<更新履歴>1999.10.9up : 慣らし吹きの項を新規追加しました。
■どのメーカーの機種を購入するか?■
メーカーを大分すると"ホーナー"(西ドイツ)と"トンボ"(日本)の2つのメジャーな会社がブルースハープを生産しています。この2つのメーカーの機種ならば、実績と信頼があるので安心です。
□ホーナーについて
老舗であり長い伝統を誇るホーナーは、多くの品揃え、そして何と言っても木製ボディーのラインナップが充実していることが魅力です。言わずと知れたブルースハーピスト御用達の"マリンバンド
(Marine Band) "は、ホーナーのブランドです。ブルースハープ以外にもクロマチックなど様々な機種があり、どれも一度は手にしてみたくなる魅力的な機種が目白押しです。下記に木製ボディの機種を紹介します。
マリンバンド(Marine Band)
・バネのあるパワフルなサウンドで昔から多くのブルース・ハーピストが愛用しています
ブルースハープ(Blues Harp)
・ドシェール材の木の枯れた音色を醸し出し、屈託のない万人向けのサウンドです。世界的ベストセラー。
オールドスタンバイ(Old Standby)
・とてもソフトで繊細なサウンド。カバープレートのデザインが見事に美しい!
□トンボについて
トンボが作る樹脂(プラスティック)ボディのブルースハープが"メジャーボーイ"です。ボディに樹脂を採用しているのでボディの気密性が高く、これにより音の立ち上がりがスムーズで演奏がし易いです。硬めのサウンドで、そして音量も出ます。また本機種は、耐久性に優れ頑丈です。また製品間にバラツキが少なく、特にリードプレートを単体で販売しているので経済的です。
<余談>:トンボの"複音式ハーモニカ"
学童教育等で一度は、経験したことのあるハーモニカですが、恐らく大抵は、トンボの複音式のハーモニカ(穴が上下に2段並ぶ)を手にしていたのではないでしょうか。日本では、昔から現在に至るまで教育以外の場でも多くの人々が複音式ハーモニカの調べに魅了され、愛好されてきています。
■プロが愛用する機種■
やはり演奏の容易さ、安定性、そして耐久性などの面から樹脂ボディを愛用するハーピストは多いようです。ジュニア・ウェルズにおいても昨今は、樹脂ボディをライブプレイなどでは、使用してるようです。
メーカー | 機種 | ボディ | 愛用ハーピスト |
ホーナー | マリンバンド | 木製 | リトル・ウォルター,マジック・ディック,妹尾隆一郎 |
スペシャル20 | 樹脂 | 石川二三夫,西村ヒロ | |
トンボ | メジャーボーイ | 樹脂 | 長渕剛 |
リー・オスカーモデル | 樹脂 | リー・オスカー,ジュニア・ウェルズ,吉田ユーシン,千賀太郎 |
■ボディー選択は、木製 or 樹脂?■
まずは、自分の好きなハーピストは、どの機種を使用しているか?と言う点も考慮に入れるのも手だと思います。特にこだわりが無いならば、最初は、樹脂ボディの機種が無難と思います。しかし時間と根気が必要になりますが、木製ボディの音色も魅力的なので手放しがたいものです。もし余裕があるならば、木製ボディと樹脂ボディのハープを用意するのも良いと思います。両者それぞれの感触(音色や音の立ち上がりなど)を実感できるはずです。
■意外と口当たりも重要なのです!■
木製 or 樹脂?も重要ですが、まず音を出す前の段階として、唇とカバープレートの口当たりが結構気になるものです。このカバープレートの形状(厚みや丸みのつきかた)は、メーカ間、機種により多彩でユニークです。例えば、後述のマリンバンドの様にMSモデルとクラッシックモデルでは、同じ商品名を持ちながら大幅にカバープレートの厚み(ボリューム)が違います。わずかなカバープレートの丸みの差でも意外に慣れてくると気になるものです。これは、ベンドする際にも下唇の引っ掛かり具合もあるので、いくつか機種を試すのも手段の一つと思います。口当たり(感触→口で咥えた感じ)は、結構重要なポイントの気がします。
■MSとハンドメイド(クラッシック) ■
木製ボディのマリンバンドには、大量生産向けに設計されたMSモデル(ネジ止め式)とハンドメイドモデル(クラッシック:釘止め式)があります。クラッシックは、偉大なハーピストが使用してきた物と同じ機種ですが、さらに演奏が難しくなります。できれば、マリンバンドを使う場合は、最初は、MSがお勧めです。MSは、演奏し易くする為に木のボディに特殊な液体が注入してあり、音量も出ます。その代わりMSの音色は、多少シャカシャカしたりハイパートでは、キンキンしたりします。MSの木製ボディに慣れてきてからクラッシックに代えるほうが良いと思います。実際、MSとクラッシックは、そのサイズや重さも去る事ながら、カバープレートの形状も大幅に異なるので、プレイヤーは、違う機種として捉えた方が良い気がします。(MSの方がクラッシックより一回り大きく、重さもある。もちろんリードプレートも異なる。)
■ハンドメイド(クラッシック)の弱点!■
弱点とは、言い難いのですが、カバープレートが非常に小さい釘で打ち付けてあるので取り外しが不便である。すなわちリードにゴミが詰まった時等の掃除(メンテナンス)やリードの音程調整(チューニング)が度々できない。もちろんカバープレートの取り外しは可能ですが、釘を抜く際、及び打つ際にネジ穴が駄目になる恐れもあるし、挙句の果てには、カバープレートがピタッとボディに付かなくなることもあります。また釘の損失も考えられるし、打ち直しも釘が非常に小さいので困難です。
■でも、やっぱりクラッシックで演奏したい!■
やはりクラッシックで演奏したいものです。それでは、下記のハモニカ・メンテ3ヶ条を推奨します!
【ハモニカ・メンテ3ヶ条の推奨】
<其の壱> 必ず口の中をゆすいで奇麗にしてから演奏をする。
<其の弐>使用後は、リードに付いた水分を布などに軽く叩いて取り除く。
<其の参>ボディーをしっかり乾燥させてからケースに保管する。
このように丁寧に扱えば、カバープレートを空ける確立も少なくなるはずです。
■アタリの良いハープは、大切に!■
ハープは、残念ながら経年劣化には、耐えられない消耗品です。
お気に入りにのハープ、そしてアタリの良いハープに出会ったならば大事に大事にしましょう!
■慣らし吹きについて(小西進さんからのアドバイス)■
京都で妹尾先生が開いていたブルース・ハープ・トレーニング・ジムを卒業した生徒の”小西進さん”からの”慣らし吹き”についてのアドバイスです。
現在、小西さんは、京都・大阪・神戸で月1,2回のペースでセッションを行ってます。
1999年5月 FIH第19回大会に出場し「JUKE」を演奏。
MSも、クラシックモデルも、ボディーは木に違いないのですが、クラシックの方は口にあたる部分、左右・背中側(黒)が塗装でコーティングされているだけで、あとは生(ナマ)の木ですね。MSは、妹尾さんによると、木に樹脂を染み込ませてあるそうです。クラシックモデルの新品をしばらく吹いていると、とくにAからDあたりの木が浮いてきます。だれもが最初は、「なんやこれは」と思ってしまう現象です。木が浮いたまま吹いていると唇に当たって痛い。どうしようかと思って、最初は浮いた分を彫刻刀で削ったりしました。また、いったいどれくらい浮いてくるものかと、水を入れたコップに丸ごと浸けてみて、観察したりしました(ヌオ〜っと浮いてきます)。乾かすと元に戻りますが、錆びが出るし、かえって息漏れが激しくなってきます。また、楽器屋の店頭で片っ端から在庫のものを出してもらって、新品の時点でなるべく木が引っ込んでいるものを選びました。それでも吹いているとヌオ〜っと浮いてくる。木の状態にもよるのか、いくら吹いても出てこないのも、たまにありました(ぼくの場合ですが、オールドスタンバイは浮きが少ないような気がします)。とにかく木の浮きがうっとうしいので、モリダイラ楽器に電話して処置を聞くと「木ですから、仕方ないですね。気になるなら、樹脂製のものを」という答えでした。で、しばらくはMSばっかり使っていましたが、いいものに当たるとハンドメイドはいい音が出るので、なんとかならないものかと、教室で妹尾さんに取り扱いを尋ねたところ、答えは大要、以下のとおりでした。
――新品をいきなり吹いて部分的に木が浮いてくるのは、木に部分的に急に湿気が加わって、木に反りや歪みが生じる(その歪みでリードプレートと木にすき間ができたりして、息漏れの原因になる)からである。
――木製ボディーのハープは、「生(ナマ)の楽器」である。そのままでは使えない。使う人の息になじんで、木に適度な湿気がゆきわたって、はじめて楽器になる。使い手の息遣いにあった楽器になる。
――だから、馴らし吹きが必要である。新品を買ってきたら、10個の穴一つひとつに、まんべんなく息を吹き込み、吹き吸いして、木のボディー全体にまんべんなく湿気がゆきわたるようにする。これで木が膨張させる。やがてそれが元通りに収縮する。この作業を何回かやって、はじめて木の状態が安定して、リード・プレートとのすき間も適度になる。部分的に木が浮くということもなくなる。
とのことでした。その話を聞いて、ぼくはハープがいっそう愛しくなりました。いらい、ぼくは気長に(2〜3週間)馴らし吹きを繰り返して使っています。なるほど木は浮かないか、浮いても気にならない程度です。(しかし、こういうことがなぜ、教則本にはほとんど触れられていないのでしょう)MSの木に樹脂が染み込ませてある(新品は、変な匂いがしますね)のは、木の膨張・収縮を抑えるためだそうですが、妹尾さんによると、それで逆に木のよさが殺されてしまうということでした。
現在のハンドメイドは、ホーナー社がマリンバンドなどを、オートメーションで製造するMSにモデルチェンジしたあとで、再び生産を始めたもの。妹尾さんによると、いまのハンドメイドモデルを作っているのは、以前の(というか本来の)製品を作っていた熟練の職人ではないので、形は一緒だが、全然別の楽器だと。ただ、いいのにあたると、いい音は出るそうで、それはぼくも同感です。ちなみに、ぼくは旧型のブルース・ハープを何本か持っていますが、これはやはりいい音が出ます。
最後に、ブルース・ハープか、マリンバンドか、オールド・スタンバイか、あるいは樹脂ボディーのものか、どれが吹き易いかは、基本的にはその人の口の形とか大きさによって異なると思います。自分にどれが合うか、いろいろ試してみるしかないようです。
--- 本項、サイトEASY HARPの「小西進の部屋」から割愛しました。Thank you very much! Takuzo & S.Konishi ---