”ブルースハープの持ち方は、 あくまでも、一例です。” |
●ベンド(Bend) ?
ベンドは、音程を下げるテクニックです。これは、ハープの穴に対してまっすぐに吸い込む(吹き込む)のではなく、適度な角度をつけて吸い込む(吹き込む)ことで内部のリードに対する空気のアタリ方(流れ)を変化させることで本来そのリードが鳴らす音より音程を下げさせるテクニックです。
●ベンドの目的と必要性
ブルースハープ(10-Holes)の第1オクターブと第3オクターブには、"ドレミファソラシド"が完全にありません。この足りない音を補う為にベンドが必要となります。下記の表に示すように、第1オクターブには、「ファ」と「ラ」、そして第3オクターブには、「シ」がありません。
穴番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
吹く△ | ド(C) | ミ(E) | ソ(G) | ド(C) | ミ(E) | ソ(G) | ド(C) | ミ(E) | ソ(G) | ド(C) |
吸う▼ | レ(D) | ソ(G) | シ(B) | レ(D) | ファ(F) | ラ(A) | シ(B) | レ(D) | ファ(F) | ラ(A) |
第1オクターブ | ||||||||||
第2オクターブ | ||||||||||
第3オクターブ |
注)本表では、Keyが"C"のブルースハープを例にしています。
「第1オクターブの"ラ"の音は、使わないから必要ないよ!」と言うならば、ベンド不要かも知れませんが、実際Bluesの曲では、このベンドした音が良く使われています。(後述しますが、このベンド音こそBluesのフィーリングの要になります。)ちょうどピアノで言えば黒鍵の音が無いと考えれば分かり易いかもしれません。
●ブルースのフィーリングの要(Blue Note)
このベンドして下げられた音こそがブルーノート(Blue
Note)になります。そして、この微妙な音程の下げ具合が重要なのです。ぴったり半音下げるのがブルーノート(Bend)ではなく、その曲の雰囲気や本人のセンスでその音程には、幅があります。この音の下げ具合の感覚"味付け"こそがBluesのファクターの1つと思います。
ギターの演奏で言えば、チョーキング(クオーター・チョーキング:半音分音程を上げる)などの表現方法もその一例でしょう。
●ベンドとオーバーブロウベンド(Bend &
Over Blow Bend)
ベンドは、1〜6番の穴は吸って(▼)音を下げ、7〜10番の穴は吹いて(△)音を下げます。後者の吹いて音を下げるベンドをオーバーブロウベンド(Over
Blow Bend)と言います。これは、頻繁に使われる事はありません。ジミー・リード(Jimmy
Reed)の"Honest I Do" のソロで演奏される"ピッ・ピッィー"とか"ピッ・イー"と耳を突き刺すような甲高い音がオーバーブロウベンドになります。
穴番号 | 1番 | 2番 | 3番 | 4番 | 5番 | 6番 | 7番 | 8番 | 9番 | 10番 |
1音下 △ 半音下 △ 基準音 |
ド(C) | ミ(E) | ソ(G) | ド(C) | ミ(E) | ソ(G) | シ(B) △ ド(C) |
レ(D) △ ミ(E)♭ △ ミ(E) |
ファ(F) △ ソ(G)♭ △ ソ(G) |
シ(B)♭ △ シ(B) △ ド(C) |
基準音 ▼ 半音下 ▼ 1音下 ▼ 1音半下 |
レ(D) ▼ レ(D)♭ |
ソ(G) ▼ ソ(G)♭ ▼ ファ(F) |
シ(B) ▼ シ(B)♭ ▼ ラ(A) ▼ ラ(A )♭ |
レ(D) ▼ レ(D)♭ |
ファ(F) ▼ ミ(E) |
ラ(A) ▼ ラ(A)♭ ▼ ソ(G) |
シ(B) | レ(D) | ファ(F) | ラ(A) |
種別 | ベンド:吸う(▼) | オーバーブロウベンド:吹く(△) |
注)本表では、Keyが"C"のブルースハープを例にしています。
●ベンドのポイント
まずは、1〜6番の穴を吸って音を下げるベンドから始めましょう。特に3番のベンドは、重要でかつ難しいですが、焦らずゆっくり練習しましょう。ベンドの達成は、なかなか上手くいかず、そして単純な練習なので厳しいですが、他の練習と組み合わせて気楽に励みましょう!なおオーバーブロウベンド(7〜10番の穴)は、第2ステップとしましょう。
あまり色々意識すると収拾がつかなくなるかもしれませんが、ベンドの"コツ"を細分化しましたのでどうぞ!あくまでもイメージですので上手くできたポイントのみを取り入れて下さい。
【Point 1 : 口の中とほっぺたの形 】
口の中は、"キュット"すぼめる感じで、ほっぺたは、若干意識して緊張させる。
【Point 2 : 舌(ベロ)】
舌を手前に引き込む、あるいは、下方向に落とす。または、その両方。舌を硬直させる。
【Point 3 : ハープのボディと唇の具合 】
ハープのボディを唇に"グ・グット"引き込む。(ボディを安定させる。)
【Point 4 : 顎(アゴ) 】
下方向、下斜め前方向にアゴを突き出す。その際に、下唇は、ハープから離れないようにする。
【Point 5 : 吸い方のイメージ 】
穴に対してまっすぐに吸うのではなく、角度をつけて、下方向に落とし込む様にして吸い込む。
【Point 6 : 発音 】
「ウ」とか、「ク」とか、「コ」などと発音する感じで試してみてください。
<番外編>:強制ベンド
ベンドは、理論的には、穴に対する吸い込み(吹き込み)に角度が付けば良いのでハープのカバープレート出口側を下げて角度を強制的につけるのも方法の一つです。しかし早いパッセージのフレーズでは困難です。(ハープを傾ける時間が無い。)あくまでもベンド操作を補う手段として使いましょう。まずは、ハープは、固定させて通常の練習をしましょう!実際は、慣れてくれば、口で吸い込み角度を付けるのとハープを傾けることの両方をミックスすれば、より滑らか音程差を表現できます。そしてベンド操作もスムーズで楽になるはずです。
●ベンドの練習順
下記の例は、あくまでも著者が練習した順番です。抽象的な表現が多いですが、ご了承願います。
【Lesson 1: 4番吸い】 [半音ベンド]
・ちょっとしたタイミングで音程が下がるので、力まずにスムーズに"サラッ"と下げましょう。
・少ない力と量で音程は下がるのでパワーのかけすぎに要注意!
・以後、1番と2番のベンドがでてきますが、それらと同じ勢いで吸う傾向になり易いので気をつけましょう。
(※これが原因で結構リードを駄目します。)
【Lesson 2: 5番吸い】 [半音ベンド]
・4番吸いの感じで若干ゆるく。ほぼ同じ感覚で、あまり意識せず!
【Lesson 3: 1番吸い】 [半音ベンド]
・多少音程が下がり過ぎても気にせず、思い切って力強く"ガーン"と吸ってみましょう!
【Lesson 4: 2番吸い】 [半音 / 1音ベンド]
・奇麗に気持ち良く下がるところがあるので、そこを目指して"スパッ"と吸ってみましょう!
【Lesson 5: 3番吸い】 [半音 / 1音 / 1音半ベンド]
・音程の境界値(半音→1音→1音半)がシビアなので丁寧に丁寧に音を確認しながら励みましょう!
・吸いこむ力と量を適切にコントロール。とても難しいです。(著者も上手くできません。練習中です。)
・ハーモニカ専用チューナーなどを使って音程を確認しながら練習するのも良いと思います。
・「ウ」とか、「ク」とか、「コ」などと発音する感じで色々と試してみてください。
・なお1音半ベンドは、あまり使用しないようです。
【Lesson 6: 6番吸い】 [半音 / 1音ベンド]
・雰囲気程度で、本当に軽く!
●ベンドの活用例
下記の(a)〜(d)項を踏まえて、【課題】を練習しましょう!
(a)ナチュラル音からベンドしましょう。
(b)ベンドした音からナチュラル音にしましょう。ベンドの逆操作(※音程を上げる)
(c)上記の2項を組み合わせた練習もしてみましょう!(下げて→上げて,上げて→下げて)
(d)音程の切替のタイミング(スピード)を調節できるようにしましょう。(速い,ユックリ)
【課題1】 ナチュラル音 −[▼Down]→ ベンド音
【課題2】 ベンド音 −[▲Up]→ ナチュラル音
【課題3】 ナチュラル音 −[▼Down]→ ベンド音
−[▲Up]→ ナチュラル音(元の音)
【課題4】 ベンド音 −[▲Up]→ ナチュラル音
−[▼Down]→ ベンド音(元の音)
−記号の意味−
[▲Up]:音程を早めに上げる, [▼Down] :音程を早めに下げる
【課題1'】 ナチュラル音 −[▽Down]→ ベンド音
【課題2'】 ベンド音 −[△Up]→ ナチュラル音
【課題3'】 ナチュラル音 −[▽Down]→ ベンド音
−[△Up]→ ナチュラル音(元の音)
【課題4'】 ベンド音 −[△Up]→ ナチュラル音
−[▽Down]→ ベンド音(元の音)
−記号の意味−
[△Up]:音程をゆっくり上げる , [▽Down]
:音程をゆっくり下げる
以上をマスターすれば、音程を下げたり上げたり、上げたり下げたり等とアナログ的な滑らかな音程変化をつけられるので、あたかもシンセサイザーのピッチベンダーのようなサウンドを作り上げられます。
●ビブラート:Vibrato
<ハンドビブラート:Hand Vibrato>
左手は、ブルースハープ持ち方の例で説明したように持ち、そこに右手を添えます。
この時、左手の親指の下側の側面と右手の親指の下側の側面を合わせます。
この状態で合わせた親指の下側の側面を軸に、右手を開いたり(Open)、閉じたり(Close)を
繰り返すことで音にビブラートをつけます。丁度、扇風機に向かって声を出した時のような
ビブラートが表現できます。本テクニックは、簡単な割には、非常に効果的な演出ができるので
最低限のテクニックとも言えるでしょう。なおサニー・ボーイ・ウィリアムソン
(Sony Boy Williamson)などは、このハンドビブラートを多用しています。
通常、ハンドビブラートは、速いパッセージで演奏されことが多いようです。
それでは、自由な開閉スピードと間隔でOpen
& Closeを色々と試しみましょう!
<スロートビブラート:Throat Vibrato>
喉を"クッ・クッ・クッ"と鳴らしながら、同時に吸い込む動作を行い音程を変化させる。高度なテクニックですが、印象的な"泣きのフレーズ"を決めることができるので是非とも習得したいテクニックです。
●ミュート:Mute
左手は、ブルースハープ持ち方の例で説明したように持ち、そこに右手を添えて
しっかりハープを包み込んで密閉状態にする。この状態でハープを吹く(吸う)とカバープレートから出る音が遮断される為、手の中で音が吸収されミュートが効いた”こもった音”になります。
●ワウ:Wow
ミュートする状態(ハープを包み込んで密閉状態にする)からゆっくり徐々に右手を開放(Open)
していくと”フゥーワッー”とか”ワーウー”とアクセントのある鋭いワウ効果が得られます。
ハンドビブラートに近い操作をしますが、右手の開放(Open)時の吹き吸いのタイミング及びアクセントの掛け具合がポイントとなります。
特に最初の右手のClose状態(密閉度合)で音色の雰囲気は、激変するので、”しっかり密閉した状態”と
”ゆるく包んだ状態”のワウ効果の差異を確認しましょう。
エレキ・ギターなどでは、ワウ・ペダルなる装置(丁度、車のアクセル・ペダルに似た感じ)があり、これを足でパカパカしてそのタイミングで
ワウをかけていますね。
●トレモロ(トリル):Toremoro(Toril)
トレモロとは、隣り合う2つの音を交互に鳴らすテクニックです。自由なスピードで往復回数も適当な回数で問題ありませんが、トレモロ自身のスピードは、曲のテンポに関わらず、ある程度のスピード幅があるので理解しておく必要があります。トレモロは、とても頻繁に使われますので様々なニュアンスを表現できるよう試行錯誤してみましょう。その他、3つの穴を往復するトレモロもあります。まずは、4番と5番を交互に吸ったり、吹いたりしてみましょう!
<トレモロの味付け例>
(a)ゆっくり→早く
(b)ナチュラル音→ベンド音
(c)フェイク音→ノーマル音
(d)小さい音→大きい音
(a')ゆっくり→早く→ゆっくり→早く→(Repeat)
(b')ナチュラル音→ベンド音→ナチュラル音→ベンド音→(Repeat)
(c')フェイク音→ノーマル音→フェイク音→ノーマル音→(Repeat)
(d')小さい音→大きい音→小さい音→大きい音→(Repeat)
単音やオクターブなどを練習する際、隣りの穴の音と混ざらずにクリアな音を鳴らしたいものです。まずは、正確な単音やオクターブの音を把握してから練習するのが効果的だと思います。そこで正確な音を確認するために下図の道具を作成してみてはいかがでしょうか?(なお本道具を作成する材料は、耐水性のある紙パックを加工すると良いと思います。)
単音とオクターブの正確な音を確認! | ||