【 CAP】Child Assault Prevention
(子どもへの暴力防止プログラム)

半年程前に指導員の方とお友達になった事をきっかけに「CAP」という言葉を初めて知り、そしてその素晴らしい内容に感動しました。機会があれば勉強したいと思っていたら近所の公民会でセミナーがあり早速参加してきました。
今回の講師の先生は、NPO法人「女性と子どものエンパワメント関西」の井山里美氏。
今回は3部構成になっており、1部が公演、2部が実際の子どもへのワークショップ、
3部が質疑応答となっています。(2時間/2005.5.17)

--------------------------------------------------------------------------------------------------
(※CAPについての基礎知識は一番下を御覧下さい。)

エスポアール多目的ホールに井山氏の軽やかな声が響き渡りました。沢山の現役のママに男性の姿も複数見受けられます。
誰一人私語を話す人も居ず、カサカサとペンの走る音が方々で聞かれました。
井山氏はCAPをこう解説されます。「 加害者にも被害者にもしない教育」、方法だけを知っていてもダメで「心」 (人権意識)を持たすことで有効になると。

子どものまわりにはあらゆる暴力が存在します。
●虐待●いじめ●誘拐・強姦・痴漢行為●自殺●援助交際●摂食障害●非行....
暴力は見るだけで心が傷付きます。そして体をも蝕んでいきます。その多くの原因が家庭内とテレビやインターネットなどのメディアだと言われています。
どんなに小さい子どもでも「見て」学ぶのです。(観察学習)

--------------------------------------------------------------------------------------------------

CAPとは、18歳未満の子どもに対する虐待、暴力行為、子ども同士のいじめなどにどう対処するかを、親、教師、そして誰よりもまず子ども達自身に教える人権教育プログラムです。

対して、伝統的な防止法
●知らない人についていってはいけない
●一人になってはいけない

という危険防止法は現実的にあまり効果 が上がっていません。一人でも集団でも、「必ず守ってみせる!」という
強い意志を持つ大人がその場にいなければ子どもは暴力行為に巻き込まれているのです。
また、被害者を責める風潮

●加害者の論理

を持ち出す人もいまだに多数居ます。
そして
●子どもは「無力」であるという子ども観
が一層子どもを無力にしています。

-----------------------------------

子どもと一緒に「知らない人」と「知ってる人」を定義しよう!

いつも親しくて、どこに住んでいてどんな性格かを知っている人が「知っている人」

●顔は知っていて挨拶くらいはするけど、詳しく知らない人は「知らない人」

●今日初めて会ったけど良い人そうだし仲良くもなった、 でもそれは「知らない人」

※狙っている者はは5分でターゲットと仲良くなれる。

-----------------------------------

CAPの理念
エンパワメント (em-power-ment)

●子どもが潜在的に持っている力を充分に発揮さえすれば、危ない状態を切り抜けられる。
●子ども自身で対処できるように、知識と方法とそして何より自信を与える。
●子ども達が強く社会を生き抜いていく力を貯えるためにお手伝いをする。

セルフエスティーム (self-esteem=自尊心)

●自尊心を高め「自分は大切な存在だから自分が好きだ」 「生きているだけで素晴らしいんだ」
という
意識をもってもらう。 自尊感情を高めることで自殺や自傷行為から守ります。
-------------------------------------------------------------------------------------------------

概要の解説が終わったところで、実際こちらの団体が小学校などで活動されている「小学校4年生を対象としたロールプレイ」を披露して下さいました。通 常なら学校関係者か児童・生徒しか拝見する事は出来ません。
井山氏は私達参加者に「今からあなた達は小学4年生ですよ〜」と声をかけられ、そして実際小学生にもわかる易しい言葉で「権利とは?」「権利意識とは?」と問い掛け、私達の中からその感覚を引き出されます。
●3つの権利
「SAFE」(安心して)
「STRONG」(自信を持って)
「FREE」(自由に)

これらは食べる権利や寝る権利と同じくらい大事な権利です。
●3つの権利が奪われたときに
「NO」(ノーと言う)
「GO」(その場を離れる)
「TELL」(誰かに相談する)

断わることや逃げることや相談する事は、少しも卑怯な事ではないのです。

山田君が一人で学校から帰っていたら6年生の田中君が待っていた。「これから毎日、オレのかばんを持って帰れ!」と理不尽な要求をつきつける。山田君は恐くて悔しくて嫌な気持ちだったが、その場で「嫌だ」が言えなかった。

皆は友達の山田君がひどいめにあってどう思った?田中君を「殴りたい?」「蹴飛ばしたい?」
でもそれは、山田君が奪われた「権利」を同じように田中君から奪うことなんだ。

翌日、山田君は友達に相談して一緒に田中君に「嫌だ!」と言いに行くことにした。
恐ろしい形相で睨む田中君。でも山田君と友達は田中君の理不尽を追及、それでも田中君が納得しなかったので「先生に言うで!」と言ったら諦めて帰っていった。

子どもの問題は孤立する事から始まる。

いじめの構図は「いじめっ子」と「いじめられっ子」そして
「傍観者」で成り立っています。
この3つ目の「傍観者」が 「援助者」に変わるとき、いじめはストップする。CAPは「僕も誰かを助けられるかもしれない」という自信を持たせるエンパワーのプログラム。
実際のいじめ問題は加害者と被害者がコロコロかわるという複雑さを孕んでいます。「権利を奪うな」を浸透させていかなくてはなりません。

 

 

 

拉致や誘拐から身を守るには、必ず上記の「知らない人」から左図の距離を保つことです。クルマやバイク、自転車、あらゆるもので近付いてきても必ず距離をとりましょう。
防犯ブザーや笛を携帯している子どもも多いが、実際本当に恐い目にあえば体が硬直するし、またそれが一瞬のことであれば役に立たない事が多い。「キャー!」という悲鳴でさえ、子ども達の通 常の遊びの中の歓声と聞き分けられず「SOS」を見過ごされる事が多い。さらに緊張して硬直すると声帯から出す声は出にくくなります。
とっさの時に身を守る声は、腹の底から力いっぱい出す「ウォーーーー!」という叫び声。腹から出すことで、何としても我が身を守るぞ!という勇気も沸いてきます。 ※練習しよう!

 

性的虐待は女の子だけが被害にあうというものではありません。性的虐待の本質は「弱い者に向かう暴力」です。
特にこの問題に関しては「被害を受けた者が悪い」という加害者の論理が今だに根強く残っています。それは全くの間違いで、華美な服そうであろうが、暗い夜道を歩こうが、なんびとたりとも「安心して」「自由に」「自信を持って」生きる権利を奪われることはなりません。
※「男の子やのにこんな目にあってしまった」と周囲に相談できないケースがあります。「それは おかしい事ではないよ!キミが悪いのではないよ!相談してね!」という周囲も固定観念を捨て受け入れる心構えが必要です。


またCAPには先生に向けたロールプレイもあります。 実際に先生に劇に参加してもらい必ず下記の台詞を言って頂く。
「よく話してくれたね、ありがとう!」
「もう2度とこんな事にならないように協力するよ!」
「あなたが悪くないんだよ!」

暴力を受けた子ども達には3つの感情がおこります。
■私が悪いんだ(自責の念)
■また同じ事がおこるかもしれない...(恐怖感)
■こんな事がまた起こったらもう何も出来ない(無力感)

信号を出せない程恐い体験をする事もあります。子どもは親が悲しんだり怒ったりするので相談できないといいます。
このトラウマを打ち消してあげる為にも必ず責めたり怒ったりせず、

「聞いてくれるかも...」 という信頼関係を作っていかなくてはなりません。

----------------------------------------------------------------------

最後に、心配事を抱えていたり、いじめにあっている子ども達のお母さん方へたくさんのアドバイスを頂きました。
●思春期は 過干渉にならずシンプルリスニングに徹する事。
基本的には「見守る」、HELPのサインが出たら「助ける」、それはアカンと思えば「断固として止めさせる」
●いじめにあえば、→不登校→ひきこもりに発展してしまう事もある。後にいくほど修復が困難になる。
いじめの段階で ケアをしてあげよう。たかが学生時代の数日、数カ月、数年くらい休んでもいい。逃げたっていいと思う。
●子どもを危険な場所で遊ばせたくないが、行動半径も狭めたくはない、こんな時はルールを作ってやる必要がある。
行きたい、遊びたいという感情は大いに認めてやりながら「これは貴方の命に関わる問題だからダメなんだよ」と諭す。


その中でもっとも印象に残った言葉が

「人間には生きる力がある」
子どもの力を信じるぞ!と思う。
そしてこの母親の私も子どもに寄り添う力が
あるぞ!と信じる。

CAPはただのHOW TOではなく、「人権」という「心」がるからあらゆる犯罪に応用できると井山氏は言われます。
会場には大きな拍手が沸き起こっていました。
もっともっとこのプログラムが社会に浸透していく事を願ってやみません。

--------------------------------------------------------------------------------------------

***基礎知識***

「CAP」とは、子どもが暴力から自分を守るための教育プログラムのことで、歴史的には1978年アメリカのオハイオ州コロンバスの強姦救援センターから誕生しました。日本では1995年、最初のCAPプログラムを実践するスペシャリストの養成講座が開催され、現在100ヶ国以上に広がっています。
(2000年5月・子どもの虐待防止法公布、2004年改定法)

CAPプログラムは、従来の「〜してはいけません」式の危険防止教育とは根本的に異なり
●自分を主張する(自分を守るために立ち上がる)
●仲間同士の助け合い (他人の権利を守るために立ち上がる)
●信頼できる大人に話す

の3つを柱に教えます。
すなわち、子ども達に「自分の大切さ」を教えひとり一人が本来持っている力を引き出す教育プログラムです。

CAPワークショップは、子どもワークショップと大人ワークショップがあり、年令などに応じた方法で教えます。子どもへの暴力とは、いじめ、虐待、痴漢、誘拐などの事です。CAPワークショップでは、それらに対して具体的にどう対処できるかを寸劇や歌、人形、ディスカッションをしながら、いっしょに考える事により、「自分を守る力」を身に付けます。

(女性と子どものエンパワメント関西:資料より抜粋・加筆)

目次に戻る