第19話
さよなら、妹よ!

(シナリオ仮題・さよなら、小さな妹)

一心不乱に馬を駆るロザリー
その姿を小高い丘の上から見ているオスカルとアンドレ

「知らぬ間に随分と腕を挙げたな」
「執念と言うのかな、ロザリーは今、母親の敵を討つ為だけに心を燃やしているんだ」
「ポリニャック伯爵夫人か・・・。
仇を討ってどうなる、燃え尽きてその後、ロザリーは何をする・・・
我々が何かをしてやれるとしたら、その後・・・だな」


11才のシャルロットは母・ポリニャック夫人の決めた
ローラン・ド・ギーシュ公爵と結婚する事になる
「私、結婚なんていや!」泣きじゃくるシャルロット

「おそかれ早かれ女は殿方に愛されねばなりません
それが女のしあわせです」

夜会へ行ったオスカルは、そこでシャルロットとド・ギ−シュ公爵の婚約話を耳にする
「公爵様は43才・・・ご趣味らしいわよ・・・そういうの公爵様の・・・」

夜会の会場からひとり離れるシャルロット
気づき跡を追うオスカル
「ラララ・・・」
シャルロットは口ずさみながらカエル噴水の脇に座っていた
来るオスカル
「こんな人気のない所にお一人でいてはいけません」
「オスカル様・・・私・・・もう少し大人になって恋をして
そしてお嫁に行きたかった・・・
オスカル様のようなステキなお方の所へ・・・」
泣くきじゃくるシャルロット

風が出てきた
舞い散る木の葉
「この胸のバラを私に下さい!」
シャルロットはオスカルが胸につけていた白いバラを奪い去るようにその場を立ち去るのだった

息せき切って戻ってくるアンドレ
ロザリーの産みの母が誰かわかったのだ
「いまの名をシャロン・ド・ポリニャック」

夕陽、塔の上。
「苦しみ?いいえオスカル様、私は苦しんでなんかいません
だって私にとって母は一人・・・ニコール・ラ・モリエールただ一人なんですから」
このあと、脅威の回り込み!

ド・ギーシュ公爵のシャトーの晩餐会
「いかがですかな?シャルロット嬢
あなたさえその気になれば今夜からでもこの城にあなたの部屋を作って差し上げますよ」
ドキリとするシャルロット
「おぅ、これはまたお優しい、私の冗談を真に受けなされた、ほほほほ」
列席しているポリニャック夫人、大人一同が笑う
「助けて!オスカル様」
オスカルからの白いバラを胸につけながらシャルロットは耐えていた。

シャトーから帰路へつくポリニャック夫人の馬車
そこには猟銃をかまえたロザリーが!

ポリニャック夫人に銃口を向けるロザリー
「静かに!私に向かって何も話し掛けてはいけない!すぐに終わります
あたしが引き金を引きさえすればいいのだから!」
「撃たないで!私はまだ死にたくない!」

構えたまま引き金をひけず、その場へへたり込むロザリー
そこへ来るオスカル
「撃てるわけがない。お前のような優しい娘が、本当の母親を撃てるわけがない」
「なんですって!?」
「この娘の名はロザリー・ラ・モリエール
それだけ言えば、もうおわかりでしょう
シャロン・ド・ポリニャック夫人・・・いや・・・
マルティーヌ・ガブリエル・ド・ポリニャック夫人」

何も知らずに馬車の中で疲れ眠っているシャルロット
「この娘はお前の妹という事になる。
良かったな、引き金をひけば今度はこの娘が悲しむところだった」
「違う!この娘はあたしの妹じゃない!だってポリニャック夫人は、あたしの母じゃない!
だからこの娘もあたしにとって赤の他人・・・」

「あの娘がロザリー・ラ・モリエール・・・だとしたら
間違いなく私が15の時に産んだ娘
では、あの時私が馬車ではねた女は・・・
生まれたばかりのロザリーを引き取って育ててくれたニコール・ラ・モリエール
そんな・・・そんなことって・・・あの親切だったニコールを
あぁ!神よ!私は忌まわしい悪魔に呪われているのです!
どうか・・・どうか・・・これからの私をお守り下さい!」

マリー・アントワネット王后陛下お出まし〜

今晩も夜会が開かれていた
「気晴らしに」夜会に出てきたロザリー

夜会に出席しようとしたシャルロットはド・ギーシュ公爵に出くわし
部屋へ連れ込まれる
「おやおや何をそう警戒なさる?
私たちは間も無く式をあげる仲ではないか・・・ほほほほ
ただその可愛らしい、あなたの手に接吻をとお願いするだけではないか」
シャルロットの右手の甲に接吻するド・ギーシュ公爵

右手を押えながら走っていくシャルロット
彼女の中で何かが壊れ始めていた・・・

カエル噴水に来たシャルロット
表情が少しずつおかしくなってゆく

「あはははは!あはははは!」


カエル噴水で右手の甲をゴシゴシ洗うシャルロット
「あはははは!あはははは!」

そして
「大変でございます!塔の上にポリニャック家のお嬢様が!」
「シャルロット!」
ポリニャック夫人の叫びも空しい

「私・・・ちゃんと手を洗ったわ
だから、またこのバラのように綺麗になれるの・・・結婚なんて・・・いや」
シャルロットは白いバラを空に放り・・・
自らも空へと身を投げるのだった

散るバラ・・・そしてシャルロット

凛としたロザリー
「悲しくなんかない、いくら血がつながっていると言われても一緒に暮らした事もない
言葉だって1、2度交わしただけ
血がつながっているからと言って愛が持てるとは限らない
血のつながった赤の他人がいたっていいわ」

振り向きざま涙を流しながら
「そうですよね!?オスカル様!
死んだんです!オスカル様!私の妹が!
名乗りあう事もないまま死んでしまったんです!
かわいそうに・・・あたしの妹が!たったの11で!」


ワンポイント講座

それまでにも見ながら、あるいは見終わって「ほう〜!」という震えのくるアニメはありましたが
この19話をリアルタイムで見た時の衝撃というのは、かなり大きかったです。

中学生でしたので、監督交代劇があったとは知りませんでしたが
「今日のベルばらは何か違う!」と肌で感じました。

19話を一言で言うと
石田 太郎!
ではなくて
カエル!
ではなくて
出崎 統!
チーフディレクターとして出崎氏がスタッフに入り
あちらこちらへ飛んでいた話が1本の線になり、
尚且つ、これ以降の話が見えてきた記念すべき入魂の1本!

奥行きのある畳み掛けるような演出!
ひきしまった端正な作画!(目の中の○は△にしちゃうぞ!)
効果的に入る止め絵!
出崎〜!
呼び捨てでごめん〜!

ポリニャック夫人がロザリーを実の娘と知るくだりは原作と異なり
また、オスカルの白いバラの話は、アニメオリジナル
原作だとオスカルにベタベタしていたロザリーが自立して描かれていて良い感じ

石田さんといえば「カリオストロ公爵」があまりにも有名ですが
ねちっこい演技が、たまんねっす。
レプカの家弓 家正さんといい石田さんといい
いや〜!最高!
ねちっこい親父!好きだ〜!
武藤 礼子さんの演技の素晴らしさにも酔ってください!

ド・ギーシュ公爵は原作でももちろん出てきますが、顔は出てきません。
姿かたちはアニメオリジナルのキャラクターという事になります。

とにかく見ていただきたい1本です。





アントワネットとフェルゼンは秘めやかな愛に身を震わせ
オスカルは雨に打たれて思い悩む
そしてアンドレはオスカルへの忍ぶ恋に胸を焦がした
光と影、愛と悲しみの四重奏の行方は・・・
次回
ベルサイユのばら
フェルゼン名残りの輪舞
おたのしみに


第20話
フェルゼン名残りの輪舞(ロンド)

(シナリオ仮題・この熱き想いを)

誰もいない朝もやの中

「どうしてこんなに夜明けが早いのでしょう、もう戻らなくては」
「離したくない・・・たとえ陽が昇りふたりの姿が
フランス中の人々の目に止まろうとあなたを・・・離したくはありません」

見詰め合う瞳と瞳♪<剛三兄弟って似てないよね♪

「どうか泣かないで下さい
今・・・あなたの涙を見てしまったら、私は今度会えるときまで・・・そのときまで
地獄の中をさまよわねばなりません・・・お願いです
どうかいつもの春風のような笑顔を・・・」

オスカルの屋敷に来たフェルゼン
「たまにはお前と剣の手合わせをしたくなってね」
リンゴ!を頬張りながら聞いているアンドレ
みんな等身、伸びてます。

パリ中が噂でもちきりになっていた
王妃マリーアントワネットとスウェーデンから来た色男
ベルサイユに毎夜燃え上がる不倫の恋

「今日みたいなフェルゼン伯を初めて見た
何をしてもつらそうで、かといって何かをしなければいられない・・・
そんなにつらい恋になんでのめり込むんだ
愛し愛されて何がつらい
打ち明ける事すら出来ない恋だって、この世にはゴマンとあるんだ」

「剣を取れ!アンドレ!」

「アンドレたまには手加減抜きだ!」
「いいとも俺も今日はそのつもりさ、オスカル・・・ターッ!」

オスカル!忘れちまえ!フェルゼンの事なんか!
いや・・・忘れて欲しい・・・お願いだ


オスカルを呼ぶアントワネット
「あなただけが頼りなのです、オスカル」
今晩の「愛の神殿」でのフェルゼンとの密会にに行けなくなったアントワネットは
泣きながらオスカルに頼む


舞踏会に出ないと言うオスカル
下品な視線とカゲ口を浴びせられるアントワネットを見るに忍びないのだ


舞踏会
アントワネットとフェルゼンを見る人々の目

そこには礼装姿のオスカルが
「オスカル、今宵はどういう風のふきまわしでしょう
ダンスなどしたことのないあなたが」
「おそれながら・・・
風は西からも東からも吹きそよぐものでございます」
「まぁ・・・あなたのお相手は男の方かしら?それとも女の方?」
「お望みのままでございます王后陛下
ただし・・・今宵のお相手は私ひとりに・・・」
「わかりました」
ダンスするオスカルとアントワネット

朝もやの中、オスカルの馬車を待ち受けるフェルゼン
そして怒涛のラストシーンへ



ワンポイント講座

19話もいい!
が!
20話がこれまたいい!

オープニング前に入る二人の逢引き
ひひひ(壊)
なんか急にアダルト路線になっちゃったよ

そしていきなり出てくる吟遊詩人!(声・小川 真司)
このアニメオリジナルキャラが平民の視線(出崎氏・談)として重要な役回りとなります

たった一杯の酒
こいつが命
色も恋もねえ
あるとすりゃあ
借金と飢えた家族
それぽっきり

ベルサイユの事なんか知らないねぇ
オーストリアから来た王女だって?
スウェーデン貴族との火遊びごっこだって?
知らないねぇ俺たちは
ベルサイユの事なんか、これぽっきりも知らないねぇ

それより欲しいぜ
たった一杯の酒
たったの一杯・・・


↑コレ覚えておいていただくと、
これからの季節の忘年会や新年会で何かと使えて、
あなたは一躍!職場の人気者!になれるかもしれない〜

もう一編

もうどうにもならない
あとへは戻れない
バラの花をつんでしまった男の苦しさ
ひと瓶の酒に降り続く雨
苦しさが増すばかり
それでも今日もセーヌは流れる


この頃、原作だと、アントワネットがオスカルに向かって
「あなたに女の心をもとめるのは無理なことだったのでしょうか?」<キツ〜

原作だとアントワネットと別れの挨拶を交わしてからアメリカへ行くフェルゼンですが
アニメだと、いきなり行っちゃいます。
またルイ16世は
「あの若者がアメリカへ行ってしまうのか
他の貴族たちと違っておべっかも使わない、野心もない
よい友人だと思っているのに・・・残念だな」と・・・出来た人だわ

んでは、ワタクシがアニメ「ベルサイユのばら」の中でも
1、2を争うほど好きな20話のラストシーンの解説を〜
BGMはオリジナル・サウンドトラック&名場面音楽集に収録されております
「優しさの贈り物」でございます。

朝もやの中、オスカルの馬車を待ち受けるフェルゼン

道端に黄色い水仙が咲いている
(花言葉は「愛にこたえて」)
「ありがとうオスカル
君があの礼装で現れなかったら私は間違いなく
アントワネット様と踊り明かしてしまったろう
お姿をみてしまえば当然踊りたいと思う
踊ればきっと隠している感情も人にはあらわに見えるに違いない
すんでのところであの方をまた途方もないスキャンダルに巻き込んでしまうところだった」

川面を跳ねる魚

「出るべきではないと思いつつ出てしまった舞踏会
この私の思慮のなさが全ていけない
私に本当に人を愛す心があるのなら
愛する人の立場をもっと考えるべきであった」

フェルゼンを見つめるオスカル

「愛は抱いても決して恋に陥るべきではなかった」

離れた所に立っているアンドレ

朝日が昇ってくる

「あの方を苦しませてしまった
深くたとえようもなく深く」

川縁に立つオスカルとフェルゼン
川には雲の流れと朝日が写っている

「私に出来る事はただひとつ
あえてあの方に対して卑怯者になることだ!」

朝日に向かって立つフェルゼンとオスカル
風が出てきた

朝日に向かって飛んでいく鳥

「オスカル私は逃げる
すまないが逃げるぞ!遠く数千マイルの彼方へ!」

さらに遠くへ向かって飛ぶ鳥

オスカルの目がアップになって

「アントワネット様の事・・・頼む!」
「フェルゼン!どこへ!」

フェルゼンの馬車が行く
見送るオスカルとアンドレ

ここでBGM、サビの部分!

フェルゼンはアメリカ遠征軍に志願したのだった。

出発する遠征軍
馬上のフェルゼン、ふと振り返りそのまま行く

フェルゼンを想うオスカルを気にしつつ
「いけない、今日は馬の蹄鉄を変えてやる日だ」と
その場を去るアンドレ
一度、オスカルの方を見やる

「死ぬな!フェルゼン!」
オスカルの目から涙が一筋流れる

そのままエンディングへ突入
いつもは「へぼ〜へぼ〜」と聞いているエンディングさえも
今日はノリが違うぜ!

愛が苦しみならいつまでも苦しもう
それが君の心にいつか届くまで

その魅力の十分の一も伝えられない出崎節!
男と言う名の物語♪
これまた「見ろや!」の一本です!



ジャンヌはローアン大司教をだまし、次々と大金を巻き上げていく
ウソにウソを重ね、その野望はとどまるところをしらない
そして、ついには恐ろしいたくらみを・・・
オスカルはそれを見破る事が出来るか?
次回
ベルサイユのばら
黒ばらは夜ひらく
おたのしみに