かりでレッドからブルーを引き取ったカスミは呆れたように言った。
「何よそれ〜・・」
二日酔いで頭が割れそうなほど頭痛がしていても、けなされれば決して黙ってはいない。それほどブルーは意地っ張り、かつプライドが高かった。
「オーキド警視正の閻魔帳よ。一度オーキド警視正に目をつけられた者はみんな島流しにされるのよ。あんた、とんでもないところに飛ばされちゃうわよ。私たちはカントー警察きっての一流警察官なんだから、自覚を持ちなさいよ。」
「それはないな。」
デスクで提出する報告書をチェックしているグリーンの声が飛んでくる。
「何がよ。」
「今じゃここが島だ。」
―― あんた一体何をやらかしたんだ ――
ただ一人を除いてその場に居合わせた者全員がそう思った。グリーンは一度ヤマブキ本署に配属になった後、このトキワ署に転属してきたのである。ただイエローだけがその場に流れた疑惑的な空気に気付いていなかった。
こうしてトキワ署交通課の朝は始まった。この先トキワの街に何が起こるのか?それは・・・つづくったらつづく。
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