丁寧で完璧な無痛内視鏡検査と手術を
東大講師を歴任した院長が
あなたに提供します

The best quality of endoscopic examination and surgery will be given to you
by the director, who was an Associate Professor at Tokyo University

田淵正文院長

Director Dr Masafumi Tabuchi
院長 田渕正文

ex-Associate Professor of Tokyo University
東京大学医学部腫瘍外科講師
歴任

20130529日本がん撲滅トラサイ宣言

従来のピットパターン診断、縫合技術に加えて、新たに核パターン診断と毛細血管パターン診断により 

より精緻で正確でリスクの低い診断と治療をあなたに提供します。(2010年8月)

クリニックの近辺の放射線濃度を知りたいときはここをクリック  click here to know the radiation level around our clinic

クリニックのある関東平野の風向きを知りたいときはここをクリック  click here to know the wind direction in the Kantou Plain

〒153-0043 東京都目黒区東山1-10-13    TEL 03-3714-0422

We will give you more definite more safe and more precise endoscopic diagnosis and treatment

with the novel system of nucleus-pattern diagnosis and capillary-pattern diagnosis,

adding to the previous pit-pattern diagnosis system and suturing method. (Aug 2010)

 

1.クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

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Guidance and Mapcheck-up of GI tract with no pain Curriculum vitae of Director

Works by DirectorAbout GI-tract diseaseHIFU: treatment of prostate cancer with ultrasonic power | E-mail |

Second Web site| Recruitment of staff| 20130529declarement of trans-science for Japan cancer prevention

 

ご挨拶

 

 高齢化社会、食生活の欧米化等に伴い我国においても大腸癌の発生件数が増大しております。特に女性の死因のトップは大腸癌です。また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった大腸疾患も急増しております。
 今までの大腸の内視鏡検査は苦痛を伴うものとされてまいりましたが、1987年に私が開発した
内視鏡挿入システム(ストレイト法、別名、無挿気浸水挿入法)クリックすると1994年秋に日本消化器内視鏡学会で教育用に発表した挿入法のビデオの一部を御覧いただけます(画像がうまく出ないときは右クリックで 動画を保存してからご覧ください)ではほとんど痛みがなく無痛で、楽に大腸内視鏡検査が受けられると患者の皆様に大変好評をいただいております。後輩の後小路世士夫君や後藤利夫君、草場元樹君や鈴木雄久君、その他おおくの先生がたが、私からこの方法を学び、いまや大腸内視鏡の名医として活躍されています。その現状をみると、この方法がいかに優れていたかがわかるというものです。 1988年には、フジノンと協力してスコープを開発して、大腸ポリープのピットパターン診断の臨床応用・ルーチン化に世界で始めて成功しました。現在、ピットパターン診断は大腸内視鏡診断に必須のものとして定着しています。

これまでに(2003年8月現在)約33,000例の内視鏡検査、約2,250個の大腸癌、約127,000個の大腸ポリープを切除してまいりました。これらは1人の医師としては全世界的にもトップレベルと自負しております。また、発見しにくい平坦陥凹型腫瘍を、自ら開発した近接型深焦点深度型高解像電子内視鏡と色素二重染色法を用いて、他院ではあまり発見できなかった時代からずっと多数発見してきました。陥凹型腫瘍が、隆起型腫瘍とは異なる遺伝子変化のパターンを持つことを、1992年に共同研究者と世界で始めて証明しました。また、1994年厚生省からの研究補助金を頂いて、コンピュータによるデータ解析から、陥凹型癌が隆起型癌よりずっとすばやく浸潤することも証明しました。1996年から、破れた腸を内視鏡で縫いあわせる治療を行い、国際的にも大変注目されました。この縫合技術が基礎となって、内視鏡的粘膜剥離術といったかなり危険だった内視鏡手術も安全に施行することができるようになりました。
 さらに、大腸ポリ―プ患者の長年にわたる経過観察から、「大腸に腺腫のできる方は他の臓器にも癌が発生しやすい」こともわかってきました。特に、食道癌、胃癌、肺癌、前立腺癌などは注意が必要です。初期のころは、私は大腸のみ診ていましたが、大腸ポリープ切除後の患者が食道癌や胃癌に倒れる姿を多数みて、7−8年前より、上部消化管にも重点を置き、胃癌予防のためピロリ菌退治や、拡大色素内視鏡による食道癌の早期発見も積極的におこなってきました。上部消化管内視鏡検査は約2万例、ピロリ菌除菌療法は約2500例の経験を積んでいます。1999年ごろに、大腸で磨いた色素二重染色法を食道に応用して、欧米で近年急激に増加したバレット腺癌の早期発見法を開発しました。その方法は、米国のスタンフォード大学のヴァンダム教授やオランダのアムステルダムのティトガット教授により広く紹介されて、現在、国際的に大変注目されています。
業績詳細参照。
 「楽に検査を行い、正しい治療に至る」という信条より、医療法人を「至楽正会」と名付けました。患者の皆様の不安を少しでも早く、楽に取り除き、癌を予防することが私の使命だと考えております。1例1例十分な時間をかけて、丁寧に内視鏡をおこなってきました。私の指示通りに当院で内視鏡検査をお受けになっている方で、大腸癌、胃癌、食道癌でお亡くなりになった方は1人もいません。皆様の信頼に応えるため、これからも全力をつくしてまいります。
ハイレベルで無痛の精密な消化器内視鏡診療をお望みの方は、どうぞ御来院ください。クリニックの案内・地図

2003年夏には、招かれてチェコとドイツに出かけて、陥凹型大腸腫瘍の見つけ方や、拡大色素内視鏡検査のやり方を教えてきました。関連記事1)関連記事2)関連記事3)。 テレビの出演(61MB約5分)も依頼されて、大腸癌予防には、便潜血反応や内視鏡による検診が重要であることをチェコの皆さんに呼びかけてきました。チェコは食事が脂っぽくて、ヨーロッパの中でもとりわけ、大腸癌の頻度が高く、人口1000万人で、毎年7500人ぐらいの方が大腸癌に苦しめられています。ちなみに、日本は人口12000万人ぐらいで、毎年約8万ないし10万人が大腸癌になり、3万5000人から4万人が大腸癌で死亡しています。 大腸癌は小さなうちに早期発見すれば、内視鏡でとって簡単に治ります。症状が出てからでは死ぬ確率が7割以上になりますので、癌年齢に達している人や、家族に癌のある人は、症状のないうちに内視鏡検査をお受けください。そうすれば、前癌病変のポリープ・腺腫を内視鏡的に切除して、大腸癌死は100%近く予防できます。

2006年3月から、友人の鈴木誠先生に協力して、泌尿器科、超音波による前立腺がん治療HIFUを始めました。詳細

 

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田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

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TOPICS

New 2013/06/13   MEJ  新生パーティーに参加 

  7:00からホテルニューオータニの曙の間で、MEJもパーティーがあった。6:50ころ到着すると、会場はすでに人で埋め尽くされて、まるで、朝の地下鉄のラッシュ時のよう、事務局の人たち、医療関係の企業の方々と各国大使館関係者、医療関係者、政治家などにくわえて、マスコミも多数取材に訪れていた。1.5m先にだれがいるのかわからないくらい込み合っていた。政治がらみのパーティーはずいぶんと込み合うものだなと妙に感心。政治系のパーティーは早くいって名札を確認するくらいでないとだめよという言っていた奥様に脱帽。
 
 さて、山本事務総長の開会のあいさつの後、菅官房長官、田村厚労大臣、茂木経産大臣の挨拶があった。茂木大臣のあいさつの途中に、安倍総理が到着して早速挨拶。
 「・・・・父は膵臓がんで死んだが、聞くと膵臓がんは遺伝するらしい。膵臓がんの治療に力を入れてほしい。母は、84歳であるが、選挙のたびに若返っています。・・・・・」 確かに、膵ー胆管系のがんは、ここ10年うなぎ上りの増え方で、ここ数年は、膵臓がんで、年約3万人、胆管系がんで2万人が死んでいる。胃癌約5万人、大腸がん約4万人の死亡者数であるから、確かに、膵胆管系のがんの予防や治療にも、画期的な解決策がほしいところだ。
 
 私としては、膵臓がんのがん遺伝子の突然変異のパターンから、COX2阻害剤の投与が膵臓がんの予防に有効なのではないかと思っている。米国で治験が進行中でその結果に興味津々のところであるが、私のクリニックでは安倍総理のような家族歴のある人や、慢性膵炎や膵嚢胞のあるハイリスク患者に、もう10年位前から、COX2阻害剤を自由診療で使っている。たしかに、その人たちの中で、新たに膵臓がんになった人はいない。

 安倍総理と企業関係者や大使館関係者との撮影が終わり、安倍総理が退席すると、人が半分くらい減って身動き可能となった。赤いジャケットがお似合いの丸川厚労副大臣やたどたどしい日本語を話すトルコ大使館の人、癌研の前総長、武藤徹一郎先生などと名刺交換をして会場を後にした。  


 

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New 2013/06/12   がん予防と株価の行方 揺れる「安倍ノミックス」  潜む 消費税引き上げと景気回復の問題 

 「がん予防と株価は密接に関連している。」唐突に聞こえるかもしれないが、長年、がん予防の仕事をしていて痛切に感じたことだ。

 お金がなくなると、当たり前だが、将来の病気に備えて、検査しようとする人は減るのである。1997年、消費税3%から5%が上がり、経済が先折れして、1998年、山一証券会社が倒れた。どの企業の保険組合もがん予防で大腸内視鏡を行うゆとりはなくなり、当時、広まりつつあった「大腸癌予防には大腸内視鏡検査」の流れがとまり、「大腸癌予防は便潜血だけでいい」という方向に保険組合は流れた。とある保険組合の事務長から、「これからは、大腸内視鏡で検診して、ポリープを取るのは役員だけにしてください。一般社員は内視鏡検診は不要です。」と言われたのもそのころである。

2012年6月から2013年6月12日までの日経平均株価の推移

 5月23日を境にして、上昇を続けていた株価が一気に下落した。16000円前後から13000円前後に一気に下がった。(ここ数日の流れをみると13000円前後で下げ止まりそうであるが・・・)「安倍首相の発表した第3の矢が経済に与える影響がたいしたことがない。」という海外の投資家の判断と言われたが、勿論それもあったが、テクニカル的にこの辺で利益確定すべきという「コンピュータープログラム」の判断が、重なったためと思われる。問題は、どんなパラメーターがコンピューターに入れられているかということである。「来年3月、消費税が5%から8%に上がる」というのが、そろそろ、織り込まれてきたのではあるまいか? 来年になれば、消費税が上がり、景気回復が腰折れになるという判断が海外の投資家のコンピュータープログラムに入っているに違いない。

 「消費税引き上げ」と「景気回復ムードの維持」。何をどう考えてどうするか、深い洞察力を必要とする政治的局面が目の前に突き付けられたようだ。

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2013/06/11  大輪朝顔が育つ。 

 自民党からもらった大輪朝顔の種を5月10日に種播きをした。その朝顔が芽を出して、朝顔が育ってきた。7月21日の参議院議員選挙のころには花を咲かせるだろうか?

 ちなみに、種をまいて、芽を出すのは10個中3個ぐらいだった。不妊症に悩むカップルも10%ぐらい、妊娠が成立してもいろんな事情でおろす命が約50万/年(妊娠の約3割)(表の発表は30万人・・・・・)。人も植物も命をつなぐ難しさは同じかと妙に感心した。

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2013/06/03  2013/05/29  木場のレインボーFMのラジオ番組に出演、トラサイ宣言を行った。 

 日本では、がんに対して適切な予防対策が取られていません。ここ25年間の医学の進歩が、日本においては、がんの予防・がん撲滅政策に反映されていません。ために、無駄に死んでいる人が年間十数万人もいます。これは、死んでいく人たちや家族の 苦しみや悲しみも勿論ですが、その経済的・社会的被害が日本を弱くしていることも見過ごせません。新たな医学の進歩を日本政府のがん予防・がん撲滅政策に反映させるため、政治の世界に参加して、「日本を取り戻す」決意をしました。科学の正しい知識を広め、議論して、政策に生かし、がん予防・がん撲滅を正しく行い、日本を明るく楽しい凛とした国にしようと思います。レインボーFMのラジオ番組はこちらから

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 2013/05/07  娘の指摘 強力ステロイド剤の使い方 

 私の長女は去年から、医師をしていて、今は研修の2年目である。昨夜、久しぶりに一緒に食事をしたとき、ステロイド軟膏の話になり、唇にでているアトピーに対して、私がまずは初めに強力な「デルモベート」を塗るのがいいのではないかといったところ、娘曰く「唇や脇の下、粘膜はステロイドの吸収が普通の皮膚の場所よりも10倍おおいので、最強のステロイド剤はよくない!」と反論された。それもそーかなとその場ではそれ以上言わなかったが、一般に炎症が起こっているときは、粘膜でも皮膚でも、腸管でも、薬剤の吸収は悪くなる。やはり、短期間の強力ステロイド軟膏からでいいように思いますが、いかかでしょうか。

 

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 2013/05/07  2例続いたランブル鞭毛虫症(ジアルジア症) 

 本年に入って、2例のランブル鞭毛虫症を経験した。いずれも、主訴は慢性の下痢。下痢の顕微鏡観察にて診断した。両者とも海外渡航歴はなく、30歳代の男性である。これまで30年間の臨床経験でも、一例も経験しなかったのに、なぜか、今年になり2例も経験した。どうしてだろうか?

 ものの本によると、ランブル鞭毛虫症は、水系感染するという。最近、群馬のある地域で水系感染があったらしい。保健所に電話で問い合わせたら、都庁まで話が広がり、都庁の水道局から電話がきた。上水では、虫なしとのこと。途中で混入しているのであろうか?2011年3月の大地震でインフラが弱っているのかもしれない。

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2013/04/21  安倍首相 成長戦略 Medical Excellence Japan メディカル・エクセレンス・ジャパンに中目黒消化器クリニックが載った!  

 昨年の12月に安倍内閣が発足した。安倍首相は安定感のある政治手法と思いきった経済運営で、高い支持率が続いている。4月12日から4月14日までの内閣支持率は読売新聞74%、NNN 65%、時事 63% 朝日新聞 60%で、安倍内閣は高い支持率が続いている。その安倍首相は4月19日に3本の矢の最後、成長戦略の第1段について、日本記者クラブで講演した。

首相、成長戦略「経済外交スタートさせる」
2013/4/19 15:43

安倍晋三首相は19日午後の日本記者クラブでの講演で、成長戦略に関して海外展開の重要性を挙げ「アジア・太平洋、欧州などとの経済連携交渉を積極的に進めていく」と強調した。「インフラや制度に関わるビジネスは首脳外交がものをいう世界だ。いよいよ経済外交をスタートさせる」との考えを示した。そのうえで「近くロシアと中東を訪問し、食文化、エネルギー、医療システムなど幅広い分野で、トップセールスで海外展開の動きを本格化させる」と述べた。
 特に医療分野については「新興諸国では生活水準が上がるにつれて感染症からガンや脳卒中などの生活習慣病へと疾病傾向が変化している。日本の高い技術の出番だ」と説明。医療機器メーカーや医療機関と連携し、新たな体制「メディカル・エクセレンス・ジャパン」を立ち上げると明らかにした。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

このメディカル・エクセレンス・ジャパンは、海外に「日本のお勧め医療」を紹介して行くことを目的としている。そこに私の無痛拡大内視鏡・核診断が載っている。我がクリニックの食道がん・胃がん・大腸がんの検診システムが、「日本のお勧め医療の一つ」として、評価されたのである。海外の方たちだけでなく、日本の方々も、どうか、この内視鏡診療(検診システム)のサービスをお受けになって、消化管のがんを予防してください。

メディカル・エクセレンス・ジャパンのホームページはこちら

中目黒消化器クリニックの紹介ページは 英語版 中国語版 ロシア語版 日本語訳

 

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 2013/03/31  女優 坂口良子さん(57歳)大腸癌で逝く  

 女優、坂口良子さんが27日午前3時40分に横行結腸がん(大腸がん)による肺炎のため、死去した。57歳だった。美人で明るい女優さんであったが、大腸癌で死ぬとは、何ともかわいそうである。症状のないうちに、内視鏡検査さえ受けていれば、こんなことにはならなかった。大腸がんの予防には、大腸内視鏡によるポリープ切除が効果抜群である。国をあげての検診体制の拡充が求められている。

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 2013/03/21-23  第99回日本消化器病学会総会(鹿児島)に参加  

 第99回日本消化器病学会総会は、2013年3月21日から3日間、鹿児島の城山観光ホテルと鹿児島県民交流センターで開催されている。今回の会長は、鹿児島大学の坪内博仁先生、HGF(肝細胞増殖因子)の発見者で有名な先生である。午前6:10分羽田発鹿児島行きの飛行機に乗って、会場には9:20に到着した。快晴で、暖かく、桜も3分咲きであった。城山観光ホテルからは、桜島もきれいに見えた。

 初日と2日目は、だいたい、第一会場にいた。

特別企画「未来につなぐ消化器病学」・・・・・・・・渡辺守先生の大腸腺管底の幹細胞の培養の成功は今後につながりそうだ。、

理事長講演「日本消化器病学会の使命、新たな法人制度の発足にあたって」演者(菅野健太郎)・・・政府の法人制度の見直しの一環として、今回、本学会は一般財団法人となった経緯と理由を説明。・・・・しかし、夕方の評議員会で紹介された執行評議員の中には、外部の人がいなかったような・・・・

夕方、評議員会の様子。演台には理事の面々が並んだ。

招請講演「今後の難病対策の方向性(学会との連携を目指してー」演者(金光一瑛)・・・・・卒後10年程度の若い演者、内容は難病援助制度の維持、管理、とくに審査の点で、学会に協力してほしい」といったもの。東大卒、三井記念病院で心臓外科医6年した後に厚生労働省入局と座長の千葉先生に紹介されていたので、もしかすると、私の講義を聞いたことがある先生かも・・・ 、

 予算削減の目的で認定を厳しくしようというのは、理解できるが、果して国レベルで行うことなのであろうか?ちなみに、東京都では、この2−3年、難病認定の更新時や新規申請時には、診断のキーとなる所見の写真の提出を求められている。

特別講演「新しい手技の開発、確立、普及に必要な考え方」演者(山本博徳)・・・・・ダブルバルーン小腸内視鏡の開発の経緯をもとに、いろいろと話していた。よく知っている先生で、同時代を生きてきたので、「あの時はそうかそういうことだったか」と結構おもしろかった。

特別講演「福島原発事故と県民健康管理調査事業」演者(山下俊一)・・・・・2011.3.11の東日本大震災とその後の福島原発事故による福島県民の被爆量を自然放射線の被爆量と対比すると、放射線障害はないだろうとコメント。甲状腺チェックは不要だと述べていた。講演をきくと確かに先生のいうとおりのような気がする。震災と原発事故対策も進めながら見直していく点が多々ありそうだ。

特別講演「iPS細胞技術が可能にする新しい医療」演者(中光啓光)・・・・・・いっぱいの聴衆でした。

特別講演「C型慢性肝炎治療の変遷ー全症例の治癒を目指してー」演者(熊田博光)・・・・・・いままでのお話のおさらいであったが、夜のすし屋で、同級生の持田教授のひとこと「C型肝炎ウィルスはもうすぐ飲み薬で治るようになる、今後、肝臓の医者は脂肪肝がメインとなっていくであろう」 ・・・・・・・・

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2013/01/03   大腸病変の発見能力は 医師による差が存在する 

症例1 79才男性

 昨年の終わりころに、約10年前に退職して田舎へ帰った患者さんが連絡をとってきた。退職前には、彼曰く「先生に大腸癌を1987年に内視鏡で切除してもらって以来、私は毎年一回、先生の大腸内視鏡検査を受けて、ポリープを取ってもらっていた。しかし、田舎に帰って、10年間くらい、地元の先生に腸の検査を毎年ずっと受けていたのだが、ずっとポリープがないと言われている。私はそれが不思議でならない。今年は、先生に是非見てもらいたい。」

 そこで、12月中旬、大腸内視鏡検査を行ったところ、大きな病変はなかったが、5つの病変が見つかった。病変はいずれも4mm以下の小病変であった。それらをすべて、治療を兼ねて、全切除して病理組織をしらべたところ、腺腫は2つあった。腺管が鋸歯状変化した化生性ポリープは2つあった。

左は右の拡大内視鏡像、核所見はタイプ2、一部タイプ3も認められる。病理結果は中等度異型管状腺腫

症例2 71才男性

 これも昨年の暮れ、ある男性がお尻の穴がはれたといって来院。前処置なしで、そのまま内視鏡を実施したところ、血栓性の痔核と直腸・S状結腸に多数の小ポリープが認められた。そして、それ以外に、出血性の粘膜を直腸S状結腸移行部に認めた。これは、前処置を行ってきちんと見る必要がある。検査を終えてすぐに、「前処置をして内視鏡検査をうけたほうがよい。」と私が説明したところ、患者さんは「某大学で毎年、大腸内視鏡検査を受けていて、つい先月も受けたばかりなので、したくない。」と反論した。しかし、診察室で、内視鏡写真を見せながら、何回か理路整然と説明したところ、「受けたい。」と意見が変わった。

 前処置をして、大腸内視鏡検査を行ったところ、一目で癌とわかる病変を直腸S状結腸移行部に認めた。超音波内視鏡検査の所見は、sm層は全層、腫瘍と置換していて、mp層も腫大している。深達度mpと判断。内視鏡治療を断念して、開腹手術にまわった。

 これらの見落としの実害はどの程度なのか?簡単に言うと、症例1は軽く、命にかかわるのは3年で5%くらい。症例2は重く、命にかかわるのは現時点で100%である。

 ポリープの癌化率はいろいろと議論がある。1996年、私は大腸腺腫の癌化率は毎年約1.3%ぐらいと計算した。(詳細は私の1996年の胃と腸の論文を見てください) また、化生性ポリープ(腺管の鋸歯状変化のある過形成状態)の癌化についてであるが、かつてはないと考えられていたが、β−RAFの活性化が近年確認されて以降、化生性ポリープを前がん病変と認識する研究者もふえている。しかし、その癌化率について、計算された論文はないが、私なりに、腺腫と同程度もしくは半分くらいと予想している。以上より、症例1で見つかった毎年の癌化率は約4%で、癌が浸潤し始めるまでを癌が出来てから平均2年と考えると、実害の可能性は、上のような計算になる。すると、今回の切除は無駄だったかというと、そうではない。同じような人が20人いたら、そのうち1人は、 1−2年後には、症例2のようになったということなのだから。

 各医療機関では、毎日、何例も大腸内視鏡検査をしている。もし、5mm以下のポリープ取らなくてよいとしていると、このくらいのリスクが生じているのである。

 症例2は、この病変がなぜ見落とされたかだが、長年の経験をもとに原因を類推すると、以下のようなことが考えられる。まずは、

1.直腸からS状結腸に移る内側のひだ裏は、見逃しやすい。内視鏡をした医師がこのことを知らないか、あまり気にしていなかった。

2.空気を入れすぎて観察していた。空気が多すぎると死角ができやすい。

3.また、小さなポリープはみなくていいとする考えが荒っぽい内視鏡検査につながった。

4.さらに、5時までに終えなければならないとする大学病院の体制が、医師を焦らせてしまった。

5.検査医がビギナーで経験・技量が不十分であった。

時間を十分取らない検査は、なにか、見落とすものなのである。大腸内視鏡検査は簡単ではないので、初学の人には、良き指導者が必要であろう。

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2013/01/02   今年の新規癌罹患数の推計値85万人! 

 厚生労働省管轄の独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターのデータを見ると、近年、癌の新規罹患人数はうなぎ上りに増えている。

 罹患数は、2000年は53万2233人、2001年は56万0694人、2002年は57万0598人、2003年は62万0011人、2004年は62万3275人、2005年は64万6802人、2006年は66万4398人、2007年は、70万4090人と発表されている。ちなみに1975年は20万6702人、1980年は25万1041人、1985年は33万1485人、1990年は40万1941人、1995年は47万3770年、2000年は53万2233人となっている。

 2000年代の年平均増加数は、年に2万4551人。2007年以降2012年まで、同様の勢いで増えていると仮定すると、2013年の新規癌罹患数は、なんと85万1396人と推定される。

 一方、癌による死亡者数は、2000年29万5484人、2005年32万5941人、2010年35万3499人、2011年は35万7305人と発表されている。

 罹患数の増加の割に死亡者数はあまり増えていない。しかし、2013年の癌の罹患数は、既に85万人という驚くべき推定値を示した。

 新年早々、いやな推計値が出てきたものだ。癌戦争の戦費を節約し、国の経済を助けるためにも、癌の予防の重要性がますます重要になってきた。

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2013/01/01   謹賀新年。今年は皆様に幸多き年になりますよう、お祈り申し上げます。

2012年12月29日の午前中に高度約10km・北北東から見た富士山の図です。

年末に発足した、安倍政権は経済再生・経済復活を掲げている。私も全面的に賛成だ。世界第二位の経済大国の復活を目指すべきだ。そこで、世界第二位にちなんで、去年、たまたまドバイから帰る道すがら飛行機から撮れていたエベレストに次ぐ世界第二の山、K2峰の写真を掲載します。

2012年10月、パミール高原上空高度約12kmからに見たK2峰と形と位置から推定される峰 。左奥に見えるのはもしかすると約1200km離れたエベレスト??

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2012/12/23   将棋の米長邦雄さん 前立腺癌で逝く。69才。新規癌患者数毎年70万人の日本。 

 将棋の米長邦雄元名人が、前立腺癌で、12月18日お亡くなりになりました。心から、ご冥福をお祈りします。

 私の趣味は将棋で、中学高校ころは、大会で何回か優勝して、賞品を自転車の荷台にどっさり積んで家に凱旋して、将棋の棋士を夢見たこともあった。 大学時代は東大将棋部で2度全国優勝し,大将を務めたこともある。21歳と30歳の時、東大将棋部OB戦で2度優勝している。

 1970年(もしかしたら1969年)、私が小学6年生(1969年なら小学5年生)の時、米長さんは七段でNHKの将棋講座の担当をしていた。番組で、米長七段は四間飛車やぶりの講義をしていた。その内容の一部が、大山名人 著の「将棋は四間飛車」と異なっていた。問題点は山田定跡で5四歩とついた形での、3五歩の仕掛けの成否である。大山名人の著書では仕掛け無理と書いてあったのに、米長七段はテレビで仕掛けありと言ったのである。小学生の私は疑問に思い、NHKに投書した。 1週後にその手紙がアナウンサーの手で取り上げられた。アナウンサーは「この間の仕掛けのことで、こんな投書が小学生から来ています。」といって米長七段に手紙を見せた。米長七段は、手紙を一瞥し「ほう、よく勉強していますね。ははははー」とけむに巻いて話は終わった。米長七段が間違っていたのである。

 米長七段はその後、昇段し大活躍した。私は大学生時代、氏の著書「米長の将棋」を愛読した。大学生の時の大山名人との王将戦における勝負、五〇歳名人になった中原名人との闘 いは、特に印象に残っている。

 今、米長さんの関連のサイトを読んでいると、性豪であった米長さんはそれが出来なくなるのを嫌がって前立腺の切除手術を拒否したと書いてあった。それなら、 「HIFU」という手があったのに・・・・。HIFUでは7−8割はそれが維持される。米長先生はご存じで会ったのであろうか?

 先の歌舞伎の中村勘三郎さんといい、この米長邦雄さんといい、癌で死ぬ有名人が多いが、実は、今の日本では、毎年約70万人(2007年)が癌になり、35万人が癌で死んでいるのである。 今や、日本は「癌戦争」の時代に突入しているのである。

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2012/12/05 歌舞伎俳優の中村勘三郎さん死去 57歳

2012.12.5 06:51   中村勘三郎さん=平成22年10月2日、大阪市中央区の大阪城公園(沢野貴信撮影) 
 

 江戸時代の芝居小屋を再現した「平成中村座」など歌舞伎界に新風を吹き込み、テレビや映画、現代演劇などでも活躍した人気歌舞伎俳優、中村勘三郎(本名・波野哲明=なみの・のりあき)さんが5日午前2時33分、急性呼吸窮迫症候群のため東京都文京区の病院で死去した。57歳だった。葬儀・告別式は未定。
 勘三郎さんは平成24年6月、食道がんを公表。7月に摘出手術をし、回復が伝えられたが、抗がん剤治療などにより免疫力が低下、肺炎を患い、重篤な状態が続いていた。
 

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2012/10/21-24   第20回 UEGW(アムステルダム)に参加 

 今回のUEGWは、消化管の内視鏡の分野では、日本勢の大活躍であった。ESDをはじめとした内視鏡治療技術と、拡大観察とIEE(NBI)を中心とした診断技術の教育の場といっても過言ではなかった。ヨーロッパが日本を上回っていたのは、confocal endoscopy の分野ぐらいであった。

 しかし、2003年に開発されて、かつて一世を風靡したダブルバルーンの話はすでになく、医療は日進月歩であることを再認識させられた。中国や韓国の先生方からも未来のありそうな発表があった。ヨローッパの人々も優秀な人々なので、今回の教育内容に、4−5年で追い付いてくるであろう。日本勢も一層の研鑽して真に患者を救う技術を開発して、知識と知恵を積み重ねていかねばならない。

 アムステルダムの町は、ドバイと比べると、たばこ臭く、麻薬臭く、薄汚くいやな感じであるが、人は多く、栄光と衰退を繰り返したポテンシャルのある町だった。しかし、水路の水位は高く、北海とは大きな堤防で隔離されているとはいえ、今や海抜ー7mなのだそうだ。

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2012/10/19-20   第20回 UEGW(アムステルダム)に参加前にドバイに立ち寄る 

 今月は学会が続く。アムステルダムへは、かつてJALやANAの直行便があったが、今はない。KLMの直行便があるだけだ。ANAのパイロットさんから聞いた話であるが、北極圏は地球の磁気のせいで、放射線被爆が強いらしい。ということで、ちょっと遠いが、別の目的もあり、南回りのドバイ経由でアムステルダムに行くことにした。

 ドバイで2日ストップオーバーして、ドバイの医療事情の視察を行った。4年半前に、大学連合で、日本の病院をドバイに作ろうという話が持ち上がり、ドバイを視察していたからだ。その後どうなっているか、見に行ったわけである。ハーバード大学資本の病院はちゃんと出来ていて、それなりに患者もいたが、個別の医療モールは、空きが目立った。患者もちらほらであった。医療モールは苦戦中と見受けられた。やはり、病院が必要とされているのだ。ちなみに、日本の大学連合の病院は、2008年のリーマンショックで完全に立ち消えになっている。来れば、それなりに、うまくいっていたような印象を受けた。

 

 ドバイは、パームジュメイラも、メトロも、世界一の高さ828mのブルジュハリファ(ブルジュとはアラビア語で「塔」の意味)も、出来上がっていた。周囲はさらにビル開発が続いていた。しかし、塔に上り遠くを見ると町のすぐ先は、広大な砂漠であった。

 

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2012/10/10-13   第20回 日本消化器病週間(神戸)に参加 

 10月10日初日から学会に参加。

 2日目の山中先生の講演は、ノーべル賞受賞の発表を受けて、マスコミとか政府とかいろいろの事柄の対応に忙しく、代講となった。

 代講といえども大ホールは満員。山中教授はビデオでお詫び出演。顔には笑顔がなく、声も硬いものであった。

 さて、代講は、彼の教室の教授の一人、青井貴之教授。京都大学消化器内科の千葉勉教授の紹介で、4−5年前に、私が山中教授の研究室を見学に行ったときに対応してくれたさわやかな好青年、京大の消化器内科出身の若い先生で、まだ、39歳か38歳である。9日に山中教授から代講の話があったそうである。わずか2日前!しかし、講演は素晴らしくわかりやすかった。

 開発当初のiPS細胞には、腫瘍源性が強かったが、c-mycをL-mycにしたところ、腫瘍源性は消失した。また、レトロウィルスを使わなくても、DNAに因子を組み込まなくても、iPS細胞は誘導されたこと、また、サルに細胞を入れていることなど、その後の進展について、よくわかる講演であった。

 これを使って、病気をどう治すのか?臓器は作れるのか?個体としての若返りはできるのか?延命は?老人からiPS細胞をつくって、身体に戻したら、老化により喪失した機能はとりもどせるのか?

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2012/10/08   山中伸弥先生 iPS細胞の開発でノーベル賞に 

 自然界では、細胞は細胞から生まれている。人に限らず脊椎動物は、個体としてその命は有限である。しかし、細胞レベルで考えると、細胞は、はるかな太古、過去から連綿と現在まで続いている。細胞は時とともに少しずつ老化して行くから、どこかで若返りしていないと、過去から連綿とは続いて来ることは出来ない。つまり、細胞には若返りのメカニズムが間違いなく存在しているのだ。

 では、そのメカニズムはどうなっているのか?人を若返りさせることは出来るのか?若返りの時は卵子や受精直後のころ起こるらしいから、卵子や受精食後の卵に現れる因子にカギがある。

 山中伸弥先生は、可能性の高い因子を24個に絞り込んで、いろんな組み合わせで、レトロウィルスで遺伝子内に入れたところ、とある4種類の組み合わせ(c-myc,KLF4,Sox2,Oct3/4)で、細胞が若がえった。このお仕事をねずみの線維芽細胞でおこない、2006年に発表した。この発見発表が今回の受賞の理由である。

 山中先生は、「今回の受賞は、自分ひとりものでなく、日本全体が評価されたものです。」と述べている。しかし、それは謙遜のしすぎで、正しい知識蓄積と賢明な洞察と努力が今回の受賞をもたらしたことは、だれの目にも明らかである。

 iPS細胞でなにをするのか?若返りの詳しいメカニズムどうなっているのか?今後の課題である。

 

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2012/09/19-21   日本癌学会学術総会 札幌で開催される 

 学会に参加するときは、クリニックを休んでしまうので、前後は忙しくなる。20日からの参加予定であったので、少しでも緩和しようと、19日は水曜日であったが、振り替えでクリニックを開いたところ、なぜか、新患も急患も多く、加えて、スタッフの急病で、結局、朝までかかって徹夜となった。こんなときは、学会に行っても間違いなく、寝てしまうので、参加しても無駄なのであるが、時々起きて、話が聞けることもある。しかし、やはり情けない。飛行機もホテルも予約していたので、朝6:10の朝一の飛行機に乗って、札幌に出かけた。飛行機は座ってから降りる直前まで、寝ていたようで、離陸も着陸も覚えていない。

 今回の学会は参加登録4500名、演題約3000台。20日の昼には、James P. Allison先生の抗CTLA-4抗体(ipilibmab)による悪性黒色腫の治療の話を聞いた。2-3年前から注目されている治療法で、今回は、抗CTLA-4抗体(ipilibmab)に、IVAXを加えて治療すると、悪性黒色腫の治療成績が飛躍的に改善するという話であった。ものの見事に消えた肺転移巣画像を見せてもらった。この薬を使えば、これまで効果がほとんどなかった癌免疫治療も新たなる時代に入りそうだ。

 20日の昼からは、シンポジウム「癌研究と社会」を聞く。分子標的薬剤関係の研究費は他国に比べてアメリカは莫大で、開発された新薬はたいていアメリカ系資本で、高価で日本の貿易赤字の原因となり始めている。先の抗CTLA-4抗体(ipilibmab)はFDAで承認されたが、1クール12万ドル、今の為替で、約950万円とか。目もくらむ金額である。この高価な薬、日本にはまだ入ってきていない。

 このような事態を背景に、中村祐輔先生が、日本発の抗ガン剤、日本の利益という観点をかなり強く訴えていた。たしかに、日本の学者にもいい種が多くあるので、なんとか、国内で薬が開発できないものかと思う。結局は日本国民が新規抗ガン剤の実験台になることを嫌がれば、日本国内開発は難しいであろう。時代は動き、今日の新しいものは、明日の古いものとなる。効きにくい薬はより効く薬に負ける。実験台という言葉は刺激的であるが、次の時代を切り開くためには、国民の意識改革も大切だと思う。

 ただ、癌克服は人類の夢なので、日本だろうとアメリカであろうと、また、別の第3国であろうと誰が開発してもいいのではないだろうか。貿易収支の問題は、別の分野でアメリカや他国に売れるものがあれば、それでいいのだから。

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2012/09/16   日中尖閣諸島紛争  

 私は日本と中国の公式な主張をともに聞いていないので、本当は、この島々がどちらが属するのか、よくわからないが、日本のマスコミの放送内容などを聞いていると当然、問題の島々が日本に属すると判断している。私は日本人でもあるので、日本に属してほしいという思いも強い。

 それにしても、野田首相の行った国有化のタイミングは最悪だった。胡国家主席から、断固反対と言われた翌日に国有化を行うとは、友人に対する態度としては大いに問題がある。中国人にはなによりメンツが大切である。同じことを行うにしても、3か月待つべきであったろう。国家主席の発言は大変重いものがある。友人なのだから、同じことをするにしても、少し待ったり、少し相談したりして、相手のメンツを立てるべきであった。反対された次の日に即座に行うとは、稚拙な外交といわざるを得ない。

 日本国民も中国人民も平和と繁栄を願っているのであるから、争うべきではない。

 日本政府としては、実効支配を続けるのは勿論のことであるが、まずは、中国の言っている理由が日本国民には聞こえてこないので、また、おそらく、中国人民も日本の言っている理由は聞こえていないのであろうから、両国及び、台湾のお抱え学者間で、オープンな討論会を何度も開いて、和解の時を待つべきであろう。

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2012/05/19-22   米国DDW サンディエゴで開催される 

 5/19午後0:00に学会場に到着。ポスター、主に工藤進英教授の教室の一連のポスター発表を見て、4:00からNew Technology for the Therapeutic Endoscopyに参加したところで、珍事は起きた。これまで何回も、いろんな国で学会には出ていたが、こんなことは初めての出来事であった。最後から2人目のプレゼンター(Endoscopic Visualization of the Entire Small Intestine in 27 Consecutive Patient Using Novel Motorized Spiral Endoscope | 285 |  Paul A. Akerman)が螺旋型小腸内視鏡を発表を初めて5分ぐらいのとき、がっしりとした感じのアフリカ系アメリカ人(真黒な黒人)が、演台につかつかと歩み寄って発表者に何やらぶつぶつと迫った。ちょうど、新しくバージョンアップした螺旋型の内視鏡を人体に初めて適用した結果を述べているときだったので、その実験台にされてトラブルが起きたのかととも思った。そして、Akermanがアフリカ系アメリカ人(真黒な黒人)に対して「yes」と言ったかと思うと 、黒い人はよくわからない英語で演説を始めた。すぐに若い白人の女性のスタッフが駆け付けたが、演説は3−4分続いた。若い白人の女性のスタッフはアフリカ系アメリカ人を興奮させないように注意しながら、「出て行きましょう」と促していた。しかし、アフリカ系黒人はその場にとどまり、ついに、「もう時間がありません。私は90ドル払わなければ、牢屋に入れられる。」この言葉を何回も繰り返しはじめた。

 物乞いだったのだ。

 次の発表者(Gastrointestinal Tissue Sampling With Endoscopically Deployed and Retrieved Sub-Millimeter Wireless Microtools 5:00 | 286 | )  Florin M. Selaru1が、いくらか渡した。かえると思いきや、さらに数分粘った。結局それ以上暴れなかったので、警察も呼ばれず、終わったが、セッションの時間が短くなって、2人の演題の質問と討論の時間が省略された。日本でもアメリカでもヨーロッパでも、中国でもタイでも韓国でも台湾でもチェコでもロシアでも、こんなことはなかった。ちなみに、サンディエゴの町には物乞いがあふれていた。アメリカはプロテスタントの国(労働で生きる国)とおもっていたが、カトリック的な国(施しで生きる国)に変貌しているようだ。

 ちなみに、螺旋形内視鏡は、バージョンアップして、ドライブ部分をモーターにして分離していた。約半分の症例で、平均20−30分でほぼすべての小腸が観察できたと報告していた。発表に誇大がなければ、現在のバルーン小腸内視鏡は半分見るにも90分ぐらいかかるので、ひょっとすると螺旋形小腸内視鏡は今のバルーン型小腸内視鏡を凌駕するかもしれない。

 

 5/20 今日から企業の展示ブースが開いた。アメリカでも Fujinon の名前が消えて、今年は、Fuji Film となっていた。1998年に私が撮ったEC485ZWによる色素拡大内視鏡の写真が今年もブースに使われていた。当時の担当者は誰も残っていないけれど、この2枚の写真、よっぽど気に入られているようだ。クリスタルバイオレットとメチレンブルーの二重染色であるのだが、この画像当時は何を意味するのかよくわからなかった。しかし、今の目で見ると、腺管の形や核層の厚さが明瞭に観察され、間質に浸潤している白血球と思われる細胞の核も明瞭に見えている。また、焦点深度が今のEC590zwシリーズより深いので、全体的な拡大観察にも成功している。たしかに素晴らしい画像だ。

 ちなみに、画素数は85万画素(画像解析で130万画素表示)で史上最大の画素数を搭載した内視鏡であった。14年前は記録媒体も乏しく、この画像と動画を残すのに、画像を4台のコンピューターに分けて記録し、さらに再合成をするという手間がかかった。プロセッサーの処理能力は当時は低かったので、画像は15秒に一こま。したがって、ちらついて、臨床的には辛かった。この内視鏡があまり売れなくて、当時のM社長が突然解任されて、このスコープの次もなくなったのであるが、最近のプロセッサーで見るとちらつきもとれていて、すばらしい絵が出る。

 

 5/21 10:00からのAGA Presidential Plenary に参加。冒頭のPresident's Announcement (by Prof C. Richard Boland) を聞いていると、アメリカで行われている医療改革に、現場の医師は反対のようである。会場の大画面に氷山に向かうタイタニック号のスライドを表示しながら、Prof C. Richard Boland会長は「医療は危機に向かっている。この改革は涙なしでは語れない。危機に向かっている中で、われわれは一致団結しなければならない。団結してわれわれの意見をワシントンに届けよう。」と訴えていた。

 また、同じPresidential Plenaryセッション How will we prevent colorectal cancer in the future  において、Prof Dennis J. Ahnen はここ20年ぐらい、アメリカでは大腸癌の死亡者数は減ったが、これは、われわれが大腸内視鏡を行いポリープをとってきたからだと述べた。

いいニュースです。(つべこべいわないで)私たちがすること(大腸内視鏡検査)はよくみえるでしょう。

 確かに、このスライドは説得力がある。1975年にくらべて2010年では大腸癌の訂正死亡率は約半分となっている。また、大腸内視鏡によるスクリーニングの実施割合が、対象年齢のなんと65%もあるのだ。スクリーニング法として、日本ではずっと便潜血が採用されてきた。国立癌研究センターの疫学部門のお偉いさんは、免疫学的便潜血反応の開発者で、この間も日本の学会で大腸内視鏡検査は大腸癌死亡者数を減らすには無効で、大腸癌死亡者数を減らすには便潜血しかないようなことを言っていたが、彼はこういうデータをまったく勉強していないのであろうか。

 私は、便潜血陰性なのに進行大腸癌で死んだ人や便潜血反応が陽性となって大腸癌が見つかったが病状が進み過ぎていて、死んだ人々を何人も見てきた。私は1996年の厚生省の班会議のメンバーの一人であったが、その時、既に便潜血反応の限界は指摘されていたはずだ。大腸内視鏡検査にもっと重きを置いていれば、日本の大腸がんの死亡者数も今の半分になっていただろうと思われる。二万人/年×20年÷2=二十万人。これが、政策間違いによる大腸癌死亡者数のおおよその数字である。

「ポリープ(平坦陥凹型腫瘍も含む)を取れば大腸癌は発生しない。」「大腸ポリープ(平坦陥凹型腫瘍も含む)をすべて取るべきだ。」

 この理念を捨てて、私に社会的圧力を加え始めたときに、厚生労働省の役人は二十万人を密かに殺しはじめていたのだ。このことが、このアメリカのデータをみれば、明らかにわかる。世界に冠たる医療体制と、野田首相は胸を張る。しかし、「癌の罹患者が65万人で死亡者が34〜35万人」という日本の現実は、とても世界に冠たるなどという言葉は使えず、知識と知恵に基づいた、不断の改善努力を迫っているのである。

 

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2012/05/12-14   第回日本消化器内視鏡学会 東京高輪プリンスホテルで開催 学会会長は福島医科大 小原勝敏先生

 西暦2012年5月12日から、東京高輪で消化器内視鏡学会が開催された。いろんな分野が少しずつ進んでいた。ESDの分野では、カウンタートラクションの方法が各種工夫が報告されていた。

 画像の点では、富士フィルムのBLIシステムが発表されていた。FICEでは、NBIに対抗できないため、ついに、光源に2種のレーザー光を使う工夫を加えたのである。発表された画像は、FICEよりもNBIに近いものになっていて、一応成功していたように思えたが、実際使ってみないと真価はわからない。富士フィルムも以前はオリンパスと同じ面順次式を採用していて、最近装備された自動画像選択も ずっと以前には行っていたのであるが、1988年ごろに、CCDをパナソニックからソニーに替えて、面順次式から同時式に鞍替えした経緯がある。以来、光源はキセノンランプであったが、今回、24年ぶりに光源にレーザー光を採用して、光源システムに工夫を加えたのである。しかし、同時式の宿命で色飛びが起こるので、画素数を面順次式の 4倍ぐらい以上にしないと、NBIにはかなわないであろう。

 また、会長講演は、「食道・胃静脈瘤の止血方法 この30年間の進歩」であったが、結構わかりやすくて良い講演だった。講演の中で、胃静脈瘤からの出血を確実に止められる唯一の止血法(=アロンアルファを用いる止血法)が、まだ、社会保険収載されていなくて、 社会保険の下では出血は放置せざるをえないという現状には、改めて驚いた。

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2012/04/18-20   第98回日本消化器病学会総会 東京新宿京王ホテルで開催 学会会長は自治医科大消化器内科教授 菅野健太郎先生

 西暦2012年4月18日から、第98回日本消化器病学会総会が東京新宿京王ホテルで開催されている。会長は自治医大消化器病内科教授 菅野健太郎先生。 菅野先生は同じ岡山県出身、岡山朝日から東大の理科3類に入学した。先生が駒場の助教授時代には、随分と大腸内視鏡の症例を送っていただいた。現在、菅野健太郎先生は、消化器病学会の日本消化器病学会の理事長でもある。理事長で学会長も兼ねるとはあまりないことだ。理事長になる前に、前理事長の跡見先生から学会長を頼まれていたので、このような変則的なことになったのであるが、菅野先生自身「自分としては、いたしかたないと思うが、少し不本意な面もある」とおっしゃっていた。人生成り行きだからこんなこともあろう。

 さて、今回の学会のテーマはトランスサイエンス。このテーマは理事長・学会長人事と違って、菅野先生が主体的に選んだものである。トランスサイエンスとは、「科学的真実を市民の前に提示して、開かれた対話の中で、科学者と市民が共同して、最善の政策決定をして、健全な社会を維持していくというあり方」を意味しているそうだ。昨年2011年3月11日の大震災と、続く2011年3月15日の広島原爆5個分の放射能がもれた福島原発第3原子炉の爆発事故、その後引き続く避難と、環境汚染、食物汚染・・・・・。正に時期を得たテーマであった。

 会長が招待したのは、100年前に死んだ田中正造先生と原田正純先生、そして、Tadatake Yamada先生と。田中正造先生は、100回忌ということで、菅野健太郎先生に呼び出され、スクリーンに現れて、私たちを睨んでいた。田中正造先生は、三井栃木県足尾銅山鉱毒による谷中村の破壊を文明の凶器と言って、民を救うために一生をささげた。一方、原田先生は、チッソによる熊本県の不知火湾の水銀汚染によって引き起こされた、今も続いていいる水俣病をめぐる政府や学者、人々の行動、これを「水俣学」として著書を現わした先生である。お二人とも、政府(官吏)と企業とお抱え科学者が結託して、弱者を苦しめる社会の有様を看破して糾弾した。

 一方、Tadatake Yamada先生は菅野健太郎先生のミシガン留学時のメンター(=お師匠)、今はビルゲーツ財団の理事長である。講演の中で、世界一のリッチマンであるビルゲーツの悩みは、社会的貧困であるという。 あのビルゲーツが社会主義??と一瞬驚きそうになったが、数秒後「薬を買う少しのお金もない貧困が全世界にあふれていることが自分の存在を脅かすと認識している 。たとえば、SARSは中国の農村で見つかって、すぐに、香港、インドネシア、オーストラリア、カナダとへと感染拡大した。貧乏人の病気が金持ちにも感染したことがビルゲーツにとって衝撃的だった。」と聞いて、やっぱり、ビルゲーツはカトリック的スーパー自己中心主義者と認識。マイクロソフトの商売の仕方からの印象と一致。ポリオを全世界からなくすことや、マラリアを予防することが、目前の課題という。 マラリア予防のアイデアを募集して、山田さんTadatake Yamada先生は、100個の一見くだらないアイデアにも、1個ぐらいはあたりがあるという。

 また、ビルゲーツが富を注いでも治したいという病気として、膵癌、IBDを、講演の中で3−4回繰り返していた。アップルの社長が膵がんで死んだので、ビルゲーツも、きっと膵癌を随分と気にしているのだろう。また、身近な親戚にIBD 患者がいるのだろう。カトリック的であろうと、社会主義的であろうと、困っている人を助けようとする気持ちには、貴いものがあり、共感を感じる。ちなみに日本でも膵臓癌死亡者数は、近年漸増し約3.2万人、肝臓癌を抜いて、消化器領域の死亡者数第3位に躍り出ている。

 菅野先生の理事長講演 は圧巻であった。理事長講演は竹本忠良先生が後進に道を譲ってからというもの、結構、藤原先生の講演をはじめ、熱い講演が多いのであるが、内容の激しさでは菅野先生が群を抜いていた。菅野先生の語り口はクールなのであるが、内容は極めて激しかった。昨年の福島第一原発事故 による放射性セシウム、 有機水銀、ダイオキシン、の健康被害に始まり、最後は、たばこ、お酒の発癌促進という研究結果まで話が及び、これらを「トランスサイエンス」しなさいとクールに厳しく訴えたのである。

 「トラサイ」党が立ち上がるかもしれない。

中央がTadatake Yamada先生、右端が菅野健太郎教授

 

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2012/01/01   謹賀新年! 去年は、震災・原発事故など大変な一年であったが、今年はどんな年になるのやら。

 西暦2011年、平成23年が終わり、西暦2012年、平成24年を迎えた。2011年は3月の大震災・福島原発事故と戦後最大の天災が起こり、欧州の共同体に発する経済危機 が世界に及んだ、大変な一年であった。個人的にも事故・病気・税務署の横暴・経済不況などなど、月替わりで災厄がめぐってきた。一休和尚の歌うように、「正月は、冥土の旅の、一里塚、めでたくもあり、めでたくもなし」といった心境であるが、いつまでも悪いことは続かないはずであろうから、日々努力を怠らず、健康に注意して過ごし、今年は少しでも良い年にしていきたい。

 私は癌撲滅の理念の下、長年、努力を続けてきた。実際、中目黒消化器クリニックに通院して内視鏡検査をきちんとうけている人たちは、食道癌・胃癌・大腸癌の予防に、完全に成功している。しかし、日本全国で見ると、癌はますます増加して、ここ2−3年は、毎年約55−58万人が癌に罹患し、約33−35万人が癌で死んでいる。癌の一次予防が社会的に、ますます、重要になってきた。癌の発生を減らす方策を実行しなければならない時代が到来している。まずは、今年は、ピロリ菌退治、たばこ禁止、飲酒の抑制、大腸ポリープ切除の徹底、大気汚染抑制、がん関連ウィルスのワクチン投与、放射線被ばくの軽減などの癌発生予防の施策を実行すべき年だ。

 癌の発生が抑制されれば、癌による人々の苦しみが減るのは勿論のこと、癌にかかる医療費も抑制されて、政府の経済的負担も総合的に軽くなるであろう。日本経済にもよい。

2011年11月、富士山と玉を抱えた雲竜。

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2011/11/11   TPP(trans-pacific strategic partnership)について 今度はフジテレビからインタビューを受ける。

 11日の昼休み、今度はフジテレビの岡本歩さんから電話がかかってきた。TPPに関する取材であった。今夜のFNNスーパーニュースに間に合わせたいから、今から取材したいといわれた。20分だけならOKということで了解。午後2:00からカメラがまわった。内容はテレ朝とほとんど同じ。夕方からの放映は約15秒。内容はオバマ政権の医療改革の部分が中心であった。木村太郎キャスターがコメントの形で、私と同じ様な主旨の内容を発言していた。

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2011/11/10   TPP(trans-pacific strategic partnership)について テレ朝からインタビューを受ける。

 野田首相がTPPへの参加表明をするということで、農業系議員連や日本医師会などがと「TPP参加絶対反対」と随分と盛り上がっている。農業系の議員連は、野田首相がTPP参加を表明するなら、民主党から離脱すると言っている。農業の自由化は、安い農作物が入ってきて農家が困るということだ。また、日本医師会は、アメリカの利潤追求の医療制度を押しつけられると、日本式の社会保険医療制度がつぶされるないかと考えて、反対している。また、混合診療の解禁を迫られ、金持ちでなければ医療が受けられなくなるのではないかと危惧している。一方、産業界は製品の輸出にプラスになるので、賛成している。

 10日の昼休み、テレビ朝日のモーニングバードのディレクター門上晋一朗さんから突然電話がかかってきた。「TPPについて、先生のお考えはいかがですか?」「私はTPP参加には賛成です。」と答えたところ、あれこれと事細かに質問してきた。それはこう、それはああと、答えているうちに、「きょうの夜7:00にインタビューに伺いたい。」ということになった。

 午後七時の約束であったが、六本木からの道が混んでいて、到着は60分ほど遅れ、8時であった。カメラスタッフもついて来ていた。早速、インタビューが始まる。インタビューヤーは、 テレビ朝日のモーニングバードのレポーターの清水貴之さん。

Q「医療が自由化されると、アメリカの医療が入ってくるでしょうか?」

A「自由化されると、部分的には入ってくるところもあるでしょうが、大きく入ってこないと思います。日本の医療水準は臓器移植以外の分野では、ほぼ世界最高のレベルで、アメリカに引けを取るものではありません。とくに、私が専門としている消化器内視鏡や消化器手術の分野では、日本の医療レベルのほうがアメリカよりもずっと上です。これは私が長年、アメリカや欧州の学会に参加して、直接見聞きしたことですから間違いないでしょう。しかも安価に提供されています。ですから、アメリカの医療と競争すれば必ずや日本の医療が勝つでしょう。したがって、アメリカの医療機関が日本に入ってくるということは、まず、現実には起こらないでしょう。むしろ、消化器内視鏡などの世界トップレベルの日本の医療が海外に進出していくことが予想されます。わたしも、アメリカで内視鏡をしたいくらいですから。」

Q「日本の医療は、すべての分野で本当に世界レベルですか?」

A「たしかに、臓器移植などの日本が遅れている分野では海外勢が参入してくるかもしれません。しかし、入ってくることができる分野は、つまりは、日本の医療の遅れているところですから、病気が治らなくて困っている患者さんが助けられるということになり、それはそれでいいことだと思います。」

Q「地方の開業医のレベルでは、太刀打ちできないこともあるのではないですか?」

A「保険診療を行う日本の開業医は、アメリカにくらべて、安い価格で診療しています。ですからそんな利益の薄いところに、もしかしたら、赤字になるかもしれないところに、しかも「日本語」という文化障壁もあるのに、利益追求の企業が参入してくるとは、とても考えられません。それに地方の開業医の先生方も勉強している方はほんとうによく勉強していらっしゃいますよ。」

Q「TPPに参加したら、アメリカから押しつけられて、日本の医療が営利主義になってしまうのではという危惧がありますが、先生はいかがお考えでしょうか?」

A「アメリカの営利主義的な医療体系は、非人道的な悲劇をもたらし、アメリカ国内でも反省されています。たとえば、骨髄移植を受ければ治る可能性が高かった白血病の少女がいましたが、彼女は貧乏で、彼女の加入していた保険は骨髄移植をカバーしていませんでした。そのため、保険会社は彼女に骨髄移植の治療を認めませんでした、結局、少女は骨髄移植を受けられないまま、白血病で死んでしまいました。少女が死んだあと、少女の母が保険会社を訴えて勝利しました。保険会社の社長は財産を抱えてメキシコに逃亡、保険会社は解散となりました。この事件は、社会保険がよくゆきと届いている日本では、ちょっと考えられないような事件です。クリントン国務長官やオバマ大統領は、こんな自国の非人道的な医療体系を憂慮して、むしろ日本型の社会保険制度を医療に導入しようという医療改革を推し進めています。そんな人たちが政権を取るくらいですから、アメリカが日本に営利主義的な医療体系を押しつけてくるとは思えません。」

Q「TPPに参加しても、今の日本の国民皆保険の社会保険制度は大丈夫でしょうか?」

A「まちがいなく大丈夫です。社会保険制度をかえるには、健康保険法の改正が必要です。国会の議決なく現行の制度を変えるわけにはいきません。日本人は元来、相互扶助の精神がつよい国民性を持っていますから、アメリカ型の医療体系を選択することはまずないでしょう。それに、さきほども申し上げましたように、アメリカの民主党は日本型の社会保険制度を高く評価していますから、アメリカが日本に営利主義的な医療体系を押しつけてくるとは思えません。むしろ、TPPを利用して、アメリカ政府が国内の医療制度を日本型に変更するかもしれません。」

Q「先生の話を聞いていると、たしかに、医療制度は大丈夫かもしれませんが、TPPに参加するとアメリカの高い薬を買わされて、日本が損をするということはないでしょうか?」

A「アバスチンやレミケードなどの分子標的薬剤のことですね。たしかに、それらは月に数十万円します。これらの分子標的薬剤は、輸入額としてすでに1兆2000億円もかかっているという話が今年の博多のJDDWで出ていました。TPPに参加するしないに関わらず、この問題はすでに発生しています。ですからこの問題でTPP参加に反対というのは筋違いです。アバスチンもレミケードもここ数年で保険収載されました。それは、これらの薬がよく効くことがあるからです。治る薬を評価して採用することは、日本の医療レベルを高める上で是非必要なことです。治らなかった患者さんが治ってくるのですから。これらの薬の成功に釣られて、今や、多数の分子標的薬剤が開発されています。今後、多数の分子標的薬剤が臨床 上に現れてくるでしょう。しかし、分子標的薬剤の効果は限定的なものもあり、薬によって微妙に異なります。特定の癌が完全に治ってしまうという夢の抗がん剤もあれば、ちょっとだけしか延命できないという薬もあると思います。これからは、費用対効果の点から取捨選択や競争による価格の低下が起こってくるでしょう。」

Q「TPP参加は、医療を受ける国民にとってどのような影響があるでしょうか?」

A「現在の日本における保険医療の最大の問題点は財政的な問題です。社会保険では企業の作る保険組合が医療費を支払うわけですが、業種によっては黒字のところもあるようですが、全体として赤字が多いようです。30年前は社会保険の自己負担割合は通常1割でしたが、不況が長く続き、経済が悪化していったため、自己負担分が切り上げられて、今は3割となっています。ちなみに、もし、TTPへの参加によって企業の業績が良くなれば、保険組合の財政もよくなって、自己負担分が昔のように下がるかもしれません。」

 インタビューは約45分であった。翌朝のモーニングバードでは編集されて、約45秒間放映された。アメリカの医療改革について、マスコミの人たちはあまりご存じでなかったらしく、その部分が大きく取り上げられていた。

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2011/11/03   大腸癌の原因は腸内微生物か? 

 今年のUEGWの発表で、注目された分野は、腸内細菌であった。腸内のゲノムと肥満や糖尿病、各種疾患の関係が研究され始めていた。もともと、大腸内には、細菌をはじめとするおおくの微生物がいて、ゲノムの種類は300万にも達するのだそうだ。人間の遺伝子の数10倍の種類があるという。それらが近年の解析技術の進歩によって、網羅的な解析が可能になったのだ。

  中でも興味深かったのは大腸がんと腸内内容物(ゲノム)の話だ。腸内細菌がいないねずみは大腸がんにならないそうだ。そこで、腸内細菌のいないねずみに、大腸がん患者Kの腸内内容物と、大腸腫瘍のない人Nの腸内内容物をいれて、各々におけるAberrant crypt fociという、小さな大腸腫瘍の発生個数を調べたところ、図のごとく、大腸がん患者の腸内容物を入れたものの方が、よりたくさん、Aberrant crypt fociという、小さな大腸腫瘍が発生したという。なお、図の中にあるAOMというのは、発癌物質のことである。ねずみに大腸腫瘍のない人の腸内内容物を入れた場合は、ほとんど腫瘍は出来ないが、ねずみに大腸がんの人の腸内容物を入れた時は、腫瘍が出来て、AOMという発癌物質により、腫瘍は更に多く出来てきた。

 

 また、その原理を解明するために、各種の細胞変異因子がどのように誘発されるかを測定したのが下の図である。大腸がんの患者の腸内内容物は、大腸腫瘍のない人の腸内内容物に比べて、ELF3、KFL4、MATH1、HES1などの増殖因子を多く誘導していた。

 この研究から類推すると、数年後には、「xxx細菌が大腸がん・大腸腫瘍の原因である」という可能性もある。つまり、「ピロリ菌が感染しなければ、胃癌は、ほとんどまったく発生しない。 」と同じように「xxx菌がなければ大腸がん・大腸腫瘍は発生しない」ということになっているかもしれない。

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2011/10/24   UEGW2011 欧州消化器病週間ストックホルムに参加  

 平成23年10月22日から平成23年10月26日まで欧州消化器週間がストックホルムであった。JDDWと一部重なっていたので、24日から参加してきた。ストックホルムは群島の街で、 陸地に海が虫食い状に入り込んでいて、運河のようになっている。日本にはちょっとない地形 だ。写真はストックホルムの超高級住宅街で、すぐ前は海で、高級なクルーザーが並んでいた。

 今まで、開催された19回のUEGWの中で、ストックホルムは最も北の都市で、10月はすでに薄暗く寒かった。強い風が吹くと黄色くなった木の葉がサーと落ちてくる。日本の晩秋から初冬といった風情だった。地下鉄が御茶ノ水駅の3倍くらい深くて驚いた。

 宿は、ノーベル賞受賞者が泊るというグランドホテルにした。ホテルからは海と王宮や教会の塔の織りなす素晴らしい景色がみえ、スパやプールも整い、素晴らしいホテルだった。

 自分の今までの医学研究の中で、ノーベル賞に最も近い研究と言えば、贔屓目に見て、GUTに載った「大腸平坦陥凹型癌・腫瘍の発見とその癌遺伝子の特徴」ぐらいか・・・。

 私が大学を卒業した1984年当時は、大腸腫瘍・大腸ポリープといえば隆起しているものと相場が決まっていた。1987年、私は富士写真光機の大浦部長ら(当時)を指導して、世界初の臨床に実用できる拡大電子内視鏡EC-HM改を開発した。そして、多数の大腸平坦陥凹型癌・腫瘍を発見した。それを多田正弘先生によって当時開発されたばかりの胃のEMRの技術を、初めて大腸に応用し、大腸平坦陥凹型癌・腫瘍を一括全切除して、完全な形の標本を得るのに成功した。そして、大腸平坦陥凹型腫瘍の癌遺伝子を、東京女子医大の長廻助教授(当時)と神戸大学病理部の藤盛助教授ら(当時)と共同研究して、大腸平坦陥凹型癌・腫瘍は、VOGELSTEINらの唱えていた隆起型癌・腫瘍の遺伝子変異と違って、K-RAS遺伝子の変異がないことを世界で初めてつきとめたのである。

 大腸平坦陥凹型癌・腫瘍は1990年代初頭、欧米では内視鏡で発見できなかったので、その存在が疑われていた。その後、繊細さを重んじる文化の欧州では比較的早くにその存在が認知されたが、 繊細さよりもプラグマティズムのアメリカでは、なかなか、認知されなかった。しかし、2004年にアメリカのFDAに製造販売が承認された、大腸がん治療薬、EGFR阻害剤のセツキシマブ(cetuximab)がK-ras変異陰性の大腸癌に 対して、特に効果あると判明してきて、われわれが唱えた平坦陥凹型の発がん経路も、ようやく、アメリカで認知され るに至った。

  しかし、VOGELSTEINですら、ノーブル賞をもらっていないので、 この研究でノーベル賞をもらうのはやっぱり無理でしょうねえ・・・・・。

 

 UEGWでは、世界中のいろんな新しい治療技術や薬の発表があった。日本人の参加も多く、日本人の発表を聞いていると、JDDWよりも力が入っているように感じる。印象に残った議論は、分子標的薬剤のコストのことである。高額な分子標的薬剤は、値段が高いので使えないといっていた。薬の種類にもよるが、1アンプルで約10数万円が相場。1クールの治療を行うと車を買うくらいの経費がかかってしまう。

 今後、がん罹患者数の増加すると予想されるが、分子標的薬剤は「車」と同じような貿易品となりそうだ。 車に続き、抗がん剤をはじめとした分子標的薬が、貿易の主体となる時代が到来しようとしている。日本では既に1兆2000億ぐらいの市場となっているらしい。

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2011/10/21   JDDW2011 日本消化器病週間 博多に参加   

 平成23年10月20日から24日まで日本消化器病週間があり、博多に飛んだ。もともと消化器内視鏡が専門であるが、学会では各種の分野に参加しているようにしている。 「知るは楽しみ」ということであるが、消化器の分野の最新知識や動向をチェックしておくという目的もある。日常診察においては、総合的な知識が適切な治療に結びつく。

 C型肝炎の治療は現在、ペグインターフェロンとリバビリンがゴールデンスタンダードであるが、今後はインターフェロンが不要となり、いくつかの酵素製剤だけで治るようになるらしい。また、膵臓癌の化学療法は、ジェムシタビンが主流であるが、ジェムシタビンよりも、FOLFOXの変法のほうが治療成績が勝るらしい。TGF-β(腫瘍成長因子β)の阻害薬がいろんな段階でいろいろと開発されていて、脳腫瘍の培養細胞には治療効果があったらしいが、消化器がんの培養細胞に対しては今一歩であった。などなど。21日の金曜日、博多は急な嵐で、学会場の間の移動時、結構濡れた。

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2011/09/08   緊急出血症例を救う。怪しい原因・・・・パンに針?!  

 中目黒は土地柄か、海外と行き来する人が多いらしい。外国から帰ってきたのだけれど、調子悪くなったから見てほしいという患者が結構多い。大概は、アジアから帰国してきた人の下痢症状である。

 さて、先日来院した患者さんはいささか趣を異にしていた。30歳代の近所の会社員が、イカ墨のような便が2回でたので見てほしいと、予約もなく、ふらりと時間外に来院。聞けば、さっき出張先の香港から帰国したばかり で、飛行機を降りるころからイカ墨だという。あれこれと20−30分診察しているうちに、来院時にはなかった冷や汗が出てきた。みるみる唇からも血の気が失せて、白くなっている。来院時には110あった血圧も70ぐらいに下がっている。「気持ち悪くて座ってられません」緊急事態である。間違いなく、大量の出血が進行中だ。 60を切れば心臓はいつ止まっても不思議ではない。40を切れば死は数分後に訪れる。

 関連病院に電話して連絡を取っている間にも血圧が下がってくる。

 イカ墨ということだから、出血元は上部消化管の可能性がたかい。また、急激な血圧低下は大出血で、大出血は大概 、上部消化管出血である。急速輸液で、血圧を確保しながら、緊急の上部消化管内視鏡を実施。

 胃の中に入ってみると、想定通り、血の海。出血源は食道と胃の接合部近辺で真っ赤の血がどくどく噴いて出てきている。運よく、視野の確保できる場所からの出血で、すぐにクリップ3本で 、出血している血管の根元を縛り、止血に成功。一命を取り留めた。クリップ開発者の故蜂須先生に改めて感謝。出血源が見えない場所だと、胃洗浄をおこなわないと、どこからの出血がわからないで、その間に出血が進行して、全身状態の維持が大変なのであるが、この人はラッキーだった。

 食道胃接合部の出血と言ったら、マロリーワイス症候群や食道静脈瘤が代表的である。そこで、患者さんに、イカ墨が出る前に、激しく嘔吐することがあったかと尋ねたところ、「香港から帰る機内で、クロワッサンがでたので、それを食べたら、胸に詰まって、無理に飲みこんだことはありましたが、嘔吐したことは一度もありません。」。その2−3時間後から、イカ墨が始まったとのこと。マロリーワイス症候群にしては、ちょっと違う。

 さて、翌日、止血確認のため、再度、上部消化管内視鏡検査をおこなったところ、出血部の対側に縦に走る線状の潰瘍がある。昨日の検査の時、大量に吐血したので、その時できた潰瘍かもしれないが、それにしては、微妙に歪んでいて、異物が引っかかって出来た潰瘍のようにも見えた。

 クロワッサンの中に針が入っていたのか?来院時にすぐX−pを取っておくべきであった。患者いわく「もう2度とxxx航空には乗りません。」

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2011/09/01  8年8か月ぶりの患者に深達度sm3の大腸癌を発見 定期チェックは欠かさないようにしましょう。 

 11年前から、9年前まで、多発性大腸ポリープがあって、大腸内視鏡検査に通っていた82歳のおばあちゃんが、おなかがすこし張るということで、8年8か月ぶりにやってきた。いろいろな事情で来院できなかったが、昨年出した経過観察のお勧めのはがきをみて、また見てもらいたいと思ったそうだ。本人いわく「もう、としだからいいかとおもってたけんど、やっぱりすんぱいだからさ 。先生はじょうずでいたくないからさ、くたよ。」82歳でも元気な人は元気なのである。早速、大腸内視鏡を行ってみると、横行結腸に、約2.5cm大の表面隆起型(IIa型)の大腸がんが見つかった。表面のピットパタ―ンはp5nで、核パターンはn3だった。とりあえず、 年齢と全身状態を考慮して適応拡大症例として、ESDを行い成功し、局所の癌切除はきれいにできた。切除標本の深達度はsm3だった。

 想定通り、大腸内視鏡検査間隔、8年8か月は空け過ぎである。大規模研究によると、大腸にポリープがない人で、がん死を防ぐための検査間隔は、日本の研究では3年ごと、アメリカの研究では5年ごとの全大腸内視鏡検査が勧められている。大腸にポリープが多発する場合は、その多発具合によって異なるが、それよりも密に行うことが望ましい。

 ちなみに、自説であるが、クリーンコロン(大腸ポリープをすべて切除してポリープがなくなった大腸のこと)後の大腸腫瘍の発生頻度と大きさの検討からは、 腫瘍の平均増大速度は大腸腺種で年に1mm、大腸癌で月に1mmである。大腸がんのうち、平坦陥凹型のものは平均7.5mmで粘膜下に浸潤し、隆起型は平均12.5mmで粘膜下に浸潤していた。100%の大腸がん予防 を望むなら、やはり1年1回がお勧めだろう。

 数年前、とあるお役人から、「君がいなくても誰も困らないよ」と言われて、医師として診療妨害と名誉棄損を受けた。「5mm以下のポリープは癌化しない」から、それを取っている医師は医療資源を荒らしている悪者だと決めつけられたのである。が、このおばあちゃんは間違いなく、私がいなくて困った人の一人だった。「小さなポリープは癌化しないから、取らなくていい」などと権力におもねった間違った概念がはびこるから、このおばあちゃんのような症例が増えて、この10数年、日本の大腸癌死亡者数は増えているのだ。

 1988年から1990年代後半まで、東急百貨店の保険組合では、わたしが乗り込んで、50歳代の社員全員のポリープをすべて取った。結果、それまで毎年2人ずつ大腸がんで死んでいたが、それがピタリと止まり、大腸がんの開腹手術すらもなくなったのである。

 健康を願う人にとって、だれがほんとの悪者だったのか、この大腸がんが黙示している。

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2011/07/13  梅雨明け 猛暑始まる。 首都圏に人工降雨を 

 東京が梅雨明けして、猛暑が始まった。日陰に入ると少し過ごしやすいが、日向の車の上の温度は49度。林間学校から帰ってきた末っ子が熱中症になった。首都圏で救急車で運ばれる熱中症患者は100名弱だそうだ。今年の夏も去年の夏と同様、猛暑になりそうだ。震災で節電の世相で、日よけの葦頭は、近くのホームセンターではすべて売り切れていた。扇風機は大変な売れ行きで、ドンキホーテにはもう大きな扇風機はない。

 自然と調和して生きるという日本的発想だけでは、生き抜けない自然の猛威だ。首都圏に人工降雨を降らせて、首都圏の温度管理をする必要がある。

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2011/06/16  内視鏡的に直腸膀胱瘻閉鎖手術・直腸尿道瘻閉鎖手術に成功 世界初?! 

 HIFU後の直腸膀胱尿道瘻患者の、瘻孔閉鎖を内視鏡的に行った。今日で、術後3日目であるが、症状から見て、瘻孔閉鎖にどうやら成功したようだ。

 HIFU後の直腸膀胱尿道瘻は100人に1例ぐらいの割合で起こる。3年前、クリップを用いて経肛門的に縫合した症例があった。そのときは、クリップで閉塞できたのであるが、今回は、クリップではうまくいかなかった。孔のサイズが大き過ぎた。結局、内視鏡で張り糸を巧みに動かして縫いつけて、クリップとo-ringを用いて締めあげた。

 鈴木誠先生によれば、泌尿器科の世界では、内視鏡的に縫合に成功したのは世界初かもしれないという。大腸の世界でも、聞いたことはない。

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2011/06/15  菅直人総理 一事不再議の慣例を楯に居座る。 内閣信任決議案の提出を! 

 6月3日の菅直人総理の嘘は、多くの日本人の心に強い衝撃を与えた。嘘で政治は成り立たない。まして、日本国のこの危機において、信頼 と日本国民に対する愛情の欠落は、数多くの日本人を殺すことになる。自民党、公明党、は言うまでもなく、民主党の幹部ですら菅直人さんにはついていけないと思い始めて、菅直人さんに早期退陣を迫っている。しかし、菅直人さんは、「不信任決議案が否決されて、私は信任されたのだから、震災復興の責任を果たす。」と、国会答弁で述べている。そして、一事不再議の慣例から、国会を長引かせて、自らの総理の座に居座る期間をできる限り長引かせようとしている。

 そこで、日本国憲法の条文を読み直してみた。

第六九条【内閣不信任決議の効果】
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
 

 内閣不信任決議の可決とは別に、内閣信任決議の否決でも、菅直人さんを辞めさせることはできるのではないだろうか?

 内閣不信任決議は行ったが、内閣信任決議案はまだ行っていない。早速、内閣信任決議案を提出して否決してもらいたいものだ。憲法の条文に悪知恵をゆるさない、 日本人を守る、ご先祖さまの知恵があった。

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2011/06/09  難治性食道癌術後吻合部狭窄の内視鏡的治療にまた成功! 第2例目 

 食道癌術後の難治性線維性狭窄で食べることは勿論、飲むこともままならなくなった患者さんが、関連施設病院からまた送られてきた。

 前回の第1例と同様の方法で、拡張した後、着脱式のステント挿入して、手術は成功。患者さんは食べられるようになった。狭窄部の軸がずれているとか、狭窄部の長さが3センチぐらいと少し短いなど、1例目とは細かな点で違いがあったが、大筋では同様の治療で成功した。

 患者さんはすいすい飲んだり食べたりすることができるようになった。

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2011/06/03  菅内閣不信任案をめぐる大騒動 菅首相はうそつき! 

 3月11日から85日目。その後調査が進むにつれて、大地震、大津波に誘発された福島第一原発事故は、当時の政府の発表にくらべてはるかに深刻なものであることが分かってきた。炉心は事故当時 は壊れていないといわれていたが、事故当初6〜12時間に壊れ始めていて、核燃料は原子炉ばかりでなく、周囲の原子炉密閉格納容器も貫いていた。 事故当初、政府は事態を十分掌握できていなかったのである。当時の枝野官房長官の発表には嘘が多く、国民の命にかかわる本当に大事な情報がいろいろと隠されていた。 なかでも衝撃的だったのは、菅首相が放射能の汚染速報システムspeediの情報を自分だけが利用して国民に知らせなかったことだ。原子炉爆発当時、放射能を恐れて、逃げ惑った国民は、汚染の低いところから、汚染の高いところ逃げた人もいて、政府と菅直人という人物に大きな失望 と恐怖を抱いた。

 菅直人さんは心の奥底では、日本の国民のことなど露ほども考えていない。彼にとって国民は自分のための道具にすぎない。彼はほんとうに日本人なのか? こんな人物が総理大臣をしていれば、被害はますます拡大し、死なずに済む人も死んでしまう。

 今日は、政治の世界は大混乱だった。昨日、自民党と公明党から菅内閣不信任案が提出された。採決に先立って、民主党の代議員大会が開催されて、テレビ中継された。民主党のなかからも80名以上の賛成者が出て不信任案は可決されるということで、劣勢に立っていた菅首相は、自分は自ら退陣するので、党を割るような行動をとらないでほしいと民主党の代議員に訴えた。退陣するという言葉を聞いて、民主党内の菅首相に反対する勢力は、不信任案に賛成する動きをやめて、不信任案に反対した。そのため、不信任議決案は否決された。

 ところが、否決されるとすぐに、原発事故が解決するまで、少なくとも来年までは、首相を続けると言い始めたので、みんな、驚いた。誰もが詐欺だと思った。こんな詐欺を働く人が、総理大臣だなんて、なんてことだ。

 欧州では、今回の放射能事故で、日本では四十万人が死亡するだろうという予測が出ている。

 たしかに、癌死亡者数が5〜10%ぐらい増えて、10〜20年続けば、そのくらいの死亡者数になるだろう。

 この危機にこの首相では日本国民が危ない。

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2011/05/16  児玉清さん(77)、胃癌で死去 

 長年、テレビの司会などで活躍していた、俳優、児玉清さんが、胃がんのため16日に死去した。2年前から出題を担当してきた加藤明子アナウンサー(35)によると、「11日にお見舞いしたとき、『去年10月に胃カメラをのんでおけばよかったんだよね』とポツリ。ショックが大きくて、あとはちゃんと聞けなかった」とのこと。

 みなさん、胃癌で死なないため、症状がないうちに内視鏡検査を受けましょう。ピロリ菌のチェックも大切です。

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2011/05/13-15  日本消化器病学会 東京 に参加 

 シカゴから中一日の移動日を置いて、13日から新宿の京王ホテルで、日本の消化器病学会が開かれた。3月11日の大震災の影響で、日本医学会、日本内科学会、日本外科学会、日本消化器内視鏡学会が、それぞれ、中止、中止、紙上開催、延期となる中で、日本消化器病学会は、会長の慶応大学教授日比先生の「こんな時こそ科学的に勉強することは大切」という強い意向で開催された。他の学会が開始されなかった影響もあるのか、約8000人にも及ぶ参加者で、近年では一番の参加人数であったという。私は炎症性腸疾患のセッションを中心に参加したが、抗TNFα抗体が話題の中心であった。2005-6年ごろのアメリカDDWと同じような内容であった。アメリカに遅れること約6年、日本でも、クローン病のトップダウン治療が市民権を得たようだ。

 日比先生の意気に応じたなかなか良い学会であった。

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2011/05/11  DDW2011 Chicago に参加 

  アメリカの学会に行くと世界各地からひとが集まり、新鮮な情報が手に入る。今年は2年ぶりにシカゴで開催された。学会の前半は寒かったが、後半は気温が上がってすがすがしい五月晴れとなった。学会は5月7日から5月10日までの4日間と従来より、一日短縮された。その代わり、初日の朝7:00から最終日の午後5:30まで充実した内容の発表が続いていた。従来は、最終日の午後ともなると学会上から人が消えていたが、今回は最後まで多くの人がいた。やっぱり5日間は長すぎる。今回の変更は成功したようだ。

 ミシガンavenueは通りにきれいに花が植えられていて感心した。山の手通りもこのくらいきれいにしたいものだ。

 さて、今回の内視鏡の分野における技術的なテーマは、内視鏡下の縫合と肥満治療であった。NOTESの技術的な第一の障害は、腹腔内に入った侵入部の縫合である。いくつもの新たな縫合技術が紹介されていた。

 また、肥満の治療でも、内視鏡的な工夫がいくつも発表されていて、その新たな工夫の成果は素晴らしいもので、今後の臨床に広まることが十分に期待できる内容であった。アメリカ消化器病学会の会長はその会長講演の中で、「糖尿病とか肥満とかの代謝疾患は、今後消化器医が診ることことになるであろう。」と述べたが、その通りだと私も思った。

 最終日には内視鏡ビデオのワールドカップが初めて開催された。気楽な気分で、大変な臨床症例をいかに克服したかを楽し見ながら、評価して、勝ち負けを競っていた。日本代表は惜しくも4位でメダルを逃した。1位はアメリカ、2位が中国、3位がインドであった。座長はスタンフォードのヴァンダム教授で、彼らしい気さくな企画で、楽しく勉強ができた 。


右端がヴァンダム教授

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2011/04/28  東京の放射線は安全範囲。長期的な放射能の障害を和らげる食材は? 

  明日の3月11日の大震災から49日がたつ。古来の風習から言えば、明日で喪が明ける。さて、震災後、東京で何回か雨が降ったが、3月21日の放射能レベルの上昇以来、その後はほとんど上昇していない。もう、あまり放射能は出ていないようだ。外部被爆は大丈夫だが、後は内部被爆、すなわち、食材の問題である。食材はモニタリングされているようだが、放射能が基準値を上回っていても卸しに出す生産者がいて、困ったものだ。

 放射能障害は、基本的に遺伝子障害。放射線が通過することにより生じる活性酸素が遺伝子DNAを傷つけるのです。したがって、活性酸素を除去する物質を多く含む食材が、放射能障害を和らげる食材です。具体的には、強い日差しの下で育つ植物で、色の濃い食材の皮の部分がお勧めです。

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2011/03/30  あと10週間、梅雨の始まる前に、放射性物質の封じ込めを! 

 

 政府は、原子炉2号機の原子炉の破損と燃料棒の破損、核燃料の融解と放射能物質の漏れをやっと認めた。原子炉に爆発があったのは3月12日から15日ごろであったから、それ以来、放射性物質の漏れが続いている。垂れ流しを封じ込める方策も模索中で、政府・東電は放射線の漏れに対する対策を、アメリカやフランスの専門家にも打診しているらしい。今のところ、放射能の垂れ流しは、いつ終わるともしれないという。事態は深刻だ。

 

 放射性物質の被害は、汚染の程度の比例し、汚染の程度は風向きと天候と垂れ流しの期間に比例する。つまり、健康被害は風向きと天候と垂れ流し期間に比例することになる。関東平野の汚染が進行するのは、北東の風が吹いてしかも、雨が降るときだ。

 

 この1週間、東京の放射能レベルは下がり続けている。それは、北東の風が吹かなかったからだ。

 

 しかし、あと10週間経つと関東平野は梅雨に入る。梅雨になると低気圧が関東平野の南を通過して、その時、北東の風が吹き、雨が降る。つまり、東京にとっての最悪の風向きと天候になるのである。したがって、梅雨が始める前に放射性物質を封じ込めなければならない。

 

 福島原子力発電所の原子炉からの放射性物質の漏れに対して、政府はいろいろと対策を考えているようだ。官房長官は、汚染された廃液はタンカーに載せるとか、原子炉の上にテントを張るとか、放射能を帯びた瓦礫の表面を樹脂で固めるとかいっていた。「原子炉から立ち上る煙を巨大ダクトで吸い取って、数千個の空気清浄機にかける」のも手っ取り早い有効な方法だと思う。

 

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2011/03/30  放射性物質の被ばくによる健康被害は、発癌。一般的な癌の増加も理論的には否定できない。 

 

 放射性物質による医学上の健康被害は発がんである。汚染された食物や飲み物からの内部被ばくが一番の発癌リスクである。まず、第一に放射性ヨードによる甲状腺癌の発生が心配である。被ばくを受けて、1年から数年で甲状腺癌は発生してくる。定期的なエコー検査が必要だ。次に、その他の核種としては、やはり、プルトニウムによる肺癌が心配である。各地のプルトニウムの汚染の状況を正確に測定して、放射性ヨードのように情報公開してほしいところだ。

 

 その他の癌の発生も増加する可能性は理論上、十分あり得る。もともと、2人に1人は癌になる時代なので、増加したかどうか、確かめるには疫学的な調査を待たなければならない。5-10年して、この事故以来、癌発生が若年シフトしたとか、癌の罹患率が上昇したという形で立証されるだろう。癌検診の重要性は一層増したように思う。

 

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2011/03/27  福島原子力発電所からの放射性物質の流失が続く。放射性物質は原子炉本体から流出していると認識。一刻も早い放射性物質の封じ込めを! 

 

 3月12日、3月15日の連続爆発以来、福島原子力発電所からの放射能の流出が止まらない。東電はプランAにそって、冷却による核反応の停止を目指して、水を原子炉に注入し続けている。しかし、うまくいっておらず、放射性物質は大気と海水に放出され続けている。風向きにより東京地区にも放射性物質がやってくる。今のところ直ちに、体に被害が出るレベルではないが、1年も垂れ流しが続けば、健康被害がでる。

 今日、原子炉のわきのタービンの入っている建物の底にたまっている水から、極めて高濃度の放射性物質が発見されたとの発表があった。発見された核種から、原子炉の中では核燃料棒が壊れて、核反応が続いているのは間違いないようだ。その筋のとある患者さんがいうには、「1号機の燃料棒に制御棒がうまくはまっていなくて制御されていない。また、3号機の中にはプルトニウムがあって、プルトニウムも漏れているらしい。」真偽のほどは不明だが、プルトニウムは半減期が極めて長く、1グラムで肺癌患者50万人という、噂もある。

 原子炉が壊れてはいないものの、垂れ流しが続けば、チェルノブイリ以上の被害が予想される。放射能の垂れ流しは早急に解決しなければならない。テレビで見ると、東電の人たちはかなり疲れていて、ちょっと荷が重すぎるようだ。全日本チームを作って、早急に有効な解決策、プランBを示して、一刻も早く解決してほしいものだ。

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2011/03/23  難治性食道癌術後吻合部線維性狭窄の内視鏡的治療に成功 

 

 食道癌の術後に吻合部がときに狭窄して、食べ物が通らなくなることがある。どんなに手術の上手な施設でも時々起る厄介な術後合併症だ。狭窄には膜様の狭窄と線維性の狭窄がある。膜様の狭窄は、狭窄部位が短く、バルーンでの拡張を繰り返すと大半の症例で、改善してくる。しかし、線維性狭窄は難治で、治療は一筋縄ではいかない。食道癌手術で有名な順天堂大学の梶山教授( 大学の同級生)のところでも、このような症例は治療に大変苦労しているらしく、彼の弟子が書いた総論を読むと、バルーン拡張を何度も繰り返すしかないと書いてある。

 

 さて、今回、バルーン拡張を何回も繰り返したが、すぐに悪化して、4カ月も食事が食べられなくて困っている症例があるので、なんとか治してくれないかと、関連施設の病院から依頼された。大病院から小さなクリニックに紹介されて、患者はおっかなびっくりやってきた。いろいろと調べたところ、狭窄はほとんど閉塞しており、無理してやっと直径2mmのカテーテル型の超音波内視鏡が通せるぐらいであった。長さは約5−6センチで、線維幅は1cm以上であった。APC(アルゴンプラズマ)で線維を焼き、焼きかすを根気強く丁寧にはぎとり、トンネルを掘った。

 途中、何回も出血して大変であったが、なんとか成功し、直径10mmの内視鏡が貫通した。しかし、1週間ほうっておくと、線維が急速に増殖してきて、すぐに閉塞してしまう。そこで、十分広げた後に、着脱式の新型のステントを挿入して、治療に成功した。

 患者さんが喜んだのはいうまでもない。今回行った方法は優れていて、食道癌術後吻合部線維性狭窄の内視鏡的治療の標準方法となるのではないかと 考えている。

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2011/03/16  福島原子力発電所で臨界事故や爆発事故が続き、東京でも異常放射能が微量検出される。 ただし健康にはまったく影響のないレベル 

 

 3月15日未明に、発電所で爆発(使用済み燃料の臨界爆発?)があり、運悪く北東の風に乗って、その日の午前中には、東京でも異常放射能が検出されていたそうです。しかし、レベルはかなり低 く、健康にはまったく問題のないレベルでした。今日になって昨日の重大事を発表するといった、政府の対応のまずさに、あきれるばかりです。海外のメディアを読んでみると、米国やフランスやドイツ、イスラエル政府なども日本政府の対応を非難し心配しています。こういうときは想定される最悪の事態の説明を行って、その対策とその後の成り行きのシナリオを理路整然と国民に説明するべきだと思います。

 

  東京都のホームページには、うちのクリニックの近く新宿区で測定した放射線レベルの測定値が1時間ごとに速報されています。来院の際の、ご参考にしてください。政府に批判的な石原都知事の行っていることですから、うそやごまかしは一切ないと思います。

 

クリニックの近辺の放射線濃度を知りたいときはここをクリック

 

クリニックのある関東平野の風向きを知りたいときはここをクリック

 

 チェルノブイリの段階まで深刻な事態になる可能性は諸説あってよくわかりませんが、50%くらいありそうです 。東京は福島原発からは約250km離れているので直接の影響は考えにくいですが、東京はそのときの風向きが問題です。 私の判断では、低気圧が関東南岸を通過するとき以外は、大丈夫だろうと思っています。

 

 16日午後から、東京では強い北西の風が吹きました。東京都の測定値を見ると、強風が吹いて、放射能の値が下がりました。

 

 しかし、安定ヨウ素剤の配布をすべき時がきていると思います。

 

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2011/03/14  首都圏輪番停電開始、鉄道麻痺 当院は輪番停電ありません。 

 

 大地震のあと、電力が必要量の75%しかないということで、輪番停電が開始されて、鉄道が混乱しています。当院でも、看護婦さんは通勤不能、受付嬢は、10時出勤となりましたが、ほとんど、いつもどおりに診療できています。

 

 当クリニックは、自衛隊の基地のそばで、輪番停電からははずされています。

 

 遠方から来る再診の患者さんで、移動手段が難しい場合には、お電話にて、ご連絡してください。お薬もしくは処方箋を送ります。

 

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2011/03/12  大津波と福島原子力発電所で爆発 

 

 大地震のあと、東北の大津波(一部では15m)の被害が伝えられて、暗い気持ちになっていましたが、知り合いから生きているとのメールが入り、無事が判明して、ひとまずは安堵しました。しかし、家は津波で流されたそうで、これからのどうするのか心配です。

 

 午後に福島原発で爆発(水素爆発)があったと発表がありました。死傷者も出ている模様です。万一に備えて、家族のうち何人かを岡山へ向かわせました。

 

 チェルノブイリのときは、放射性ヨード131による子供の甲状腺がんが増えました。ただ、放射性ヨード131の半減期は8.1日と短いので対策は短期で済みます。問題は、放射性のセシウム137です。半減期が30年なので、これが環境にばら撒かれると、長期にわたる汚染で白血病や癌などの頻度が高くなるといった大変なことになりそうです。

 

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2011/03/11  大地震 しかし クリニックは無事 通常診療続行の方針 

 

 午後2時26分から、数分間大きく揺れました。ちょうど大腸内視鏡検査をしていましたが、一時中断。揺れが途中から強くなり、一瞬もうだめかと思いました。そして、2回目の地震が30分後に来て、激しい縦揺れで、だっだっだっだっだと10数秒続いときは、直下型で、今度こそだめかと思いました。しかし、建物は幸いにも何とか崩れずに済みました。揺れが終わったあと、大腸内視鏡検査は続行できました。

 そのほか、電気、水道、ガスなども無事で、今日、予定していた診療や内視鏡検査は、いつもどおりに終えることが出来ました。

 

 東北地方は大津波で壊滅したようです。相馬に、知り合いがいるのですが、連絡が取れません。生きているか心配です。

 

 首都圏では帰宅困難で、電車が動かず、多くの人が歩いて帰宅となりました。山の手どおりを7−8キロ先まで徒歩で帰っているという人が4人ほどトイレを借りに来ました。 災害のときは助け合いこそ基本ということで、喜んでお貸ししました。

 

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2011/03/08 東京大学消化器内科 第一回同窓会でささやかれた、厚生労働省の不作為の過失。その過失で約70万人の日本人が胃癌で死んだ。 

 

 1983年に「慢性胃炎はピロリ菌が原因の感染症だ」とオーストラリアのヲーレン教授が唱えた。そして、その後の疫学的研究で、胃癌の原因もピロリ菌であることが有力となり、1994年WHOは全世界に向けて「胃癌の一番の原因はピロリ菌である。」と宣言した。

 

 ところが、わが国の政府、当時の厚生省はこれを認めなかった。なぜなら、国立がんセンターに入院していた胃癌患者のピロリ菌の抗体価を測定してみると、約1/3が陰性であったのである。

 

 しかし、しかし、である。その後の研究で、重大な事実が判明する。オーストラリアのピロリ菌と日本のピロリ菌は、同じではなかったのだ。当時の測定方法は、オーストラリアのピロリ菌に対する抗体価に対するものであって、日本のピロリ菌に対する抗体価ではなかったのである。

 

 研究は続き、それでは、ピロリ菌を退治したら、胃癌の発生は減るのかと言うことになった。2000年代の前半、日本各地の大学や病院7−8箇所で、ピロリ菌を退治したグループでは、ピロリ菌を放置したグループに比べて、除菌したグループでは、除菌成功後3年たつと、胃癌の発生率が平均五分の一に下がることが判明したのである。症例対象は日本人で1300例を超える。しかし、厚生労働省はこれを一蹴して、香港のわずか100例前後のNew England Journal Of Medicine 論文を盾に、自らの無謬性を今でも貫いている。

 

 これが昨今、国会で取り上げられたらしい。三木先生の話によると、浅香教授が国会に呼ばれた。議員さんから「胃癌は感染症なのか?」と尋ねられて、北大の浅香教授が「そうです。その通りです。」と答えたそうだ。肝炎ウィルスと同じ、厚生労働省の不作為の過失。その過失で約70万人の日本人が胃癌で死んだという真実が、厚生労働省のお役人様に突きつけられる日がついに来たのだろうか?

 

 ただ、行政の混乱は医療現場にとって決して好ましくない。なんとか速やかに、人の輪も崩れず、胃癌も効果的に予防できる体制に移行できるように、願っているのは、三木先生も私も同じ考えだ。

 

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2011/03/08 東京大学消化器内科 第一回同窓会 第一回の不思議と消化管クループの憂鬱 

 

 東京大学消化器内科の第一回同窓会が、小池教授の下、後楽園ホテルで開催された。火曜日の夜であったにもかかわらず、ざっと、200名ぐらい集まっていた。

和気藹々とビール片手に旧交を温めてきた。

 

 さて、伝統ある東京大学で、消化器内科の同窓会がなぜ第一回なのか?それには少々込みいった事情がある。

 

 そもそも、私が東京大学を卒業した1984年には、東京大学に消化器内科はなかった。内科といえば、第一内科、第二内科、第三内科、第四内科、物療内科、神経内科、老人科の7つがあった。神経内科だけは、専門分化していたが、その他の6つの内科には、それぞれ、胃腸を研究対象とする内視鏡を担当する研究室があった。また、第一、第二、第三内科には、肝臓病を専門とする研究室があった。当時は、それぞれの内科教室で、全人的な医療が行われていたのである。ちなみに、私は物療内科の第15研究室、通称、消化器研に属していた。

 

 しかし、教授がインパクトファクターの合計点で選ばれる時代となり、全人的な医療よりも臓器別、疾患系統別に専門的な医療や医学研究がしたい、という時代の要請で、1998年に、内科が再編成されて、東京大学消化器内科が生まれたのである。

 

 初代の消化器内科の教授はなぜか千葉大出身の小俣政男先生であった。小俣先生の専門は肝臓病であった。私の学年で、内視鏡や消化管を専門としていたものは8名いたが、大学に残って研究していた4名は、残念ながら、全員大学を追い出された。当時の学内の内紛の様子は開業していた私にも、漏れ伝わってきていた。とても、同窓会といった雰囲気ではなかったのである。

 

 1998年の改変時に、なぜ、消化器内科でなく、肝臓内科と消化管内科に分けなかったのか?

 

 2009年に就任した二代目の小池教授の専門も肝臓病(肝炎ウィルス)である。小池先生は東大卒で一内の肝臓グループの出身である。消化管グループの憂鬱はまだまだ続いている。

 

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2011/01/26 健康保険の運用の問題点  

 

  先月の保険診療のレセプトの審査で、審査委員会と意見の異なることがあり、厚生労働省の出先機関、関東信越厚生局の見解を聞こうと思い、本日電話をした。担当官に対して、電話にて、問題点に関する判断の根拠となる文書は何かと聞いたところ、「医科診療表の解釈」と答えた。

 私もその資料は見ていて、そこには意見の相違を解決する内容は書かれていないことは知っていたので、そこで、さらに切り込んで、問題となった言葉の定義について、成文化されたものがあるかと尋ねた。すると、「ない」と回答した。それでは、成文化されないていない問題点はどう解決しているのかと、尋ねたところ、健康保険法の精神に基づいて解釈していると答えた。

 明文化されないことで、行政を行うのは、法治国家としては大いに問題があるのではないかと詰問した。実は、日本各地の地域によって、健康保険の運用状態が異なり、問題化している。明文化せずに行政を行うから、地域や担当官による運用の差が発生するのだ。それまで問題なかったことも、急に問題化される。

 しかし、この状態は、法のもとの平等をうたった憲法に反することは明らかである。法的に言うと、上位法である憲法に違反している法律や行政行為は効力を失う。担当官もちょっと問題だなと思ったらしく、成文化したものがあるかないか、しばらく探してから回答しますと返答を変えてきた。

 受け答えの内容に不信感をもったので、重ねて、担当官に、今の職に就いてから何年かと聞いたところ、「1年」と答えた。また、前任者からの引き継ぎはあるのかと尋ねたところ、「ない」と答えた。それはそうだろう、関東信越厚生局の前身は、あの年金のずさん管理で、廃止となった、社会保険庁なのである。しかし、経験の少ない人が、前職からの引き継ぎも受けずに、自分の解釈でその場その場であーだこーだと神の声を発するのはいかがなものであろう。神の声で振り回されると、現場は大いに困るのである。

 また、審査委員の氏名は、公表されない。そのため、審査委員と自由に議論をすることも困難である。このような黒い体質が、同窓に甘く、ライバルに厳しい審査の温床となっている。記憶に新しい、東京医科歯科大学の同窓会の社会保険審査委員汚職事件のからくりは、この構図であった。

  

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2011/01/01 拡大内視鏡 内視鏡的、核パターン観察の新工夫を発見  

  内視鏡下に核を観察する場合、核は透明なので、染色する必要がある。これまで、核染色に用いられていたのは、メチレンブルーである。メチレンブルーで、核を染色するには、2−3分かかっていた。この2−3分という時間は、内視鏡をしている場合、結構長い時間である。どうやって、この時間を短縮するか?これが、核パターン診断の一つの大きな臨床的課題であった。偶然、ある薬をまいた後であると、時間ほぼ0で核が染まることに気がついた。データをまとめて、今後の学会で発表します。

 下の図は、腫瘍にメチレンブルーを吹き付けた直後の写真である。腺管の辺縁に付着して、層をなしている核層が瞬間で明瞭に見えた。ちなみに、この核パターンはn2である。腺管口の形態は、大小不動で、異型がかなり強いが、核所見は比較的おとなしい。毛細血管のパターンは腫瘍のパターンである。異型性は結構強い。

 

 

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2011/01/01  謹賀新年  

 

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2010/12/13  お酒(アルコール)と大腸癌、胃癌、食道癌  

 

 今は、忘年会シーズンで、お酒を飲む機会も多い。せっかく、おいしくお酒を飲んでるあなたに、冷や水をかけるような野暮な話かもしれませんが、そんなことなら飲むんではなかったと後悔しないように、お酒と癌の関係を少しまとめておきましょう。

 

 大腸癌とお酒の関係については、授業ではあまり言われていないので、関係がないと思っている人も多いと思いますが、実は大ありです。私が昔まとめたデータでは、お酒を毎日5合飲む人は、お酒を全く飲まない人の2倍の大腸がんの発生率がありました。また、ビールを1500ml飲む人は、飲まない人の2倍大腸ポリープが出てきました。また、会社を辞めて、お酒を飲む機会がなくなると、大腸ポリープの発生率が下がります。

 

 胃癌とお酒の関係についても、これまで、あまりはっきりとしたデータがありませんでしたが、2000年代前半ごろから全国の様々な施設から、相次いで、その関係が指摘されました。ピロリ菌を退治すると、退治後3年目から、胃癌の発生率が下がりました。ピロリ菌を退治すると胃癌の発生率が約5分の1まで下がったのです。しかし、面白いことに、その下がり方に男女差がありました。全国のさまざまな施設のデータが、すべて、同じ傾向を示していました。男性の減少率は約3分の1で、女性の減少率は約10分の1だったのです。はじめ、この現象はGENDER MYSTERYと呼ばれましたが、再度、因子分析をしてみると、寄与度の大きなものは、飲酒量だったのです。つまり、ピロリ菌という最大の胃癌の原因がなくなると、次に胃癌の発生に大きく関与していたのは、酒だったのです。お酒を飲むと飲まないでは、約3倍の胃癌の発生率の差があったのでした。

 

 食道癌とお酒の関係については、昔から医学の教科書に載っていますので、関係があることは、みなさんも、よくご存じでしょう。

 

 以上、「アルコールを飲むと大腸癌、胃癌、食道癌、すべて出来やすくなる」ということで、アルコールは、大腸癌、胃癌、食道癌を予防する観点からは飲むべきではありません。みなさんの予想通り、おいしいお酒を飲んでいるあなたに、冷や水をかける話となってしまいました。

 

 ところで、どういうメカニズムで、アルコールは癌の発生を増やすのでしょうか?

 

 食道癌について、お酒の発がんメカニズムが少しわかってきました。お酒(エタノール)は体内で酸化分解されて、アセトアルデヒドになります。ちなみに、この反応をつかさどる酵素をアルコール脱水素酵素といいます。そして、アセトアルデヒドはさらに酸化分解されて、酢酸になります。この反応をつかさどる酵素は、アルデヒド脱水素酵素といいます。エタノールが体内に入って増加するこの3つの化学物質について、詳しく調べてみると、エタノールにも酢酸にも発がん性はなく、発がん性があったのはアセトアルデヒドでした。お酒の本当の悪玉は、アルコールそのものではなく、アルコールが代謝されて発生するアセトアルデヒドだったのです。

 

 一方、アセトアルデヒド脱水素酵素の活性の高い人は低い人よりも食道癌になりにくいということも大規模な疫学調査でわかりました。アルデヒド脱水素酵素の働きを強化しておけば、アセトアルデヒドがすぐに酢酸に代謝されるので、酒も安全ということです。言い換えれば、「アルデヒド脱水素酵素を強化する解毒剤」と一緒にお酒を飲めば、飲酒による癌発生が抑えるられて、おいしいお酒はやっぱりおいしいということになります。

 

 「アルデヒド脱水素酵素を強化する解毒剤」とは何か?この薬がわかれば!というわけですが、

 

 今日は朝早くからずっと働いていたので、もう眠たくなりました。薬の解答は次の機会にしましょう・・・・。

 

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2010/10/27  UEGW 2010 Barcelona  

 

 10月25,26,27とバルセロナでUEGWが開催されている。バルセロナは2003年に観光で訪れてから、7年ぶりである。

 

 

 今回の学会でも、ビデオセッションやライブをはじめとして各分野での日本勢の活躍は目覚ましい。26日に行われた矢作先生や井上先生のESDのライブデモでは、太い血管からの出血をうまく止めるたびに、会場は拍手で包まれた。EMRやEMR-cで簡単に取れるのに、出血させては止めてというマッチポンプのようなESDで、そこまで難しく しなくてもいいのではと思うのは、少々冷笑的に過ぎるかとも思うが、2人とも時間内に病変をとれなかった。会場の拍手とは裏腹に冷たい視点がヨーロッパにもあるように感じた。しかし、12年前を考えると日本人の活躍は素晴らしい。

 

 さて、今回の発表の中で最も感心したのは、USAのAkerman先生の内視鏡を自動的に挿入するスパイラルドライブであった。今後の展開が大いに期待される。

 

 ところで、スペインは荒っぽい。2003年、私と別れた千葉先生ご夫妻が、マドリードの王立美術館(ピカソのゲルニカのある美術館)の前の地下鉄に降りる階段で襲われて身ぐるみはがれたことがあった。私は、ゴヤの絵のある美術館の近くの広場ですりの集団に襲われた。さて、今回も問題が発生した。バルセロナの街をレンタカーで走っているとバイクに囲まれて、道脇に止めるように言われた。怪しいので無視してパーキングに車を入れたところ、なんとタイヤがドライバーのようなものでパンクさせられていた。道脇に止めたら、きっと、パンクしているとか言って、直してあげるとか言って、法外な金額を巻き上げられていただろう。やっぱり、スペインは少々怖い。

 

 

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2010/09/23  第69回日本癌学会学術総会出席  

 

 昨日まで、真夏日の連続であったが、秋分の日を迎えて、涼しくなった。季節の変わり目の雷がなり、しっかりと雨が降った。暑さ寒さも彼岸まで。異常な暑さであった今年の夏も、最後は格言に従いそうである。

 今日は、大阪国際会議場で開かれた、第69回日本癌学会学術総会に出席してきた。

 午前中はmiRNAの話を聞いた。

 午後は、「今 癌研究に求められること」 ―癌研究に対する提言―に参加。事業仕分けと同じような、形のイスの配置であった。こんな形の会は初めてであった。

 

 

 司会は、門田守人さんと中村祐輔さん。この会では、みんな平ということで、先生という敬称は禁止であった。野田哲生さん(癌研)、江角浩安さん(癌センター東病院)、関原健夫さん(日本対がん協会)の3名が基調講演を行い、その後、参加者が意見を述べていくというスタイルで行われた。参加者は、国会議員、鈴木寛副大臣をはじめ3人、厚生労働省、通産省、文部省から、官僚が1人ずつ計3人、患者団体から6人、製薬会社から3人、メディア関係が2人、学会関係が9人、大学の教授が2人、日本医師会から1人という構成であった。

 いま、癌研究に求められていることは、画期的な新薬の開発である。では、どうすればよいか。研究予算のこと、研究の人材のこと、薬の開発のこと、制度的な仕組みのこと、患者団体の組織の仕方などなどが、議論のテーマとなった。次々と有効な分子標的薬を作り出して世界の新薬市場を席巻しているアメリカと、まだ一つも有効な分子標的新薬が開発できていない日本とが、対比される形で議論が進んでいた。結構、有意義な議論が行われていて、聞いていて大変面白く、毎年開催して、次回からは具体的な政策を掲げて議論をすればいいなと思った。

 

 ちなみに、常陸宮殿下も2列目で静かに議論を聞いておられた。

 

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2010/09/11  In 2010 National Conference on Therapy of stem cell & Diagnosis and Treatment of Endoscopy in Digestive Disease, I made a lecture on Nucleus pattern diagnosis  

 

 中国東北区の瀋陽軍総合病院の消化器内科の郭教授の主催する学会に招かれて、拡大内視鏡診断とくに「核パターン診断」の講演してきた。5月の北京の講演が好評であったので、呼ばれたようだ。聴衆は食い入るように話を聞いてくれた。新鮮な話であったらしい。

 

 

 しかし、このテーマの組み合わせは、いささか驚いた。消化器内視鏡と幹細胞治療はあまり関係のない分野であるからだ。ところが、なんと、来月開催されるヨーロッパのUEGWの学会のテーマもこれとそっくりなのである。郭教授は長年、スイスに留学して、幹細胞治療の研究もしていたらしい。「幹細胞を骨髄から取り出して、肝臓に入れると肝硬変が治る」とか言っていた。中国では幹細胞治療は、いままさに「地下から地上に出る」段階なのだそうだ。

 夜に歓迎交歓会が開かれたが、現役の看護婦さんたちが、14-15人ほど、素晴らしい表情で玄人はだしの踊りを踊ったのにはびっくり。通訳さんに言うには、患者さんに見せる最高の笑顔の練習なのだそうだ。

 

 

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2010/08/17  本日は記録的猛暑 14時半現在 クリニックの前は、温泉卵寸前 

 

 今年の夏は例年にくらべて暑いが、今日はとりわけ暑い。クリニックの前の日陰で、温度と湿度を測定したところ摂氏41度、湿度62%であった。日向ではもっと暑く、摂氏50度 湿度60%。お風呂なら 、とても入れない温度。白身も凝固し始める温泉卵寸前状態である。きっと今日は熱中症の嵐だろうなぁ・・・。 あすは、日向で卵焼きをつくってみよう?!

 

 地球温暖化が続いて、10年後、これがさらに5度上がったとしたら、真夏の東京は人の住めない環境になるだろう。

 

 田舎にくらべて都内でどうしてこんなに暑くなるのかというと、空調機からの廃熱と、植物や池、川などの熱バッファーである水分が少ないということがあげられると思う。大気中に廃熱しない冷房手段の開発は、地球温暖化のおり、求められる技術であり、家電メーカーは、優秀な開発者を投入して、次なる冷房手段として真剣に開発に取り組んでほしいものだ。

 

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2010/08/17  桑田佳祐さんの食道がんはなぜ早期発見できなかったのか?

 微小な食道がんを見つけるには、色素内視鏡もしくは、特殊光拡大内視鏡による丁寧な検査が必須!! 

 

毛細血管が斑点状になって見える部分が早期食道がん。FICEによって血管が強調されてみえる。

 

 今月2日に初期の食道がんの手術を受けたサザンオールスターズの桑田佳祐(54)が、14日夜放送のTOKYO FM「桑田佳祐のやさしい夜遊び」にメールを寄せ、近況を報告した。先週7日の放送でICU(集中治療室)に入っていることを明かしていたが、驚異の回復力で「本来なら1週間ぐらいいるのですが、(手術から)3日後には普通の病室に戻されました」と告白。「毎日1歩ずつ。点滴の管が取れ、おならやウンチが出て、数値もよくなっていっています」と順調に回復している様子を明かした。(夕刊フジから引用)

 

 先日、マスコミのテレビ業界の人が来て、「桑田佳祐さんは半年に一回、検診を受けていたというのに、どうして、手術するような食道がんがでたのですか?あんな有名な人が半年に一回検診を受けていたのにどうしてって、業界ではみんな疑問に思っています。」 と尋ねてきた。

 

 「初期の食道がん」と「早期の食道がん」は素人的には同じような語感がありますが、専門的にはかなり違うものです。早期の食道がんとは、癌の浸潤範囲が粘膜内に限られているもののことです。この範囲のうちに発見した場合、99%以上助かります。一方、初期の食道がんとは、専門的にはきちんとした定義はなく、病気の初期といった程度のあいまいな意味です。助かるかどうかですが、必ず、助かるとの保証はありません。

 

 早期の食道がんであれば、内視鏡で切除することとで98%以上治りますので、今回、桑田佳祐さんが、開腹開胸の手術を受けて大変に頑張っていらっしゃるということは、桑田佳祐さんの食道がんは、残念ながら、進行がんであったということです。

 

 これがわかっているから、業界の人が桑田佳祐さんの食道がんを疑問に思っているのである。

 

 癌が発生してから、半年で進行がんになるのは稀である。それでは、進行がんなるまで病変はどうして見落とされていたのか?答えは、検診の方法にある。

 

1) バリウム検診。レントゲンでバリウムを飲む方法では、早期がんは発見できないのが常識。レントゲンは凹凸を判断する検査であるため、凹凸のある病変がみつかる。一般に食道がんは早期のうちは、ぺラッとして平らであり、粘膜下に浸潤して進行がんになってはじめて、凹凸が出てくる。したがって、バリウム造影によるレントゲン検診では、食道がんは進行してからでないと、見つからない。

 

 私が授業時間の半分を割いて東大の講義で教えているのはこの常識。学生諸君が医師になって間違った説明をして多大な賠償金を払わなくてもすむように、また、患者さんがその意思に反して、早期発見されず、癌で死んでしまわないようにするためだ。

 

2) 内視鏡検診。一般の内視鏡検診の早期食道がんの発見能は、バリウム造影によるレントゲン検診よりは優れている。ぺラッとして色調が違うところ(食道がんには、赤いものや白いものもある)を見つけるのがコツだが、ときに食道がんは周囲と同じ色をしてることもあり、色の変化だけではかなり見つけづらい。桑田佳祐さんの食道がんは扁平上皮癌であったそうだが、このタイプの組織型の癌の場合、ヨードを含む色素散布が発見にきわめて効果的である。扁平上皮癌の部分はヨードに染まらず、正常部分は ヨードに染まるのである。

 

 この染色法、少々、面倒なため、全症例に実施しているのは、私一人くらい しか、この日本にはいないらしいが・・・・。(学会のワークショップで判明)

 

3) 最新・最高の食道がん検診(色素特殊光拡大内視鏡検診)。 それでは、現段階の最高の方法は、なにかというと、色素と特殊光 (NBI,FICE)を利用した毛細血管観察である。つまり、特殊光拡大内視鏡検査である。食道がんの毛細血管は、正常とははっきりと異なる構造を持っているので、毛細血管を丹念にみていけば、1mmの食道がんも 正確に見つかる時代になっているのである。 上の図参照。

 

 桑田佳祐さんは、おそらく、レントゲン検診か、精度の低い内視鏡検診しか受けていなかったために、半年に一度の検診でも、手術しなければならないほど浸潤するまで、 食道がんが見つからなかったのだろう。

 

 ちなみに、当院では 少し時間はかかりますが、色素と特殊光を利用した毛細血管観察を、全例に行ってい ます。

 

 

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2010/07/27  東京は猛暑。胃癌のレントゲン検診について   

 

 梅雨が明けてから、はや二週間ほど、東京の猛暑は尋常ではない。コンクリートとアスファルトの照り返しとクーラーの室外機からの熱風が強烈で、中目黒周辺の道の昼過ぎから5時ぐらいまでの温度は40度から45度ぐらいまである。クリニックの前の道路とクリニックのガラス窓に打ち水をすると、サーっと乾いていくが、それでも。すっと温度が下がるのがわかる。また、目黒川沿いの桜並木の下は少し温度が低い。

 

カプセル型小腸内視鏡で確認された空腸部の悪性リンパ腫。

この患者さんは若いころから、毎年バリウム造影によるレントゲン検診を受けていた。

 

 さて、話は飛ぶが、胃癌のレントゲン検診は海外ではどこでも行われていないのを、皆さん、ご存知だろうか?WHOが胃癌のレントゲン検診をしてはいけないと勧告しているのである。胃癌のレントゲン検診でX線を浴びて発生する白血病や悪性リンパ腫などの癌の数と、レントゲン検診を行って、早期発見によって助かる胃癌患者の数を比較すると、世界的には、前者が後者を上回るため、レントゲン検診を禁止しているのである。

 

 では、なぜ日本で胃癌のレントゲン検診が行われているのか?それは日本では、胃癌の患者が多く、レントゲン検診の精度が高く、早期発見で助かる人が多かったからである。(過去形であることに注意)。しかし、最近の日本は事情が少し違う。1983年にピロリ菌が発見されて、1990年に日本の学界では、ピロリ菌が慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因だとわかり、そして、疫学的考察から、胃癌との強い関係が指摘された。1994年には、ピロリ菌は胃癌の一番の原因であるとWHOが世界に向けて通知した。(わが国の厚生省はこの宣言を否定)。1995年ごろから、ピロリ菌退治の方法が確立されて、2001年ころには、ピロリ菌を退治すると、胃癌になる確率が、退治しない場合の約5分の1になることが、全国の大学、大病院の臨床研究で証明されているのだ。(厚生労働省はこの学会からの報告を香港からの論文を根拠に否定)。しかし、唯々諾々とレントゲンによる胃癌検診が日本では続いている。

 

 賢明な読者なら、私が何を言いたいのか、もうお分かりであろう。ピロリ菌にかかっていない人や、慢性胃炎になっていない人からの胃癌発生はきわめて低いのである。そういった胃癌のリスクが低い集団の人たちに対しても、レントゲン検診が、旧態依然と進められているのだ。これはよくない。即刻改善すべきだ。胃癌のリスクの低い集団の人たちに対して、レントゲンによる胃癌検診を行うべきではない。実は、リスクは簡単に評価できる。今は、ピロリの感染や慢性胃炎の存在は血液検査や便検査で簡単にわかるのである。ピロリ菌の抗体価、便中のピロリ菌抗原、血液検査(ペプシノーゲン1とペプシノーゲン2)などを調べればよいのである。

 

 レントゲン検診による早期胃癌の発見率は、昔のファイバースコープの時代ですら、内視鏡検診による早期胃癌の発見率の3分の1しかなかった。内視鏡は無痛で行う無痛内視鏡技術も進歩し、また、拡大内視鏡では病理所見に近い観察能力を持つまでにいたっている。

 

 しかし、日本政府の厚生労働省は、今年も、「胃癌検診の基本はレントゲン検診である」と宣言した。また、慢性胃炎のピロリ菌退治を社会保険診療で 治療できるように、学会は10年来頼んでいるのに、厚生労働省はまだ認めていない。国民の命と健康を守るために、厚生労働省の上級お役人は、目を覚ましてほしい。自分が天下りするかもしれないからといって、利益集団である検診施設組合や健康保険組合などの政治的圧力に屈して、国民の命を犠牲にしていいんですか?

 

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2010/06/20  しめ鯖食べた後の急な腹痛は、やっぱり、アニサキスでした。   

 

 生の海産物、しめ鯖、いかさし、マグロの刺身などを食べた後、数時間後から急に腹痛があるときは、アニサキス症を疑うのが定石。アニサキスは細長い1−4cm長の虫であり、魚など海の生き物の筋肉内に寄生する。主に胃壁に食いつくのであるが、壁の薄い小腸に食いつくと腸壁を破り、腹膜炎を起こすこともあり、その際はときに命に危険が及ぶこともある。今は亡き、名優 、森繁久弥さんもかつてアニサキスに襲われて、小腸を食い破られそうになり大変だったそうだ。

 先日の深夜、カプセル小腸内視鏡のデータを整理していると、近所の人から電話がかかってきた。しめ鯖を食べた後、数時間後から、腹痛が発生し続いているという。、胃腸を洗浄して、内視鏡を行ったところ、やっぱりアニサキスがいました。内視鏡で取り出し、その後、腹痛から回復。アニサキス症は来始めると続きやすい。土曜日の深夜まで、がんばってくれたスタッフに感謝。

 

 

画面をクリックするとビデオになります。

アニサキスが粘膜内に潜り込もうとしている動作が観察できます。

 

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2010/06/17  自民族に対する精神病理学的な虐待   

 

  私の母校である岡山芳泉高校の初代教頭、佐藤峰夫先生は、若かりし頃、あのインパール作戦に赴いた。佐藤峰夫先生は、 大変立派な先生で、人格者であり、教育に熱心であった 。運動会や文化祭などの締めとして行われた万歳三唱の音頭は、必ず、先生が行った。その鬼気迫る迫力は、とても印象深いものがあった。新設高校 の教頭として、何代にもわたって生徒たちから尊敬されていた。晩年の著作の中で、次のように、インパール作戦を述べていらっしゃる。

  「昭和19年3月、大本営でさえ成算に自信のなかったインパール作戦が東條の応諾でもって発動され、雨期と無補給と飢えのためにすべての兵士が、生きたまま幽鬼のように衰癆(すいろう)し、英印軍の砲弾で死ぬ以前に、大半がジャングルのなかで溶けるように死んだ。(中略)戦争の定義から外れた作戦で、自民族に対する精神病理学的な虐待としかいいようがないものであった。」

  今から、5年ほど前に、タイのバンコクの熱帯医学研究所を訪れた際、タイの教授が次のようにいった。「マラリアもデング熱も蚊で媒介されますが、蚊の種類が違い、マラリアを媒介する蚊は水のきれいなところ、デング熱を媒介する蚊は水の汚い所に発生します。かつて、日本軍が分け入ったタイとビルマの国境は、タイ国内でも有数の水のきれいなところ、つまり、マラリアの流行地です。タイ人はよく知っているので、そんなところに大切な軍隊を送り込みはしません。」

 無知で傲慢な政府役人などの権力者が非合理的な指令を出し、従わねば見せしめとして人々を懲罰し、自民族を虐待している精神病理は、確かに何も今に始まったことではない。しかし、いまは時代が違うはずだ。医療従事者や患者をHIV感染症の危機にさらすような指令を出す政府役人は、即刻、処分されなければならない。

 

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2010/06/15  医師と同じく医療のできる「特定看護師制度」は、今の日本では無理。 「特定看護師制度」よりも、手術前のHIVチェックを奨励し、HIVの蔓延を防いで欲しい。  

 

  厚生労働省は、特定看護師制度をどうしても推進したいらしい。大切な予算と人を割いて、特定看護師制度に関する大規模なアンケートを実施するという。この制度が、今の日本の医療にどれだけの恩恵をもたらすか、大変疑問だ。

 以前も述べたが、看護師と医師はその基盤において、大変大きな差がある。必要とされる基礎学力にも大きな差が歴然とあり、加えて、医師国家試験の合格は、サボれば、東大理V合格者にも簡単ではない。

 また、国家試験を受けるまでの習錬も、並大抵ではない。命を預かる重みを医師はその訓練課程から、また、長い実践経験から学びとっていく。チーム医療といえども、現場では厳しい選択を迫られる場合も多く、その際、最終判断を下すのは、そういった習練を積んだ医師であり、それは孤独で責任のある仕事である。

 アメリカ帰りの先生方が現場を知らぬ役人に働きかけて、アメリカと同じ粗悪で廉価な医療制度を日本に広めようとしているとしか思えてならない。このアンケートを実施する余力が政府にあるなら、手術前にHIVの血液検査をすることが、医療機関の負担になってしまう現実を改善するために、予算を付けてほしい。

 

 HIVは、目の届かないところで、ひそかに広く広まっている。渋谷にある診療所では、HIV陽性者が多すぎるため、血液検体の回収に特殊な容器が用いられるそうだ。当院でもまれであるが、若者の初診患者に、 時に、HIV陽性者がいる。HIVの確定検査を行い、保健所に届けようとするのだが、その前に患者は消える。

 まだ、社会保険庁があった数年前、東大病院に社会保険庁の恒例の監査が入った。外科では、手術前に全例HIV検査をしていたが、それは、社会保険では認められないといわれて、全額削られたことがあった。社会保険庁の指導に従い、東大病院の手術室は、HIVに対して無防備になってしまったのである。

 噂に聞くと、横浜のとある病院では、患者に同意を取った上で、HIVの検査を患者負担で測定していたが、それは、病院職員のためであって、患者のためではないから、患者にお金を返すようにと、政府からの指導があったそうだ。HIV患者の外見は普通の人と変わらない。HIVの感染チェックは決して病院職員のためだけでなく、患者のためでもあることは間違いない。薬で治る梅毒の術前の感染チェックは保険で認められていて、HIVは認められていないのである。不合理の極みと言わざるを得ず、日本政府がこんなに情けないかと思うと、日本人であることに涙がでる。

 

 

肛門部に見つかった大きなパピローマ。HIV陽性であった。

 

ちなみに当院では、器具の洗浄には公式に認められた「オゾンとオートクレーブ」を用いていて、院内感染には細心の注意を払っています。

 

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2010/06/13 菅首相誕生、施政方針演説で、ライフイノベーションも第3の道。  

 

 6月はじめに、鳩山総理大臣と小沢幹事長が退陣して、菅直人さんが民主党の代表になった。6月4日に国会で総理大臣に選出されて、6月8日に組閣した。そして、6月11日に施政方針演説を行った。「今の日本には、雇用の悪化、財政の悪化、社会保障の悪化、という大きな3つの問題がある。自民党内閣当時の市場原理主義では、この3つの問題は解決せず、『社会保障に税金をつぎ込むことで、雇用を生み出し、子供を作り、経済を浮揚させて、財政を改善する。』という第3の道で日本を再生させる。」と述べた。その中で、3つのイノベーションに言及したが、そのうち、ひとつがライフイノベーションであった。

 ただし、これに言及したものの、具体策は述べなかった。一生のうち癌にかかる人が6割、死因の4割が癌という今の日本にあって、癌予防はライフイノベーションの重要なパートである。知恵のある効果的ながん予防政策を、菅直人民主党は提出できるのであろうか?

 

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2010/05/15 北京大学で講演。テーマは1)拡大内視鏡による[optical biopsy]の可能性(ピットパターン診断と核パターン診断) 2)5mm以下の微小ポリープの取り扱いについて  

 

 5月14日から5月16日まで、北京に出かけてきた。北京大学第3医院(=病院)消化器病中心(=センター)林三仁教授が主宰する学会に呼ばれて、約一時間の招待講演を行ってきた。2年ぶりの北京は相変わらず、晴れても空が白かった。依然きたときには気がつかなかったが、空が白いのは、単に車排ガスによる大気汚染だけでなく、ポプラの綿毛のせいだった。マスクをしないと、危うく吸い込んでしまうほど、綿毛が舞っていた。

 学会の会場は、オリンピックスタジアム、鳥巣のすぐ間近であった。1300人ほど消化器医が、中国全土、とくに中国北部を中心として、集まっていた。テーマは拡大内視鏡と決めていたが、前日の打ち合わせで、中国でも5mm以下の小ポリープの取り扱いについては、中国でも議論があるとのこと。以前、日本消化管学会で発表した「5mm以下の微小ポリープの取り扱いに関する検討」を追加することにした。

 当日の講演には約1000名が集まり、会場の中に入りきらずに、立ち見や通路座りが出るほどであった。翌日、学会のライブデモを見学させていただいたが、中国の消化器内視鏡のレベルは、国力の増大とともに、年々、よくなっていて、最先端のレベルは日本と遜色なし程度までになっているようだ。

 

 

 

講演後は、北京の町に繰り出して、王府井と天台に行ったが、大変賑やかであった。

 

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2010/02/19 藤田まことさん死去 食道がんから慢性閉塞性肺疾患、大動脈からの出血・・・で  

 

  2月19日11時31分配信 [eiga.com 映画ニュース] 俳優の藤田まことさん(本名・原田真)が2月17日、大動脈からの出血のため大阪・吹田の病院で死去した。76歳だった。葬儀は近親者のみで営む。藤田さんは1973年、「必殺仕置人」に中村主水役で出演。09年までのシリーズ31作品のうち16作品に名を連ねた。08年5月に食道ガンの手術を受け、「必殺仕事人2009」の撮影で復帰。昨年7〜9月を休養に当てて精力的にリハビリを続けていたが、TBS系連続ドラマ「JIN 仁」のクランクイン直前に「慢性閉塞性肺疾患」と診断され、降板していた。

 

 進行性の食道癌の治療で、化学療法と放射線療法を行い、その副作用で、肺にダメージが加わり、今回の大動脈出血につながったのは想像に難くない。食道癌は、内視鏡で完全に予防できる癌であるだけに、残念に思う。

 ちなみに、食道癌(扁平上皮癌)の高危険因子は、酒、たばこ、50歳以上、男性。これが私が学生の頃の解答であったが、最近の解答は、酒、たばこ、高齢、アセトアルデヒド脱水素酵素欠損。女性であっても、アルコールをたくさん飲む方は女性でも食道がんが多い。アセトアルデヒド脱水素酵素欠損は遺伝子で規定されている。2つの遺伝子がともに、欠損している人はお酒は全く飲めないが、一つの遺伝子だけが欠損しているときは、それなりに酒 を飲めるが、二日酔いをする。

 

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2010/02/19 微小癌と拡大内視鏡 NBIだけでなくFICEにも保険点数を認めるべきだ。 

 

  小さな癌を見つけるには、拡大内視鏡が欠かせない。下の図は最近見つけた微小胃癌である。1.5mmの発赤を拡大してみて、異常血管が見えるので癌だとわかる。私が卒業したころは、内視鏡ではせいぜい6mmぐらいまでしか、確実に胃癌を見つけることは出来なかったが、現在は、この毛細血管を観察することで、1mmでも、胃癌とわかるようになった。

 この4月の診療報酬改定で、オリンパスのNBI(狭帯域画像)に保険点数200点が付けるべきという中医協の答申は、早期癌の発見を日常の仕事としているものにとっては、大変うれしいことだ。ただ、同等の観察技術のFICE(富士フィルム)は、どうなのであろうか?ちなみに、下の図はFICEによる画像である。NBIだけでなくFICEにも 、癌の発見能を向上させたとする論文がすでにいくつも発表されており、実地の画像でも遜色はない。NBIだけでなくFICEにも保険点数をつけるという公平な取り扱いが 、国民の早期がん発見に寄与することは間違いないと思う。NBIだけでなくFICEにも保険点数を認めるべきだ。

 

画面中央の異常毛細血管と腺管構造の乱れで胃癌の範囲が正確にわかる。病理結果は高分化型腺癌。深達度m 大きさは1mm未満。

 

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2010/01/25  情報操作とグーグル問題と 癌罹患率57%癌死37%の日本 

 

  今日の日本では、一生における癌の罹患率が57%、また、死因の37%が癌であるそうだ。 こんなに高い数値は、どうして生じたのであろうか?単に、老人が増えたというばかりでなく、がん予防対策が正しく行われていないためだと、私は考えている。

 

最近、大手検索サイト会社、グーグルは、中国政府と対立している。グーグルは、「すべての情報に、アクセスできることは民主主義・自由主義の前提である。」との理念のもとに、世界各国で事業を展開してきた。この理念が中国政府と相いれないらしい。もめ始めてからずっと、日本での一連の報道を聞いていた。今日もNHK9時のニュースでグーグル問題を報じていた。天安門事件に蓋をしたい中国政府が、グーグルに圧力をかけているといった視点の報道ばかりである。

しかし、日本では、今回のもめるきっかけとなった事件が報道されていない。グーグルは、最近、中国現地で、地元の作家集団から著作権を侵害されたとして訴えられて、敗訴しているのである。この事件、中国では、はっきりと報道されている。では、なぜ、この事件について、日本のマスコミは報道しないのか?そうです。日本のマスコミにも、情報操作があるのです。すべての情報にアクセスできることが民主主義・自由主義の前提であるという理念を支持している日本のマスコミが、この事件を報道しないという皮肉。この辺の皮肉な構図のなかに、世界のパワーゲームと日本の見えざる権力システムが垣間見える。

篤姫は、「一方聞いて、沙汰するな。」とNHK大河ドラマの中で言っていたが、まさにその通りで、今回のクーグル問題を正しく理解するためには、日本のマスコミの情報だけでは不十分 で、中国の報道も聞く必要がある。日本でもグーグルに、著作権や肖像権を侵害されたり、行き過ぎた報道で名誉を傷つけられて、辛い思いをしている人は、少なくない。今回のグーグル問題は、日本政府とアメリカ政府、アメリカ政府と中国政府の権力ゲームの黙示録だ。

 

がん予防の問題でも、実は、政府に都合のよいように情報操作がなされている。だから、その結果、癌死37%癌罹患率57%という不幸な現実 が日本に訪れたのである。マスコミが政府の言いなりになり、お抱え報道を繰り返した結果が、第二次世界大戦の敗北であった。癌との闘いも、いま、 一見平穏な中での、敗戦が続いている。

 

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2010/01/01  新年予想 2010 今年もよろしくお願い申し上げます 

 

 新年を迎えるにあたり、皆様の健康と繁栄をお祈り申し上げます。

2009年秋の富士山

 

 2008年の後半からの経済の落ち込みは日本経済を激しく揺さぶっている。「従来の経済モデルが壊れて 仕事にすることが無くなった。これから具体的に何をしたらいいのか?よくわからない。」 日本社会は大きな曲がり角に来た。

 経済が医療に与える影響は大きい。今後の医療の成り行きを考えるために、日経ジャーナルの2010年予想を読んでみた。いろいろな分野のことが書かれていたが、エコカーが次々と開発されて、景気は少しは良くなるらしい。そして、「従来の常識にとらわれない本質追及が次の時代を切り開く。」と書いてあった。

 

 さて、その本質追及からみた、従来の社会常識にとらわれない癌予防対策とは、何だろうか?

もちろん、それぞれの癌に対する特効治療(三次予防)ができれば、それが一番であるが、治療方法が必ずしも有効でない時は、一次予防(原因除去)と二次予防(早期発見)に努力するしかない。

1)肺がん・・・・・・・・・喫煙の禁止。たばこの販売中止。タバコに代わる健康に良い嗜好品の開発。

2)胃がん・・・・・・・・・ピロリ菌駆除および慢性胃炎の治療。造影レントゲン検診の限定化もしくは廃止。

3)大腸がん・・・・・・・過度なアルコール摂取や過度な脂肪摂取の禁止。遺伝的体質の検討。前がん性病変である大腸ポリープの切除。

4)食道がん・・・・・・・禁酒禁煙。アルデヒド脱水素酵素の活性の測定による高危険群の絞り込み。

5)原発性肝がん・・・B型、C型肝炎ウィルスの除去。慢性肝炎の治療。

6)膵臓癌・・・・・・・・・慢性膵炎の治療。RAS遺伝子異常の抑制。

7)子宮頚癌・・・・・・・パピローマウィルスの全員チェックとこまめな検診。

以上のうち、胃がん、大腸がん、食道がんは、技術の進歩により、拡大内視鏡を用いると、わずか1−2mmでも発見可能な時代となった。つまり、その気になって、しかるべき技術のあるところで、内視鏡検査を受ければ、大腸癌、胃がん、食道癌はほぼ100%予防できる。

 

 鳩山首相が「命を大切にする」というのなら、今年はまさに、科学的知性のもと、勇気を持って、前進して行くべき年であろう。

 

 

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2009/11/23-25  欧州消化器病学会 Gastro London 2009 

 

 今年の欧州消化器病学会は、ロンドンの新しいウォーターフロント、エクセルロンドンで開催された。日本の学界にはない、前日のレセプションパーティーにヘンリー8世(たぶん ?偽物)が現れて、大いに盛り上がった。学会には世界各地から4万人もの参加者があった。以前に比べて、中東諸国からの参加者の増加が感じられた。

 エクセルロンドンは大きな学会場で、わかりやすい作りでよかったが、ロンドンシティ空港のすぐそばで、飛行機が真上を通過し、時折、学会の部屋の中まで騒音が木霊して、うるさく、とても、気になった。

 今回は「陥凹型早期大腸癌は、ほかの形の癌よりもより早く浸潤する」「The Depressed Colorectal Cancer invades more rapidly than other type」をポスター発表した。WEBプログラム上では★★★★の評価をもらった。

  発表要旨は1994年の厚生省の班会議での発表と同じであるが、症例数はずっと増えた。症例数が増えても結論はかわらなかった。やはり、陥凹型大腸癌は見落とせない癌なのである。

 

 ロンドンの街は渋滞していて、オリンピック前景気に沸いているように見える。

 学会でも新しいmiRNAやsiRNAによる新薬、新検査法など、新薬、新治療法など、次の時代を感じさせる発表が種種、見受けられた。

 

 

 

2009/11/09  はまったレセプトプログラム作り 

 

 昨年秋から、社会保険医療も取り扱うようになった。いろいろとレセコンを見たが、「一連の行為」を分別するレセコンが市販されていなかった。「一連の行為」というのはプライベート的に大変意味深い概念なのだが、社会の扱いは小さい。そこで、周囲の反対を振り切って、自前でレセプトプログラム作りをおこなった。

 もともと、凝り性なので、この春に、なんとか曲がりなりのプログラムを作り上げることができた。その後、少しずつ改良、改善して、走っている。各種プログラムがうまく走った時の快感は、詰将棋を説いたときと同じものがある。苦しみからの開放感・達成感がなんとも言えない。今の社会保険のルール、細則は、難解で複雑で、麻雀の50倍ぐらいの複雑なルールである。まあ、業界人の閉鎖性を守るためにはこの複雑難解性しかないのだろうが、この複雑難解性をプログラムにしてしまう楽しみは格別であった。

 しかし、この官僚たちの考えた難解複雑性は、言うまでもなく、一般の医療界にとっては害悪だ。私の偏執癖は、プログラム作りに快感を見出したが、医師としては、本来は医学の研究や臨床に励むべきであったろう。

 一般的には、こんな複雑なルールのもとでは、業界は発展しない。皆さんの見ての通り、今の医療界は、ルールの複雑難解性につぶされ、「人の病気を治して、命を救う」という大義が、複雑難解なルールの森の蔭に埋もれてしまった。それは、まさに厚生官僚たちの狙い通りであった。

 ちなみに保険薬局のルールは極めて簡単で簡素なルールだ。だからこそ、政府に守られて、この15年、業界は未曾有の発展を遂げた。しかし、3兆円のこの業界、医療現場から3兆円の利益を奪ったに過ぎないような気がする。薬価差益が社会的に批判されて、保険薬局は生まれてきたのだが、薬価差益があれば、病院の労働環境はもうちょっとましであったことであろう。利益分配は、やはり、苦労して頑張っている現場の人たちに手厚くすべきだと思うがいかがであろうか?

 

 ところで、私の「一連の行為」の入るレセプトプログラムを商品化したい企業があれば、お申し出ください。

 

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2009/11/09  たばこ増税について 

 

 民主党政権が、たばこ増税策を打ち出した。大賛成だ。

 

 タバコの肺がん発生のオッズ比は、アメリカで20ぐらい、大気汚染の激しかったころの日本で4から5である。日本の大気汚染はかなり良くなってきているので、今の日本では、たばこの肺がん発生のオッズ比は、その間の10ぐらいと予想される。つまり、たばこを吸っていると10倍も肺がんになりやすいのである。そして、肺がんの死亡者数は日本全体で、年間約8万人。1日に直すと約230人ぐらいが肺がんで死んでいる。

 

 オッズ比が10ぐらいだから、もし、たばこが販売禁止にできれば、年間の肺がんの死亡者数は約11分の1に減ることになる。肺がんの医療費は、数兆円レベル。そのほどんどが高額医療で、国庫負担となるのだから、多少税収が減ろうとも、政府の財政的にも、増税策は理にかなった政策である。ところが、これまで、その政策が本邦で施行されなかったことこそが、我が国の官僚政治の後進性を如実に示している。肺がんは本人だけでなく、家族の悲しみも大きい。

 

 ちなみに、アメリカでは、10年くらい前に、「たばこ産業は健康保険の基金に、年7兆円支払え。」という判決がでた。その後、今はどうなっているかはよく知らないのだが、私が診た肺がん患者は、みな、愛煙家であった。そして、他人はともあれ、自分だけは肺がんにならないと考えていた。

 

 人の命を救うためにも、政府の財政を良くするためにも、やっぱり、大増税しかない!

 

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2009/10/21 Barrett's Cancer バレット癌(食道腺癌)の内視鏡診断 

 

 今日は東京大学病院で学生相手にクルズス(少人数相手の講義)をしてきた。講義のテーマは主に食道癌。

1)食道癌はsmに入れば進行がんであり、5年生存率は50%前後。したがって、食道癌はm癌のうちに見つけるのが大切。

2)一般に消化管の癌とくに食道癌は、m癌は「ぺら」としていいて、sm癌は「ごつ」としていると説明し、図譜で確認。

といったものであった。

 

 いつも、講義に使うディスクを今日は家に忘れてしまいました。いつも皆さんに見せているスライドを以下に載せておきます。

 

 日本では食道癌と言えば、90%ぐらいが扁平上皮癌である。しかし、欧米では、食道癌のうちバレット癌(腺癌)が増えていて、既に扁平上皮癌を超えて、食道癌の50%−60%がバレット癌である。食道腺癌もsmに入ると予後がm癌に比べて急速に悪化する。5年生存率は50%前後。

 ちなみに、米国では、約10年前の教授クラスの胃カメラ(上部消化管内視鏡)の一回の検査代が2000ドル(10年前は日本円に換算して約27万円)を超えていた。(ちなみに米国の研修医は無料か極めて低価格、日本ではどのレベルの医師が内視鏡検査を行っても見るだけでは1万3000円)。しかし、見逃して患者が死んだときは10億円単位の賠償が迫られることもあると聞く。

 ところが、このバレット癌(バレット腺癌)は、困ったことに、通常内視鏡観察では、「ぺラ」とした状態(=深達度m)では極めて見つけづらい。つまり、助かるうちに見つけづらい内視鏡医泣かせの病変なのである。扁平上皮癌は、ヨード染色陰性という感度がほぼ100%の検査法があるが、バレット腺癌(深達度m)には、感度100%の方法は、通常観察ではないのである。見逃し死亡の賠償金は10億円単位、このプレッシャーに対抗するために、欧米の内視鏡医はどうしているのか?

 

 「バレット上皮を1cm刻み、90度刻みに絨毯爆撃のように、バイオプシー」するのである。バレット上皮が20cmあれば、80個のバイオプシーを行うのである。手間がかかるのはいうまでもない。しかし、10億円単位の賠償金を考えれば、その手間を厭う人はいないだろう。絨毯爆撃バイオプシーのことを聞いたとき、私は賠償金をめぐる裏事情を知らなくて、欧米の内視鏡医のそんな面倒な行為の意味が理解できなかった。たしかに、そんな高額な賠償金があるとしれば、20センチのバレット上皮に対して、80個のバイオプシーといった、きちがいじみた行為も理解できる。しかし、それにしても、アホラシイ方法だ。

 

 1980年代後半から、1990年代の私の研究成果は、「ぺら」とした腫瘍を大腸で確実に見つける技術を開発したことである。そこで、平坦型大腸腺腫・腺癌を見つける技術(色素拡大内視鏡によるピットパターン診断)を、さっそくバレット腺癌に応用してみたところ、成功例が相次いだ。大腸癌で見られる悪性のパターンとバレット腺癌で見られる悪性のパターンが酷似していたのである。

 その事実を2000年から2−3年米国で発表したが、ポスター展示であったにも関わらず、質問の人たちが列をなして、朝から夕方まで、そのやり方について細かく訊かれた。バレット腺癌の色素拡大内視鏡診断について、論文を書いて、米国の内視鏡雑誌に載った写真が次のものである。

 

小さく細かく枝分かれして、ネットワークをなした、ピットパターンが浅く平らに陥凹した面(3mm×2mm)に認められる。

ちなみにこの写真は、米国の内視鏡学会により卒後研修の教材として採用された。

 

 ところで、その後どうしているかと言えば、バレット上皮には全例、お酢を散布している。お酢を散布すると、それだけで、構造が明らかになるのである。全例にお酢や色素を散布するというのは、日本では私だけだったらしい(当時、学会のシンポジウムで、全例に色素や酢を撒く人は挙手と聞かれて、居並ぶ10数名のシンポジストの中で挙手したのは私ひとり・・・であった。)が、微小なバレット腺癌発見にはきわめて有効な方法である。お酢を撒いて見つけた癌が次の絵である。

 

線状に細く密集し長く延びたピット構造の領域がバレット腺癌。直径約3mm大。

 

 学生諸君は、内視鏡診断はここまでするべきだということをよく理解してください。この絵が命の懸った絵で、アメリカでは10億円単位の価値があります。

 

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2009/10/20  iPS細胞施設見学 

 

  京都の国際会議会館でJDDWが開催された。初日の10月14日から10月17日まで参加したついでに、15日に千葉勉先生のつてで、京大病院のiPS細胞施設を見学してきた。青井貴之先生が案内してくれた。研究施設外様は一言で言うと、東大と同じ。青井先生にいろいろ質問したところ、体内の幹細胞をニッチから叩き出す物質の研究が進行中とのこと。これが進めば、自分の細胞をiPS化して、体内の古くなった幹細胞と入れ替えるなんてことができるかもしれない。つまり、理論的不老化への道だ。

 

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2009/10/15  JDDW2009 第17回日本消化器関連学会週間で、拡大内視鏡による核パターン診断を発表 

 

  京都の国際会議会館でJDDWが開催された。初日の10月14日から参加。15日はシンポジウムで超・拡大内視鏡の最前線で、「拡大内視鏡による核パターン診断の臨床病理学的検討」を発表した。5年前にアメリカのDDWで発表していた内容に、少し追加した内容であったが、日本で発表するのは初めてで、日本人では知らない人が多かったためか、結構反響があった。4年前に論文にまとめておくべきであった。しかし、この世界は妙に面白い。自分の考えていることを誰にも話していないのに、まったく同じアイデアを思い付いているひとがいるのである。(ただし、ちょっとは違うことも多いが・・・・)。学会でそういうことを何度も経験してきたが、今回は何回目だっただろうか?

 今回の拡大内視鏡による核パターン診断の発表ポイントは、簡単にいえば核パターンが「バラバラで大きな丸なら癌」。(核パターン3型=癌)。下の写真は左が拡大内視鏡像で、右がそのあたりの顕微鏡像である。内視鏡的病理診断は実現可能まで、あとわずか。

 この技術で何がわかるのか?拡大内視鏡を見るだけでその病変に癌があるのかないのかが、ほぼ100%わかるのである。その場で正しい治療方針を立てることができる。

 

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2009/10/11   猛威を奮い始めたインフルエンザ。 タミフルは感染初期に飲むのが重要。 再診の方にはタミフルを郵送も可。 

  インフルエンザが大流行し始めている。先月の下旬、中国の大連にいったところ、日本人学校が運動会後にインフルエンザが流行して、閉鎖になった。東京に帰ってきたら、末娘の小学校がインフルエンザにより学年閉鎖。息子の中学校も学年閉鎖。麻布高校も運動会の後、インフルエンザが一気に広まり、学校閉鎖になった。いづれも、新型か季節型なのか、公表されていない。しかし、流行の時期がいつもの季節型とは異なるので、おそらく、新型であろう。

 新型インフルエンザに対する対応策はワクチンやタミフルなどの特効薬などがある。新型インフルエンザに対するワクチンは、来週か再来週に投与が始まりそうである。しかし、厚生労働省はワクチンを投与すべきかどうかの診察は、無料で行うようにと、医師会に要求しており、医師会は反発してもめている。新型インフルエンザは緊急の課題であり、早期に解決してもらいたいものである。

 タミフルは、感染初期に内服することが大切である。タミフルは、インフルエンザウィルスが細胞に付着するときに、ウィルスが取りつく分子をブロックして、インフルエンザウィルスの体内感染、広がりを抑制する。したがって、感染の初期に飲まないと効果がない。ウィルスが体中に広まってからだと、効果が薄いのである。ウィルスに感染したら、神経細胞も肺細胞も最終的には壊れる運命となるからだ。

 タイミング的には、ちょっと寒気がでたり、のどが痛いといった、高熱が出る前のタイミングで飲むのが、タミフル内服の最良のタイミングである。ちょっと前のガイドラインでは、高熱が出てインフルエンザのキットでA型陽性が証明されたら、初めてそこでタミフル投与と言っていた。ところが、先日の横浜で、キットが偽陰性で、タミフル投与のタイミングがさらに遅れて、インフルエンザ脳症が発症してしまう死亡症例がでた。ガイドラインに沿っていて、子供が死んだのである。そこで、日本のガイドラインは変更になり、今やタミフルの早めの投与が勧められている。再診であれば、電話診察でも投与OKとなった。

 我が家でも末娘が学年閉鎖のとき、末娘は高熱がでて学校を休んだ。発熱一日目に、タミフルを飲ませて、発熱は2日でおさまった。定跡どおりの展開であった。そして、その後兄弟に3-4日後、寒気やのど痛の症状が出たとき、すぐに、タミフルを飲ませたところ、結局それ以上症状は悪化せずにおさまった。タミフルを感染初期に飲むのは、作用メカニズムから予想されたように、極めて高い効果であった。

 

 当院では、再診の方には実費でタミフルを郵送します。ご希望の方は、メール(tabuchi@mrg.biglobe.ne.jp)にてご連絡ください。

 

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2009/09/30   癌診療において、アバスチンの自由診療と抗がん剤の保険診療の混合診療の可否をめぐる裁判の行方 

  2007年11月8日の裁判の上告審の判決が昨日あった。結果は、原告の逆転敗訴であった。

 

 一般に、混合診療は、認められるものは個別に政府によって認められており、認められないものは個別に政府によって認められていないのが、現状である。厚生労働省のホームページを読めば、混合診療は個別判断の対象と書いてあり、社会保険法のどこにも混合診療禁止の文字はない。たとえば、人間ドック(自由診療)で大腸内視鏡を行い、切除すべき大腸ポリープがみつかって、そのまま、内視鏡的大腸ポリープ切除術(社会保険診療)で行うことは、通達により認められている。

 今回の判決は、癌診療でアバスチン(自由診療)、抗癌剤(社会保険診療)という組み合わせは認められないということであろう。この問題は、医学的な問題であるとともに、医療経済の問題である。医学的には、併用のほうが延命効果はあるのは疑いない。どれだけお金を払って、どれだけ延命効果があるのかということが判断のポイントとなる。アバスチンの効果は確かにあるが、値段がちょっと高い。癌患者が毎年55万人も新たに発生している我が国の現状からは、値段を安くして、適応を拡大したほうが、みんなのためのように思うがいかがなものであろうか?今後、考慮すべき問題だと思う。

 ちなみに、大腸内視鏡の人間ドック(自由診療)と内視鏡的大腸切除術(社会保険診療)の混合診療を認めているのは、大腸をきれいにするのが、大変で、患者に二度手間をかけさせないという配慮からであろう。

 

 この事件は最高裁に上告されるのであろうか?

 

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2009/09/04   ガイドラインと裏ワザ 何が名医の条件か?

  現在は、何でもガイドラインの時代だ。何かするときはこうするのがよいとガイドラインに示されている。しかし、現実は、ガイドラインに従っていても、うまく解決しないことが少なからずある。特に医療の現場ではそうだ。病気が2つあって相克する場合、どう治せばよいのか、3つの病気のときはどうするのか?いちいちガイドラインはない。症例は、多分に例外的だ。こういうとき、役立つのは基礎的な医療知識。知識をもとに病態・生態を理解して、目的を果たす手段を見つける。

 ガイドラインは初診者にはありがたいが、時に、それを決めた人たちに都合がいいようになっている。本質を理解すると、そのせこさが透けて見えることも少なくない。したがって、そんなガイドラインには、もっと簡単な解決方法、俗に「裏ワザ」が存在する。裏ワザに気づくには、知識と意欲と本質を見抜く知恵が必須だろう。

 

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2009/08/30   衆議院総選挙で民主党が圧勝 

 民主党を中心とする新政権には、倒れつつある日本を立て直して、「人の生活と命を大切にする」政治を行ってもらいたい。日本は人口の高齢化に伴い、人々の生存の根本を脅かす癌が、いまや年間約55万も発生している。現場の真理に基づいた効果のある政策がキーワードだろう。

 

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2009/08/23   同級生が大腸癌で死亡 ご冥福をお祈りします 

 危篤の報が入っていた同級生のK氏が大腸癌で8月9日に死亡した。ご冥福をお祈りします。

 自分が半生行ってきた癌予防に改めて思いを巡らしている。助かった人、助けた人、助けても死んだ人、元気に生き抜いている人、はじめから助からなかった人、感謝した人、怒った人、文句を言った人。大切な人を連れてきた人。元気で生きていられるというのは稀重なことだ。合掌。

 

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2009/07/31   同級生が大腸癌で危篤 

 かつて、一時期同じ所で働いていた大学の同級生が、大腸癌で危篤との報が入った。残念だ。残念でならない。

 

 私は28歳の時、「大腸内視鏡を志すなら、自分でも大腸内視鏡検査がどんなものか体験してみなさい。」という先輩先生方のお勧めで、先輩の先生に大腸内視鏡をしてもらった。2mmの白色のポリープがS状結腸に見つかった。検査をしていただいた先輩の先生にティーチングスコープで病変の画像を見せてもらった。先輩の先生いわく、「田渕君、どうしましょうか?君は若いから腫瘍の可能性は低いけどね・・・・」。

 

 当時はまだ、ファイバー内視鏡が主流でピット診断はない時代だった。いまからみれば画像が粗く、腫瘍かどうかは判然としない。2mmだが、万が一、もし癌だったら困る。よく見ると少し張った感じがして目立つ気もする。やっぱり怪しいと思い、ホットバイオプシーしてもらった。病理結果は、中等度異型大腸腺腫。わずか2mmでも癌になる可能性の高い病変であった。爾来、定期的にチェックして、大腸ポリープを切除してきた。

 

 その後の私の研究では、そのような腫瘍性ポリープが癌化する確率は一年で約1.3パーセント。あの時、この病変は小さいから取らなくていいですと選択していたら、私が彼のようになっていた確率は約30%強。彼のことは決して他人事ではない。

 

 去年の秋の癌学会の話によると、今の日本では全死亡者数110万人。55%の人が癌になり、37%の人が癌で死んでいるそうだ。癌の患者の大腸内視鏡検査をすると、大腸腺腫は97%以上の確率で見つかる。つまり、大腸腺腫がなければ癌にならないというわけだ。内視鏡で大腸を隈なくよく見て、小さな病変にも拡大内視鏡を用いて的確にアプローチするということは決して無駄なことではない、むしろ、必須だ。

 

 しかるに、昨今の大腸内視鏡の現状をみると、小泉改革で医療界がいじめられた結果、人々の心が荒廃して、日本中に粗診粗療が蔓延している。日本全体の大腸がん死亡数が、ここ数年、上昇してきたのは理由があるのだ。

 

 彼も35歳ぐらいから、定期的に大腸内視鏡検査を受けて、ポリープを取っていれば、こんなことにはならなかった。

 

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2009/07/11   禁煙のすすめ、たばこ販売の禁止 

 多発性大腸ポリープでフォローアップ中の患者さんのうち、3人が、この一年で肺癌になった。3人とも、喫煙者であった。大腸ポリープが多数見つかって、「あなたは腫瘍体質で癌ができやすいから、喫煙をやめてください。」と勧めたが、たばこをやめなかった人たちである。大腸にポリープが多発してくるのは、決して偶然ではない。体質的に腫瘍ができやすいということなのである。

 タバコの癖が抜けないのは、気の弱い人の性だ。やはり、たばこの販売禁止で喫煙をやめさせるのが、肺がん抑制の決め手であろう。日本では一年に約8万人が肺がんで死んでいる。1日約230人。合掌。

 

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2009/06/29   女子マラソンの草分け 佐々木七恵さん死去

 女子マラソンが初めて五輪で実施された1984年ロサンゼルス大会代表で、日本女子マラソンの草分け的存在だった永田七恵(ながた・ななえ、旧姓佐々木)さんが27日に直腸がんで亡くなっていたことが分かった。53歳だった。岩手県大船渡市出身。葬儀は29日、都内で親族らによる密葬で行われた。関係者によると、約2年前から直腸がんの治療を受けていたという。 (スポニチ記事の一部) 

 また、一人有名人が大腸癌で死にました。日本女性の死因のトップは大腸癌です。いま日本では、毎年、約4万人強が大腸癌で死んでいます。1日約110人大腸癌で死んでいます。50歳になったら、内視鏡による大腸がん検診を受けましょう。定期的に大腸ポリープをとれば、ほぼ100%、大腸癌による死亡を防げます。

 

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2009/06/14   大阪城   

 

 12歳の時、大阪万博が開かれて、親戚の家に泊まりながら、何度も万博に通った。その時から、遠くにそびえ見える大阪城を一度訪れてみたいと思っていた。今日は、東京から新幹線に乗って大阪へ行った。用事が早く済んだので、大阪城に立ち寄ることができた。

 天気は快晴。大阪城公園から入る。ロックバンドが賑やかで楽しい。外堀を越えてから今度は内堀。ぐるぐると30分ぐらい回らされる。大阪城の内堀、外堀の高低差、石垣の高さは、江戸城をはるかに凌いでいた。また、正面の門にある石垣の最大70平米を超えそうな巨石は圧倒的であった。どうやって運んだのであろうか?豊臣秀吉の権勢がしのばれる。この城に立てこもれば確かに安心だったに違いない。落城トラウマのある淀君が、しゃにむに大阪城を離れたくなかったのは、当然だろう。

 

 事実、大阪冬の陣では、徳川幕府の大軍を追い返したのである。しかし、徳川幕府方の巧みな外交戦術に騙されて、外堀を埋められて、砲弾が天守閣まで届くようになり、大阪夏の陣では落城の憂き目にあった。淀君と秀頼公が自害した蔵は、高い石垣の上にあった。いまだに、暗く悲しい雰囲気が周囲に漂っていた。敵の戦略に騙されないほどの、巧妙な知恵がなければ、負けて死に絶えるのも道理だが、基本的には大砲がものをいったのだ。

 ちなみに、明治維新では、維新軍には鍋島公が開発したアームストロング砲があった。その新技術の射程は長く、江戸城に逃げ場はなかった。戦わずして江戸幕府側は開城するよりほかなかったのである。近代の戦争は、科学技術の戦いであり、より強力な兵器を持つ側が勝つ。第二次世界大戦でも、戦闘機・爆撃機の開発、原爆の開発、レーダーの開発、暗号解読技術の開発などなどの競争に負けて、日本は敗戦の憂き目にあった。いくら精神論を説こうとも、竹やりでは機関銃には勝てない。

 医療の戦いも同じ。いい薬ができれば、病気は簡単に治る。問題は治療法のない病気だ。

 

 最近、内視鏡を作るのに、一本一本お役所の認可を取らなければならなくなったらしい。ステンレスの材質をニッケルからクロムに変えるだけで、多くの書類を用意しなければならないそうだ。知見も必要で費用と手間もばかにならないそうだ。また、企業と大学の間での自由な研究的な交流にも、役所が介入してくる。だから、最近は新しい内視鏡が作れないのだそうだ。いい鉄砲(内視鏡)が作りにくくなれば、戦争には勝てない。官僚は、「安心安全の日本」「消費者保護」という標語を逆手にとり、医療機器や薬剤などの規制をますます強くして、外郭団体をさらに増やし、退職後の天下り先を用意するのに躍起だ。不自由になった日本では、技術開発が頓挫して、新薬、新医療機器が無くなっている。認可は外圧のみ?!という現状だ。小泉行政改革は「官僚による官僚のための官僚の政府」を作ったのに過ぎなかった。

 

 いま、病気と闘っている先輩医師のがんじがらにされた姿をみて、これでは無理だと、新兵が外科や内視鏡などの現場系に入ってこないのは当然だ。

官僚と政府が変らなければ、良心が滅び、産業が滅び、国が滅びると本気で感じる。

 

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2009/06/04   パピローマワクチン:アメリカではテレビで盛んに啓蒙活動!日本では認可すらされていない!   

 ところで、シカゴではテレビで、パピローマワクチンを受けるようにという啓蒙活動ビデオが、毎朝毎晩、何回も流れていた。

 

 最近当院を訪れてくる若い人の初診の内視鏡では、その3分の1くらいの人にパピローマがある。日本の社会保険医療の現場では、抗パピローマ抗体価を調べると、過剰診療と査定される 。したがって、一般に調べられない。そのため、若者に広がるパピローマの実態については日本では誰も知らない。幸い、当院にはFICEシステムの付いた拡大内視鏡があ る。特徴的な毛細血管像を観察することで、パピローマが簡単に診断できる。そのため、そこを組織検査して、パピローマとの診断が得られるわけであるが、それにしても、3人に1人とはすごい頻度だ。そのうち一人には、HIV感染者もいた。

 

 パピローマは、日本でもアメリカ同様、若者の間でキスや性交渉を通じて広がっている。

 

 ちなみに、抗HIV抗体検査、抗パピローマウィルス抗体検査も、社会保険医療の現場では、査定の対象である。1300円の検査代(利益はその20%ぐらいつまり、2-300円)を通すために症状詳記を書かなくてはいけない。また、書いても財務事情で認められない。というわけで、一般には、どの医療機関も赤字を恐れて、誰も調べない。逆にまた、必要があると感じて調べ続けると、過剰医療傾向のある医師ということで、ブラックリスト(ほんとはホワイトリストだと思うのだが・・・)に載り、ますます、査定されるようになる。ほかの項目も。というわけもあって、G7先進諸国の中で、HIVが増えているのは、日本だけというお粗末な事情になっている。

 

 パピローマウィルスもHIVウィルスも 、日本では増加の一途をたどっているが、社会保険医療の現場では査定の対象となっている。

 

 調べてみると、日本では、パピローマワクチンが売っていない。また、政府から認可がないので使えない。パピローマウィルスは、子宮頚癌の原因となるばかりでなく、口腔癌、咽頭癌、食道癌、肛門癌の原因 でもある。日本政府は、インフルエンザウィルスに敏感になるのと同じく、若い世代を守るためにパピローマ対策もしっかりする必要がある。

 

 繰り返し言うが、日本政府は国民を守るために、 パピローマウィルスとHIVウィルス対策を強化する必要がある。パピローマワクチンの早期認可は緊急の課題であろう。

 

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2009/06/04   Chicago 街歩き   

 

   今日は快晴、観光日。シカゴフィールドミュージアムとプラネタリウム、シカゴ美術館をめぐる。

プラネタリウムから望む快晴のシカゴの町並み 、空には宣伝の垂れ幕をひくセスナ機が飛んでいる。

 

 まず、午前中は、シカゴフィールドミュージアムへ。恐竜の3D映画がよかった。館内には、中央ホールには恐竜 とアフリカ象が展示されていた。恐竜は象と同じくらいの高さで、長さは3-4倍ぐらい。 大型トレーラーぐらいか。昔思い描いていた恐竜のイメージと比べて、結構小さい。

 次に、プラネタリウムへ。銀河系や太陽系や地球の3D映画を見るが、解説もなく、いまいちであった。やっぱり、プラネタリウムではプラネタリウムを見るべきであった。

 最後にシカゴ美術館へ。シカゴ美術館は印象派の絵画と浮世絵コレクションで有名。浮世絵の展示場には、お目当ての葛飾北斎の 富岳36景、神奈川沖波裏の版画は、残念ながら展示されていなかった。展示されていた浮世絵は2−3流のものばかりで、ハッキリ言って手抜き展示。それに比べて、印象派の展示は しっかりしていた。貯蔵品は展示品の30倍あるそうだ。いろんな美術館を見たが、展示はかなり下手な部類に入る。

 

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2009/06/03   Chicago DDW 2009 第6日目に参加 再生と癌治療の新しいパラダイム     

 

    シカゴは昨日と打って変わって快晴。だが気温は3月上旬並み。

 

   朝一番で、幹細胞のセッションに参加。京都大学医学部消化器内科学教授の千葉勉先生の講演を聴く。山中先生のiPLのその後の展開についての話であった。ポイントは、基の細胞を繊維細胞から、胃の細胞や肝臓の細胞に変えてみると、より質の良いiPL細胞が得られたということ。iPL細胞の中に残存するc−myc遺伝子の量が減って、腫瘍生成のリスクが低くなったうえに、遺伝子の状態がより、生殖幹細胞に近づいた。iPL細胞の腫瘍生成性は、c−mycにのみ依存し、レトロウィルスには関係しないこと。元の細胞が分化したものであるほど、c−mycの取り込みが低いこと。などを強調しておられた。

講演後質問に答える千葉勉教授。

ちなみに今回、偶然にも同じホテルに宿泊。エレベーターで遭遇し、互いに驚いた。

 

 朝二番目は、miRNAのセッションに参加。特定のmiRNAを用いた試験管レベルの癌治療の研究が発表されていたが、話を聞いていると、10年のうちに、進行状態でも原理的に癌が治る時代が来そうな気がしてきた。

 午後はIBDの癌化のシンポに参加。それにて、今年のDDWは終了。

 

 35年前に山陽放送の巽社長や延原部長、野ア敏生さんなどなどに連れられて、シカゴの街を訪れた際は、黒いすすけた町であったが、今はそんな印象はない。ハイブリッドバスが走り空気はきれいだ。2016年、今から7年後、この町と東京  どっちがオリンピックを開くのだろうか?

宿泊したトランプタワーホテル、92階建てでシカゴ第2の高さ。ここで、バットマン3のロケが行われた。

 

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2009/06/02   Chicago DDW 2009 第5日目に参加 経済の落ち込みの影とデジタル政府の落とし穴  

  

    シカゴは昨日に引き続いて、午前中は雨。

 

 朝ホテルのエレベーターで偶然、京都大学消化器内科教授千葉勉先生と乗り合わせる。千葉先生とは先生が教授になる前、神戸にいらっしゃったころから、何回かお会いしている。海外で偶然出会うのは2度目。この前は、2003年秋のスペインマドリッドのUEGWのときで、ピカソのゲルニカで有名な王立美術館で偶然お会いした。

 

 先生はご夫妻で来ていらっしゃっていて、美術館の中庭で、いろいろとお話しした。その時、すりがいて急に荷物がなくなりそうになるなど、ちょっとした異変があった。しかし、その時は、特にちょっと変だなという程度であった。その後、美術館をでて70−80mご一緒して、先生ご夫妻は地下鉄へ入る階段を降り、私は大通り沿いのマクドナルドへ向かった。私は、そのまま安全であったのであるが、先生ご夫妻は、私と別れて15秒後に、後ろから、柔道でいう絞めをかけられて失神。気がついたら、パスポートも含めて、金目のものはすべて取られていたそうである。(後で日本で先生ご自身から聞いた話)。実は、私もマドリード滞在中に、2度すり未遂にあった。一度は先ほど述べた王立美術館であったのだが、もう一度は、ゴヤのマハの絵があるマドリード中心の美術館近くの広場で、物乞いの形で近づいてきた老婆が、新聞で視線を防いで、胸ポケットに指を入れるという手口であった。すぐに気がついて、36計逃げるにしかず、ということで、体をひねって走って逃げて難を逃れた。

 

 ということで、「先生と会うとちょっとしんぱいだなー」「お気をつけください」という挨拶となった。しかし、ここはホテルの中、何の心配もない。ドアの外でも、マドリードに比べれば、現在のシカゴは安全そう、シカゴの中心街や美術館前にも怪しい浮浪者がほとんどいなかった。2016のオリンピックは東京で開催してほしいと思っているが、もし東京開催がうまくいかなかったとしても、シカゴはまだしも、マドリードだけはぜひ避けてほしいところだ。

 

 アメリカDDWには1999年以来、2003年を除いて、すべて出席している。そして、今回が10回目。今日は、これまで見たこともなかったセッションが3つもあった。1)開業医の縮小の仕方、2)内視鏡室の効率化、3)医師の医療評価。

 

  また、毎日発行しているDDW新聞には、「現在の経済の落ち込みを受けて、オバマ大統領は、消化器病に関する医療単価の見直しを来年までに行う予定」と書いてあった。このような社会情勢を受けて、学会がこれらのテーマを選んだのであろう。1998年の山一証券の破綻の少しあとのころ、日本消化器病学会がDPCについてセッションを開いたことがあるが、社会的セッションをこれほど多く開いたことはない。2)と3)が同時に開かれていたので、3)に出席。

 ある演者が、デジタル化したレセプト内容を、医師の医療評価の材料とする説明をしていた。まさに、日本政府が今、目指している全レセプトの電子化である。その中で、「実は、上院のコンピューターの中にすべての レセプトデータがあったのであるが、ハックされて、「viky」がすべて「biky」に書き換えられた。結果、被害は数千億円に上った。」とコメント。この前、日本でも、国交省と厚生労働省のホームページがハックされて書き換えられた。しかし、「休みであったので2−3日放置された」ことがニュースになっていたが、行政のデジタル化は、ちょっと危険そうである。デジタル化を進めるにあたっては、システムを相当慎重に構築する必要がありそうだ。

 

 あとは、老化防止の抗酸化物質を併用すると、大腸がんに対するオギザロプラチンの薬効が上がったとか、大腸腫瘍・ポリープの鋸歯状の変化はDNAのメチレーションや、BRAFが関係していて、RASがメインの大腸腺腫とは別の癌化ルートだとか、磁石板でカプセル内視鏡の姿勢を制御するとか、コンフォーカル内視鏡で菌が大腸粘膜のなかに入り込む像とか、結構面白い内容であった。

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2009/06/01   Chicago DDW 2009 第4日目に参加 認知されつつある陥凹型大腸腫瘍 

 

 行くところが、悪いのだろうが、本日の目新しいことといったら、さまざまな大腸や小腸の挿入のための補助機器ぐらいだった。らせんのスパイラルをつけたチューブと、内視鏡に装着するダブルバルーン挿入補助装置。

 大腸のセッションでは、アメリカの先生が陥凹型大腸腫瘍の発表をしていた。日本の学会で、陥凹型大腸腫瘍が認知されて、その臨床的特徴が議論されたのは、1980年代後半から1990年代前半であった。アメリカの学会は陥凹型大腸腫瘍の存在を長年にわたって無視していた。しかし、日本からアメリカへの留学生が臨床で見つけたり、ヨーロッパ学会がその存在を2000年代の前半に認めたことなどの経緯があって、どうやら、アメリカでも陥凹型大腸腫瘍という概念を認知し始めたようだ。しかし、いろいろな発表を聞いていると、一部の施設を除いて、陥凹型大腸腫瘍の存在が雑誌や学会でわかっていてもそんなに見つからないというのが、今の彼らの現実のようだ。ちょうど1980年代後半の日本と同じであろうか。

 ポスター展示では、アメリカの退役軍人病院から、男性の肥満が大腸腫瘍とリンクしているという発表があった。私の長年の大腸腫瘍のデータベースを基に、3-5年前に北山丈二先生と解析して、発表した内容とほとんど同じだったので驚いた。

 

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2009/05/31   Chicago DDW 2009 第3日目に参加 富士フィルムのブースで私の写真を発見 

 

 5月の学会のついに最後にして最長の学会に突入。成田からJAL便に約12時間乗って、午前9:30頃にシカゴにやっと到着。時差14時間で日本からみると地球の裏側だ。今回は、新型インフルエンザ騒動で、急遽、渡米を取りやめた先生方も多い。70−80%ぐらいはやめたのではないだろうか。去年までは、アメリカ消化器病学会員は参加費無料であったが、昨年の秋の金融危機以来の不景気で、企業の協賛金が少なくなり、今年からは、1.5ないし2万円ぐらいの参加費がかかるようになった。

 Friedman 会長の言によると、経済状況のみならず、共同・協賛研究を縛る法律の制定もあって、各種の協賛・共同研究が減っているということである。

 

 フジノン(アメリカ富士フィルム)の展示ブースに行ってびっくり、11年前の1998UEGW、ウィーンのサテライトシンポで私が発表した写真が、 下図のように、また使用されていた。こちらも経費削減か?!それとも原画が相当に評価されたか? ブースにはいつも見かける日本人先生方の顔は誰一人としてなかったが、ブラジルのTEIXEIRA CLAUDIO先生がいた。 彼は、ポルトアレグレに住み、3人の子持ちで開業医。日本留学(広島大学)が5年ぐらいで、日本語も達者である。興味の対象が拡大大腸内視鏡で、国際学会ではよく遭遇する。

幻の高画素式拡大内視鏡EC485ZHの画像を囲んで、

パネルのこの写真は1998年8月に私が撮影したもの

右  TEIXEILA先生、左  田渕正文

 

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2009/05/28   第9回日本抗加齢医学会総会 第2日目に 参加 長生き遺伝子 サーチュイン 

 

 餌を8割しか与えないと、生き物は約1.4から1.9倍程度に長生きする。なぜか? カロリー制限により、染色体のアセチル化を防ぐなどの働きがある、サーチュインという遺伝子が活性化される からだそうだ。

 

2009/05/27   第9回日本抗加齢医学会総会 第1日目に 参加 

 

 5月はまだまだ学会が続く。大腸ポリープを多く持つ人は、がんになり易く、また、加齢による内科的な問題を抱えている場合も少なくない。というわけで、日本抗加齢医学会に参加。日本抗加齢医学会は単に見た目の美容の問題だけでなく、老人の問題も取り扱って いる。それに、異種分野の学会は結構刺激的で、面白いアイデアも浮かぶきっかけとなる。今日おもしろかったのは、

1)京都府立医大消化器内科グループ(吉川敏一先生・古倉聡先生)の「がんワクチンの話」(パラフィン包埋組織から作成)

2)慶応大学、鶴岡研究所、冨田勝先生の「がん細胞の代謝、フマルサン呼吸」癌細胞は低栄養・低酸素のもとでは、寄生虫と同じ呼吸代謝をしている!

3)東京都老人総合研究所の鈴木隆雄先生の後期高齢者医療不要論。彼は「最近の日本では癌も含めて疾患別死亡率曲線がゴンペルツ曲線に似てきたので、75歳以上人には医療は不要だ。」と述べた。それに対して、それが招請講演であったにもかかわらず、フロアーの北里大学の先生からきつい反論があり、また、座長もきつい皮肉を浴びせた。私も、鈴木隆雄先生の考え方は、原因と結果の分析の仕方 を間違えていると思った。治療しているので、疾患による死亡が減り、ゴンペルツ曲線に近似してきたのだと思う。疾患死が減ったからと言って治療をやめていいという理屈は通らないでしょう。彼の考え方は結論ありきの詭弁と言わざるをえない。(やっぱり、こういう太鼓持ちの人でないと東京都のお役人になれない・・・?!)

 

 

 

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2009/05/25   大腸癌新患 1日4人 

 

 5月は学会が続く。学会の間は大変忙しいものだが、今日は予想通りの忙しさであった。しかし、驚いたのは、何と、大腸癌の新患が4人もいたことだ。うち3人は進行がんの可能性が高い。一日でこんなに癌患者が来たのは、ここ数年 来初めてのこと。4人中3人は、大腸を予め内視鏡などでチェックしていなかった。一人の患者さんは「健康を過信していた」と言った。

 やはり、以前から何度も言っているように、大腸癌の予防のためには、何の症状もないうちに内視鏡検診を受けるべきである。インフルエンザや乳がんも怖いが、今や日本女性の死因のトップは大腸癌。 日本全土で一日約120人の方が、大腸癌で死亡している。

 

 マスコミや政府に対して一言注告。「新型インフルエンザをこれだけ騒ぐなら、大腸癌についてももっと騒ぐべき。大腸癌は完全に予防できる病気なのだから。」

 

 ちなみに日本全土で、肺がんは一日約200人、胃がんは一日約160人、肝臓癌は一日約120人の方が死んでいる。肺がん、胃がん、肝臓癌については大腸がんほど完全ではないが、現状を改善できる、それなりの新たな予防策はある。それぞれの学会は、予防策をずっと提示し続けてきている。しかし、その予防策を、日本政府はことごとく採用していない。まったく、情けないことだ。

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2009/05/23   第77回 日本消化器内視鏡学会 第3日目に参加 

 

 今日は 3日目。午前は、胃の拡大観察のワークショップに参加。司会の先生も述べておられたが、胃がんの拡大診断はこの2年で格段に進歩している。毛細血管パターンとホワイトゾーンのパターンを基本情報とした胃癌の拡大内視鏡診断が完成されつつあるようだ。午後は、エンドサイトスコピーとconfocal endoscopy のワークショップに参加。超拡大観察も少しずつだが、前に進んでいる。内視鏡による病理診断の夜明けを感じる一日であった。

 

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2009/05/22   第77回 日本消化器内視鏡学会 第2日目に参加 

 

 2009年5月21日から23日まで、名古屋国際会議場で第77回日本内視鏡学会が開催されている。

 

 今日は 2日目。まず、大腸ESDのセッションに参加した。私のこれまでの実績では、大腸EMRで3.5cmぐらいまでの病変は、穿孔率2000分の1以下で、5分もあれば切除できる。なのに、大腸ESDで有名なY先生のデータを見ても、対象は平均2.7cm平均切除時間は50分。穿孔率2−3%。この技術が皆から賞賛されている。理由は、EMRでは難しい40mm以上の病変の一括切除ができるからである。30mmより小さな病変は、きっと大きな病変をとれるようになるための練習なのであろう。ESDの名人いわく、「私はスネアが怖い。究極のブラインド操作だから」・・・・?!・・・・だからと言って、たった3cmぐらいの病変に1時間近くも時間をかけていいのかな??

 

 あとは、超音波エラストグラフィーをみて、自走式カプセル内視鏡の動物テストをみて、CTによる大腸表面型腫瘍の描出の試みをみて、注腸の前処置としてのニフレック・シサプリド方法を聞いた。

大阪医大第二内科と龍谷大学理工学部のコラボによる自走式カプセル内視鏡の原理の図

 昼一番は、ゲノム解析で有名な中村桂子先生の講演をきく。彼女いわく「生きるということは、・・・。つまり、人生とは・・・、つまり、ライフステージとは・・・、いえいえ、このライフステージという言葉は、私が初めて用いたのですが、それがあちこちで利用されて・・・いまでは一般的な言葉となっていますが・・・(なんだァそれが言いたかったのか。) もとは、ライフサークルという言葉だったのですが、ちょっと変だと思い、こう 呼んでみました・・・ライフステージとはこんなのものです。」といって、下図を出してきて、「今のお医者は、生き物を扱っているという感じがしない。この生きるということを深く理解して、愛でてほしいものです。この場合、愛というのは理性的な愛、フィロソフィのフィロです。」とおっしゃった。しかし、この説明図、皆さん、何かおかしいと思いませんか?

 私はこれをみて思わず唸った。大きなものが欠けている。生物に必須のもっとも大切なもの。日本社会を揺るがしている大問題。なるほど、この人がもてはやされる日本では、出生率が下がるのは当然のことかと感じた。失礼ながら、中村桂子先生は子供を何人生んでいらっしゃるのであろうか?人生には生むと育てるのステージがある。私は、やっぱり、人生とはライフサイクルなのだと思う。それでなければ、生き物は時を越えて存在できない。家族を大切にする愛の心こそが、未来へのパスワ―ド・・・。 民族存続のキーワードである。

 

 午後からは、難治性の潰瘍性大腸炎のガイドラインを超えた新しい治療に参加。

1)メサラジンの大量投与一日4グラム(これは、昨年12月から保険収載)

2)ステロイドを使う前の顆粒球除去療法

3)アザチオプリン不耐症に対するメルカプトプリンの投与

4)clostridium difficile や fusobacterium などを理論的背景とした抗生剤投与。

5)酢酸ナトリウムの注腸療法。

6)タクロリムス(臨床第3層試験の結果)。

7)インフリキシマブ

 いろんな治療法が活発に討論されていた。潰瘍性大腸炎の難治症例の治療は結構大変で難しいのである。難治性を決める因子の一つとして、サイトメガロウィルス感染があるが、フロアから社会保険で、サイトメガロウィルスの血液検査すら認められないとの声があった。難病治療の戦いを、社会は支援してほしい。

 

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2009/05/21   第77回 日本消化器内視鏡学会 第1日目に参加 

 

 2009年5月21日から23日まで、名古屋国際会議場で第77回日本内視鏡学会が開催されている。

今日は、6:50の新幹線に乗って品川から乗って、9:00丁度に会場に到着した。昭和大学横浜北部病院の工藤進英教授の教育公演を拝聴。その後の大腸拡大観察のセッションに参加。最後、抜け出して、芳野純治会長の会長講演を拝聴。ランチョンセッションはまたまた、工藤先生の「de novo癌」。午後は大腸ESDのセッションに参加。

 大腸腫瘍データベースを万の単位で持っているのは、日本では、私と工藤教授と広島の先生ぐらいか・・・・?

 

 工藤進英教授の講演で、私の万単位の大腸腫瘍データベースからみて賛同できる点は、

1)大腸がんの発育進展ルートには、マウンテン型と陥凹型があること

2)マウンテン型はK-RAS突然変異陽性で、陥凹型は陰性であること(これは、私のとった材料で、藤盛先生の教室が世界で初めて見つけたこと)

3)陥凹型早期大腸癌が平均約7mmで、粘膜下に浸潤すること

4)大腸癌検診で、便潜血反応は、陥凹型大腸癌発見に有効でないこと

5)リビアの砂漠の写真を見て、結節型側方発育型を連想すること

6)内視鏡や外科などの苦しい臨床現場に、新米医師が来ないこと

 

 工藤進英教授の講演で、私の万単位の大腸腫瘍データベースからみて賛同できない点は

1)長廻紘、藤盛孝博、田淵正文らの業績を一切語らない点、そのほか他派の研究も同様に語らない点。

2)小さな3L型の大腸腫瘍は、とらなくてもいいという点。(小さな3L型の大腸腫瘍は年1%程度癌化すると私の研究からは予想される。小さな病変を無視する風潮が粗診粗悪な内視鏡検査につながる。)

3)大腸癌検診を内視鏡で行った時、の効果についての発表がいままでないと述べたこと。(1997年ごろに、職域大腸がん検診で内視鏡を用いて、大腸の腫瘍をすべて取って、癌死が0になったという私の発表が、当時の朝日新聞で取り上げられた。)

4)陥凹型大腸癌を de novo癌と主張する点。(陥凹型の大腸腫瘍の中にも、異型度ピラミッドがあり、陥凹型大腸腺腫が少なからず存在します。また、陥凹型大腸癌のピッとパターンが必ずしも一様でないことから、陥凹型大腸癌の一部は陥凹型大腸腫瘍から異型度進展したものがある)

5)隆起型の大腸腫瘍切除が、大腸がん予防に結びつかないと主張する点。(私のクリーンコロンの研究からは、大腸隆起型腺腫の一年後の癌化率は1.3%(1996胃と腸)。また、その数の多さから、マウンテンルートは大腸癌全体の約7割、陥凹型ルートは約3割(これは先生も参加していた1994−1996の厚生省武藤班の結論でもあった。)したがって、小さな隆起型の大腸腫瘍も、お経を唱えるように、地道に切除するべき。77回唱えれば、次の年の癌発生が一つ減る。)

6)リビアの砂漠で陥凹型を連想した写真は、そこが丸くて平らなところがないので、陥凹型癌というよりも、バイオプシー後の接線観察といった感じ。

7)大腸ポリープ切除の内視鏡の点数が高いと主張する点。これ以上安くなれば、この3Kの内視鏡世界に参入してくる若手医師がますます減ります。先生の主張する大腸内視鏡による内視鏡検診も難しいものになると思います。

 

 芳野先生の講演で興味深かったのは、日本原子力機構と共同で開発している、ファイバー型内視鏡。原理は昨年のアメリカDDWでハーバード大学からのeye on the tip of fiber、と同じだが、同心円二重構造で、レーザー治療もできるという点である。その技術を応用して、師の星原芳雄先生がかつて行っていた、ファイバーグレーティングによる病変の長さ計測をレアルタイムで連続画像で成功しておられた。また、氏のライフワークである超音波内視鏡では、高出力型の30MHzの粘膜構造写真がきれいだった。

 

 大腸ESDのセッションでは、症例のかなりのものは、EMRなら2−3分でとれるものを、訓練のためか、わざわざ、20−60分かけて、とっているという印象を持った。胃癌とはちがって、大きなものでもpEMRで十分長期予後がよいので、わざわざESDする臨床的価値について、今後十分検討する必要があるだろう。 

 

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2009/05/14   カプセル内視鏡を導入。全小腸が苦痛なく検査できます。小腸ドックを開始しました。 

 

 カプセル内視鏡は、2000年、今から9年前5月、アメリカ、サンディエゴDDW2000で初めて発表された。発表者はイギリス人、P.Swain博士。彼自身による自作のカプセル内視鏡で、無線による画像の送信という画期的な技術で、当時、内視鏡医の間で大いに話題になった。私も、じかに彼の発表を聞いてとても驚いた。以来、アメリカでは、2002年ごろから盛んに臨床使用された。日本でも治験を経て導入されたが、先進諸国の中では、例によって一番遅く、2007年に漸く、販売の認可が下りた。カプセル内視鏡は、直径約10mm長さ28mmの小さな電池仕掛けのカメラで、画像を電波で発信するように作られている。角はなく、飲み込み 易い、滑らかな形をしている。小腸全域を観察するのに適しており、各国で一定の臨床的評価を与えられている優れものである。小腸の腫瘍や、潰瘍の発見などには、極めて効果的である。ただし、胃や大腸についての評価は微妙。

 

アスピリン内服による小腸潰瘍  :  右画面をクリックすると動きます。

 

 現在の社会保険診療では、胃内視鏡、大腸内視鏡を行っても、原因が特定できない「消化管の出血」に適応が限られている。

 

 一方、自由診療では、小腸が細くなっている以外、とくに適応制限はない。

 

 アスピリンなどを長期に飲んでいる方は、小腸に潰瘍や炎症ができているケースが多く、潜在的な出血があったりして、要注意です。

 また、原因不明の腹痛で悩まされている方や、

 腫瘍家系の方にはお勧めです。(小腸にも時々癌ができます。昭和天皇陛下の死因が小腸癌と発表されたのは、記憶に新しいところです。また、現皇太子殿下も、近年、小腸腫瘍を内視鏡で切除なさいました。)

 

 カプセル内視鏡による小腸ドックをご希望の方は、メールにてご連絡ください。

 

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2009/05/08   第95回 日本消化器病学会総会に参加。大腸癌の予防法 

 

2009年5月7日から5月9日までの3日間、第95回日本消化器病学会総会が桜満開の札幌で開催されている。連休から続いての3日間で、休みが長くなり、休み明けが怖い。会長は、浅香正博北海道大学教授である。もう20年ぐらい前だが、氏がまだ講師の時、彼に招かれて、北大で「大腸病変のピットパターン診断と内視鏡挿入法」の講演をしたことがある。思えば、あれからずいぶんと年月が経ったものだ。

 

 

今学会では、氏の発案で「がんの予防」ということがテーマとなっている。学会では、たくさんのセッションがあり、どれに参加するかいつも迷う。会長の考えに従い、午前は、「大腸がんの予防」に参加した。「大腸癌はポリープを全部とると、癌の芽が摘まれ、がんの発生のほとんどが予防できる」(2次予防)のである。てっきりその事かと思っていたら、今回は、「どんなことが大腸癌の発生と関係あるか」といった(一次予防)と、がんの発生を予防する薬やサプリメント(1.5次予防)が話題の中心であった。

大腸癌は、大腸腺腫や大腸ACFaberrant crypt foci)(微小な大腸腺腫や大腸過形成結節や、化生性ポリープのこと)を前がん病変とする。そのため、研究対象を大腸がんそのものから、それらの前がん病変に対象を取り換えた発表が、ほぼ全部であった。ちょっと、物足らない。大腸癌と大腸腺腫は完全に同じではない。ちょっと違うものであり、次回のときには、この点も考慮に入れた企画を考えてほしいものだ。

大腸腫瘍発生と関連した生活上の因子として、年齢、飲酒、たばこ、家族歴、野菜不足、運動不足、高脂血症などが指摘されていた。nが1000を超えた発表は川崎医科大学から出た1演題のみで、私も出しておけばよかったと後悔した。n=9000ぐらいはコンピューターの中でデータベースになっているはず。しかし、大昔に発表したときと、変わらない内容になりそうだ。

大腸腫瘍発生を抑制する薬やサプリメント(chemoprevention)として、話題に上ったものは、効果の強そうなものから順に、スリンダック、緑茶ポリヘノール、エトドラッグ、アスピリン、ブロッコリーの芽(スルフォラファン)、機能性乳酸菌製剤、葉酸、グルタチオン、ω3脂肪酸、オリーブオイルなどであるが、私の経験に基づいて考えると、最初の2つぐらいしか、効果は実感されない。目新しいところでは、アディポネクチン、メトフォルミン、TACEinhibitorTAPI−2(TACEADAM17EGFRのリガンドamphiregulinを放出し、EGFRを刺激する)、イソ酪酸などが、発表されていた。また、大腸腫瘍発生を抑制する分子メカニズムとしては、AMPkinaseなどが紹介されていた。逆に、大腸腫瘍発生を促進するものは、牛脂、ω6脂肪酸、また、分子メカニズムとしては、従来のCox2以外に、jnk、mTORADAM17、βcatenin、などが紹介されていた。

 

薬やサプリメントでの大腸腫瘍発生抑制を希望の方は、受診してくだされば、個人の体質に合わせた薬を処方します。(社会保険が利かない薬やサプリメントの場合、自由診療になる場合もあります。)

 

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2009/04/05   目黒川の桜 満開。大橋ジャンクション見学。 

 

 

 例年のこととであるが、今年も桜の季節となった。桜の名所、中目黒の目黒川沿いは、クリニックから100mのところ(徒歩2分)にある。3月中旬には暖かい日が続いて、すぐにでも桜が咲きそうな勢いであったが、3月下旬に寒い日が続いて、開花が遅れた。先週の木曜日4月の2日ぐらいには8分咲きになり、この週末は満開であった。花見でそぞろ歩きしていると、大橋ジャンクションの見学会をしていたので参加。

 

 

 大橋ジャンクションは、首都高速の山の手線と3号線の交差部にあたる。来年3月の開通予定で、おおむね、出来上がっている。高速道路が楕円形に渦巻いている。9階建ての高さで、階段であがって、屋上に出る。屋上は、スロープになったいて、内側は、大きく楕円形にくりぬいてかれている。その一部に、換気棟があって、なんだか、ローマのコロセウムに似ていた。大きさは、コロセウムのちょうど倍ぐらいか。結構大きい。 鷲羽山からの瀬戸大橋をはじめてみたときも、高さと大きさに驚いたが、今回は、その半分くらい、驚いた。

  

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2009/04/04   土曜日の夕方の診療時間 

 

 土曜日の午後の診療時間は、午後6:00までですが、新患の受付は5時までにお願いします。

  

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2009/04/02   医療のIT化 保険証のインタネット確認とレセコン・電子カルテの配布を、オンライン請求の前に行政は行うべきだ。

 

 レセプトのオンライン請求の義務化が問題になっている。紙でなく、電子情報で請求してもらったほうが、何かと便利らしい。しかし、どうも理由は判然としない。IT政府を目指すといえば、かっこいいのだが、内実はどうなのか、やっぱり判然としない。データが保存しやすいからであろうか????同級生が、支払基金で審査委員をしているのだが、電子請求のほうが、審査に時間がかかるという。理由は、めくる時間が電子レセプトのほうが遅いのである。おそらく、その時間に、電子情報をデータを画面に見やすく表示するためにソフトが走るのであろうが、それが、一枚の紙をめくる時間の2倍かかるそうだ。よって、処理スピードは半分に落ちたそうである。

 一昨日、夜の12チャンネルの番組を見ていたら、医師会の要求で、自民党担当部会にてオンライン義務化は骨抜きになることになったそうだ。それに対して、アナウンサーや、コメンテイターは、かなり批判的なコメントをしていた。お爺さん先生たちも新しいことに協力しろ!とかなんとか言っていた。また、景気対策のために、オンライン化が必要だとも行っていた。しかし、実際の現場、クリニックサイドでは、オンライン請求はほとんどメリットはない。むしろ、導入のためには、手間と費用がかかるばかり、時間とお金の無駄遣いである。やっぱり、厚生労働省のお役人は俺たちをいじめることしか考えていない!ということになるわけだ。便利にならないうえに、お金もかかる。爺さんでなくても、気が進まないというものだろう。

 景気対策をかねて、医療のIT化を目指すなら、まずは、保険証をIT化してもらいたい。紙の保険証ではそれが有効かどうか、窓口ではわからない。現況では、申告に基づいて、IDを確認しているに過ぎず、いちろうちゃん事件(健康保険に入っていない兄が健康保険に入っている弟の保険証を使って受診し、最悪、死亡診断書の名前までもが間違ってしまいそうになった事件)はいつでも起こりうる状態が続いている。IT化で窓口ですぐに、有効で正しい保険証かどうか、専用の機材にかざせばわかるようにして欲しいものだ。

 次に、オンライン請求にこだわるなら、コンピューターとレセプトプログラムを各クリニックにに配布してほしい。レセプト業者の話では、現在、日本で市販されているレセプトソフトは84種類だそうだ。みんなが同じ課題を別々に対応している。私も、これまで、2種類使ってきたが、決して使いやすいとはいえない

。お隣の国、韓国では、日本とほぼ同じ健康保険制度なのだが、なんと、レセコンは政府が配布しているのだそうである。

 

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2009/02/14   日本消化管学会 2月12日・2月13日と東京の京王プラザホテルで開催 

 

 第5回日本消化管学会が平成21年2月12日13日と、2日間にわたり、日本医科大学の坂本長逸教授の主催で、東京新宿の京王プラザホテルで開催された。討論のテーマは、小腸に関するものが多かった。カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡など、小腸に直接迫るモダリティがここ数年で急速に臨床応用できるようになったからであろう。

 小腸、特に終末回腸には、潰瘍性病変が結構多い。クローン病による潰瘍、NSAIDS潰瘍、各種感染(結核菌、非定型抗酸菌、赤痢菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、病原性大腸菌、エルシニア菌、キャンピロバクター菌、・・・・)による潰瘍、アミロイドーシスによる潰瘍、各種膠原病(ベーチェット病、結節性動脈炎など)による潰瘍、腫瘍(小腸腺癌、悪性リンパ腫、悪性筋肉腫瘍、GIST など)による潰瘍などなど、いろいろとある。しかし、原因不明、分類不能な潰瘍も多く、また、クローン病など病気の根本的病因は今なお不明なものが多く、治療に難渋することが多い。

 2日目の最後に行われた、「診断に難渋する小腸潰瘍症」のセッションでは、2時間で8例の症例が提示された。もともと難しい症例が提示されたのではあるが、八尾教授、清水先生、松井教授、田中教授をはじめ、全国の専門医をもってしても、わからない症例が約半数もあった。

 普段の大腸内視鏡検査で私は、ほぼ100%終末回腸を観察してきた。もう既に4万例ほど見てきて、詳しく集計していないが、7〜10例に1例は、小さな小腸潰瘍が見つかったような印象がある。若い人にも結構多い。これらは、重大な病気の前兆であることもある。新たなモダリティを駆使して、新たな疾患概念を確立して、分類不能な小腸潰瘍症例を減らしていきたいものである。

 

 ところで、今回は、消化管学会なのに、あのiPS細胞で有名な山中伸弥教授が招待講演をおこわれた。これには、ちょっとびっくりした。寺野彰理事長の挨拶によると、坂本先生と山中先生が共に神戸大学出身、同門の関係ということで実現したそうだ。講演内容は、「iPS細胞の可能性と課題」であったが、主に、c−mycについて、iPS細胞を誘導するのに、c−mycを使うのがいいのか悪いのか、について多くの時間が割かれていた。2006年〜2007年にiPS細胞ができて報告されたばかりなのに、米国での研究進展も急で、企業を巻き込んで、凄まじい競争が繰り広げられているようだ。アメリカでは、化学物質だけで、iPS細胞が誘導されたらしい。

 

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2009/02/10   大腸癌のルール <鳥越俊太郎さん  直腸がん、肝臓へ転移、手術へ?> 

日刊スポーツの芸能ニュース

「鳥越俊太郎氏、がんが肝臓に転移し手術へ」
 ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(68)が9日、コメンテーターを務めるテレビ朝日系「スーパーモーニング」で「がんが肝臓に転移していることが分かったので、明日から休みます」と報告し、手術を受けるとした。鳥越氏は、05年10月に直腸がんで、開腹手術ではなく、腹腔(ふっくう)鏡下手術を受けた。その時に医師から、肺と肝臓に転移する可能性があると言われていたという。07年には右肺を切除し、左肺も一部切除した。 今回の転移について鳥越氏は「『肝臓がん』ではない。いよいよあいつはダメかと思われちゃうけど、そうじゃない。(転移、手術は)できれば避けたかったが」と話した。2009年2月9日11時54分

 

 大腸癌の手術に見かけ上(肉眼的に)、成功しても、癌が再発してくるというのは、珍しいことではない。鳥越さんのような直腸進行がんでは、再発部は、直腸の局所、肺、肝臓である。血液の流れから、直腸は肛門部の静脈を通じて下大静脈に入り、肺にがん細胞が流れていく場合と、下腸間膜静脈から門脈本管に入り、肝臓に転移する場合がある。2007年の肺の切除が、肺転移の切除であったとすれば、今回転移したがん細胞の転移活性は強く、今後の治療は結構厳しいと予想されて、心配である。

 

 肝臓転移も単発性なら手術で治る見込みがあるが、多発性散発性の場合は、手術では姑息的な治療しか得られない。根治を目指すなら化学療法が治療の中心となる。すでに、標準的な化学療法を行っていて、再発したのであれば、なにか新たな化学療法治療薬を考えるべきタイミングであろう.。また、化学療法を行っていて、それが好く効いて、転移癌が小さくなり、癌が取りきれるほど小さい形になってきたのであれば、手術も明るい見込みがある。なんとか助かってもらいたいものだ。

 

 鳥越俊太郎さんの健康は窮地に追い込まれたが、どうすれば、このような窮地に陥らずに済んでいたのであろうか?

 

 鳥越俊太郎氏、がん手術を電話報告
<2005年10月3日付日刊スポーツ>より抜粋
 ジャーナリストの鳥越俊太郎さん(65)が直腸がんのため今週中に手術することが2日、分かった。この日、コメンテーターを務めるテレビ朝日の情報番組「スーパーモーニング」(月〜金曜午前8時半)に電話出演し、明らかにした。鳥越さんは「思い浮かべたのは、14年前に直腸がんで手術した渡哲也さん。元気に仕事している姿に勇気付けられ、私もがんとけんかしてきます」と話した。この日から都内の病院に入院し、約2週間で退院予定。
 番組の冒頭で電話出演した鳥越さんは「実は直腸がんが見つかりました」と淡々と告白した。さらに「自分なりに闘う姿勢を示し、同じ境遇にいる人に『ああすれば治るんだ』と思ってもらえれば、私の心の支えにもなる」と話した。スタジオで心配そうな表情の作家吉永みち子さんに「あまり緊張しないでよ」と声を掛けるなど、終始落ち着いた様子だった。
 鳥越さんはこの日、都内の病院に入院。直後に日刊スポーツの電話取材に応じた。9月下旬、3年ぶりに人間ドックの検査を受けたところ、検便の潜血検査で異常が見つかった。9月30日、直腸の内視鏡検査でがんと判明した。鳥越さんは「何も見ずに医者からがんと宣告されたら落ち込んだかもしれないけれど、内視鏡で自分の目でがんを見ていたからね。こいつとけんかするのか、闘っていくのかって、落ち込まずに淡々と受け止めることができた。不安や心配とかの気持ちはない」と打ち明けた。

 今回転移した直腸がんも、そのはじめは小さなポリープであった。小さなうちに「ジュー」と焼き取れば、簡単に治る。粘膜内に癌が留まれば、ほぼ100%転移なしである。4年前の2005年の報道によれば、鳥越さんは3年ぶりのドックの便潜血反応をきっかけに、大腸内視鏡を行って、進行癌が見つかった。その三年前の検診、つまり、2002年(61歳)には、大腸がんはあったのか?

 2005年に転移のリスクな高いレベルまで発育していたと考えると、2002年、直腸がんはおそらくポリープのレベルであっただろう。しかし、そのときの便潜血反応は陰性。癌があるのなら、ひっかかって欲しかったのだが、残念ながら、便潜血反応では、早期がんはあまり引っかからない。とくに、直腸癌は結腸癌に比べて、陽性になりにくい。残念ながら、これが自然が定めた大腸がんのルールである。

 

 50歳を超えたら、大腸内視鏡でしっかりと検査をする。そして、癌関連病変をすべて切除する。日本では社会的にいろいろと抑制されるが、やっぱり、これが予防の切り札である。自然の定めたルールは、権力者といえども変えられない。「便潜血さえしていれば大丈夫」というのは、財布の事情や医療レベルの低さが語らせる「うそ」なのである。自然のルールを無視した日本システムの犠牲者が、また1人・・・・・しかも、社会を正してきたジャーナリストであったとは・・・・・。

 

 ちなみに、両陛下は毎年、内視鏡による消化管ドックをきちんと受けて、消化管癌を予防なさっています。みなさんも、内視鏡消化管ドックを受けましょう。両陛下が受けていらっしゃるのと同じレベルの内視鏡ドックを、当院では提供することができます。

 

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2009/01/31   アルコールと食道癌 

     柿沢弘治さん 食道癌で死去 <食道癌は拡大内視鏡で確実に予防できるのに残念!>

 

 

  <訃報>柿沢弘治さん75歳=元外相
1月27日17時16分配信 毎日新聞「元衆院議員で、羽田内閣の外相を務めた柿沢弘治(かきざわ・こうじ)さんが27日、食道がんのため東京都内の病院で死去した。75歳。」 

 

 我々の世代には、有名な政治家であった柿沢さんがお亡くなりになった。ご冥福をお祈りします。

 

 日々、食道癌を拡大内視鏡検査で予防しているだけに、惜しいと思う。内視鏡の開発が進み、最近では、拡大内視鏡を用いると、食道癌が初期から確実に診断できるようになっている。癌によるIPCLの特徴的な拡張像が拡大内視鏡で観察できるようになったからだ。

 

 食道癌が心配な方々には、しかるべきレベルの先生に拡大内視鏡で食道をきちんと見てもらうことをお勧めします。

 

 ところで、食道癌の危険因子は、私が学生のころ、「アルコール、たばこ、50歳以上、男性」といわれていた。最近では、女性も酒を飲む時代になり、酒のみの女性の食道癌も結構見かける。また、近年の研究で、「アルデヒド脱水素酵素の活性が低い人が、アルコールを飲むと、食道癌になりやすい」こともわかってきた。つまり、元々、酒に弱い人が無理して酒を飲んでいると、食道癌になりやすいわけだ。

 

 私のクリニックを訪れた食道癌の人たちは、たしかに、ほとんどが酒好きであった。接待にかこつけては飲む商社マン、閉店と同時にワインを1本あけるレストランの経営者、打ち合わせと称して酒をあびる放送業界マン、対官僚・対政治家接待が好きな仕事だった社長さん、ストレスを酒で紛らす弁護士さん、その他、元来の酒好き、酒びたり・・・・・。

 

 ちなみに、大腸にとってもアルコールはあまりいい影響はない。大腸ポリープや大腸癌もアルコールで出やすくなる。

 アルコールで膵炎も悪化するし、膵臓がんも出やすくなる。

 C型慢性肝炎もアルコールで肝硬変になるまでの期間が短縮して、原発性肝臓癌が出やすくなる。

 ピロリ菌退治による胃癌発生の減少効果も、アルコールで弱まる。(アルコールを飲まない群では10分の1程度と好成績であるが、アルコールを飲む群では3分の1程度しかない。)

 

 酒文化は人生を豊かにしてくれるが、短くもしてくれる。上手なお付き合いが必要だろう。

 

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2009/01/19   医療と社会経済   

 

  治す方法がわかっていても、その方法を購入する財力がなければ、病気を治すことはできない。財力に見合う治療法しか、選択できない。この事実を回避したいのであれば、知恵を絞ることも大切であるが、基本的には、医療の進歩を上回る経済力を持たなければならない。これは、自由診療では勿論のこと、ともに助けあう社会主義的な保険医療でも、同じである。

 昨年2008年秋、アメリカ発の金融危機が日本に襲来した。日本の財力の約33%が、この金融危機で消滅した。多くの資産が消滅した日本経済には、今や暗雲が立ち込めている。この危機をチャンスに変えて、生き抜くには何が必要なのだろうか?洞察力、 技術力、行動力、独創力、組織力、知識力、知力、努力、・・・・・、健康、・・・・、運。

 

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2009/01/06   厚生労働省が作成した不完全な傷病名マスターファイル   認知されていない「多発性大腸ポリープ」と「A型胃炎」 

 

  レセプト電算義務化を控えて、傷病名マスターファイルが2006年に社会保険庁のホームページから配布されている。約2万1千個強にも及ぶ傷病名がコード化されている。それだけあれば、すべての病名が網羅されているように思うが、そうではなかった。

 なぜか、糖尿については、えらい細かい。なんと194個にも細分化されて、コード化されている。これを決めた人はきっと糖尿病の専門家に違いない。

 ところが、私の専門である消化器病名は、いたって手薄である。まず、「多発性大腸ポリープ」という傷病名がない。大腸ポリープと大腸ポリポージスはある。大腸ポリープといえば、学問的には、普通、ポリープが一個だけあったことを意味する。大腸ポリポージスといえば、学問的には100個以上のポリープがあることと定義されている。大腸ポリープが2個から99個までの状態については、「多発性大腸ポリープ」と呼ぶのであるが、その傷病名コードがない。ほんとうにびっくりした。

 また、A型胃炎という傷病名もない。A型胃炎とは、胃の細胞に対する自己抗体ができて、胃に炎症が起こる自己免疫性胃炎のことであるが、これがない。また、それに相当する自己免疫性胃炎という傷病名コードもない。ちなみに、B型胃炎とは、自己抗体のない胃炎を指し、現実には、ピロリ菌による胃炎のことだ。さすがに、「ヘリコバクター・ピロリ胃炎」というコードはあった。ただ、学問的には「ヘリコバクター・ピロリ胃炎」という用語よりも、「ヘリコバクター・ピロリ起因性胃炎;Helicobactor pylori induced gastritis」という用語が一般的だ。「ピロリ胃炎」、わからなくはないが、しろうとっぽい。

 そういえば、厚生労働省に多くの技官を送り込んでいる某K大学医学部を受診したことがある患者さんが変なことをいっていた。「先生は私のこと「A型胃炎」っていっていたけど、某K大でそのことを話したら、そんな病気なんて聴いたことないと言われました。いったいどういうことなんですか?!・・・・・・」

 ・・・・・・・「いったいどういうことなんですか?!」とは私のせりふだ。ルールを作成するお役人には、しっかりとした医学的知識がある人になってもらいたいものだ。

 

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2009/01/01   あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 

 

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2008/12/31   今年の感想 

 

 個人的には、いろいろと大変で残念な事が続いたが、家族全員が大きな病気にかかることもなく生き延びたのは何よりで、天に感謝している。

 クリニックには、毎年のこととはいえ、手遅れ気味の大腸がん患者が数名見つかり、大腸がん予防の啓蒙活動の社会的不足に嘆く。また、慢性胃炎のピロリ菌退治や、抗がん剤、各種治療や診断の制限などなど、社会保険診療枠の後退が悪影響をもたらした数々の患者を目の当たりにして、医師として、人間として、憤りと諦めを感じる日々であった。

 

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2008/12/31   不老不死の方法について(1)   テロメラーゼ?

 

  中国の古代、今から2238年前、中国を武力によって統一した秦王政(始皇帝)は、不老不死の妙薬を求めていた。全国巡幸して、斉の国(今の青島あたり)を訪れた際、徐福に命じて、東方にある蓬莱の国に、不老不死の薬を求めさせた。蓬莱の国とは、私たちの生きる国、日本であったらしい。 もとより、不老不死の薬などなく、徐福は片道のミッションであったらしい。

 さて、現代医学をして、不老不死は可能であろうか?人は個体として必ず死んできた。しかし、細胞は連綿として生き残ってきた。細胞は減数分裂して生殖細胞となり、他者と遺伝子シャッフル して、次世代につながっていく。つまり、細胞レベルでは途中、生殖細胞という変態をするが、人の細胞は不老不死なのである。理論的には、不老不死は可能 かも知れないのである。

 老化の研究は進んでいる。一般に、細胞には寿命がある。培養していると、何回か分裂したのち、自然に消滅する。この自然消滅のメカニズムが研究された。よく知られているのは、DNAの螺旋構造を維持するテロメアである。 テロメアはDNAの端にあって、こよりの役を果たす。このテロメアは、細胞分裂するたびに短くなる。そして、一定の長さ以下になると、こよりの役を果たせなくなり、DNAはアンワインディングして 酵素に消化されて、細胞は消滅するらしい。

 一方、試験管の中ではがん細胞は、永遠の生命を持つものもある。これらの細胞では、このテロメアを伸ばす酵素、テロメラーゼが働いていた。 テロメラーゼを誘導するか、テロメラーゼをそとから補うこと、これが、不老不死の必要条件であろう。ちなみに、テロメラーゼ関連の薬は、いろいろと開発されているらしい。ただし、その働きを抑えて、癌を治すというタイプの薬のほうが多いようだが・・・。

 

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2008/12/31   不老不死の方法について(2)   ES細胞? iPS細胞?

 

 細胞から核をとり出して、核を抜いた卵細胞に入れて、子宮に戻して発育に成功したものが、コピー動物(クローン)である。しかし、現在まで、家畜レベルで成功したクローン生物を見ていると、寿命は、一般の生物に比べて短いらしい。クローンの考えかたは、不老不死に似ているようだが、不老不死とはつながらないものである。しかし、なぜ、一般細胞が生殖幹細胞に変われたのか?  「卵細胞の細胞質に含まれる何らかの因子が作用した。」

 そう考えて、因子を選んで、その再現実験が繰り返された。その一つの答えが、有名な山中教授のiPS細胞である。iPS細胞は、個体(ねずみ)に戻すと、奇形腫という腫瘍を作るそうだ。ということは、iPS細胞は生殖幹細胞に近くて、いい線を行っているのだが、不完全な幹細胞なのであろう。いまのところ、iPS細胞は、不老不死とはつながらないのであるが、完全な自己の幼若幹細胞を作ることに成功すれば、その細胞を点滴して、自然に死滅していく細胞を補って、個体としての不老不死が完成する可能性はある。

 

 とすれば、幼いころの、幼若な自己の幹細胞を凍結保存しておき、年取ってから、点滴して入れれば、個体としては、不老を保つことができる可能性は高い。古くなった元々の細胞から癌が出てくる可能性が高いので、不死とは行かないだろうが、不老は可能だろう。しかし、若いころはもう過ぎ去ってしまい、自己の幼若な幹細胞は、この世にはない。

 

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2008/12/31   不老不死の方法について(3)  臍帯幹細胞?

 

 ただし、他人のであれば、利用できる幼若な幹細胞はある。利用しやすいところでいえば、たとえば、臍帯の幹細胞である。臍帯はもともと捨ててしまうものである。白血球の型と赤血球の型が一致すれば、他人の幼若な細胞が、自然消滅した部分を補う可能性は高い。つまり、不老の可能性があるのである。

 以上の考え方から、広い世界の中には、既に研究をはじめているグループがある。彼らの報告によると、臍帯幹細胞は不老ばかりでなく、糖尿病、透析直前の腎不全、劇症肝炎、パーキンソン病、アルツハイマー病などにも有効例があるとのことだ。臍帯幹細胞投与は、以前から、白血病や先天性代謝疾患に、行われている。安全性については、多くの研究 ・臨床経験があり、利用しやすい。

 知り合いの中国の教授たちが臍帯幹細胞投与と各種疾患についての研究をしており、この治療法にご興味をお持ちのかたは、ご連絡ください。

 

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2008/12/31   核も見える拡大内視鏡診断は、「内視鏡的病理学」  

 

  拡大内視鏡のレベルは、さまざまな技術革新にともなって益々進んでいる。20年前に臨床で使える電子拡大内視鏡をフジノンと協力して世界で始めて開発してから、内視鏡的に対象の病理や生理を探求し続けてきた。拡大内視鏡で核が観察できる時代になり、内視鏡的診断学は、内視鏡的病理学というべき領域まで、進展している。食道と大腸では、色素を撒いたりしての手間を少しかければ、病理診断に用いる解像度と同等の画像情報を得ることができる。従来の病理学とは観察する角度が違うので、病変が表層に出ていれば、拡大内視鏡的診断が、旧来の病理学を凌ぐ。内視鏡的病理学という言葉を新たに提唱できる時代となった。

 

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2008/12/31   増える癌による死亡。 大腸腺腫(大腸ポリープ)は全身の癌の前兆。

 

  名古屋でに開かれた秋の癌学会で、最近の癌死亡者の動向が、発表されていた。内容は、全死亡に占めるがん死亡者数が、40%に近づいているというものであった。3−4年前は33%といっていたから、その急増ぶりは、予想されたものとはいえ、少し驚いた。

 今から、20年前、フジノンと協力して、世界で初めて臨床に使える電子拡大内視鏡を開発して、片っ端から、精密に大腸内視鏡をおこなって、7割の人に大腸腺腫を認め、その多さに驚き、なぜだろうと考えた。すべての大腸内視鏡検査を、電子拡大内視鏡で行い、すべてのポリープを切除するという方針を貫き、きちんとしたデータを集め続けて、大腸腺腫と癌(大腸に限らず全身の癌)との間に大きな関係があるのに気がついた。癌患者には97%以上の確率で、大腸腺腫が存在していたのである。また、70歳になっても大腸腺腫が出ない人は約3割いて、その人たちの既往歴に「がん」が存在する確率は1%以下であった。(つまり、日本人の3割は癌体質でない。)

 日本人の7割は、大腸腺腫をもつ、あるいは、持つ可能性のある癌体質の人たちである。たんぱく摂取量の改善、高血圧や高脂血症に対する効果的な薬が開発されて、脳血管障害による死亡が激減してきたため、「癌」で死ぬようになってきたのであろう。

 日本人の4割が癌で死ぬ。7割の人に大腸腫瘍が見つかっても何の不思議もなかったのである。大腸腺腫は単にそれが前がん病変というだけでなく、全身のどこかに癌がでる、癌体質のマーカーでもあったのである。小さな大腸腺腫を探り当てることは、単に、大腸がんの予防に効果あるだけでなく、患者の「癌体質」を見抜く鍵でもあるのだ。

 癌に対する治療の進歩や、予防策の進展、他の疾患の治療・予防策の進歩の状況にもよるが、今後、全死亡に占めるがん死亡は50%ぐらいまで増えるかもしれないが、それ以上は増えないのではないかと予想している。

 

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2008/12/12   たばこ税の増税見送りは、日本の恥!。 見送りを決めた政党人は、肺癌や心筋梗塞で死に向かう人々の苦しみを知るべきだ。 

 

 医療崩壊の日本のなかで、タバコ税を増やして、社会医療費に充てるという政策が示された。やっと、「日本の健康政策も国際水準に追いつくのかな」と、光明を見る思いで、期待した。ところが、「増税すると売り上げが減って、増税しても、税金の総額が増えない。」という理由で、結局、この政策は見送りとなった。テレビでは、とある自民党のお偉方<M>がしたり顔に、税のからくりを解説していた。

 タバコは、もともと、肺癌・食道癌・心筋梗塞・肺気腫の原因になるなど、健康によくない。止めるだけでも、将来、病気に苦しむ人々が減って助かる。この間も、ヘビースモーカーのおばさんに、肺癌が見つかって手術をした。患者や家族の苦しみ・悩みは、大変なものである。

 せっかく、一石二鳥の理屈に合った政策が出てきたのに、やる前から止めるのは、残念でならない。タバコ好きの患者を数多く診てきたが、タバコ好きは、値段が少々高くなっても、将来死ぬといわれても、まずタバコを止めない。

 

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2008/09/17   安いコストで高い効果 1)がん予防策の充実を <医療制度改善策 2>   

 

 医療は、そもそも、病気の治療を目的としている。病気を治すという観点からは、治すのに有効な方法を選ばなければならない。誤診率の低い診断法を選び、誤診を避け、治療においては有効な治療を選択する必要がある。診断間違いと無効治療が最も無駄な出費であり、患者の病気も治らない。

 しかし、現行の医療制度は、目先の費用が安いとか圧力団体がいるという理由で、誤診率が高い診断法を奨励したり、効果の低い治療法を優先させたり、また、効果のある治療法を否定していたりと、問題点が多い。この問題点、専門外の人にはなかなかわからないので、一層、厄介なのである。

 病気には「治せるタイミングと方法」がある。たとえば、癌である。小さな芽のうちに治すのは、内視鏡で外科的に切除すればいいので、いとも簡単に治る。それが、大きくなり全身に散らばると、治すのに極めて苦労する。ところが、昨年、患者主導で制定された、癌対策基本法は、癌対策における予防の重要性を無視してしまった。転移した進行癌がなかなか完治しない現状を考えると、がん予防が極めて重要なのは明らかだ。

 しかし、がん予防に対する現在の政府の取り組みは、私の目から見ると、ピロリ菌、HCV、HBV、パピローマウィルス、大腸ポリープの取扱い方、喫煙の問題、HIVなどなど、理にかなっていない。現在、日本では、年間50万人ががんに罹患し、33万人が死んでいる。理にかなった方法を推し進めれば、癌は、少なくともその3分の2が予防できるはずだ。

 

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2008/09/17   安いコストで高い効果! 2)ウィルス病対策の拡充を <医療制度改善策 3> 

 

 蔓延するウィルス病の対策は大切である。最近の検査ラボ関係者の話では、現在、東京では、HIV感染者がかなり増えてきているとのこと。先進国の中で、HIV感染者が増えているのは唯一、日本だけ。すると、日本は後進国というわけ? HIVもAIDSが発症してからでは、薬の効果が低くくなり、コストもかかる。HCVと同様である。現行のHIV対策では、感染者が見つかりにくく、見つかっても、感染者本人が逃げ回れば治療できない。だから、ますます、広がる。AIDSが発症するまで、HIV感染者は、一見正常者と同じなのだ。ウィルス感染者は、社会的観点からも、そして、本人の健康のためにも、強制的に治療すべきだ。

 恐ろしい話だが、現行の輸血体制では、輸血血液の中に、HIVの混入のリスクがある。抗体だけで調べている場合、抗体が産生される初感染後3ヶ月前は、HIVがいても、引っかかってこない。正確に行うには、やはり、費用がかかっても、PCRで遺伝子を増幅して、一検体ごと調べるしかあるまい(この辺の事情はHCVもHBVも同じ)。そして、見つかったら、供血者にフィードバックして、一人ずつ治療していくことが大切だろう。目先は赤字になっても、HIV、HCV、HBVの蔓延が抑えられれば、結局は、国民の健康も守られた上に、将来の出費も少なくて済む。

 

 そして、厚生労働省血液課長の責任も問われない。

 

 しかし、そのためには、予算を付けてくれる政治家・政党が必要。こんどの選挙で、これを理解してくれ政党や理性ある政治家が選ばれればよいが、そうでなければ、あなたも「ほうかむり」を決め込むしかないでしょうね。

 

 HBVではワクチン接種の奨励も重要です。

 

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2008/09/15    この保険証は本物か? 事務手続の不正防止を <医療制度改善策 その1>  

 

 社会保険医療制度の問題のひとつとして、窓口で提示された保険証が本物かどうかということがある。

まず一点は、顔写真が入っていないので、友達や兄弟のものを流用して用いても、偽名を語る限り、医療機関はチェックの仕様がない。昨今、ニートの間で、しばしば行われている不正受診の方法である。

次に、有効期間切れの問題。有効期間が切れていても、確認するためには、わざわざ、保険者に電話連絡するしかない。手間取るので、すべての患者に行うことは、現実的に不可能である。保険証が無効のときには、医療機関は、食い逃げされた状態となる。当院も、有効期限切れなどで返却されていたレセプトは、かつて3%にも及んでいた。大変な損失であった。

最近は、カードの回収を怠った場合、保険者に支払い義務があるという判例が出ているので、保険者への請求権が強固なものとして認められたようであるが、それでも、裁判に持ち込まないと解決できないとは、面倒なことだ。保険者も、回収に努力しても100%は回収できないのが実態だ。 

 これらの最も有効な解決策は、

1)窓口での全額払いと、レセプトの患者への交付であろう。しかし、それでは、保険者の窓口が大変になるかもしれない。それなら、

2)保険証への顔写真の挿入と、

3)インターネットによる、保険医療機関からの保険証の有効性確認システムの構築

が必要である。事務コスト軽減と社会正義実現のため、不正を生まないスムースな方向に、社会保険医療制度の改善を望む。

 (1)から(3)のいずれにしても、保険者の手間がかかることであり、嫌がることであろう。しかし、保険制度の不正を正すためには必要な事務コストである。(3)は今のIT技術からすれば、簡単なことだ。検索も、医療機関コードを入力の上、保険者番号、番号、記号、から行えば、プライバシーも保たれるのではあるまいか・・・・。それでも不安であれば、とりあえず、策(1)しかあるまい。

 

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2008/08/26  女優・深浦加奈子さん 大腸がんで死去 yahooアンケートの「驚き」の反応に驚く。

 

 今年の夏は、「大腸がん」での死亡記事が多い。産経新聞の伝えるところによると、25日女優の深浦加奈子さんが、大腸がんでお亡くなりになったそうだ。心からご冥福をお祈りします。

 44歳で癌が見つかり、48歳の若さで死んだとは、確かに驚く。yahooアンケートにおいて、「びっくりした」の反応が一番高かったこともわからないでもない。しかし、専門家の目から見ると、ちょっと感想は異なる。「日本における女性の死因のトップが大腸がんである」ことを考えると、私は、「びっくりしなかった」。むしろ、私はその他の低いスコアの反応をした。「考えさせられる」「役に立つ」「誰かに教えたい」

 マスコミは、大腸がんが日本女性の死因のトップであることを、国民にきちんと 啓蒙すべきである。深浦さんも8年前の40歳の時点で、私のクリニックを訪れて、大腸検査を行い、「大腸がん」を小さな 「大腸ポリープ」のうちに発見して切除し、その後、定期的なチェックをしていれば、死なずに済んでいたことだろう。

 

 

 

女優・深浦加奈子さん死去 48歳
8月26日19時10分配信 産経新聞 深浦加奈子さん(ふかうら・かなこ=女優)25日、S字結腸がんのため死去、48歳。自宅は東京都杉並区久我山4の13の18。葬儀・告別式は近親者のみで執り行い、後日お別れ会を開く。喪主は父、栄助(えいすけ)氏。明治大学在学中に劇団「第三エロチカ」旗揚げに参加、看板女優として活躍。退団後もテレビドラマ「家なき子」「スウィート・ホーム」「私の青空」などに出演、脇役として幅広く活躍した。

 

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2008/08/14   加油日本 

 

 2008年8月8日午後8時8分に、北京オリンピックの開会式が始まった。8続きの時を選んだのは、8が縁起のいい数字だからだ。国の発展を願う気持ちは大切なことだ。自国を誇る壮大で華麗な開会式は、中国政府の知恵と決意の賜物であろう。逆に国が崩れれば、民は悲惨な目にあう。最近では、清国末期の中国、第二次世界大戦の日本がそのいい例だ。明日は終戦記念日で、敗戦からちょうど63年目である。

 2日前、終戦直前8月10日から14日までの東条英機のメモが国立公文書館で見つかった。「東条英機は、敗戦理由を「核爆弾などの敵の脅威におびえ簡単に手を挙ぐるに至るがごとき国政指導者及国民の無気魂」としながらも、開戦に及んだ指導者としての自らの責任に触れている。」と報道されている。下記参照。

 東条英機は愛国者であったと思うが、残念ながら「知恵」が足らなかった。核爆弾の脅威におびえない人はいない。こんな自明な真理も否定しているとは、政治家として指導者として、まったく駄目である。竹やりでは機関銃に勝てないのである。技術がなければ、気持ちだけでは勝てないのである。死んでは、身体は動きません。死んでは、命令を遂行できません。だから、指導者は人が死なないような戦略を考えなくてはいけない。曽祖父は戦前、大臣であったが、暴走する「陸軍」と、負けたこの大将が大嫌いであったそうだ。勝負はやっぱり勝たなくてはいけない。特に戦争の場合、負けは悲惨だ。

 オリンピックの勝負を見ているとよくわかるが、気持ちが勝負を左右するのは、技術とパワーが拮抗しているときだけである。技術とパワーの基には、科学と知恵に基づいた鍛錬がある。

 こんなことは、オリンピック選手が一番よくわかっている。同じく、敗戦を経験した人々にも、自明の真理であった。「なぜ、核爆弾の開発に日本が先に成功しなかったのか?なぜ、レーダーの開発に先に成功しなかったのか?」 その悔しさが原動力となって、敗戦後、日本国民は科学と技術革新に努めて、日本国の再興に成功したのである。

 今の日本国が直面している、崩壊する医療・福祉を救うのも、法を守れという精神論ではなく、おそらく深い理性に基づいた技術革新であろう。それは、単に医学的技術だけでなく、人文科学的な技術、すなわち、「知恵」のある制度も大切であろう。給料が安ければ、介護職は集まらない。特効薬が使えず、手術法が認められず、病気が治せなければ、医療職は倦んでしまう。患者は、治らず、苦しんで、死ぬ。

 「加油」(ちゃーよう)とは中国語で「がんばれ」という意味である。「ちゃーよう、ちゃーよう」とオリンピック放送で盛んに聞こえてくるが、「油を加える」、すなわち、自国でのエネルギー開発や、理にかなった油のようにスムーズな医療福祉制度開発に成功すれば、日本経済も日本社会も回復して、医療も福祉も復活してくるだろう。

 

東条英機・陸軍大将 手記を確認…終戦直前の心境つづる
8月12日13時56分配信 毎日新聞
 太平洋戦争開戦時の首相、東条英機・陸軍大将が終戦直前の1945年8月10〜14日につづった手記が、国立公文書館(東京都千代田区)に保管されていることが分かった。戦争目的を「東亜安定と自存自衛」としたうえで、ポツダム宣言受諾を「敵側の隷属化に立つに至る」とつづっている。また、敗戦理由を「敵の脅威におびえ簡単に手を挙ぐるに至るがごとき国政指導者及国民の無気魂」としながらも、開戦に及んだ指導者としての責任に触れている。手記は、政府がポツダム宣言受諾を決めた45年8月9日の翌日の10日に首相官邸で開催された重臣会議の様子についての記載から始まり、席上、戦争目的が達成されないままポツダム宣言を受諾すれば、戦争による多くの犠牲者が死んでも死にきれない、という趣旨の発言をしたことが記述されている。しかし、昭和天皇の裁断で、終戦を受け入れたことを示す記述もある。11日から13日にかけては、今後の情勢分析や敗戦の原因などをつづっている。14日には、首相時代の秘書官あてで「死をもっておわび申し上ぐる」と記したり、戦犯に問われることを予期して「敵の法廷に立つごときは日本人として採らざるところ」とも記し、自殺する覚悟をつづった。

 東条大将は41年10月に首相に就任したが、戦局の悪化を受けて44年7月に辞任。45年9月に自殺を図ったが、一命を取り留め、極東国際軍事裁判(東京裁判)でA級戦犯として死刑判決を受け、48年12月に処刑された。手記は、東京裁判で東条大将の弁護人を務めた清瀬一郎弁護士が法務省に寄贈した資料の中にあった。99年に法務省から公文書館に移管された。「東京裁判」などの著書がある赤沢史朗・立命館大法学部教授の話 終戦直前の東条元首相の考えを間接的に示す資料はこれまでもあった。こうした資料に記載されていたことが、この手記で本人の考えとして明確に裏付けられた。

 

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2008/07/21  アメリカの大腸がん 若い人の大腸がん 

 この一ヶ月、大腸がんの死亡記事が3つほど続いた。下記参照。トニー・スノー前アメリカ大統領補佐官、石田文樹野球選手、それに先の戸塚洋二教授。合掌。ご冥福をお祈りいたします。

 

 大腸がんによる死亡者数は、日本では年約4万人、1日約110人が死亡している。アメリカでは年5万6千人、1日約150人が死んでいる。

 アメリカの人口は日本の約3倍であるのに、死亡数があまり変わらず、死亡率が違うのは、アメリカでは内視鏡によるスクリーニングが常識化しているため。内視鏡によるスクリーニングで、前がん病変である大腸ポリープを見つけて、切除するので、大腸がん死亡が減ってきている。リンク なのに、大統領補佐官のようなセレブな立場の人が、大腸がん発見が手遅れになるとは、ちょっと意外である。まあ、どこの国にも、医者嫌いや、健康過信者、仕事が忙しすぎる人がいるものなのだろう。付け加えると、藪医者も・・・・?!。

 

 今回の3連続、大腸がん死亡記事の死亡年齢は、41歳、53歳、66歳。私が経験したうちデータベースにある2000例前後の大腸がんの年齢構成は、平均年齢が59歳で標準偏差は約10歳。一番若い人が19歳、最もお年の人は91歳であった。早期がんと進行がんでは約5歳の開きがある。41歳未満のがん患者は全体の約3%であり、石田文樹選手は、やはり、若すぎた。若くて大腸がんになる人の特徴は、家族歴とアルコール摂取、潰瘍性大腸炎などである。データベースを見ながら、一人一人患者さんの顔を思い起こしていると、これらの危険因子のある人は25歳ぐらいから、内視鏡でしっかりスクリーニング検査を受けたほうがいいという思いが沸いてくる。

 

大腸癌トニー・スノー氏死去 前米大統領報道官
2008年7月12日 22:10 トニー・スノー氏(前米大統領報道官)AP通信によると12日、結腸がんのため死去、53歳。ケンタッキー州生まれ。地方紙記者やUSAトゥデー紙のコラムニストを経てFOXテレビコメンテーター。保守派の論客として知られ、06年5月から07年9月までブッシュ米大統領の報道官を務めた。任期中にがんの転移が発覚、化学療法を受けながらホワイトハウスの顔として記者会見をこなした。(共同)
 

石田文樹さん直腸がんで死亡 

 石田文樹氏(いしだ・ふみき=84年全国高校野球選手権大会優勝投手、プロ野球横浜ベイスターズ打撃投手)15日午前1時40分、直腸がんのため横浜市保土ケ谷区の病院で死去、41歳。茨城県出身。葬儀・告別式は18日午前10時から横浜市港北区菊名7の10の8、新横浜奉斎殿で。喪主は妻寿美江(すみえ)さん。84年の全国高校野球選手権大会に茨城・取手二のエースとして出場し、決勝で清原和博選手(オリックス)らを擁する大阪・PL学園を下し優勝した。日本石油を経て89年ドラフト5位で大洋(現横浜)に入団。プロ通算は25試合に登板、1勝0敗で94年に引退した。(共同通信社)
 

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2008/07/11  ニュートリノ質量発見…戸塚洋二教授死去、66歳 死因は大腸癌 8年間の闘病 

 

 小柴先生が、ノーベル賞受賞後、どの学会だったか、正確に覚えていないが、医学系の学会で講演をなさった。ニュートリノは、医療の世界とは遠い存在であるが、お話を興味深く拝聴させていただいた。自然を解明する、真理を探究するという点で、共鳴するものがあった。

 大腸癌は、de-novo発癌にしろ、adenoma-carcinoma sequence発癌にしろ、最初は、粘膜から発生して、小さい。癌が粘膜内に留まっているうちは、内視鏡で切除すれば、ほぼ100%治癒する。大きくなって、転移すれば、治療手段は進歩してはいるものの、治らないことが多い。症状のないうちに、大腸内視鏡を行い、ポリープを丁寧に切除することが、大腸癌予防のグローバルゴールデンスタンダードである。進行がん治療の、効果と費用、健康被害を目の当たりにすれば、大腸内視鏡によるスクリーニングとポリープ切除が、いかに福音か、納得しない人はいないだろう。

 報道を見ると、戸塚洋二先生の場合は、8年の闘病ということであるから、58歳で病気がわかったということだ。その2−3年前、55歳のころ、無症状のうちに、しかるべきところで大腸内視鏡検査を受けて、病変のつぼみであるポリープを切除さえしていれば、こんな痛ましいことにならずに済んだ。

 大腸癌をはじめ、胃癌や食道癌、十二指腸癌といった、消化管の癌は、しかるべきレベルの先生のところで、定期的に内視鏡検査を受ければ、癌死を予防できる。そこまで、消化管の内視鏡診断・治療レベルは進歩しているというのに、返す返すも残念で痛ましい。

 手前味噌で、申し訳ないが、消化管癌(大腸癌・胃癌・食道癌・十二指腸癌)の予防のために、当院の(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドックをお勧めします。

 

7月10日12時35分配信 毎日新聞
 素粒子ニュートリノに質量があることを発見し、ノーベル物理学賞の有力候補とされた東京大特別栄誉教授の戸塚洋二(とつか・ようじ)さんが10日午前2時50分、がんのため死去した。66歳。葬儀は12日午後0時半、東京都港区南青山の青山葬儀所。喪主は妻裕子(ひろこ)さん。04年に文化勲章受章、07年にノーベル賞の登竜門とされる米フランクリンメダルを受賞した。02年にノーベル物理学賞を受けた小柴昌俊・東京大特別栄誉教授(81)の愛弟子で、日本人初の師弟そろっての栄冠が期待されていた。戸塚洋二さんは、静岡県富士市生まれ。72年、東大大学院博士課程を修了した。
 90年代半ばから、東大宇宙線研究所の観測施設「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)の責任者として、国内外の100人以上の研究者を率い、ニュートリノの精密観測を実施。98年、それまで質量なしと考えられていたニュートリノに「質量がある」と確認し、物理学の常識を覆す大発見として世界中の注目を集めた。
 7年前に大腸がんの手術を受けたが、その後、再発と転移を繰り返した。治療に専念するため、研究の第一線を退き、抗がん剤による本格的な化学療法を開始したが、最後までニュートリノ研究への情熱は衰えず、後進の育成に取り組んだ。
 恩師の小柴さんは、愛弟子の訃報(ふほう)に「息子を亡くした父親のようなものだ。どういうお気持ちですか、どう感じてますかなんて、聞かないでほしい」と言葉少なだった。

 

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2008/06/30   細胞治療・再生医療の進展 中国の細胞銀行(細胞バンク)を訪問 

 

  人のからだは、一つの受精卵が、分裂増殖して形成される。冷静に考えると、なんとも凄いことである。その情報が太古から面々とつながっていることを考えると、その凄さは驚嘆するばかりだ。細胞のメカニズムや、遺伝子の解明がすすみ、細胞をいろいろと操作できるようになってきた。クローン羊ドリーが生まれて、技術的にはクローン人間も可能となった。近年、京都大学の山中教授は、マウスの細胞に特定の4つの遺伝子を入れて、iPS細胞をつくり、世間の大きな注目を浴びている。細胞治療は、次世代の医療と考えられていて、世界では、既に多くの試みが行われ、文字通り、激しい競争が展開されている。(日本は例によって規制が強くて、伸び悩んでいるそうだ。)

 今回、6月26日に、知り合いの中国の血液内科教授の案内で、中国の細胞銀行を訪問した。大きな施設で、最新型の液体窒素の冷凍庫が何百台も並んでいた。そこの特徴は、臍帯由来の血液及び間葉系幹細胞をもっていることである。単に、臍帯血幹細胞をもっているだけでなく、臍帯間葉系幹細胞も蓄積しているのである。日本の臍帯血は、血液幹細胞を採るだけであるが、中国では、間葉系幹細胞も採取保存するのである。それに関するいくつかの国際特許も取得しているそうだ。

 臍帯血幹細胞は、白血病の治療に使われて、著名な臨床成績を収めており、臍帯血幹細胞移植は一つの確立された治療法として認知されている。中国では、臍帯から採取されたこれら2種類の幹細胞は、白血病だけでなく、肝硬変、腎不全、糖尿病、心不全、老化、美容などの治療にも大きな効果をあげているという。そこの教授は自分自身が、ウィルス肝炎から肝硬変となり、腹水が溜まり、肝不全となっていたが、適合する幹細胞を6回に分けて、注射することにより、肝硬変が見事に治ったそうである(肝生検して組織学的にも繊維化が消失して、肝硬変が治っていたとのこと)。 幹細胞治療が肝硬変の治療に有効とする論文がいくつか発表されている。

 日本でも臨床研究が進み、多くの難病・業病で死に瀕して苦しむ人たちや、老化で美しさや機能の衰えに悩む人たちに、この治療が適応される日が早く来ると良いと思う。

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2008/06/09   老人社会克服の決め手は? 後期高齢者医療制度の問題点 

 

 先週末、参議院で、本年4月から施行された後期高齢者医療制度の廃止法案が、民主党・社民党・共産党・国民新党などの賛成多数で可決された。政権党である自民党・公明党は反対した。今週は衆議院で議論されるが、はたしてどうなるのであろうか?

 後期高齢者医療制度の法律には、難しい言葉でその精神を説いているが、簡単に言えば、「75歳以上の人に対しては、もうすぐ死ぬという、その身体的特性を考えて、お金のかかる医療をしてはいけません。」ということである。現場で、75歳以上のひとびとを診察していると、その健康の個人差は、著しい。病気をうまくコントロールしていれば、もうすぐ死ぬとはとても思えない人が大半である。そんな人たちに向かって、「あなた方は、どうせ、もうすぐ死ぬのだから、お金のかかる医療はやめてしまいます。」というのは、何重にも大きな間違いがあると思う。

 人類が体験したことの無い老人社会に突入する日本において、公的医療をどうするか?社会の活性をどう保つか?・・・それは大問題であるのだが、問題解決の鍵は、「健康な老人は元気だ!」というところにあると思う。まず、老人の健康を維持する政策をとって、元気な老人を増やす。そして「退職年齢の引き上げ」や、「老人の子や孫育てへの参加」で、老人の生産力に期待するのが、問題解決のポイントであろう。

 正しい健康知識や、病気の予防政策を採らずにおいて、「使えなくなったら、姥捨て山、爺捨て山に」というのでは、現代医療が泣くというものである。

 

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2008/05/21   アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 

 

第4日目 サンディエゴ観光 など 

  午前中は、ASGEのまとめのセッションに参加。21年前に私が日本で考案して実用化した、水浸挿入方法が、アメリカ流にRCTで大真面目に評価されていたのにはびっくり。結果は従来方に比べて優秀という結論であったが、今頃になって評価ですか?!と複雑な気持ち。引用文献には私の名前は無かったのは残念。開発当時、英語の論文を書かなかったのでしかたないか・・・。

 3日間半もまじめに学会に参加し、少し疲れたので、午後からはサンディエゴ観光に出かけた。晴天で初夏の風が爽快。2000年と大きく違っていたのは、空母ミッドウェイが、老朽化のため現役を退いて、港に係留されて、博物館として公開されていたことだ。空母ミッドウェイは、負けしらずの空母で、アメリカ海軍栄光の象徴でもある。作戦司令室では、2003年3月イラクのバクダットを攻撃したときの様子が再現されていた。サッカーコート3面分の甲板には今までの戦闘機が所狭しと載っている。管制塔に登って、操舵室に入り、舵をまわしてみた。

 つい2−3年前まで現役で働いていた空母を公開するなんて、アメリカ海軍は無敵の余裕だ。管制塔から降りるとき、ベランダが激しく錆びていた。なるほど、無敵艦も「老い」には勝てなかったというわけかと妙に納得した。

 

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2008/05/20   アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 

 

第3日目 進歩する学問と技術 炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎とクローン病 

  本日のサンディエゴの天気は曇り、前日と打って変わって肌寒い。

 アメリカはIBD先進国である。患者数も多ければ、治療法も多い。抗TNFα療法として、インフリキシマブや、アダリブマブ、セツキシマブPなどの分子標的薬剤の臨床効果や問題点、その他の作用機序による分子標的薬剤(抗CXCL10抗体、抗integrinβ7抗体など)の臨床試験結果などが発表されていた。また、従来からある薬の使い方の工夫や、別の疾患に用いる薬の転用、ある種のサプリメントなど、潰瘍性大腸炎やクローン病をなおすのに効果のあるものなど、治療に関する多数の発表がなされていた。

 抗TNFα療法を、ステロイド療法を始める前に使えば(トップダウン方式)、臨床的な治療効果が、ある基準を基にすると、30%から70%へと向上するという話もあった。

 夕方は肥満治療の発表に参加。米国は肥満先進国でもある。高度の肥満が多い。高度の肥満を解消する目的で、胃にバンドをかけて細くしたり、消化管をつなぎなおしたりして、消化管からの栄養吸収を抑える治療法が米国ではおこなわれているのであるが、その治療法の長期の問題点と克服の仕方がビデオで紹介されていた。内視鏡的肥満治療の問題と克服方法の話は面白かった。

 

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2008/05/19   アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 

 

第2日目 爆発事件?事故?学会場が大きく揺れる。進歩する学問と技術 大腸用カプセル内視鏡、逆行観察用細径内視鏡、virtual colonoscopy など 

  サンディエゴはからりと晴れ上がり、強い日差しの一日であった。お昼時、展示ブースめぐりをしていたときに、ドカンと大きく学会場がゆれた。消防車が学会上の前をけたたましく何台も走り抜けた。何事かと思っていたら、約1時間して、講演の最中に全館放送が流れた。「学会場の東方で問題があったが、避難する必要はありません。」 放送のたびに、講演が何度も中断された。ここ10年ほぼ毎年、学会に来ているが、このような出来事は始めてである。「テロかな?ガス爆発かな?」と思っていたが、学会は、放送による中断があっただけで、ほぼ無事に進行した。

 2-3年前から、大腸用カプセル内視鏡が開発されているのだが、その臨床的評価が発表されていた。まず、一番の問題点は、大腸は停滞時間が長いので、電池切れになって全大腸が観察できないのである。1−2割は下部大腸と直腸が観察できないらしい。腸の動きを早くするために、いろいろな工夫がされていたが、さらなる工夫が必要であろう。また、1cmを超える大きなポリープでも見落としがあり、全体としての大腸ポリープに対する感受性も8割ぐらいで、今のままでは、大腸ポリープのスクリーニングには、少し限界があるように感じられた。しかし、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の評価には、十分使用できそうである。

 大腸内視鏡観察は大腸ひだの裏が見落としやすい。そこで、内視鏡先端に透明なキャップなどをつけ、襞を押さえつけて、裏側を見たりするのであるが、Advantis Medical System 社から、鉗子孔から挿入できて、Uターンのできる画素数320*240の直径約3mmぐらいの内視鏡が開発されていた。反対側から襞の裏を見ようというわけである。この製品はこれからの臨床評価であろう。

 また、CTによる大腸表面の画像化技術(vertual colonoscopy)も電子機器と優れた画像処理プログラムの向上により、かなりの所まできていた。

夜は、普段会えない先生方や日本人関係者と会食して、情報交換。

 

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2008/05/18   アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 

 

第1日目 進歩する学問と技術 テロメラーゼ阻害剤、超細径内視鏡 SFE (scanning fiber endoscope)、硬度表示エコー、NOTESの標準化、内視鏡による消化管壁の縫合技術の評価などなど 

  サンディエゴを訪れるのは、2000年以来、8年ぶりだ。前回は、今は神保町で開業している末岡伸夫先生と一緒に、バレット癌の色素二重染色による拡大内視鏡診断をポスター会場で発表して、一日中、質問者が続くほど、大変注目された。私の開発した染色システムで撮影した色素拡大内視鏡のバレット癌の写真を、スタンフォード大学の消化器病学の教授が、卒業後教育の教材として使いたいと、申し出があったほどであった。最近は、いろいろな問題に煩わされているので、研究に割く精神的ゆとりがないため、今回は残念ながら特に発表はないが、発表がないのは、かえって落ち着いて、多くの発表を聞くことができて、気楽で楽しいものである。

 アメリカの消化器病週間に来ると、ここ2−3年、必ずサプライズな発表がある。今回は、直径1.2mmの操作型ファイバー内視鏡=SFE (scanning fiber endoscope)であった。米国で既に試作機ができて、臨床試験が終わっていたのには、びっくりした。画像もまずまずで、Eric J. Seibel先生いわく、「目を持ったガイドワイヤ」(guide wire with eyes)ということらしい。直径1.2mmという細さも凄いのであるが、これからは1mmを目指すという。この技術はさまざまに利用・応用されることになるだろう。

 それほどではないが、次に、驚いたのが硬度(=軟度)を表示するエコー画像処理システムである。硬い軟らかいは、触診と同じで,臨床上重要であるのは明白であるのだが、膵臓がんや転移性肝臓がんで このシステムによる画像が、がんの存在診断に特に有効であった症例が2−3示されていた。まだ、いろいろと技術的な問題があるようであるが、近いうちに臨床に供されるのは間違いあるまい。

 去年、びっくりしたNOTESであるが、今年は各国から237題もの発表がある。今日は、ドイツから人型練習モデルまでが発表されていた。海外では標準化が近いのである。腹腔内の細菌感染の問題や、胃壁の縫合操作の問題についても、基礎的な発表がなされていた。腹膜炎の問題について、開腹手術と経胃腹腔鏡で、腹腔内汚染があまり変わらないとする発表があった。また、消化管壁縫合技術面では、開発されている縫合技術7つのうち、4つが手縫いと同じ縫合力があるとの発表もあった。私が1999年に始めて報告し、私自身が今でも行っている「クリップによる消化管壁穿孔縫合」も、手縫いとほぼ同等の縫合力という評価であった。(確かに、だから、私の直腸ー尿道漏の縫合がうまくいくわけである。高い縫合力を得るにはそれなりの「こつ」がいるのではあるが・・・・。

 その他、前から報告のあった、テロメラーゼ阻害剤が、第3層試験を終了しそうで、もうすぐ、脳腫瘍グリオーマの治療薬として臨床に出てくる?という。また、テロメラーゼに関連したところでは、肺線維症が挙げられてていた。テロメラーゼ活性が先天的に低めの人に喫煙などの悪化因子が加わって、発生しやすい ことが、ここ1−2年わかってきたようである。抗がん剤としてのテロメラーゼ阻害剤だけでなく、老化や老化に関連した各種疾患治療を目的とした、テロメラーゼの活性剤やテロメラーゼアゴニストの研究も、今後、大きなテーマの一つとなりそうである。

 

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2008/05/07   特殊光観察FICE6:色素染色下でも毛細血管視認性向上に有効  

  NBIやFICEといった特殊光観察下では、毛細血管がよく認識できるようになる。ただし、これまで、色素下での効果は限定的であった。今回、FICEパターン6では、 メチレンブルー染色下でも、毛細血管の視認性が向上した。青が青のまま、血管だけが強調されるので、わかりやすかった。

 

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2008/04/07   繁栄するアラブ、香港  

 

  休み期間に、アラブ首長国連邦のドバイとアブダビと中国の特別行政区の香港とマカオを訪問した。ドバイとマカオは建築ラッシュで、特にドバイはワッと驚くようなすごい建築が立ち並んでいた。1990年には小さなビルが2−3個あっただけの通りに、摩天楼が文字通り林立していた。いずれの都市も地震がないので、日本に比べて超高層建築物の背が高い。ドバイの超高層ビル群や香港のフィナンシャルビルにも、びっくりしたが、一番凄いと思ったのは、アブダビに建設中のシェイクザイードモスクであった。一点の隈もない白い大理石に、きれいな石がアラビア風に象嵌されていた。内部の飾りもすばらしいものであった。

 ちなみに、このモスクは地球の歩き方07-08版には載っていない。ドバイからアブダビに向かう道すがら、たまたま遠くに見えて、気がついた。そして、7つ星ホテル、エミレーツパレスを観光して、アブダビからドバイに帰る道すがら、偶然、ドンピシャの道を選んでいて、砂漠の神に誘われるように迷い込んだものである。現地のガイドもこれが何かを知らなかった。門番にきき名前がわかった。

 

 

 

 

 

 ドバイもアブダビも香港もマカオも町は禁煙で、町にはタバコが落ちていなかった。中目黒の駅前も、目黒区の条例で禁煙となっているのであるが、若者も中年も、平気でタバコをすって、道にポイっと捨てている。最も汚い町は、残念ながら東京の中目黒であった。香港の裏町のほうが、まだきれいであった。日本の人心は荒廃しているのだろう。

 「恒産なければ恒心なし」とは論語も一節だが、日本政府が、国際社会の中で生き残る、確固たる戦略を持たなければ、資産も人材も叡智も日本から逃げ出して、日本は大切な命もゴミくずのように扱う悲惨な国になってしまうだろう。いや、もうなってしまっているか・・・・・。

 

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2008/03/12   フジテレビ、ハピふるに録画出演。「食べてすぐ横になると牛になる」を解説  

 

  本日、午前9時55分からのハピふるに録画出演。「食べてすぐ横になると牛になる」を解説した。姿勢によって胃の形が変わり、重力の方向によって、胃の機能が修飾を受けることを説明した。胃下垂で胃の機能の弱い人は、食べた後に仰向けに横になり、1時間ぐらいしたら、右下に横になるのが、消化によい。ただし、寝込むと消化管の動きが止まるので、横になっても、眠らないことが大切である。武田アナウンサーの横にある牛角胃の図が、正確ではなかったのは、すこし、残念であった。

 

 

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2008/03/10   消化管学会発表内容(2008/02/13)が日経メディカル別冊に掲載される  

 

 今年の2月の日本消化管学会の発表内容(5mm以下の大腸ポリープを無視するリスク)が日経メディカル別冊に掲載された(下記参照)。日本消化管学会では、約2000題の発表があったが、その中から、日経メディカル別冊に掲載されたのは、わずか5編しかなかった。学会では、一般演題として、小さな会場での発表であっただけに、日経メディカルオンラインに特に選ばれて紹介されたのには、少々驚いた。

 

5mm以下の大腸ポリープの一律軽視は禁物


 内視鏡検査の際に見つけた5mm以下の小さな大腸ポリープを精査することなく放置することは、がんの見逃しにつながる――。2月7〜8日に開催された第4回日本消化管学会で、中目黒消化器クリニックの 田渕正文氏は、こう強調した。

 田淵氏は、同氏が手掛けた全大腸内視鏡検査連続3万5852回、9468人(男性6203人、女性3265人、平均年齢57.5歳)を対象とし調査を行った。検査時に発見した5mm以下のポリープを20分以上にわたり拡大観察し、腫瘍と思われた5mm以下の病変をすべて切除して組織学的検討を加えた。対象者が大腸内視鏡検査を受けた動機は、サーベイランス目的が最も多く約75%、次いで大腸がんの二次検診目的が約11%だった。

 切除した5mm以下の病変は全部で3万2541個だった。組織学的検討の結果、腺腫が最も多く、全体の99%を占めたが、粘膜がんが57個、粘膜下層まで浸潤したがんが3個(うち1000μm以上の浸潤がんが1個)、粘膜下腫瘍(カルチノイド)が48個あった。

 田渕氏は、「単純計算すると、5mm以下の大腸ポリープをすべて放置した場合、年間約20個のがんの見逃しとなる可能性が示唆された。もちろん、すべての大腸ポリープを切除せよと言っているわけではないが、単に医療費を抑制するという観点から小さな大腸ポリープを一律に軽視していては、病変の観察が散漫になり、取り返しのつかないがんの見落としにつながりかねない」と、警鐘を鳴らした。
 

(小又 理恵子)

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2008年02月13日

 

 小又理恵子さんが、選んだわけだが、抄録には書かず、討論の中で私が述べた内容が、きちんと書かれており、小又さんは学会場に来ていたのであろう。小さな会場までわざわざ来たということは、彼女自身が普段から、小さな大腸ポリープの取り扱いについて問題意識を持っていたということだ。

 

 記事内容については、ほぼ、間違いないのであるが、文字数制限のせいか、多少舌足らずの所があった。「5mm以下の大腸ポリープをすべて放置した場合、年間約20個の癌の見逃しとなる・・・」の所は、「5mm以下の大腸ポリープをすべて放置した場合、年間2400例の大腸内視鏡検査を行う場合約20個の癌の見逃しとなる・・・」と母数を書くべきであった。

 

 現在の医療界は、保険診療費の切詰めの中、粗診粗療に流れている。このような世相の下、マスコミが大腸内視鏡検査の質をフォカスしたことは、意義深い。

 

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2008/02/21   医師の苦悩 医師の使命と社会保険制度 

 

 2月の下旬は、受験シーズンである。医学部医学科を目指す若者たちは、いま、必死に受験と取り組んでいることであろう。

 

 私の場合も、医学部受験は人生を決める大イベントであった。なぜ、医学部を目指したかといえば、母と祖母から、「一族からせめて一人は医者になって欲しい。」と、強力に頼まれたからである。もともと、私は幼いころから数学が得意であったので、理学部か工学部か法学部に進もうと思っていたのだが、お話好きという別の特性を生かすには、医学部もありかなと思ったのである。

 九段の日本武道館で行われた東京大学の入学式(1978年=昭和53年)、桜の花舞散る下で感じたことは、医師になる使命感というよりも、正直、受験戦争を戦い抜いた安堵感と達成感であった。しかし、大学のとき、私自身が難病を患い、特定疾患患者となって、病気の怖さ・切なさを嫌というほど味わい、病気を治す、患者を治すという医師の使命の大切さを、心の底から実感した。だから、自らの専門を決めるとき、迷いは一切なく、自分の病気を専門とした。

 医師国家試験に合格して臨床に入ってみると、私の病状などとは比べものにならない、悲惨な患者さんが多数いた。治らない病気も数多く、効果的な治療法がなく、死んでいく人々の山であった。治療法があって克服された病気と、そうでなく克服されていない病気、その差は歴然としていた。川におぼれて死のふちへと流されていく人々を救うには、方法があれば、どんなに費用がかかろうとも、救うというのが、24年前の常識であった。「人の命は地球より重い」当時の閣僚の言葉である。

 

 1980年代は、日本経済が絶好調の時代で、社会保険医療の枠が最善の医療の限界とほぼ同じであった。今から思えば、医師として悩み少なき時代であった。現在、私が医師になった24年前と比べれば、さまざまな病気の本態が解明され、治療法も見つかってきている。しかし、治らない病気、治せない病気も数多く、多くの人々が病気を治せずに死んでいという状況には変わりはない。癌は、治療法がかなり進んできたもの、いまだに克服されていない。その他、難治の疾患を数えたら、きりがない。

 1990年を境に、日本経済が没落し始めて、経済的限界から、社会保険医療のレベルが後退し始めた。一方、医学の進歩は続き、各種の病気の解明、治療法の開発が進んだ。これらの成果は経済的制約から、社会保険医療に取り入れられなかったものも、数多い。必然、社会保険医療の枠と最善の医療の限界が乖離し始めて、今は大きく隔たってしまっている。病気を治し、患者を救うという医師の使命を達成するためには、社会保険医療制度が障害となるケースが増えてきたのである。

 つまり、医療の使命を達成するためには、人の世の法令順守だけでよいというわけにはいかなくなってきたのである。自然界には、人の世の作る法とは、別の法、すなわち、自然のさまざまな法則がある。自然界の法に逆らえば、人は健康を損ない、命を落とす。そのため、医師は使命達成のため、自然の法を学び、研究する。国の法令や規則が、自然の法と対立するとき、医師は苦悩せざるを得ない。

 

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2008/02/14   HIFUの合併症、尿道直腸漏を大腸内視鏡で縫合閉鎖

 

 昨年の11月末に、他院でHIFUを行い、遅発性の尿道直腸漏になった患者さんについて、同僚の鈴木誠先生から相談された。「人工肛門にして外科的に縫合を勧めているのだが、人工肛門はどうしても嫌だといっている。どうしたらいいだろう?」「1996年から何例も大腸壁を内視鏡で縫合している。一度みせてくれないか、縫合できるかどうか検討してよう。」ということで、患者さんがやってきた。左図のごとく、すぽんと孔が開いていた。

いつものとおり、内視鏡で縫い合わせて(成功する縫い方にはこつがある)、便が尿道口から出るのは治った。右図は、縫ってから、23日目の画像である。その後、今日まで78日経過したが、経過良好である。

 

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2008/02/08   第4回消化管学会2日目   「5mm以下の大腸ポリープの臨床病理学的検討からみた小さな大腸ポリープを放置する危険性」を発表。(5mm以下のポリープを取るなという社会保険組合の要求は不当だった)

 近年、効率性を求める医療サイドと 医療費を抑制したい保険組合の事情から、 5mm以下のポリープを無視・放置している医療機関も少なくない。しかし、大腸ポリープ(大腸腫瘍)はそもそも前癌性病変であり、5mm以下の癌も確実に存在する。そこで、5mm以下のポリープを放置する臨床的リスクを検討したわけである。

 自検例、約3万6千例の大腸内視鏡検査で、発見されて病理検査された、5mm以下の大腸ポリープは、約3万3千病変、癌や高度異型腺腫、カルチノイドといった絶対的切除適応病変は、内視鏡検査120回に1個。 陥凹型腺腫は、15回に1個。低異型度で非陥凹型の相対的切除適応病変は、6回に5個出現していた。

 5mm以下のポリープを無視・放置すると、年間2400例ぐらいの大腸内視鏡を行っている施設では、少なくとも約20病変の癌が放置・見逃されることになる。腺腫の癌化を考慮に入れれば、5mm以下のポリープを無視・放置するリスクは、さらに大きくなる。したがって、5mm以下のポリープを放置・無視するという臨床的姿勢は、推奨できない。

 

 発表の後の質疑討論で、がんセンターの先生から、クリーンコロンについての考え方についての質問があった。つまり、「どのくらいの見落としがあるか?」という質問である。「文献によると大腸腫瘍の見落とし率は10%−20%といわれている。私自身のデータは10%。半年以内に2回大腸内視鏡を行い、20分以上かけて観察を行い、見つかったすべての腫瘍を取ったとき、クリーンコロンと考えている。」と回答。

 

 さらに、「前任の佐野寧先生のデータでは、30%近くが平坦陥凹型であったが、先生のデータでは陥凹型がなぜ、6.7%(1/15)なのか?」と重ねて質問。「6.7%には、平坦型は含まれていない。純粋な陥凹型に限ったことと、6.7%には癌と高度異型度腺腫が含まれていないからだ。」と説明。

 

 また、座長が、「全部の病変を、拡大観察しているのか?」と質問。「近接型拡大内視鏡(EC7CM2など)を用いていたころは、すべて、拡大観察していたが、ズーム型内視鏡拡大内視鏡(現在はEC590zw)になって、一見、腫瘍か否かわかりにくいものに限って、拡大観察をしている。今は約30%ぐらい。」と回答。

 

 フロアから、「ピットパターン診断などを行い、本当に危ない大腸腫瘍だけを選んで取るべきではないか?」というちょっと的外れの意見があった。[この発表は、どこに、取る取らないかの境界を置くかについての判断のために基礎的なデータを示したものである。つまり 、今回の発表は、5mm以下のポリープをすべてとらないという選択をしたときのリスクを示したものである。異型度の低い5mm以下の大腸腫瘍を放置するリスクについての議論をしたわけではない。」

 

 ちなみに、私は、1994年ごろの研究(胃と腸に発表)で、「大腸腺腫を放置すれば、一定の割合で消失するものあるが、約1.3%が1年後に大腸癌になり、癌化すると月に約1mm大きくなり、平坦陥凹型で、平均7.5mmで、隆起型では平均12.5mmで粘膜下層に浸潤する。」という結論に達している。

 

 日本経済が傾いた1996年ごろ、私は、社会保険組合から呼び出されて、「社会保険組合の財政が悪化しているので、5mm以下のポリープを取らないでくれ」という要請された 。驚いた読者諸氏も多いことであろうが、事実である。それが、今回の発表の動機である。

 

 ここに示すように、5mm以下にも癌や高度異型腺腫のような、すぐに命をとるような病変が比較的高率に存在し、また、5mm以下の大腸腫瘍を取る容易さは、病変を見つける手間や難しさに及ばないので、見つけ次第、すべて取るという姿勢を私は貫いた。社会保険組合に嫌われたのは、言うまでもない。合計5000名ほど、組合経由で送られてきていた患者さんは、途切れた。

 

 「丁寧に無痛内視鏡を行い、ポリープをすべて取ってくれる名医」という評価を剥がされて、かわりに、「お金のためにポリープをあさる、ひどい医者」というレッテルが貼られて、社会的攻撃が始まったのである。

 

 当時(今もそうだが)、ポリープは3箇所以上は、何個とっても、社会保険診療報酬の値段は変わらない。私は、一例に平均40-50分かけて、平均6−7個の病変を切除していたのである。お金が目的なら、10分で3個だけとるという診療を行い、もっと症例数を稼いでいたことであろう。

 

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2008/02/07   第4回消化管学会 大阪中乃島大阪グランキューブで開催   

 

  午前中は、「内視鏡特殊光観察の光と影ー色素内視鏡を越えられるか?」に参加。

 FICEとNBIが色素内視鏡よりも優れている点は、毛細血管が簡単に見える点である。微小食道癌・喉頭癌の存在診断では既に十分な臨床的成果を挙げている。そこで、大腸や胃ではどうか ?という企画なのだ。

 

 大腸腫瘍ではピットパターン診断の研究が、ずいぶんと進んでいる。毛細血管観察によるFICEやNBIの上乗せ診断効果はわずかなようだ。潰瘍性大腸炎に 発生する(COLITIC CANCER)癌の存在診断についても、FICE、NBI、AFIともに大きな成果は未だない。

 

 胃癌では、胃小溝や胃腺口の消失や、縮れたような不整な微細血管の出現が、癌特有の所見である。しかし、 新潟の八木一芳先生によると、癌が粘膜表面に顔を出しているときは、高い診断能を得られるが、癌が粘膜中層を這うように広がるときは、診断能は低くなってしまうそうだ。座長の八尾隆史先生は、「生検による組織検査は、 やはり、欠かせない。」とコメントしていた。未分化型の胃癌の広がりを正確に診断するのは、難しいのである。

 

 消化管内視鏡の最大の目標は、癌の有無を確認することと、癌の広がりを把握すること、癌を取り去ることである。これらが短時間に容易にできる、さらなる新しい技術の開発が要求されている。獨協医大中村哲也先生の発表、「増感因子を用いたレーザー光による診断と治療(PDD、PDT)の胃癌への応用の試み」は、その答えのひとつかもしれない。

 

 昼は、島根の木下芳一教授の「メタボリックシンドローム時代の上部消化管疾患に迫る」に参加。要は、胃酸分泌亢進の時代的背景と逆流性食道炎、機能性ディスペプシアとの関係といったところのお話だったのであるが、島根医大における20年前と5年前と今の患者の数と、年齢構成の違いについての話が面白かった。

 

 島根は、いまや3人に1人は、60歳以上の老人先進県。病院の経営のために、患者数と年齢構成を調べてみたら、80才代、70才台、60才台の患者数が純増して、20年前の2.5倍の患者がいるとのこと。しかし、医師の数は20年と同じ。 「昔の教授がうらやましい。」と。

 その話を京都大学の千葉勉教授にしたら、「それは田舎島根の特殊事情じゃないか?」といわれて、「京都でも調べてみたら」と言い返し、2人で調べてみたら、京都大学も事情は同じだったそうで、京都のことを、「 都会と思っている田舎」と、コメント。さらに、彼らの出身大学のある神戸の中核病院をさらに、調べてみたら、なんと、神戸も同じ事情だったそうである。 「田舎と思われていない田舎」・・・・。

 

 夜の懇親会で、その病院の消化器科部長と歓談。「年度末に、常勤が2人やめて、補充が見つかりません。朝の9時から夜の9時まで外来をして、くたくたです。「癌中核病院」として指名されて、50km先からでも患者が押し寄せてきて、とても、もう医療レベルが維持できません。もう、崩壊です。」 医局をつぶし、研修医の5時帰宅を推奨し、使命感をもって臨床を続けている医師 たちに、報いなかった(むしろ、いじめ続けた)政策のつけが、爆発しはじめている。文部省と厚生労働省、この政策立案に関った官僚は、医師を大切にしなかった間違いを素直に反省すべきだろう。

 医局をつぶせば、地域病院の医療レベルが下がり、研修医を5時に帰宅させれば、臨床能力の育成が遅れ、診療報酬を下げれば、病院がつぶれ、医師がパンクすることがわからなかった人たちには、医療行政を司る資格はない だろう。

 

 発見伝茶屋での2次会で、癌研の武藤徹一郎院長と話。先生、酔った勢いで曰く、「 一度、(医療界は)つぶれるしかないな、つぶれないと、わからないんだよ」「それでは、患者も医者もみんな困りますよ、先生、何とかしてください。彼ら(官僚)に一言、言ってくださいよ。」「うるさいと遠ざけられるんだ。」「ところで、先生、今の医学生に何か言いたいことありますか?東大の講義で伝えますよ」「そうだな、「使命感を持ち、大望を抱け」 ということかな。」「わかりました。」・・・・(使命感を持って、医療を続ける人が、いじめられる姿を、目の当たりにしていては、いくら使命感を持てといっても、空々しい思いに駆られるのは学生ばかりではあるまい。)

 

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2008/01/31   医師の任務とは?  

  医師の仕事とはなにか?患者の病気を治して健康にすることだと思って、24年間医師を行ってきた。あまりにも、当たり前だと思っていたので、特に、何の疑問も持たず、何も調べずに過ごしてきた。ところが、ある事件がおこり、今、医師とはなにか、改めて、深く考えさせられている。

 医師法第一条によれば、医師の任務「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。」・・・・・。患者の病気を治すとは書いていないが、医療・保健・健康な生活の確保という言葉の中に、その意が含まれていると考えられる。やっぱり、私の考えは間違っていない・・・。

 この20年間、とくに、後半の10年は、強い医療費抑制政策が取られてきた。10年前には年間40兆円と予想された医療費が、今は28兆円だ。高齢化、経済の地盤沈下といった社会状況の中で、医療費抑制政策は、理解できる。しかし、社会保険医療現場の状況は、合理化のレベルを超えて、医療そのものの抑制という状況だ。

 この時代のコンテキストのなかで、医師として行うべきこととは何なんだろうか・・・・?

 

 2005年日本で消費された原油は、ほぼ100%海外、主に中東諸国(サウジアラビアとアラブ首長国連邦)に依存している。原油の輸入量は約2.5億キロリットル。一人当たりの原油一日消費量、5.3リットル。原油価格一バレル100ドル(1リットル0.63ドル=67円、1ドル106円)として、353円。結構使っている。しかし、それでもアメリカの約2.5分の1。中国の8倍。年間の輸入総代金16.7兆円。この8掛けとして、13.4兆円。医療費の50〜60%である。

 

 抑制された医療費は、中東諸国へと向かった?

 

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2008/01/16   テレ朝、報道ステーションに録画出演。美智子皇后様、軽いめまいと軽い下血との宮内庁報道に解説を求められる。 

  水曜日は、クリニックの定休日で、のんびりと書類の片づけをしていたところ、夕方、突然、テレ朝から、電話がかかってきた。「美智子皇后陛下におかれては、軽いめまいと軽い下血があって、すこし休養が必要かもしれない云々。」というコメントが、宮内庁から発表されたという。

 それに対して、一般的な解説をして欲しいとのこと。あくまでも一般論ならと、受諾。電話があってから3時間後、夜7時に、撮影隊がやってきた。「下血により、貧血になり、めまいが来ているようであれば、心配」「昨年3月にも、下血があったが、今回との関係はなにかあるでしょうか?」「冷えると悪くなる病気もあります。」などとコメント。

 70歳を過ぎてもなお、分刻みのお仕事とは、並の人間にはできない芸当である。おからだを大切にと祈るばかりだ。

 

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2008/01/05   第6回芳医会に出席。 

 今年の正月休みは、15年前に引越しして以来、片付けていなかった、書斎と倉庫に手をつけた。それが間違いで悲惨な正月となった。15年の塵と埃は、大変で、ようやく、整い始めたものの、いまだに片付いていない。片付けるという発想には、過去との決別の覚悟が含まれるものだが、そもそも、その覚悟なしに片付けているので、片付けるというより、発掘といった風情で、遅々として進まないのだ。

 さて、片付けの合間に、1月5日には岡山で開かれた、第6回芳医会に出席。岡山へ行く飛行機から、富士山を撮影。よく飛行機には乗るが、富士山は3−4回に一回しかお目にかかれない。この日は、晴れていて、強風。飛行機は上空の強い西風をさけて、普段より低空(約4500m)ぐらいを飛行。山頂の様子がよく見えた。富士山を北側から見た絵だが、富士の山頂は、頂上の火口の西側にあることや、山小屋の様子がはっきりとわかった。内視鏡でもそうだが、拡大観察は診断に重要なのである。

 

 2008年1月5日午後1時過ぎごろの富士山頂の様子。北側から撮影。原画は、この約4倍の画素数で、山頂の具合がもっとくっきり見える。

 芳医会の今回のテーマは、心療内科。講師は、岡山大学総合患者支援センター副センター長、岡田宏基先生。テーマは、「心身医学の考え方
と心身疾患への対応の仕方」であった。心療内科が、昔と違うことは、喘息患者が減って、うつ病患者が増えたこと。神経症性食欲不振症は、相変わらず、ことだった。過敏性腸症候群については、「神経症としての治療にあまり反応しない。治しにくい。」とコメントされていた。

 私は20年来大腸の診療をしてきたが、本当に治療に難渋した、過敏性腸症候群は、2例ぐらいである。過敏性大腸、過敏性大腸症候群といわれているものの多くは、大腸内視鏡で詳しく観察し診察すると、リンパ濾胞性大腸炎や、小腸炎、アフタ性大腸炎、腹膜癒着症、過長結腸症、MPS、憩室症など、何らかの器質的診断のつくものが結構多いのである。それらは、軽い所見や気づきにくい所見であるため、多くは見逃されて、方向違いの治療を受けているのであろう。

 岡山の生家の庭には、梅やあくら、こうやまき、ばべ、くちなし、せんりょう、さるすべり、まつ、さつき、ざくろ、などなどのさまざまな庭木があるが、今年は、「なんてん」がひときわ、鮮やかであった。

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2008/01/01   あけましておめでとうございます。

  ホームページ読者の皆さんあけましておめでとうございます。新年にあたり、皆様の健康と、ますますの発展をお祈り申し上げます。

さて、今年は子年です。鼠はかつて1350年ごろ、ヨーロッパに大変な災害をもたらしました。ペスト(黒死病)の流行です。当時の人口の4人に一人、約2500万人が死にました。現代では、鼠は実験動物として、医学を通じて、人間界におおいに貢献しています。

 

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2007/12/26 フジテレビ、ハピふる「コレって私だけコーナー」に出演、「大食い」についてコメント 

  本日、午前中、お台場のフジテレビV6スタジオで、ハピふる「コレって私だけコーナー」に出演した。テーマは「大食い」。「大食い」は危険だというテーマで番組制作を進めていたが、私が土曜日に指摘した危険のうち、「膵炎」が意外だったようで、12/22に行った録画だけでなく、結局、出演も依頼されることになった。

 出演者は、メイン司会が、高樹沙耶さん、サブ司会が野島卓(フジテレビアナウンサー)さんと石本沙織(フジテレビアナウンサー)さん。水曜日ゲストがタレントの磯野貴理さん、一日ゲストが近藤典子さんと私、田淵正文。水曜日の企画プレゼンターが武田祐子(フジテレビアナウンサー)で、アシスタントはタレントの武田航平さんであった。10時のティータイムに集まったマダムたちの疑問に、ゲストのお医者さんがお答えするといった風情の番組であった。

 最初に、4kgのカレーライスを30分でぺろりと平らげる、女性のビデオが流されて、私は、びっくり。そして、彼女は、まだもう一杯食べられると発言。そんなに食べるのであるなら、太っていると思いがちであるが、彼女は150cm35kgという異常にスリムな体である。

 なぜそんなに食べて満腹にならないか?そして、そんなに食べるのにどうして太らないのか?と尋ねられた。満腹になる仕組みを簡単に説明した。視床下部にある満腹中枢を刺激するのは、血糖値の上昇、胃の伸展などである。彼女の胃が異常に大きくて、なかなか伸展しないのではないか、また、彼女は消化吸収機構にいろいろ問題があって、実は小腸が栄養を十分に吸収しないのではないか、そのため、血糖値が上昇せず、満腹にもならないし、太りもしないのではないか、と推測を述べた。

 次に、大食いで起こる「からだの異常」についての話になった。実際はいろいろあるのだが、話題はシナリオどおり、膵臓へと向かう。大食いでは、膵臓が hyper-function になり、さらに over-function から、膵臓が傷む。その様子を、磯野真理さんと武田航平さんが、レゴを分解するコントで演じてみせた。医学的には、「毛細血管の中性脂肪が、漏れ出してきた膵液中のリパーゼで分解されて、油滴となり、毛細血管が閉塞して、油滴梗塞を起こし、膵臓が溶ける。」と説明したのであるが、素人さんには、わかりにくいので、コントにしたわけだ。番組制作会社NEXTEPのスタッフの面々の知恵には恐れ入るばかりだ。

 事前の打ち合わせで、武田祐子さんはじめ、番組制作のスタッフが強く興味を持ったのは、実は、社会保険医療の範囲では、慢性膵炎につける薬がないことであった。確かに、商品名フォイパンや商品名カモステート(どちらも化学物質名はメシル酸カモスタット)という「慢性膵炎の急性増悪時に2週間投与に限ってだけ認められている薬があるのだが、実質的には、審査で全額査定されるために、ほとんどの医療機関では投与を差し控えているのが東京都の実情実態である。

 つい最近も、この薬を飲まないとおなかの調子の悪くなる人が、女子医大で処方してもらえないといって、自由診療の私のクリニックに来院していた。その人いわく、「女子医大の外来に、張り出されている処方注意薬のリストに、この薬の名前が出ていました。コレが欲しいといったのに、先生は出せないの一点張りでした。」

 番組の中で、武田祐子さんがそのことについて触れようとする。「会社の検診では、膵臓はどのようにチェックされているのですか?」「あまり詳しくやっていません。」「どうして膵臓をあまり調べないことになっているのですか?」「・・・(しばし沈黙)・・・・・軽い膵炎は食べないと治っていくからで、放置しているのです。」 

 沈黙の中で、心のなかで答えた言葉は 「社会保険医療では、慢性膵臓炎に出す薬がないので、保険医療機関では、その診断を嫌がるのです。」。その言葉を飲み込んだ理由は、番組の雰囲気に合わないと判断したからである。保険医療問題は、奥が深く、暗い問題なので、明るく楽しい「ハピふる」にはそぐわないだろう。「大食い」というのは、わんこそば食い競争が示すように、いわゆるひとつの「コケチッシュ」なレクレーション、文化であるからだ。

 慢性胃炎や慢性小腸炎、大腸ポリープなどにも、同様の問題があり、一度、正面きって、社会保険医療の問題点を番組として取り上げてもらいたいものである。 

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2007/12/24  薬害肝炎、議員立法で一律救済へ福田総裁が決断。これまでの行政府・官僚の責任は問われるのだろうか? 

 薬害肝炎、議員立法で一律救済 福田首相が決断


 
福田康夫首相は23日、薬害肝炎訴訟をめぐり、全員一律救済に向けた議員立法によって解決を目指す方針を表明した。官邸で記者団の取材に応じて明らかにした。福田首相は、「患者を全員一律で救済する議員立法を自民党との相談の結果、決めた。公明党の了解も得た」と述べた。一律救済は、肝炎訴訟の和解協議の中で原告団が求めていたが、国が難色を示していた。首相の決断で、難航していた肝炎問題は解決に向けて大きく展開する可能性が出てきた。

12月23日12時4分配信 産経新
 

 全員一律救済を求める患者側と、全員一律救済に難色を示す厚生官僚と、司法上でなかなか和解できない問題を、立法府で解決しようという筋道である。 議員立法は、両者の板ばさみになって、自らの政治人気を落とした福田内閣の知恵といえる。一律救済の中身が、明瞭でないが、確かにこの枠組みであれば、厚生官僚たちは歓迎するであろう。

 

 今回の事件において、厚生官僚たちが、何を恐れているかというと、まず一番目には、自分たちの処罰である。

 

 今回の事件はそもそも当時の官僚の怠慢による ことが明解なので、政府が損害賠償をすることになるのだ。従来の枠組みは、行政訴訟であるから、官僚の責任が直接的に問われていた。しかし、新たな法律の制定となると、その法律では当時の官僚に責任はない。

 したがって、今回の立法府の政治決断で、これまでの怠慢が看過されるのは、彼らにとって好都合である。官僚が国民に損害を与えた事実が、政治決断により、かすんで忘れ去られたなら、官僚の無謬神話が守られて、処罰も受けないからである。実際には 、彼らが新しい法律の条文も作るので、今回の福田首相の政治決断は大歓迎であろう。

 

 次に、彼らが恐れていることは、「パンドラの箱」に焦点が当たることである。

 

 実は、C型肝炎感染者は、日本に何百万人もいる。そのかなりの割合が、輸血によるものである。輸血したあとに肝炎を発症すること(血清肝炎)は、よく知られた事実であった。それでも、医療行為として輸血をしていたのは、手術などにおける目の前の危険が、血清肝炎の危険を凌駕するからであった。しかし、 厚生官僚が認可した輸血製剤でC型肝炎が全国に蔓延したことも、また真実であり、この隠れた問題から世間の注目をそらしたいのである。

 血液から取り出したフィブリノーゲン製剤だけに責任があって、血液本体の輸血製剤に責任がないというのもちょっと奇妙な話である。彼らは優秀で賢いので、もちろんこの問題には気づいてい る。つまり、今回の事件の解決が、投与時期によらず、「一律、全員」となれば、輸血により感染した100万人単位のC型肝炎も、理屈上、すべて、損害補償しなければならなくなるのだ。省内では、この問題を「パンドラの箱」と呼んでいるらしい。官僚たちが恐れている2番目は、この「パンドラの箱」を開けるということなのである。

 

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2007/12/24   認可製剤によるC型肝炎の感染に苦しんでいるのは、今回事件となったフィブリノーゲン製剤だけでない。わが国のC型肝炎は政府が認めた輸血により広まった。「全員一律救済」はという用語は、より大きな責任追及の意味をもつ。

 

 慢性肝炎は、20年ないし30年前、すべての県ではないが、多くの都道府県で、社会保険治療費の自己負担分が、都道府県により肩代わりされていた。いわゆる、特定疾患医療費補助、難病指定であった。それは、C型肝炎が輸血により広まったという負い目が行政側にあったからだ。しかし、都道府県の財政の悪化に伴い、慢性肝炎は医療費補助の対象からはずされていった。最後まで残ったのが、東京都であったが、1990年代に、打ち切られたと記憶している。

 

 現在、年間3万5000から4万人が、原発性肝臓癌で死亡している。それらの97%以上はC型肝炎・B型肝炎ウィルスの感染によるものである。これらウィルスによる慢性肝炎のウィルス除去の治療成績は、近年、大幅に進歩してきている。しかし、治療費の自己負担分の高さ(月約6−7万円が半年から1年続く)により、地方では、進歩した治療を受けられない患者も出てきている。ウィルスの広まった経緯を考えれば、政治決断にて、ウィルス性肝炎の治療費の公的補助を復活させるべきであろう。

 

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2007/12/22  大食いの危険性について フジテレビの取材を受ける。 12月26日放送予定。 

 12月20日(木)、本年10月1日からスタートしたフジテレビ系列の新番組「ハピふる!」から、取材の申込があった。


「最近、大食いタレントの影響などで、“大食い”が注目されています。ただし、大食いというのは、生活習慣病、肥満・・・などなど、さまざまな危険とも、隣り合わせであると思います。私ども「ハピふる」ではそういった“大食い”の危険性を視聴者のかたがたに促すことができればと思い、今回、水曜日の「これって、私だけ?!」のコーナーで「大食いの危険性」を取り上げることにしました。ついては、先生にご協力いただきたく・・・云々」といった内容であった。

 
つまり、“大食いの危険性”について、コメントが欲しいとのこと。


 
そもそも、日本人は、わんこそばの早食い・大食い競争の例を挙げるまでもなく、早食い・大食い競争が好きな民族である。12月26日オンエア予定ということで、ずいぶん、急いでいたのか、申し込みの翌日、金曜日の夜に、番組制作会社の面々が、インタビューのフジテレビのアナウンサー武田祐子さんを連れてやってきた。武田さんはテレビで受ける印象よりも小柄で華奢な感じであった。

Q1. どのような状態で大食いといえますか?

A1. 一般的に、まわりの人よりたくさん食べれば、「大食い」といわれます。まわりの人の1.5倍ぐらい以上食べると「大食い」といわれているような印象がありますが、医学的に「大食い」は明確には定義されていません。しかし、それでは、お答えになりませんので、敢えて、私なりに考えてみました。

 ひとつは、カロリー面からのものです。人の平均一日摂取カロリー量(Kcal)は体重(kg)の25から30倍といわれています。25は坐業の人、30は肉体労働の人です。たとえば、体重60kgの人なら、1500から1800Kcalとなります。その1.5倍以上食べれば、その人にとっての大食いといえるのではないでしょうか。つまり、60kgの人なら、2300から2700kcal以上で「大食い」といえるのではないかと思います。


 もうひとつは、胃の容積から考える基準です。日本人の標準的な胃の容積は、約1.5リットルです。ですから、それより多い容量を一気に食べると、「大食い」といえるかもしれませんね。

Q2.「大食い」をすべきではないのは、どのような人ですか?

A2.医学的に大食いを避けなければならない人は、1.膵臓の弱い人、2.消化管に潰瘍のある人、3.手術後などで腹膜癒着のある人、4.肥満の人、5.糖尿病の人などです。

Q3.「大食い」には、どのような弊害が出てきますか?

A3.

1.膵臓の弱い人は、膵臓炎になり、食後、上腹部が重く痛むようになります。それでも大食いを続けると、さらに、膵臓炎が悪化して、始終、腹痛があるようになります。腹痛だけでなく、背部痛が出る場合もあります。とくに、恐いのは、急性膵臓炎です。3−4日で急死することもあります。あの徳川家康も、「てんぷら」をたらふく食べて、急性膵炎で死んだと伝えられています。
2.消化管に潰瘍のある人は、消化管が膨らむことにより、急に消化管が破れて腹膜炎をおこして、激しい腹痛と発熱に襲われたり、また、潰瘍から出血して、急に吐血や下血をするなど、命に係わる緊急事態が起こりやすくなりますので、要注意です。
3.手術後などで腹膜癒着している人が、「大食い」すると、癒着で腸が細くなっているところに、食べ物が詰まって、通過不全状態になります。これを医学的には「イレウス」と呼びます。イレウスになりますと、腸が捻転したり、腐ったりして、大変な痛みになり、腐ったところから、毒素が出たり、血液の中にばい菌が入ったりして、一気に死亡することもあるため、緊急開腹手術が必要になります。
4.大食いが続けば、カロリーオーバーとなり、肥満や糖尿病になります。肥満は、心筋梗塞、脳梗塞、などなど、恐い病気にかかりやすくなります。

5.糖尿病はひどくなると、網膜の血管が壊れて目が見えなくなったり、腎臓が悪くなって透析しなければならなくなったり、手足に痺れが来たりします。また、勃起不全がおこったり、不感症になったりして、性生活にも大きな支障をきたす場合もあります。

 さらに、注意しなければならないは、「大食い」が、病気の症状として現れることです。心因性食欲不振症では、食欲不振というものの、時に大食いします。この場合、大食いした後、自ら、嘔吐を促して、食べたものを吐くといった異常行動をとる場合があります。この病気は、やせていることにあこがれることがきっかけでなるといわれています。脳幹でのホルモン異常がおこり、精神にも安定が失われて、回復不能となり、死亡することもあります。カーペンターズのカレンが32歳の若さで、死んだのはこの病気が原因でした。我々おじさん世代では、有名な話です。

Q4.「大食い」のメカニズムを教えてください。

A4.食べ物は、胃に蓄えられて、少しずつ、小腸に流れていきます。普通、胃に蓄えられている時間は平均2時間です。食べ物は小腸に入ると蠕動で下に流れていきます。胃の容積は1.5リットルぐらいですから、たくさん食べるためには、胃から小腸への流れと小腸の下への蠕動運動が速くて強いことが要求されます。胃と小腸の間に関所は、幽門というところで、ここが大きく開いていると、食べ物が流れやすいとされています。

Q5.他局の番組になるのですが、大食いタレントの大食い時のCTを取って、胃が極端に拡張していたようですが、胃が大きくなることもあるのでしょうか?

A5.生まれつき、大きな人もいるでしょうし、大食習慣から胃が大きくなる場合も考えられます。また、特殊な結合組織を持っているため、胃が極端に拡張できる可能性も考えられます。胃の容積が大きければ、腸への流れが悪くても結構たくさん食べられるでしょうね。

 ところで、腹いっぱい食べて、もう要らないという食欲の抑制は、視床下部にある満腹中枢の刺激によって起こります。満腹中枢は胃壁が機械的に伸展されたり、血糖値が上がったり、脂肪細胞に脂肪吸収されると出てくるレプチンという物質などで刺激されます。 この満腹中枢が、さまざまな原因で障害を受けると、満腹しなくなり、いつまでの食欲が残り、「大食い」となります。

Q6.やせの「大食い」が多い理由は?

A6.やせているほうが、おなかが膨らむ余地が多いので、多く食べやすい。また、やせていると、脂肪細胞が少なく、そのため、脂肪細胞から出てくる食欲を抑える物質(たとえばレプチンなど)も少なくなる。以上のような事情で、やせの「大食い」が多くなるのではないかと思います。 

 
などなどと、打ち合わせを含めて、撮影は約2時間に及んだ。ダイレクターの近藤隆さんは、結構、下調べをしていて、胃下垂、褐色脂肪細胞、逆流性食道炎、などと、「大食い」の関係も尋ねてきた。 しかし、放映時間は、長くても1分であろう。今頃、ディレクターの筋書きにあった形で、必要な部分だけが、取れだされて編集されているはずである。どんな風に編集してくるのか、興味深いところだ。

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2007/12/14  薬害C型肝炎事件と責任の所在 製薬会社か厚生省か医療機関か? 緊急医薬品情報の実態 

 薬害肝炎、骨子案もとに和解を…首相が厚労相らに対応指示(2007年12月14日13時11分 読売新聞)


 福田首相は14日午前の閣議後、舛添厚生労働相、町村官房長官と国会内で会談し、薬害C型肝炎集団訴訟で大阪高裁が示した和解骨子案への対応について、「厚労相が中心になって関係省庁と連携をとり、しっかり指導力を発揮してまとめてほしい」と指示した。 舛添厚労相は、閣議後の記者会見で「大阪高裁の案を踏まえたうえで、矛盾しない形であらゆる可能性を探っていきたい」と述べ、骨子案をベースに和解にこぎ着けたい意向を示した。
 原告・弁護団などによると、和解骨子案は、3月の東京地裁判決が国や製薬会社の責任を認めた範囲を補償対象としており、血液製剤「フィブリノゲン」は1985年8月〜88年6月、第9因子製剤は84年1月以降の投与患者に当たる。補償の内容は、肝硬変・肝がんの人には4000万円、慢性肝炎には2000万円、未発症者には1200万円を支払うというもの。 範囲外の人でも、和解成立までに提訴した場合は「訴訟遂行費」(一括して8億円)を被告側が支払うが、範囲外の未提訴者は、この対象とならない。
 原告側は、こうした枠組みは被害者を線引きするものとして拒否し、司法の判断を超え、被害者全員の一律救済を実現する政治決断を福田首相に求めている。
 町村長官は、記者会見で、骨子案を基本として譲歩の余地を検討する姿勢を示した上で、「政治決断は何でもできるということではない」とも語り、原告が求める一律救済は困難だという考えもにじませた。

 

 1988年6月に、問題をおこしたフィブリノゲン製剤の緊急医薬品情報を出して、製剤の危険を訴えたので、それ以後の感染については、製薬会社や国に責任がないという考えである。そうすると、その後は、危険情報があるにもかかわらず、漫然と薬を使用し続けた医療機関と患者に責任があるということなのであろうか?

 今、緊急医薬品情報は、郵送や製薬会社のMR、薬の卸問屋などによって、運ばれてくる。郵送といっても一般郵便である。薬の回収まで行う場合もあるが、そうでない場合もある。この件の場合、緊急医薬品情報の配布はどのように行われたのであろうか?1988年6月以降に起こった感染事件例の責任の所在を考える上で大切なポイントだと思う。

 

 病気の苦しみや二次的な社会的被害は、その内容を語ることはできても、お金に換算するのはなかなか難しい。

 肝臓がんと肝硬変の値段が同じというのは、少し奇妙な気もする。肝硬変にもいろいろグレードがある。日常生活が普通にできる状態から、寝たきりまである。それでも、同じ金額というのはちょっと理屈に合わないだろう。

 

 原告側のいう「被害者全員の一律救済」とは、どういう内容なのであろうか?訴訟の文面に記載されているはずであるから、報道してほしいところである。

 

 薬害HIV、薬害C型肝炎、1980年代のミドリ十字の血液製剤は、厚生省の鬼門となった。当時の担当官たちの油断が、多くの人の幸せと命を奪ってしまった。医療は自然との闘いである。国会が定めた法律や政府官僚の通達を超えて、医療には「自然界の法則」が存在することを、忘れてはならない。

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2007/12/13  「医師不足対策として、看護師に薬の処方を認める」という規制改革審議会の答申は間違っている!

 看護師・助産師の業務拡大=規制改革会議の第2次答申案
 
政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)がまとめた第2次答申案の全容が13日、明らかになった。答申案は「生活に身近な分野に焦点を当てた」とし、看護師や助産師が行える業務範囲の拡大や保育所の改革などを盛り込んだ。今月下旬に福田康夫首相に提出する。これを踏まえ、政府は2008年3月に規制改革の3カ年計画を策定する。
 答申案は、医療分野では医師不足解消が最重要課題と指摘。医師の過重負担の軽減策として、現在認められていない看護師による簡単な検査と薬の処方や、助産師による会陰切開などを解禁するとした。また、地方の医師不足を補うため、現在医療機関に限定されている医師の派遣業務を一般の派遣業者にも認めることを検討する。

12月13日17時1分配信 時事通信

 看護師は、処方ができるほど、生理学、薬理学、病理学、解剖学、内科学、外科学、その他、処方を支える基礎的な化学的知識などなどを勉強していないので、看護師が薬の処方をするのを認めるというのは、大変危険なことである。医師の過重負担の原因は、厚生労働省が無理に推し進める医療のIT化にある。医師がカルテや診断コードなどのデータ入力に忙殺されているのである。したがって、医師の過重負担を軽減する策として、もっとも有効なのは、医師一人ひとりに、事務員を付けることである。日本郵船の会長といえども、医療現場を知らず、恥ずかしい答申をまとめたものである。
 

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2007/12/08  大腸内視鏡挿入困難例に対する対策。ダブルバルーン大腸内視鏡は役立つか? 

 小腸内視鏡として開発されたダブルバルーン内視鏡は、挿入困難な大腸にも応用できる。そこで、FTS(フジノン東芝システム)から、大腸用のダブルバルーンが開発されている。今週は、その試作機(EC450B15)を借りる機会を得たので、毎年、挿入の難しい症例2例を呼び出して、試してみた。また、たまたま、診察に来た、大腸内視鏡の草分け的名手、新谷弘美先生が、挿入できなかった症例にも、使用してみた。

 

 大腸内視鏡が盲腸、終末回腸まで挿入される率というのは、内視鏡医の技術を評価するひとつの目安である。私の評価基準は95%の挿入率で、初心者終了。98%の挿入率で、並みの大腸内視鏡医、99%で上手な大腸内視鏡医、99.75%で、大腸内視鏡の準名人クラス。99.9%で、大腸内視鏡の名人クラスと考えている。ちなみに、私の最近の挿入率は99.83%ぐらいである。

 

 大腸内視鏡挿入困難な症例は、昔(現在の80〜90歳代)は、結核による腹膜癒着症例が多かったが、最近(現在の60〜70歳代)は、大概、手術後の癒着による、腸管の不都合な癒着によるものである。その他には、腸管回転異常による、先天性奇形というのもある。

 

 今週集まった、大腸内視鏡挿入困難例は、すべて、術後の癒着症例である。胃癌による胃切除例が一例。この例は、横行結腸の中央部が周囲と強く癒着している。二例目は、3回開腹した症例で、s状結腸と横行結腸と盲腸が広い範囲で癒着している。また、新谷弘美先生が挿入できなかった第3の症例は、s状結腸が長い上に、胆嚢切除を行っていて、横行結腸の右半分と上行結腸が強く癒着していた症例である。

 

 1例目、通常の大腸内視鏡(EC590ZW5)を用いると、例年、ぎりぎり入ったり、入らなかったりであった。盲腸まで挿入されても、癒着のため、スコープが固定されて、観察がかなり障害されていた。この症例は、ダブルバルーン内視鏡を用いても、挿入はきわめて難しかったが、何とか挿入には成功した。観察は、ダブルバルーンのほうがうまくできた印象があった。

 

 また、第2例目は通常内視鏡でも、ほとんど、挿入できていたのだが、かなり時間がかかっていた症例である。ダブルバルーンで挑戦してみたところ、理屈どおりに、すいすいとは進まず。引いての直線化ができないので、結局、オーバーチューブをスライディングチューブのように使用して盲腸まで挿入成功。残念ながら、かなり時間を要した。

 

 最後の、新谷弘美先生挿入断念例であるが、まずは、通常のスコープでトライ。肝わん曲部での癒着が強力。一日多数例を行う忙しい新谷先生が断念したのも理解できた。そこで、件のダブルバルーン大腸内視鏡を使用。しかし、残念ながら、やはり、癒着が強力で、引いても直線化ぜず、腰が弱くてダブルバルーンでは挿入できなかった。

 

 そこで、腰の強いプッシュ式の小腸内視鏡EN410CWを取り出して、挿入を試みた。EN410cwは長い上に、先端周辺の腰が強く、アングル捜査の追随性が優れている。いわば、私の秘蔵の内視鏡である。この挿入困難例でも、アングル操作で、癒着部を見事に突破できた。ちなみに、この小腸内視鏡EN410cwは、FTS社がダブルバルーン小腸内視鏡を開発する前に、私のアドバイスで作成された内視鏡で、私にしか売れなかったようで、世界に一台だけらしい。

 

 大腸内視鏡挿入困難例3例中、2例に成功したものの、ダブルバルーンの操作は煩雑で、手にかかる力も強く、疲れるので、私は好きでない。また、画像も焦点が近接ではなくピットパターンが見えないので嫌いだ。ちなみにEN410CWはピットが見えます。洗練された挿入システムの開発の必要性を痛感した一週間であった。

 

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2007/11/25  大腸癌検診で便潜血反応が陽性になったら、すぐに、大腸内視鏡検査を受けましょう。

 昨日、遠方から、60歳代の患者さんが来院した。聞けば、2006年の春、市の便潜血反応検査で、2回のうち1回陽性になり、検査を進められるも、放置。さらに、今年2007年の春に再度、市の便潜血反応で、2回のうち2回とも陽性になるも、再度放置。しかし、次第に心配になり、かかりつけの内科の先生に勧められて、大腸内視鏡検査を覚悟。無痛で内視鏡をしてくれるところを探していて、当院に来た患者であった。大腸内視鏡検査の結果、S状結腸に進行大腸癌が見つかった。

 患者さんは、ありとあらゆるといいいてもいいくらい、多数のサプリメントを飲んでいる人で、健康には大変注意していたようである。「症状が出なくても癌ということがあるのですか?私はおなかも痛くないし、痩せても来ませんよ。それでも、癌なんですか?」と患者の弁。「癌で症状が出るのは、かなり病状が進んでからです。」と私が説明。患者さんは癌を告知されたショックと、病気や死への不安、また自分の不適切な対応を悔いて、うっすらと涙を浮かべて一言。「甘く見ていました・・・。」

 確かに、便潜血反応の陽性的中率は、3〜5%である。(便潜血反応が陽性となった場合、精密検査を受けて大腸癌が見つかる確率のこと)。 また、オッズ(陰性者に対して陽性者が癌にかかる割合)は3〜4倍程度しかないものではあるものの、やはり、大腸癌検診で便潜血反応が陽性になったら、すぐに、大腸内視鏡検査を、技術レベルの高い、しかるべき医療機関で受けるべきである。

 

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2007/11/08  「混合診療」を認めない国の政策は違法! 東京地裁 

      国は命を救う行為を邪魔しないで助けてほしい。

混合診療を認めない国の政策は違法。東京地検(定塚誠裁判長)「保険を適用するかどうかは個別の診療ごとに判断すべき」

 読売新聞、産経新聞、日経新聞、NHKが伝えるところによると、2007年11月08日に東京地裁で、「「混合診療」禁止している厚生労働省の政策は違法。」との判決があった。地裁レベルであり、行政側は控訴する方針と伝えられており、判決は確定したわけではない。「少しでも、生きながらえたい、できるだけいい治療をしたい!」という、がん患者の涙ながらの訴えに、裁判官が一般人の常識をもって答えたということである。中学同窓の山口二郎北海道大学教授が述べているように、また、東京地裁の判事も判決文の中で言うように、現行の法律の条文の中には、「混合診療」の文字は、一文字たりともないのである。(ただし、山口二郎さんは、「混合診療」反対の立場ではあるが・・・。)

 4年前、小泉行政改革の一環として、混合診療解禁について、議論があったとき、東京大学、京都大学、大阪大学の医学部の病院長が、3人揃って官邸に出向き、混合診療の解禁を求めたことがあった。その際、自民党、民主党、公明党、社民党、共産党すべての政党の厚生行政担当議員から、恫喝に近い言葉を浴びせられたそうである。「お金がない人間は死ねというのか!」と。

 でも、現実は皮肉なもので、この訴訟のように、混合診療を認めないために、治る可能性のある治療を経済的な理由のために受けられないという事態が進行していたのである。日本の経済没落に伴う、日本の医療費削減という医療改革のお題目の中で、社会保険医療は、ますます切り詰められているのが現実である。治療法が進歩して治せるようになったのに、社会保険に収載されていないという理由で、社会保険併用で患者に適応できない治療法が増えているのである。命が救われたいと自由診療でその治療を受ける際に、この混合診療禁止ルールが、患者の経済的負担をますます重くしているのである。(一方、混合診療禁止ルールは、保険者や国の負担は軽くしている。)

 「国にお金がない、国民の命は平等でなくてはならない」という事情で、助けられる命を助けないという、今の日本の姿は間違っていると思う。人の命を救うのが使命の医師には、こんな姿は、まったく納得できない。もともと、人の命や健康は、残念ながらルソーの理念とは異なり、不平等にできているのである。自民党、民主党、公明党、社民党、共産党すべての政党の人たちに、人の命や健康が不平等であるという、自然の摂理を、直視してもらいたい。

「混合診療」認める初判決  東京地裁
2007.11.7 15:30
 腎臓がん治療のため、保険適用対象となるインターフェロン治療と、保険適用外の「活性化自己リンパ球移入療法」を併合して受けた患者が、インターフェロン治療まで自己負担とされたのは不当として、インターフェロン治療に対する保険適用を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であった。定塚誠裁判長は「インターフェロン治療に対する保険が適用されない根拠は見いだせない」として、患者側の請求を認めた。
 厚生労働省によると、現在認められていない「混合診療」を認めた判決は初めて。
【用語解説】混合診療
 一般の保険診療と、保険が効かない自由診療を併用する治療をいう。混合診療を行うと、すべての診療が自由診療の扱いとなり、患者は医療費すべてを負担しないといけなくなる。
 混合治療を認めると患者の医療負担が大きくなるため、所得によって医療内容に差が出るといった理由で、現在は認められいない。一定のルールをつくった上で解禁すべきという議論があり、政府内でも検討が進められているが、実現までには至っていない。
(産経新聞)


「混合診療」禁止は違法、東京地裁が国側敗訴の判決
 健康保険が使える診療(保険診療)と保険外の診療(自由診療)を併用する「混合診療」を受けた場合、保険診療分も含めて全額患者負担になるのは不当だとして、神奈川県内のがん患者が国を相手取り、保険を受ける権利があることの確認を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であった。
 定塚誠裁判長は、混合診療を原則禁止している国の政策について、「混合診療を禁止する法的な根拠はない」と述べ、原告に保険の受給権があることを認め、国側敗訴の判決を言い渡した。
 日本の健康保険制度の前提となってきた「混合診療の原則禁止」という考え方を違法とした初めての司法判断で、厚生労働省は今後、混合診療のあり方について、抜本的な議論を迫られそうだ。
 訴えていたのは、神奈川県藤沢市の団体職員、清郷(きよさと)伸人さん(60)。
 判決などによると、清郷さんは腎臓がんの治療のため、同県内の病院で2001年9月から、保険診療のインターフェロン療法と、自由診療の「活性化自己リンパ球移入療法」と呼ばれる治療法を併用していたが、05年10月、病院から「混合診療にあたるので続けられない」と告げられ、併用できなくなった。
 訴訟では、混合診療の原則禁止という国の政策に法的な根拠があるかどうかが最大の争点となった。
 国側は「健康保険法で保険の適用が認められているのは、国が安全性や有効性を確認した医療行為。自由診療と組み合わせた診療は保険診療とは見なせない」などと主張。これに対し、判決は「保険を適用するかどうかは個別の診療行為ごとに判断すべきで、自由診療と併用したからといって本来保険が使える診療の分まで自己負担になるという解釈はできない」と、国の法解釈の誤りを指摘し、混合診療禁止に法的根拠はないとした。
 また、国側は、混合診療ができるケースを健康保険法が例外的に定めていることから、「例外以外は禁止できる」と主張したが、判決は「法律などには、例外以外の混合診療がすべて保険の対象から排除されると解釈できる条項はない」とし、原告には保険を受ける権利があると結論づけた。
 ただ、判決は「法解釈の問題と、混合診療全体のあり方の問題とは次元の異なる問題」とも述べ、混合診療の全面解禁の是非については踏み込まなかった。
(2007年11月7日23時55分 読売新聞)


混合診療、全額負担は違法・東京地裁、がん患者の訴え認める
 保険対象の治療と対象外の治療を併用する「混合診療」に保険を適用せず、患者に全額負担を求める国の制度の是非が争われた訴訟の判決で、東京地裁(定塚誠裁判長)は7日、「国の健康保険法の解釈は誤り」と指摘し、混合診療の原則禁止を違法とする初の判断を示した。
 混合診療をめぐっては、患者の負担軽減のため全面解禁を求める意見の一方、医療の安全性確保などの側面から弊害を指摘する声も根強い。厚生労働省は控訴するとみられるが、判決はこうした議論や医療現場に大きな影響を与えそうだ。(21:47)
神奈川県に住むがん患者の清郷伸人さん(60)は、公的な健康保険が適用される診療に加えて保険が適用されない免疫治療を受けると、すべての治療費が自己負担になるのは不当だと訴えていました。国は混合診療を原則として認めておらず、患者が日本で承認されていない薬を使ったり実績の少ない新しい治療を受けたりすると、本来なら保険で賄われる検査などの費用も全額、患者の負担にしています。判決で、東京地方裁判所の定塚誠裁判長は「併用することで、保険が適用される診療も含め、すべての費用を患者の負担にするのは法律の根拠がなく誤りだ。保険を適用するかどうかは個別の診療ごとに判断するべきだ」と指摘し、混合診療を認めない国の政策を違法とする初めての判断を示しました。混合診療については、国だけでなく日本医師会も、すべての国民をひとしく保険で支える制度の崩壊につながるとして強く反対しています。判決は国の政策を誤りとしたうえで、患者がさまざまな治療を受けやすくすることに道を開くもので、混合診療の是非をめぐる議論に、今後、大きな波紋を広げそうです。判決のあとの記者会見で、原告の清郷さんは「国を相手にひとりで闘った裁判だったので不安でした。負けるとますます混合診療が禁止され、患者を縛る制度が続くことになるので、どうしても勝ちたかった。ほっとしています。わたしひとりの問題ではなく、難病や重い病気に苦しむ全国の患者が、希望する治療を合理的な負担で受けられるように、国は制度を改めてもらいたい」と話していました。一方、厚生労働省は「混合診療の取り扱いに関する目的の合理性と制度の妥当性について主張してきましたが、この主張が認められず、きわめて厳しい判決であると考えています。今後の対応については判決の内容を検討し、関係機関と協議のうえ速やかに決定したい」という談話を出しました。
(NHK)
 

2007/10/30  UEGW(ヨーロッパ消化器週間)2007  in Paris 第三日目 最終日

 朝早く行われた、新しい大腸内視鏡のセッションに参加。内視鏡をカバーして、汚さないシステムが紹介されていた。確かに、洗う手間が省ける。午前中は、NOTESのセッションに参加。腹腔内に入った穴、3−4cm大の穴をどう塞ぐか、いろいろな方法が討論されていた。ヨーロッパには、NOTESトレイニングセンターがあって、そこに、各地の先生が集まって、豚相手に技術が磨かれている。日本にもそういう トレーニングセンターが必要だろう。

 その次は、NBIとかFICE(ヨーロッパではCVCと呼ばれていた)、とか、日本では、多くの聴衆を集めていたテーマのセッションに参加。日本ほど聴衆はいなかった。今回の学会は、NOTESがメインテーマであったようだ。

 午後からは学会上を抜け出して、修復なったベルサイユ宮殿の鏡の間を見学 。2年前、チェコの学会の帰り立ち寄ったら、工事中で見学できなかったリベンジである。鏡の間は 、スペイン人、イタリア人、中国人、韓国人、日本人、などなど、世界各地の人を大勢集めていた。

 内視鏡販売会社の人から聞いた話によると、ヨーロッパは、東ヨーロッパを中心に内視鏡の売り上げも年50%の上昇だそうである。今回別件で訪れたオルレアンでも子供をよく見かけ、1989年のベルリンの壁解消以後始まったヨーロッパの繁栄は、ますます、続きそうと感じた。ルイ14世の時代のような強いヨーロッパが戻ってきそうだ。

改装なった2007年10月31日のベルサイユ宮殿鏡の間

 

2007/10/30  UEGW(ヨーロッパ消化器週間)2007  in Paris 第二日目

 午前中は、NOTESのセッションに参加。ヨーロッパではNOTESを真剣に育てようという、雰囲気が感じられた。さて、今日一番驚いたのは、超音波内視鏡を利用したNOTESという演題であった。発表者は Annette Frischer−Ravens 博士。なんと、超音波内視鏡を使って、壁外の情報を得て、食道壁の的確な場所を切り開いて、壁外にあるリンパ節を取り出すという、信じられない芸当をしていた。また、食道を切り開いて、縦隔に入って、空気を入れて、気縦隔として、心房に針を指して、心臓手術をしていた。びっくり仰天である。消化器内視鏡を用いた心臓手術?!

 彼女と山本博徳先生と一緒に、昼食を食べた。その際、心臓に針を刺して血は止まりますか、リンパ節を取り出すのはどのくらい時間がかかりますかとか、いろいろ質問させてもらった。一般には、左鎖骨上かから縦隔鏡を行うのであるが、技術的には、食道経由のほうが簡単だそうである。内視鏡を用いた心臓手術はきっとビッグマーケットになると彼女は力説していた。 

 彼女は本当によくしゃべる人だった。明快に答えてもらえるかたわら、日本社会の変貌、日本の医療などについて、いろいろと矢継ぎ早に、質問を受けた。日本も医療訴訟が一般的になってきたと説明すると、驚いていた。

 午後は山本博徳先生と道田知樹先生とテニスをしようとしたところ、通り雨が降り、土のコートはたちまち水浸し。期待のテニスはできなかったが、その代わり、虹が出た。

 

2007/10/29  UEGW(ヨーロッパ消化器週間)2007  in Paris 第一日目

 2007年10月29日からUEGW in Parisに参加。ヨーロッパはIBD先進国なので、初日はIBDを中心に講演を聴いた。日本では、インフリキシマブしか、認められていないが、こちらではそれに加えて、CZP(セルトリズマブ・ペゴル)やADA(アダリブマブ)が使用できる。

 そのクローン病に対する臨床試験の結果を聞いていたが、トップダウン「はじめに強い薬すなわち坑TNF-α製剤を使い、次に、アザチオプリンを使う」方法のほうが、ボトムアップ「はじめに弱い薬を使い、効果がなければ、強い薬を使う」方法よりも、2年後の緩解率が大幅に高かった。

日本では、クローン病に対して、ボトムアップしか、保険診療では認められていない。この結果を踏まえて、坑TNF-α抗体の使い方を検討する必要があろう。

 

2007/10/25  厚生労働省発表は、大本営発表に似ている。

 開業医の収入は勤務医の1.8倍のトリック 

 開業医の収入は、勤務医の1.8倍という発表があった。日本経済新聞では、それゆえ、開業医の診療報酬をもっと減らすことができると書いていて、来年の4月の診療報酬改定では、開業医の診療報酬を減らすべきだと書いている。

 

 何も知らない若者がこの記事を読むと、そうだなと納得してしまうかもしれない。

しかし、私から見ると、3つのトリックが隠れている。

 

 1つは、開業医の年齢と、勤務医の年齢を考慮していないこと。開業医は経験豊かな高齢者が多く、勤務医には卒業したばかりの先生が多い。年齢別に比べる必要があろう。

 2つは、開業医の経費と、勤務医の経費は異なる。開業医は薬も買わなくてはいけないし、テナント料も経費として払わなくてはいけない。年収を比べるのではなく、課税所得を比べるべきだ。

 3つは、実は、診療報酬は、ここ数年、診療所に比べて、病院をより厳しくして、診療費を切り詰めてきた経緯がある。何のことはない、時期をずらして、病院も診療所も全部切り詰めているのである。

 現在の医療費は年間約29兆円である。日本政府は「2025年には医療費をさらに8兆円切り詰めて、医療費を年間21兆円にする。」という目標を達成するために、3つのトリックを利用して、詭弁を弄しているのだ。C型肝炎訴訟・薬害エイズの問題でもそうだが、真実を真摯に語らず、ごまかして逃れようとする、日本政府の体質がありありと浮き出ている。

 

 厚生労働省の発表は、どこか、大本営発表に似ていると感じるのは、私ひとりだけであろうか?このままでは、医療界は、今後も、打撃を受け続け、最後には焼け野原になり、とどめに原爆を落とされて、消滅してしまうのであろう。

 

 ちなみに、キャリアの厚生省官僚と開業医と病院勤務医の世代別平均課税所得を公表したら、皆様が予想もしない金額が公表されるだろう。キャリア官僚の年収・課税所得額はかなり高いのである。

 

2007/10/24  薬害肝炎問題 厚生省(現在の厚生労働省)の責任 

 約20年前、ミドリ十字(今は吸収されてこの名前の会社はない)の血液製剤中の一部に、C型肝炎ウィルスが含まれていた。それを、使用した人たちの一部が、C型肝炎に感染して、発症して苦労している。

 問題は、その感染に関する情報が、患者に伝えられなかったことである。厚生省(現在の厚生労働省)が情報のところで止まっていたことが、発覚して、しかも、それが、「故意にであるらしく」、つまり、厚生省の立場が悪くなるので、情報を隠していたらしいということの証拠が出てきたのである。隠していたことが、患者の病状の悪化につながった。

 

 今後の厚生労働省の取るべき対応は

1)患者を治すこと。(幸い、近年の治療法の進歩で、C型肝炎は7-8割完治する病気となってきている。つまり、治療の費用を出すということ、病気を治す努力・研究に協力すること。)

2)患者の被害を補償すること。

3)情報操作を反省すること。当時の担当官の氏名・経歴の公表と処分を行うこと。

4)情報操作の体質を変えること。(国民の健康と命を守ることを最優先として、自らの保全は2番とすること。)

 

 また、司法当局も、厚生官僚が自らの利益のために、意図的に真実を隠して、患者を傷害したことが疑われるので、

5)「傷害罪の適応を考慮した、捜査を行うこと。」が必要であろう。

 

 厚生労働省は情報を操作している。都合の悪いものは隠し、都合のいいものは誇張している。このような行為は、刑法においては個人なら許されている。裁判では、自らに不利な証言はしなくてもよい。しかし、個人では許されることも、行政という多くの人たちが関わる公共的なことでは、許されないのは、明らかであろう。多くの無垢の人たちが迷惑するからである。

 

2007/10/22  JDDW後日談 中国(台湾)の先生方が当院を見学

 今回の学会に、台湾から参加していた先生が2名(台中にある秀伯記念医院の陳建華先生と台南にある台南市立病院の郭振源先生)、日本に来たついでにと、わざわざ東京まで足を伸ばして、当院の見学に訪れた。見学のテーマは内視鏡の入れ方と色素拡大内視鏡、核の観察、及び、FICEであった。小腸絨毛の中心の毛細血管のループの中を、血液がすばやく、流れるのを、はじめてみて、「オーッ」と驚きの喚声をあげていた。細胞の核の観察は、見慣れない絵なので、あまりよくわからなかったらしく、説明してやっと「フーン」といった感じの反応であった。

 

2007/10/21  JDDW2007神戸 第15回 日本消化器病週間 第四日目・最終日

 今日は学会の最終日であった。神戸は快晴。少し肌寒い感じもするが、からりと晴れ上がった最高の天気であった。

 

 午前中は、「ESD標準化のための手技の工夫ー上部消化管ー」に参加。司会は井上晴洋先生と小野裕之先生であった。いろいろと進歩していて、さまざまな工夫が述べられていた。ESD標準化まで、もう一歩の所まで来ているといった印象であった。

 

 昼は「胃癌化学療法の治療戦略ー新しい時代の幕開けー」を聞く。胃癌の化学療法は、ファーストラインがTS−1かTS−1+シスプラチン。セカンドラインがタキソール。タキソールは特に癌性腹膜炎によく効く。そして、これからは、これらの薬に、アバスチンやその他各種の分子標的薬を加えた治療に向かっている。東大の腫瘍外科で、胃癌の癌性腹膜炎に対して、タキソールによる治療 ・治験が行われているが、同僚の北山丈二先生によると、一年生存率は86%であったとのこと。驚きの高さである。

 

 午後は、「経鼻内視鏡による上部消化管スクリーニングの現状と問題点」に参加。司会は、辰巳嘉英先生と本田浩仁先生であった。無麻酔で上部内視鏡検査をするときは、経口内視鏡よりも経鼻内視鏡のほうが楽である。交感神経系の亢進が少なく、内視鏡時の血圧の上昇も低い。しかし、経口内視鏡に比べて、画像が悪く、検査に時間が20−30%余計にかかるという欠点も指摘されていた。鼻出血は約10%弱ぐらい、鼻痛は50%ぐらいであった。耳管の違和感や、副鼻腔炎などの珍しい報告もあった。

 

2007/10/20  JDDW2007神戸 第15回 日本消化器病週間 第三日目

 学会も3日目になると少し疲れてくる。このJDDW2007神戸に先行して、アジア太平洋消化器病会議は月曜日から開かれていて、「ちょっと長すぎる。」とぼやく声もちらほら聞こえてくる。

 

 午前中は、シンポジウム「特殊光観察に内視鏡診断」に参加。司会は工藤進英先生と神津照雄先生。NBIとAFI、FICE、confocal endoscopy,蛍光内視鏡などなど、内容はあまり目新しいものはなかったが、NBIの発表が多く、NBIによる微小血管診断が深化していた。

 

 午後は、消化器がん検診学会特別企画に参加。トップバッターは、厚生労働省管轄国立がんセンター予防・検診技術開発部 濱島ちさと先生であった。彼女は、最近、「前立腺がん検診にPSA測定は不要。」と言い放って、現在、泌尿器学会と対立している人物である。どんな人か大変興味があった。ちょっと小太りの、度の強いめがねをかけた、30歳ぐらいの女性であった。声が大きく、自信に満ちていた。肌にはつやがあり、黒髪もきれいで、健康的な美しさがあった。前立腺がんや癌死からは、最も遠い人種である。

 濱島ちさと女史の講演のテーマは、「がん検診における評価の基本概念」であった。

 

 まず、評価は、「その検診をした場合、その検診をしないときに比べて、どれだけ死亡数を減少させるか?」という死亡数減少効果を基本とすると述べた。そして、評価手順は、その検診に関する文献検索して、それらを読み、質のよい論文を選び出し、その論文に重み付けをして、スコア化して、検診を評価するというものだ。専門家にも意見を聞くが、専門家の意見の重み付けは一番低く、一番高い評価は、無症状者に対する無作為対照試験。要因対照試験や患者対照試験、介入試験はそれらの中間の評価で、前向きのほうが後ろ向きよりも評価を高くするという。

 さて、そのようにして、各種の検診方法を評価したところ、PSAによる前立腺がんの検診は、集団検診として、有効とは評価されなかったというわけだ。 (ただし、個人検診では有効との評価、マスコミでは集団検診での無効という評価だけが喧伝されている)。便潜血反応による大腸癌検診は集団検診として効果有りと評価されたという。このガイドライン(検診のやり方)を評価するやり方を、AGREEというそうだ。厚生労働省では検診の 評価を5年ごとに見直すという。

 

 この検診評価方法の問題点は、いくつかあると思う。

 

1)評価の根拠(文献)が古いデータを用いる点。

 文献に頼っているので、文献になる前の新しい知識は含まれていない。5年に一度見直すというから、実際に読んでいる論文は平均10年前ぐらいになるかもしれない。すると、次の十年の検診内容を決めるのに、十年前の知識を利用しているということで、間近な知識・実状は無視されているということなる。

 

2)死亡数減少を検診の目的としている点。検診には自分の健康を確認して安心を得るというメリットもある。

 検診(症状がないのに検査を受けるという行為)の目的は、死亡を回避したいということだけではなく、自分は病気でないという安心を得たいということもある。この2つは同じように思うかもしれないが、ちょっと違う。病気の中には、結局は、よく治るのだが、治すときの負担が早く見つけると軽くなるという病気もあるのだ。前立腺がんはこの範疇に入ってくると思う。患者さんをはじめ現場の人間は、その辺のいきさつをよく知っている。死も勿論、避けたいが、精神的な苦痛、肉体的な苦痛も避けたいのである。

 

3)真実はすべて文献にされているわけではない。

 医療情報の中には、さまざまな諸事情で、論文にしていないことがある。

たとえば、みんなが長年の経験・知識から、当たり前だと思っていること対して、無作為対照試験を行うことは、倫理的に許されないのである。 治療成績から見ると、胃癌と大腸癌の診療について、診断、早期癌の治療、進行がんの手術治療の点ではまちがいなく、世界一の成績を収めている。日本がフロンティアにいて世界をリーディングしているために、日本に無作為対照試験がほとんどなく、AGREEで評価すると日本の胃癌・大腸癌の診療ガイドラインは低い評価しか与えられないという皮肉な結果になるのだ。

 

4)文献に頼るだけで現場の調査を行っていない。

 がんセンターの机の上で検診は行われているのではない。がんセンターの机の上で人が病気になっているのではない。現場に出て

実状を調査して、それも評価に入れるべきである。

 

5)評価する者・組織にバイアスがかかっている。

 濱島ちさと先生は、給与を厚生労働省からもらっており、現在、厚生労働省は医療費削減政策、老人切捨政策を目標としている。AGREEにも、論文の発表者が誰からお金をもらっているかという項目もあり、濱島ちさと先生も自らの主張・論文をAGREEで評価してみるなら、質の低い論文と評価されるという皮肉な結果になるであろう。

 

6)医療現場では集団検診と任意検診(個人検診、プライベート検診)が明確に分かれているわけではない。

 検診の受ける側、すなわち、国民大衆は、検診に集団検診と個人検診が分かれていて、評価基準が異なっているなどとはまったく、思っていない。あるのは、自分の健康と命という評価基準だけである。行政を行うものは、その辺の事情(現場の事情)もわきまえた評価をするべきである。

 

 AGREEは欧米でも認められているガイドラインの一般的評価法である。 上記で述べたように、AGREEには、評価方法として、多くの問題を抱えている。ガイドラインの本来の目的、「人の命と健康を守るのにいかに役立つか?」という観点から見ると、問題のある評価法といわざるを得ない。

 AGREEが舶来であるという点が、彼女が「このやり方は間違ってない」とする根拠であった。AGREEを盲目的に受け入れる彼女の意識にはちょっと問題があると思う。 なんだか、外人かぶれ、英語コンプレックスの女学生という感じがした。

 

2007/10/19  JDDW2007神戸 第15回 日本消化器病週間 第二日目

 ブレックファーストミーティング「ムコアップを使用したEMR・ESD」があさ8:00という早朝のセミナーに参加。EMRやESDに粘膜下注入液に、臨床研究として利用していたヒアルロン酸希釈液(商品名ムコアップ)が医療材料として保険採用された。0.4%ヒアルロン酸ナトリウムは今まで用いられていた、生理食塩水、グリセリンなどに比べて、膨隆が強く持続時間が長い。一歩前進というところか。座長は工藤進英先生と山本博徳先生。演者は田中信治先生、矢作直久先生という豪華版であった。

 

 膨隆時間を長くするために、私は、今から20年前1987年に、20%グルコース液を大腸EMRに使用した。私は、それ以後、臨床的にあまり困らなかったので、そこで停まってしまったのであるが、その後いろいろと工夫があった。2000年ごろにグリセリンをはじめて使って、論文をいくつも書いたのが、矢作直久先生。ヒアルロン酸を使ったのが山本博徳先生。ちなみに、工藤先生も私同様、あまり困らなかったようで、いつも、生食といっていた。

 

 午前は、「ESD標準化のための手技の工夫ー下部消化管ー」に参加。司会は田中信治先生と矢作直久先生。症例数が増えて、先行施設ではだんだん成績が向上しているが、現在の手技では、やはり、平均2時間の長時間で、穿孔のリスクも10%ぐらいある。手技上のいろいろな工夫が提案されていて、それらを見ると、手術時間30分程度で、穿孔のリスクも2%以下という成績も、今後、期待できそうな印象を持った。本間清明先生の鋏型ナイフが面白そうであった。

 

 ランチョンセミナーでは、クレスチンの癌抑制効果についてのセミナーに参加。坂本純一先生(名古屋大学社会生命科学講座教授)が、メタアナリシスという手法で、これまでの優れた論文のデータを集積して、クレスチンの有効性を証明していた。癌の量の少ない状況でクレスチンは有効であった。講演でも言われていたが、時代によって、クレスチンの毀誉褒貶は甚だしいものがあった。1988年には、利かない薬といわれ、1996年には、癌の死亡率を5年生存率を10%も上げる妙薬といわれて、共に、読売新聞、朝日新聞の一面を飾った。マスコミはいい加減だ。自分で書いたことでもすぐ忘れる。

 

 午後は、「医療崩壊」の著者、虎ノ門病院泌尿器科 部長 小松秀樹先生の講演があった。スライドは使わず、話がいろいろ飛んで、ちょっとわかりにくかった。今回のテーマは、医療崩壊だけでなく、司法界対医療界であった。「診療行為に関連した死亡に係る死亡究明などのあり方に関する検討会」、いわゆる「医療事故調査制度」についての話であった。福島県立大野病院事件を契機に、司法界と医療界が対決している。司法会のトップは、司法界と医療界が衝突して、司法界の無謬性、信頼性、権威性が揺らぐことを恐れているといった言葉が印象に残った。

 

 サテライトシンポジウムでは、オリンパスの「フロンティア内視鏡」に参加。膵管鏡、胆管鏡が2003年にビデオ化されて以来、画像がずいぶんよくなっていたのには、感心した。ただ、まだ以前と同じくよく壊れるそうである。

 

 消化器内視鏡はまだまだ伸びる。その方向性が示されたいいシンポジウムであった。

 

2007/10/18  JDDW2007神戸 第15回 日本消化器病週間 第一日目

 10月18日から21日までの4日間、神戸でJDDW2007(日本消化器病週間)が開かれている。

 

 午前中は「大腸pSM癌診療の新しい展開」へ出席。司会は斉藤裕輔先生と正木忠彦先生であった。コメンテーターは、癌研院長の武藤徹一郎先生であった。

 従来、sm深層までの浸潤(sm2sm3)、脈管浸襲(=ly(+) or v(+))、腫瘍が未分化、腫瘍先進部の悪性度の高さ(BUDDING)が開腹手術適応ということであった。

 新しい展開として、浸潤の深さについては数値で表す試みが常識化してきていた。転移なしの浸潤距離については、1000μmが主流なのだが、1700μmとか、いろいろ議論があった。「mで転移して驚いた症例も、標本を詳細に調べなおしてみるとsm浸潤がみつかった。切除標本の取り扱いは丁寧にしましょう」などなどと議論していた。「マトリライシン染色をすると、転移の予測に有効だ」という報告もあった。

 

 拡大内視鏡診断では、「ピットパターン5n型は、sm-massive、5i高度不整型は浅いのから深いのまである。」と、また、毛細血管診断では「毛細血管のない領域のある病変はsm-massive」とか議論されていた。また、「pSM癌が上記の開腹手術適応状態で、諸般の事情で手術しなかった場合、再発率は20%ぐらいで、再発後の治療でその約33%しか救えなかった」という話もあった。これは、私の臨床経験に近い数値であった。

 

 武藤徹一郎先生の総括では、「内容は10年前とほとんど変わらない。内科の先生方は、この医療資源の乏しくなった時代に、医療全体からみると微々たること(おそらくピット診断や毛細血管診断のこと)をやめて病棟でうろうろしていてほしい(化学療法などをしっかりしろということか)」とのコメントであった。私の見解としては、「この10年、大筋は変わらないが、細かいところでは診断は深化している。」と思う。ただし、治療について、まったく、議論がなかったのは残念で、「pSM癌、開腹手術適応状態であるにもかかわらず、手術しない場合、TS-1などの抗がん剤投与はどれくらい再発を抑えるのか?」という 疑問についても議論してほしかった。

 

 午後は、消化器癌診療ガイドラインの現況と諸問題に出席。司会は杉原健一先生と下津川徹先生であった。食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、の診療ガイドライン作成者が指定講演を行った。また、ガイドラインの評価を行うAGREEというシステムも紹介されていた。消化器癌は癌罹患数の6-7割をしめ、そのガイドラインの社会的影響は、大変大きなものである。

 

 私が、面白かったのは、ガイドラインのでき方であった。胃癌、大腸癌は2001−2002年ごろに、手弁当で医師集団が作成、食道癌は学会主導で作成、肝臓癌と膵臓癌は、厚生労働省の補助を受けて2004−2005年に作成されていた。肝臓癌は4000万円の予算が支給されていた。膵臓癌もそれなりの予算が支給されていたようだが、実際は200万円ぐらいでできたとコメントしていた。

 

 肝臓癌のガイドライン作成の4000万円の予算はどのように使われたのか、お金の行方の明細を報告してもらいたいものだ。安倍前首相の美しい日本の会議費用「12人集めて2回で4000万円」から判断してわかるとおり、大盤振る舞いする予算は政治的なのである。厚生労働省はガイドライン作成に実費の20倍もの金額を出しているのである。

 

 そう、考えてくると、今後、ガイドラインは、情報公開というよりも、情報操作の道具、医療費締め付け、医療界締め付けの道具として用いられていくのではないかと危惧される。今、政府は医療費削減のために、医療現場の自由裁量を容認できないのである。マスコミでは報道しないが、なにせ、2025年には現在の医療費29兆円を、さらに8兆円削減して、21兆円にするという目標を掲げているのであるから。 (今でも現場は大変なのに、こんなのが実現したら、医療は完全崩壊してしまうと思うが、それでも財務省がここまで厚生労働省に圧力をかけるのは国力がここまで落ちていくということか?)

 

 議論の中で、司会の杉原健一先生は、「アメリカの大腸癌診療ガイドラインでは、大腸癌治療のファーストラインは、アバスチンとオキザロプラチンと書かれているが、この費用は一ヶ月70万円もかかる。こんなのは、費用の点で、今の日本の保険診療では受け入れられない。保険診療できないことはガイドラインに載せるべきではない。アメリカでは自由診療があるから、受け入れられるのであるが、社会体制の違いを考慮した、国別のガイドライン作成が必要だ。」と力説していた。 

 

 杉原先生も「抗がん剤投与にアバスチンの併用が、延命効果がある。」とわかっている。「患者さんの利益のために情報公開が必要だ。」ともおっしゃっている。しかし、「医療は保険診療」ということが、彼の頭脳の中で固定観念として根付いてしまっているために、「ガイドラインにアバスチンは入れられない。」と発言しているのだ。保険診療が命を短くしているという図式だ。 (ちなみに、私のクリニックは自由診療なので、アバスチンは利用できます。)

 

 「アバスチンは抗がん剤投与に併用すると延命効果がある。しかし、費用がかかり過ぎるので、今の日本の保険診療では、採用していない。」と真実をガイドラインに書くべきだと思う。真実を伝えなければ、国民も奮起しまい。

 

2007/10/06  都立病院未収入金 13億円に 10年前の2倍 

 10月5日付けの毎日新聞によると、「東京都立病院で医療費が支払われないまま1年以上経過した未収入金が、ここ10年で、約6億円から13億円に倍増した。医療費の未収入金は全国の病院で問題化しており、厚生労働省は今年6月に医療団体や保険運営の代表者の代表、学識経験者を集めた検討会を設置している。」という。

 中国やアメリカでは、前金で医療を行うのが通例である。モラルが崩壊した日本もその常識に従う時代となったのであろう。

 

2007/10/05  第66回日本癌学会学術総会 報告 

 第66回 日本癌学会学術総会が、学術会長、鶴尾隆、癌研癌化学療法センター所長のもと、2007年10月3日から5日まで、パシフィコ横浜で開かれた。去年の癌学会と違って、今年は、基礎系に重点を置いた企画が多かった。 約2000題の発表・講演があり、癌に関する情報は、幾何級数的に増大していて、治療の試みもどんどん進んでいるなあというのが実感だった。

 

 特に、岡山大学の藤原俊義先生(岡山芳泉高校の後輩)のがん治療用にデザインしたアデノウィルス「telomelysin」が面白かった。ほかにも、DNAキメラmiRNAやエーザイ や協和発酵の抗がん剤も面白かった。東京大学医科学研究所の中村祐輔先生の癌免疫療法の講演も彼らしく力が入っていた。 日本にも、結構、可能性のある、がん治療デザインがいくつかあるのである。彼らの講演を聞いていると、「癌克服はそう遠い未来ではない。」と感じてしまうほどだ。

 

 日本は、国際的に見ると、少ない予算の割りに、基礎的がん研究に優れている。しかし、それを、ベッドサイドへ持っていく仕組みがな い。新たな薬は、日本ではなく海外でまず、臨床応用がされている。上記の興味深い治療法も開発段階でほとんどがアメリカがらみである。研究をしているのは日本人なのに、恩恵を受けるのはまず、アメリカの人々なのである。これが問題になっていた。 従来の、日本における、薬を商品化するシステムには無駄が多く、コストがかかるため、皆が日本を避けて、アメリカへと進んでいった。それで、今や、日本には、薬を商品化するシステムが なくなったという。

 

 そういう事情を踏まえて、今回の学会では、研究者に抗がん剤開発の社会的仕組みを教える企画があった。癌新薬開発ヴェンチャービジネスの社長や、大手薬屋さんの社長さんが出てきて、抗がん剤の開発の実態が語られ、研究者に社会の仕組みを教え たのである。従来にはない目新しい企画 で、感心した。研究成果を癌退治につなげる社会的な仕組みを理解することは、学者にとっても社会にとっても、癌が治せる可能性が上がるわけだから、確かにとても大切なことだ。

 

 今の日本で、学者が研究成果を薬にしようと思うと、ヴェンチャーキャピタルを利用することになるのであるが、日本の癌新薬関連のヴェンチャー 企業は、17−18あるが2つを除いてほぼすべて収縮しているという。一方、アメリカでは膨らむものと収縮するものが半々だそうである。講演したヴェンチャー社長曰く、「これを言ったら 身もふたもないのだが、アメリカの癌新薬開発ヴェンチャービジネスへの投資家は、皆、財をなした半端でない大金持ちで、 投資家自身が癌を治そうという強い信念を持っていて、成果が出るまで待てる。」のだそうである。日本には、やっぱり 、理念のある半端でない大金持ちが居なかったのか?!

 

2007/09/23  FICEで見つけた微小胃癌 

 FICEシステムは、微小血管像をきれいに見せることができる。内視鏡実施時に毎回使っているわけではないが、病変の血管を見たいときには必ずFICEを使っている。先日、胃の中部に約2mmのやや赤い部分があり、解像度7μmレベルまで、拡大して観察すると、癌に特有な異常毛細血管があった。異常毛細血管はFICEでより明瞭に観察された。癌との内視鏡診断で、組織検査したところ、やはり癌であった。FICEによる毛細血管の観察により、微小胃癌が診断できたというわけである。

 

 

2007/09/23 安倍総理大臣入院長引く 

 安倍晋三総理大臣の入院が長引いている。私の予想では、今後、6週間から8週間ぐらい、入院するであろう。潰瘍性大腸炎治療のために、ステロイドの大量内服投与をしているはずなので、これくらいかかるだろうと思うのである。ステロイドの大量投与で、満月様顔貌になるので、彼は病院をしばらくは一歩も出ないであろう。テレビには出てこれない。メッセージを送れなければ、「美しい日本」という彼の夢も、空中分解だ。安倍晋三さんの無念を思えば、同情の念を禁じえない。健康はすべての礎である。やっぱり、「美しい日本」の前に、健康医療政策を充実させるべきであったと思う。病気は馬鹿にできないのである。

 

2007/09/12 安倍総理大臣辞意発表 潰瘍性大腸炎が悪化?

 安倍総理大臣が本日12時ごろ、突然辞意を発表した。昨日、国会が開かれて、安倍首相が姿勢方針演説をしたばかりで、本日は午後1時から、野党党首が代表質問をするという段階で、まさに、突然の辞任劇であった。

 「東南アジアに旅行されて以降、健康状態が悪くじっと耐えていた。」と与謝野官房長官が発言している。うわさによると、安倍総理大臣は潰瘍性大腸炎であるという。潰瘍性大腸炎とは、大腸粘膜がただれて、下痢と粘血便、血便を繰り返す厄介な病気だ。長期にわたると大腸癌が発生しやすく、血栓症が起こって死ぬ場合が少なからずある。急性増悪して、劇症腸炎となり、敗血症を起こして死ぬこともある。

 潰瘍性大腸炎の経過は長く、再燃緩解を繰り返す病気で、悪化する要因は、精神的なストレス、唐辛子、感冒、飲酒などがある。 潰瘍性大腸炎が悪化したときに適切な治療をせずに放置しておくと、病気が遷延し、緩解導入がかなり難しくなり、治療に難渋する。感冒からの回復期に潰瘍性大腸炎の病勢は一段と悪化しやすい。

 報道によると、安倍晋三総理大臣は、東南アジアに旅行して、唐辛子を食べ、オーストリアのAPECでは国際政治的に強いストレスをかけられていた。さらにその上、 安倍晋三総理大臣は、1週間前に感冒を患っていたというから、病気を悪くするすべての要素が揃っていたのである。医学的にみると、悪化すべくして悪化したというところだ。安倍晋三さんには、じっくりと静養して、是非、お元気になってもらいたい。

 

2007/09/07 二酸化炭素削減とごみ処理の仕方

 この夏、東京では35度を超える猛暑が長く続き、100人程度の熱中症による死亡者が出た。3−4年には、フランスを猛暑が襲い、5-6万人が熱中症で死んだ。今回の、日本の死亡者数は、フランスよりはましだったようだが、この夏の異常な暑さで、地球温暖化防止は待ったなしの感がいっそう強い。

 医療とは、一見関係のないことだが、私の廻りにある紙ごみ、生ごみ、プラスチックごみは、東京共済病院の南にある目黒区のごみ処理場で、超高温で燃やされている。超高温であれば、排ガスの中に、ダイオキシンができないのだそうだ。でも、二酸化炭素は間違いなく、燃焼温度にかかわらず、発生・排出されて、その量は変わらない。

 つまり、現行の処理の仕方は、地球温暖化防止、二酸化炭素削減の観点からみると、不合格なのだ。地中奥深くから、原油をくみ上げ、石炭を掘り出し、地上の炭素量を増やしているから、地球は温暖化する。ならば、温暖化防止のために、ごみは燃やさずに、土の中に埋めるべきなのではなかろうか?「炭素ごみは燃やさずに土の中へ。」

 行政に知恵が必要なのは、なにも、医療の分野だけというわけではなさそうだ。

 

2007/08/22 患者のモラル m-file 1

 

 8月19日付けの読売新聞は一面で、「横暴な患者、病院苦悩」との大見出しで、患者の暴力事件430件、暴言事件990件を指摘した。

 全国の大学病院で、昨年1年間に医師、看護師が患者や家族から暴力を受けたケースは、少なくとも約430件あることが、読売新聞の調査で明らかになった。理不尽なクレームや暴言も約990件確認された。病気によるストレスや不安が引き金となったケースも含まれているが、待ち時間に不満を募らせて暴力に及ぶなど、患者側のモラルが問われる事例が多い。回答した病院の約7割が警察OBの配置などの対策に乗り出しており、「院内暴力」の深刻さが浮かび上がった。調査は、先月から今月にかけ、47都道府県にある79の大学病院を対象に行い、59病院から回答があった。このうち、何らかの暴力あるいは暴言があったと回答した病院は54にのぼる。暴力の件数は約430件、暴言・クレームは約990件。暴力が10件以上確認されたのは6病院、暴言・クレームが50件以上あったのは5病院だった。「クレームはここ2年間で倍増した」(大阪大医学部付属病院)など、暴力や暴言・クレームが増加しているという回答は、33病院に達した。ただ、こうした件数や事例を記録に残していない病院もあり、今回の調査結果は、「氷山の一角」の可能性が高い。暴力の具体例では、入院手続きの時間外に訪れた軽いけがの男性に、医師が「ベッドの空きがないので明日来てほしい」と告げたところ、缶コーヒーを投げつけられ、注意すると顔を殴られて、顔面を骨折したケースがあった。入院患者から「言葉遣いが気に入らない」という理由で足に花瓶を投げられた看護師もいた。けがを負う病院職員は少なくないが、「病気を抱えて弱い立場にいる患者と争うことはできるだけ避けたい」という意識から、警察に届け出ない場合も多いという。暴言・クレームでは、複数の患者がいたために、すぐに診療を受けられなかった患者の家族が、「待ち時間が長い」と腹を立てて壁をけったり、暴言を吐いたりした。検査後に異常がなかったことがわかると、患者から検査費用の支払いを拒まれた病院もあった。精神疾患や重い病気で心理的に追い詰められた患者が、暴力や暴言に走ってしまった事例もある。しかし、多くの病院は、それ以外の患者や家族による理不尽な行為に悩んでおり、「(一部の患者から)ホテル並みのサービスを要求され、苦慮している」(慶応大病院)との声が上がっている。具体的な対策をとっている病院は44にのぼり、警察OBを職員に雇い、患者への応対に当たらせている病院は21、暴力行為を想定した対応マニュアルを作成した病院は10あった。院内暴力を早期に発見・通報するため、監視カメラや非常警報ベルを病棟に設置する病院もあった。(2007年8月19日3時4分  読売新聞)

 当院では、これまで、幸いなことに、暴力事件はなかった。しかし、患者のモラルという点で、一番印象に残っている事件は、保険証の流用、一郎ちゃん詐欺未遂事件である。

 今から7−8年ぐらい前のある日、胃が痛いから診察してほしいと、ニート風の20代後半の男性が来院。「国民次郎(仮称)」という国民保険証を提示した。痛みが強いため、緊急の上部消化管内視鏡検査を実施。胃の中にびらん・潰瘍があり、組織検査を実施。胃薬を出して、「胃に潰瘍があるからしばらくは、飲酒や過食をしないように」と説明して、帰宅させた。ここまでは、よくある診察シナリオであったが、問題はその夜だった。

 深夜12時ごろ、電話が入り、その患者が、血を吐いたという。すぐに、来院してくださいと答えて、患者は救急車でやってきた。患者は酩酊していた。すぐに、点滴ラインを確保して、緊急内視鏡を実施。胃の中は血だらけで、食べ物も大量に入っていた。聞けば、しゃぶしゃぶ食べ放題で、腹いっぱい食べたうえに、アルコールも大量に飲んだという。内視鏡的止血処置を試みるも、患者が不穏で体動が強く、深夜のため対応できるスタッフも少なく、出血の勢いも強かったので、内視鏡的止血術は、うまくいかなかった。大学病院の緊急外来へ搬送を決定。家族にも行き先を連絡した。

 救急車で、旗の台の昭和大学病院へ搬送、私も乗り込んで行き、担当医に引き継いだ。そこへ、母親登場。「一郎ちゃん、大丈夫?」「一郎ちゃん、しっかりして!」。・・・・・・。「お母さん、この人は、次郎さんですよねぇ。」「いえ、次郎は、一郎の弟です!」

 彼は、昭和大学病院の適切な処置で、何とか一命を取り留めた。後日、聞いたところによると、国民一郎は保険非加入であった。そこで、弟次郎の保険証を貸してもらって来院したという。国民一郎さんのモラルは、大変低いものだ。医師の指示は守らないし、健康保険の詐欺も行おうとした。実は、国民一郎さんの事件は、氷山の一角。当時、20〜30人に1人は、無効な保険証を提示していた。レセプトを出すと、保険番号間違いとして、3〜5%がつき返されていた。

 健康保険証にも、顔写真の添付が必要だと思う。また、保険証が本当に有効なものかどうか、保険者に確かめるオンラインシステムが必要だと思う。ちなみに、最近、「無効な保険証を回収しなかった保険者は、医療機関に診察費を支払わなければならない。」という判決が出ている。

 

2007/08/03  慢性胃炎と診断を受けた人は、皆、ピロリ菌か?

 ホームページのアクセス調査をしていると、上のような、サーチがあり、このホームページが上位にヒットされていた。この質問に対しての解答は、これまでの内容を読んでもわからないので、この際、きちんと記載しておきたい。

 今の日本において、慢性胃炎の原因の90−95%は、ピロリ菌である。その他は、自己免疫性の胃炎などである。私が学生時代に習った言い方では、ピロリ菌による慢性胃炎をB型胃炎と呼び、抗胃細胞抗体(抗胃壁細胞抗体)による自己免疫疾患としての慢性胃炎をA型胃炎と呼ぶ。

 実地に臨床をしていて、胃の炎症が長く続く状態としては、その他に、

1)(非ステロイド系坑炎症剤(NSAIDS))投与で粘膜再生抑制による薬剤性胃炎や、

2)コーヒー・アルコールなどによる胃粘膜を直接傷害する飲食物・薬による胃炎や、

3)クローン病による胃炎、

4)食物アレルギーによる胃炎、

5)過度のストレスによる胃粘膜血流現象に基づく、胃粘膜防御機構の破綻に基づく胃炎(狭義のストレス性胃炎)

などなどをよく経験する。

 胃のウィルス感染については、EBvirus感染が胃癌と関連しているという報告もあるが、詳細は研究待ちの状況である。

 

2007/07/30 G-file 5  便潜血陰性 会社検診の大腸判定A それでも 大腸進行癌 

 1996年、溜池にある共同通信社の本社に招かれて、大腸がんについての講演を行った。大腸がんの死亡者数が1975年は5000人、その後、5年で2倍のペースで、大腸がんの死亡者数が増加し、1980年には約1万人、1985年には約2万人、1990年には、約4万人と増えている現状をまず話した。

 そして、次に、1988年中曽根内閣によって導入された、免疫学的便潜血反応による大腸がん検診の仕組みを話した。まず、検診者全員に、免疫学的便潜血反応検査を二回行う。次に、2回のうちどちらか一方でも陽性になった場合を、陽性と判定して、二次検診の注腸検査か大腸内視鏡検査を行うと説明した。

 さらに、大腸がん検診に用いている便潜血反応の感受性についても、言及した。1994年と1995年に行われた厚生省武藤班による研究では、進行大腸癌が見つかって、手術を目的として、入院してきた患者さんに対して、2回法による免疫学的便潜血反応を行ったところ、陽性者は、70%であった。本来、100%であるべきなのだが、70%しかなかったのである。この話をしたとき、聞いていた共同通信社の役員や、保険組合関係の方々は「へえー」という驚きの反応であった。

 本当は、感受性をあげると、特異性が落ちて、検診の効率が悪くなるのである。だから、逆に感受性を70%に設定したというのが真実であるのだが・・・。

 その講演が終わり、数週後、共同通信の記者の方から電話があった。先生の講演を、役員から又聞きして、怖くなったので見てほしいというのである。その人は、検診で免疫学的便潜血反応は陰性で、大腸については評価Aであったが、実は、しばらく前から、右のおなかが張るというのである。

 さっそく、大腸内視鏡検査を行ったところ、上行結腸に全周性の進行癌が見つかった。幸い、肝臓に転移なし。早速、右半切を行った。

 幸いなことに、この患者さん、11年経った今でも、元気である。

この症例のように、検診での大腸A判定は、結構、あてになりませんので、注意してください。

 このような症例を、実地ではよく経験するので、「50歳になったら、大腸内視鏡検査による大腸検診をしましょう!」ということになるのである。症状のない50歳の人に向かって、初めての大腸内視鏡検査を勧めることは、消化器の医師としては常識であって、過剰医療ではないのである。

 

2007/07/29 参議院選挙 行われる。自民党惨敗 民主党躍進。どうなる保険医療崩壊 

 今日の日本では、慢性胃炎の根本療法も、食道癌の有効な早期発見も、大腸がんの完全な予防も、慢性肝炎の根本治療も、できるようで、できない現実がある。薬や治療法は表向き認められているが、実際に使用してみると、保険医療ではさまざまな制約があって、審査の過程で認められたり、認められなかったりする。

 認否の基準は、保険組合(保険者)の経済状況によるのである。保険者と社会保険審査機構は表向き、医療機関と保険者に対して公平でなければならないとされているが、実際には、天下りなどで強く癒着していて、社会保険審査機構は、保険者に向いている。

 認められなかったときの薬代やサービスの費用は、保険医療機関の丸っきりの赤字となる。したがって、保険医療機関では、経済的に、治療を自粛せざるをえない現実がある。個人経営ではまだしも、地方自治体の保険医療機関では、赤字の病院は廃止という政治的な流れのなかで、治療はますます自粛される。

 このような社会的圧力のある医療の現場では、患者に対して、科学的な真実は語られず、都合のよい詭弁が語られる。したがって、医師は、研究して、勉強しているものほど、あほらしくなってくる。

 

 また、今の日本には、医師自身、経済的にも、法律的にも、安心して患者を治療をできない現実がある。病院の社会保険診療報酬は、医師の技術で決まるわけでなく、看護師の数で決まる。どんな新米の看護師でも数だけが評価されるシステムだ。それだけでも、難しい技術を磨いて患者を助けてきた医師のプライドは傷つくのだが、ときに、最新の治療技術を駆使すれば、過剰医療とののしられ、患者を救おうと思って難しい手術に挑んで、失敗すると、「医療事故」といってくれるうちはマシで、時に、業務上過失致死傷として、牢獄に入れられる。これでは、外科系(消化管外科、呼吸器外科、循環器外科、産婦人科、泌尿器科、・・・)の先生の手術は萎縮せざるを得まい。助かるかもしれない症例でも、外科系の先生は、手術をしないことになる。それをみて、外科系になる新米の医師が減るのも当たり前のことだ。そして、社会保険医療は崩壊する。

 

 社会保険医療崩壊の原因は、日本経済の停滞(保険者の貧困化)と、社会保険制度の問題(厚生行政の誤り)にある。

 その奥深くには、日本の人々の意識に本質的な問題があるのだが・・・。

 

 民主党に、この問題が解決できるであろうか? たとえば、レントゲン技師組合や、官公庁の労働組合のように、労働組合はたいてい保守的で、自らの改革を否定して、自分だけの利益のために、大義を忘れて、新たな技術の導入に抵抗する。

 選挙前の演説では、小沢党首の口からは医療崩壊という単語は一言も聞かれなかったような気がする。そう、考えると民主党に医療崩壊を防げるか、大いに疑問だ・・・・。

 

 しかし、「生活第一」というなら、生活を脅かす、医療崩壊を無視できないはずだ。民主党の今後に期待したい。

 

2007/07/26 統計マジック 民間給与と公務員給与の比較  

 本日朝、yahooニュースのトッピクスのトップは以下の内容であった。

 

6年ぶり引き上げ勧告へ=国家公務員月給で人事院−民間をわずかに下回る公算
 人事院が8月に行う2007年度国家公務員給与改定勧告の基礎資料となる民間給与実態調査で、公務員の月給が民間をわずかに下回る見通しであることが25日分かった。これを受け同院は民間との格差を是正するため、01年勧告以来6年ぶりに公務員月給の引き上げを勧告する公算が大きくなった。 (時事通信)

 

 民間給与実態調査が詳しく記載されている資料国家公務員の給与実態の資料も公表されていたので、それもみたところ、大きな問題があった。勤務時間のデータがないのである。給与が高いか低いかを評価するには、勤務時間のデータが不可欠のはずである。なんで、こんないい加減なことをしているのか。人事院に勤めている東大将棋部の後輩の知的レベルからいえば、この程度のことはすぐにわかるはず。してみると、統計マジックの悪用?それとも、長年勤めて役人ボケしたか?
 

2007/07/22 G-file 4 バリウム検診で見落とされた8cm の表在型様食道癌 

 1996年3月上旬、検診センターのVIP会員で、大腸m癌を内視鏡的に切除していた社長さんが、来院。ドックの上部消化管バリウム検診で、胃のポリープが見つかったから取ってくれとのこと。さっそく、上部消化管内視鏡検査を行った。みると、確かに胃のポリープはあるのだが、それは、表面のピットパターンから、良性である。問題は、食道。食道下部、前歯から35cmから食道胃接合部まで、一見してわかる白色の平坦な病的変化がある。領域は、約8cmにわたっており、ヨードにて不染であった。病変の一部は結節上に隆起している。これらの所見から、病変は、粘膜下以深に浸潤している食道癌であることは、明白であった。5年生存率40%!

 

 内視鏡を終えて、1週間後、組織診断の結果は、内視鏡診断どおり、扁平上皮癌とのレポート。患者さんとその奥さんに、「胃のポリープは良性であったのだが、食道にちょっと放置できない病変がある。」と説明した。「放置すると、死ぬ可能性も否定できない。早く、手術をしたほうがよい。」とさらに付け加えた。すると、「癌ですか」と鋭く聞き返される。『癌を告知しなければ、この社長さん、手術を承諾しないだろう。また、社長なので、ご自身の真実の状態を知っておかないと、会社の運営にも困るであろう。癌を告知すれば、精神的なショックを受けるであろうが、ここは、きちんと説明するしかあるまい。』と考えて、「残念ながら、癌があって、助かるためには手術しなければならない。」と癌を告知をした。

 

 VIP会員の社長さんは、大変驚いた。「先生、私は、年に2回も検診センターで、胃や食道はバリウム検査を受けてきました。一度も欠かさず、毎回受けてきたのにどうして、8cmもの大きな食道癌ができるのですか?つい、一ヶ月前に、検診センターでは何もないといわれたばっかりなんですよ!」「検診センターは見落としたのでしょうか?」「フィルムを診てください。」 そこで、検診センターから、胃のポリープを取るために預かっていたバリウム写真の束の中から、食道の造影写真を取り出して、よく診たところ、確かに、内視鏡所見に一致する部位に、食道壁の乱れが認められる。「先生、癌はどの辺ですか?」「食道下部のこの辺りです。」「ここのぎざぎざしている辺りですか?」「この写真を見ると癌とわかりますか?」「これだけで、癌と確定的に断定はできませんが、疑うことは必要でしょうねぇ・・・・。」

 

 その後、社長さんその写真をもって検診センターに行ったらしい。あとで、検診センターの所長から「先生、どうしてうちを、かばってくれなかったのですか?」と強い抗議の電話があった。放置できない、すぐに手術が必要な8cmもの病変を目の前にして、医師として、開胸開腹という大手術 を、患者に同意させる必要のあった私は、なんと言って、検診センターをかばえば、よかったのであろうか。「検診センターのフィルムには食道癌は写っていませんでした。」とうそをつくべきであったのだろうか? しかし、フィルムは残っているのである。手術に際しては、何人かの先生方がそのフィルムをチェックするのである。まさか、「食道癌はありませんでしたが、開腹開胸の大手術してくださ い。」では、患者が納得しないのは明らかである。患者は無知ではない。

 

 私は、「検診センターは予め、誤診率を検診者に説明しておくべき」と思う。検診センターは「バリウム検診を受けていれば、癌にならない」というのような営業トーク を、VIP会員にも言っていたのであろう。それさえなければ、あんなに問題にはならなかったはずである。

 

 ちなみに、社長さんの手術は、東大同級生の食道癌手術の名人、梶山美明先生(現在、順天堂大学外科助教授)にお願いした。丁寧な手術(リンパ節を131個郭清切除、しかも、n=0/131)をしてもらった社長さんは、stageVであったにもかかわらず、いまだに、お元気である。

 

2007/07/15 G-file 3 目黒区胃癌検診 集団的誤診 

 いまの目黒区の庁舎は、土地投機バブルで失敗してつぶれた「千代田生命」のビルである。いまから、約10年前、目黒区の区庁舎が中央町にあり、まだ、中目黒に移ってくる前の話である。当時の区長は、汚職を摘発されて自殺した薬師寺さんであった。

 

 そのころの目黒区医師会は、2派閥が対立しており、ハードな医師会長選が行われた。結果、現職系の候補を破り、M会長が誕生した。M会長の下、医師会の人事が刷新されて、私は、目黒区医師会のがん検診委員となった。

 

 さて、その初会合のとき、がん検診委員長(肝臓の専門医)が言うには、「昨年度の目黒区の胃癌検診の予算は1600万円でした。その予算を医師会が引き受け区民の検診をしているのですが、胃癌の発見は0人という成績でした。ここ数年、胃癌発見者は0人ないし1人という成績が続いています。大変な問題だと思うのですが、 田渕先生何かご意見はありませんか?」と振られた。

 

 当時、一般に、がん検診は、「一人の癌患者を見つけるのに必要な費用が、230万円より上か下か」が、検診のよしあしの分かれ目とされていた。目黒区の胃がん検診は、その基準からいえば、まったくの不合格であった。がん検診委員長が、「大変な問題」というのも、尤もなことなのであった。

 

 当時の目黒区の胃癌検診の仕組みは、まず、年齢などで絞り込んだ対象住民に、胃癌検診のはがきを出す。はがきを見たうちの希望者に対して、碑文谷保健所でレントゲン車によるバリウムによる胃二重造影(検診用の直径10cmぐらいの写真撮影10枚程度)を無料 (=区の予算)で行い、所見のある人を拾い上げて、要精密検査の指示を郵送する。そして、区内の医療機関で、さらに、内視鏡検査もしくは二度目の通常の胃のバリウム二重造影検査(A4サイズの写真撮影)といった精密検査(無料 =区の予算)を受けるというシステムであった。

 

 私は、さらに以前、東京共済病院に勤務していたころ、目黒区医師会からの依頼で、碑文谷保健所で撮影した、検診用のフィルムを読影していた。その画像は、 残念ながら、読影に耐えられる代物ではなかった。バリウムが胃粘膜にきちんとのっていないし、バリウムがすぐに十二指腸の第3部分へ流れていて、胃と重なってしまっているのである。当時の読影は、東邦大学大橋病院の消化器医と東京共済病院の消化器医で担当していたのであるが、一緒に読む、東邦の先生方も私と同じ感想を持っていた。「こんな写真では、読めない!」

 

 「この写真なんとかならないのか?」と、医師会の担当の先生に、撮影しているレントゲン技師さんにクレイムをいってほしいと、お願いしたところ、翌月に返ってきた答えは、「看護婦も医師もついていないので、胃の動きをとめる注射ができない。したがって、バリウムが十二指腸の第3部分 へ流れるのは、避けられない。車なので、写真のサイズは変えられない。」というもので、要は現状を変えられないと返事であった。

 

 読影の席で、取りまとめ役の医師会の先生は、「7〜8%ぐらい拾い上げてください」と、我々にリクエストした。読めない画像を前に、我々は、その人の年齢や、問診内容で、要精密検診者を決めていたのである。したがって、1600万円の胃癌検診で一人も癌が見つからないのも、当然といえば当然としか言いようのない結果なのであった。

 

 私は、目黒区がん検診委員長に、以上のような事情を説明した。そして、東大の三木一正先輩が開発した、ペプシノーゲン法による胃癌検診を提案した。興味を示した委員長は、早速、三木一正先生に目黒区医師会での講演を依頼した。三木一正先生は講演を快諾してくださり、講演は実現した。

 

 胃癌は、慢性胃炎の進行した状態で、出やすくなる。ペプシノーゲンは、慢性胃炎の進行度を示す指標である。検診対象者の血液中のペプシノーゲンを測り、慢性胃炎の悪いほう約7〜8%を、要精密者として、内視鏡による精密検診をおこなうというシステムを三木先生は紹介した。足立区では、同じ1600万円の予算で、このペプシノーゲン法を採用して、一年で23人の胃癌患者を発見していた。

 

 やっと1人見つけられる目黒区のシステムと、同じ予算で23人も見つけた足立区のシステムと、どちらが優れているか、論議の余地などなかった。目黒区医師会のがん検診委員会は全員一致で、ペプシノーゲン法の採用を採択した。そして、がん検診委員長は、早速、区の担当者に、胃癌検診にペプシノーゲン法を採用したい旨、申し出た。

 

 区の返事は意外なものであった。「ペプシノーゲン法を採用すると、レントゲン技師が不要になってしまうので、碑文谷の2人のレントゲン技師が在職の間は、ペプシノーゲン法は採用できない。」と。レントゲン撮影をするという手段が目的化して、本来の目的、胃癌患者をより多く、より早く見つけて人の命を救うという目的が、忘れられているのだ。

 

 その後、人の命の重さよりも官僚システムを重視した、目黒区の薬師寺さんは、汚職が発覚して自殺した。そして、当時、ペプシノーゲン法を導入した足立区長Yさんは、その後すぐに、 議会からの不信任決議が採択されて、リコールされた。かれは小数会派(共産党)であったのだ。

 

 慢性胃炎は、胃癌の発生母地であり、慢性胃炎の原因の90%はピロリ菌である。慢性胃炎に対するピロリ菌治療は、学会での議論確定15年たった今でも、社会保険では認められていない。

 

 今年も、厚生労働省はいう、胃癌の検診は内視鏡よりもレントゲンが基本と。日本の医療の霧は、政治によってますます、深く濃くなっている。中世、ガリレオガリレイは、地球は太陽の周りを回っているとする地動説を唱えたが、その内容は当時の権力者、カトリック教会には受け入れられず、迫害された。  

 

 

2007/07/10 G-file 2 驚いた見落とし?!誤診の陰に政治あり。政は虎よりも猛し。 

 その人の父親は、胃癌で死んでいた。享年57歳。彼は、不動産事業に成功して、財を築き、1970年代はじめに、PL検診センターにVIP会員として150万円払って入会した。渋谷のマンションが1000万円しない時代に、150万円は大金である。しかし、胃癌で死んだ父のことを考えると、事業で成功した43歳の彼にとって、150万円は納得できる金額であったのだろう。まじめな彼は、以来、半年に一回、一回も欠かすことなく、検診を受けた。胃の検診はずっとバリウム造影検査で行われていた。

 

 1990年ごろ、60歳前半の彼は、便潜血反応が陽性となり、PL検診センターから、大腸内視鏡検査の目的で、私に紹介された。大腸内視鏡の結果、大腸腫瘍が5−6個見つかり、すべて内視鏡的に切除。彼は私を気に入ってくれ、奥さんも私に紹介。奥さんにも大腸ポリープが見つかりと彼ともども、1−2年に1回大腸内視鏡の検査を行っていた。

 

 2001年、しばらく顔を見せていなかった長身の彼が、突然ふらりと来院して言うことには、「先生、いつもしている、半年に一回のPL検診で、先日、5センチの潰瘍が一つあるから、胃の手術をするようにいわれました。ほんとに切らなければならないのか、診てくれませんか?」と。さっそく、上部消化管内視鏡検査(通称、胃カメラ)を実施。胃体部後壁に、ボールマン3型の5−6cm大の大きな癌がある。さらに驚いたことには、それより少し奥の、胃幽門部後壁にも、約4−5cm大のボールマン3型の癌があった。ダブル胃癌である。半年前の検査で見つからなかったというのが不思議なくらい大きな2つの癌だった。まじめな彼にとって、それは、文字道理の「驚き」であったろう。なにせ、150万円(今だと1000万円くらい)支払ったVIP会員なのである。

 

 私は半年前のバリウム造影の写真を実際に診たわけではないので、断言しにくいが、後壁はバリウム検査のスイートスポットであることから考えても、半年前の胃のバリウム検査で2つの胃癌はおそらく見落とされたのだろうと思った。 PL検診センターは、毎日150人から200人もの検診を行うのだが、胃のバリウム造影は技師が行い、読影は一人の医師が担当するという体制なのであった。「S先生、一人で一日2000枚も読むんだ、きっと疲れて見落としたんだろうな・・・・。そういえば、センター長も事務長も看護師長も「保険者が安い検診を求めるから、検診原価を一円でも安くしたい。」と言っていたなぁ・・・・。そういえば、誰か、あそこの給与は相場の7割ってぼやいていたよなぁ・・・・。」

 

 私は、東大病院に、彼を紹介。彼は開腹手術を受けた。しかし、癌は既に肝臓に多発転移していた。TS1が効いて、しばらく、生き永らえたが、結局2004年夏に死亡。彼は、父と同じ胃癌で死んだのであった。胃癌の家族内集積は、単に遺伝性というだけでなく、同じ食べ物を媒介として、発癌力の強い同じピロリ菌に感染しているという環境的要因もある。

 

 その秋、奥さんが来院して、「先生方には、ほんとうに、よくしていただきました。ありがとうございました。」と涙をこらえて言ってくれた。もっと言いたかったことがあるはずなのに、ぐっとこらえた姿に、彼女の本当に深い悲しみを感じた。

 

 一般に、胃癌の早期発見率について、内視鏡検診はバリウム検診の3倍というデータが、内視鏡がまだファイバーであった1980年代からある。それが、わかっていても、バリウム検診が、いまなお、続いているのは、レントゲン技師の雇用のため、コスト削減のため、内視鏡医師不足のためである。

 

 今年も、厚生労働省はいう、胃癌の検診は内視鏡よりもレントゲンが基本と。「苛政は虎よりも猛し。」とは、中国の古いことわざであるが、現代の日本にも、通用しているのは、真に残念なことだ。

 

2007/07/01 G-file 1 注腸検査では病変の存在否定は難しい。 

 医師にとって誤診とは、恥である。ただし、医師の未熟というより診断システムの問題により、現実には致し方ない場合もある。裏返していうと、その恥の気持ちが、各種検査機種(レントゲンとか、CTとかMRIとか、ECHOとか、内視鏡とか、PETとか)の開発に結びついているともいえる。

 さて、大学時代、小坂第三内科教授の退官記念講演のテーマは「誤診率」であった。先生は講演の中で、「誤診率のトップは、注腸検査であった。」と述べられた。「ときには、進行癌ですら注腸検査では見落とされている」とも。学生であった私は、「そんな馬鹿な、進行癌なんか見落とすはずがないではないか」と思った。なぜなら、進行癌は通常3cm以上有り、よほど、前処置が悪くても、わかるのではないかと思ったのだ。

 そして、時はめぐって、研修医時代、実際に注腸を行う立場になって、わかった。注腸は本当に難しいのだ。前処置が悪いとまず分からないといっていい。体位変換をして、腸の内容物を動かし、それでも壁についているものは病変で、流れるものは便なのだが、腸の曲がりくねった形態や、腸の収縮、便の多さなどで、病変が紛れてしまうのだ。さらに、時はめぐって、常勤医時代、注腸でs状結腸に小さなポリープが見つかったといって、 PL検診センターから紹介された患者の大腸内視鏡検査をやって驚いた。盲腸に大きな進行癌があったのである。同様のことが、2-3回続いた。また、当時、私は大腸内視鏡検査で、平坦な大腸腫瘍を数多く見つけており、注腸の原理的な限界にも気がついた。それ以降、私は注腸による存在否定診断はしないことにしている。

 このような思いを、我々の世代の消化器専門医はそれなりに経験したために、大腸検査といえば注腸よりも内視鏡検査という常識が生まれ、内視鏡技術の進展につながったのである。「注腸の誤診率は高い!」、小坂先生の言ったとおりであった。

 

2007/06/25 Difficult Polyp 直径4cmの亜有茎性大腸ポリープの切除 

 最近、とある患者さんが来院。まだ、50歳前というのに、聞けば、S字状結腸に亜有茎性の約4cmの大腸ポリープがあって、都内の有名な国立病院で開腹手術を勧められているという。しかし、患者さんは、いろいろな社会的・家庭的諸事情で、どうしても、おなかを開けたくない。そこで、何とか、内視鏡的にその大きな大腸ポリープを切除できないものかと思い、インターネットで調べ上げて、「この先生なら、内視鏡で大腸ポリープを取ってくれるのでは!?」と思い、私のところに来たとのこと。

 

 確かに、私は、これまでに4cm以上のポリープを、百個単位の数字で、内視鏡的に切除してきている。最高6cmの大腸ポリープも内視鏡的に切除したことがある。ただし、固有筋層まで浸潤した進行癌や、粘膜下層の深くに浸潤した癌は、内視鏡的に切除できない。内視鏡的切除の適応条件は、大腸の場合、病変が粘膜内に留まるか、もしくは、浸潤しても病変が粘膜下層の浅くにとどまることである。

 

 「なぜ、開腹手術を勧められたのですか?」と聞くと、「病理検査でははっきりと癌細胞が見つかったわけではないが、バリウム造影によるレントゲン検査で大腸壁の変形が強く、病変の一部が癌化して、粘膜下に深く浸潤している可能性があるから。」といわれたとのこと。「病理検査で腺腫であっても病変の一部が癌化していることも多く、取らなければ、癌が進行する危険性が高い。」ともいわれたそうだ。

 確かにそれは正しい。だが、大きなポリープの表面の組織検査で、腺腫の診断が出ている場合、仮に、病変の一部が癌化しているとしても、一般に、80−90%の病変は癌が粘膜下に浸潤していない。また、亜有茎性のポリープの場合、バリウム造影レントゲン検査の深達度診断の正診率は50−70%ぐらいでそんなに高くない。

 

 そこで、拡大内視鏡で、病変をみた。表面には、浸潤に特徴的なびらんはなく、浸潤を示唆する微細文様、pit pattern Xnもない。ただし、病変は大きく、大腸の管腔をほぼ塞いでいて、切除は技術を要する状況である。

 熟練した内視鏡医なら、こういった病変は、まずは取ってみるとしたものである。取った標本をみて、病変が癌化していたどうか、粘膜下層まで癌が浸潤してるかどうか、そして、癌の転移のリスクファクターの有無(すなわち、癌細胞の血管やリンパ管への浸潤と癌先端の組織の異型度)を正確に診断して、その後、追加の開腹手術リンパ節郭清手術が必要かどうか、判断するわけである。組織を顕微鏡で見れば、診断は99.9%正しい。治療方針を正しく決めるためには、内視鏡的切除が一番正しい診断方法でもあるのだ。(こういうのを、治療的診断とも、診断的治療ともいう。)

 日を改めて、内視鏡的切除を行った。ちょっとしたテクニックを使って安全にきれいに病変を切除した。術後は穿孔と出血を避けるために2−3日入院してもらった。病理結果の結果、腺腫内には、巣状に癌細胞の集団があったものの、腫瘍は粘膜下に浸潤しておらず、追加の開腹手術は、とりあえず、不要となった。

 

 ある疑問が湧き、「その国立病院では、どんな先生に診てもらいましたか?」と患者さんに尋ねた。「まず、若い先生に診てもらい、大腸検査も痛かったです。そこで、まず、すごく不安になりました。さらに、その後、いろんな先生が出てきて、なんだか、「たらい回し」された感じでした。」とのこと。

 今、一部の公立病院では、熟練した医師が、過剰勤務と相対的に低い給与体系から、燃え尽きてしまっているという「うわさ」だ。何せ、病院に支払われるお金の多寡は、看護師の数や病名で決まるのであって、ポリープの取り方のうまさで決まるのではないのである から。

 

2007/06/14 老人に対する社会保険行政の危機が露見 

1)介護事業大手のコムスン、組織的巨大不正請求が行政処分に、事実上の廃止へ。

2)一方では、社会保険庁の年金納付記録の紛失 さらに 1400万件!国民年金も納付記録削除?!

 

 東大で、皇太子の十二指腸腺腫の切除が成功裏に進んでいたとき、日本の老後を揺さぶる、大問題が2つ起こってきた。

 

 ひとつは、介護保険をおこなう、グッドウィルグループ率いるコムスンが、組織的巨大不正請求を行っていたとして、行政処分を受けたことだ。処分の内容は、向こう4年間の介護施設の更新、新規設立を認めないというものだった。つまり、事実上の公的老後ビジネスからの退場を、厚生労働省がコムスンに突きつけた形だ。これに対して、コムスンの親会社グッドウィルグループは、系列の別の会社を立ち上げると表明。これに対して、「脱法的だ、法の精神に反する」ということで、社会的批判がおこった。これに対して、グッドウィルグループの社長は、資本を異にする他の企業に事業を売り渡すことも検討し始めたらしい。

 

 介護保険では、不正請求が横行しているらしく、コムスンに限らず、他の業者でも、保険金の返還が相次いでいるらしい。

 老人の介護を、公的にする場合の難しさが露呈した形だ。老人介護を行う動機が、お金儲けということだけで、大丈夫なのかという問題なのだと思う。老人をみるには、お金だけでなく、やはり愛情、信念、思想というものも必要なのではないだろうか。

 

 もうひとつは、年金の問題だ。年金納付記録の消失がさらに1400万件見つかったのだ。あらかじめお金を収めたのに、記録が社会保険庁のミスで、6500万件の納付記録が消失し、給付金が減るということなのだ。それだけでも、大変なことなのに、その後の対応も稚拙を極めている。年金相談24時間受付と発表しながら、実際には応対する人間が集まらず、午後10時までの対応だったり、また、47万件の電話があったのにわずか1万件しかつながらなかったりとか・・・・、といった対応のまずさに、国民はみんな、あきれるやら、怒るやら。一方では、国民年金でも昔大量の納付記録の破棄があったとか・・・。いまや、役人に対する怒りと不信感が広く世の中を覆っている。

 

 制度を整えて、しろあり退治をせねば、日本政府はもう、つぶれるだろう。

 

2007/06/14 老人問題の行政危機は、「家族」重視政策で解決を 

 

 さて、このような問題がおこる根本には、制度の無理があると思う。老人を誰が世話して、どう生計を立てるのか?この問題は、実は、故橋本龍太郎首相が1990年代に皆に突きつけた質問に由来する。橋本首相は国民に向かって、「老人をみるのは、家族ですか?それとも、国ですか?」と尋ね、「私のかなえは長男の嫁で、長年の親の世話で、大変でした。ですから、国が老人をみます。」と述べた。思うに、これは、戦後政治が究極のスパルタ的志向の体制であったことを物語るものであろう。家族よりも個人を大事とする、一見かっこいい個人主義思想のように見えるが、実際は、個人と政府を直接つないだスパルタ的集団主義に他ならない。個人は政府とのつながりで生きるということなのだ。

 

 歴史に学べば、家族という仕組みを破壊した、集団主義のスパルタの隆盛は一代限り。結局、家族中心主義を貫いたアテネに、ギリシャの覇権は集まるのである。お亡くなりになった橋本首相は、こういった歴史をご存知であったのであろうか?また、中国では戦国時代は法家の思想を取り入れた秦が覇者となり統一を遂げたあと、平和な時代には、家族を重んじる愛を中心とした思想、孔子、孟子の儒家の思想のもとに、漢は平和と繁栄を極めていくのである。第二次世界大戦後の廃墟の中からの復興には、集団主義は有効であったが、核兵器のかさのもと平和の続く現代においては、集団主義こそ時代遅れなのではないだろうか。集団主義がモラルハザードに結びつき、社会が倒れ てしまった姿は、毛沢東の大躍進政策の失敗、ソビエトの崩壊など、現代史にも明らかである。わが日本でも、今まさに、モラルハザードが露見し、問題化してきているのだ。一方、シンガポールのリカンユウは、家族重視の保険政策を成功させた。

 

 家族は、人類を未来へつなぐタイムカプセルだ。家族は、過去から未来へ、時を超えて我々人間をつないでいく大事な仕組みなのである。あまりに本能的な仕組みなので軽視されてしまってるように思う。家族を大事にするという枠組みの中で、老人問題も考えなければならないのではないだろうか。老親、親、子、孫とつながって暮らす仕組みをサポートする政治が、今の日本に必要だと思う。それが、出生率の改善にもつながるだろう。文化の継承にもつながるだろう。老後は子にみてもらうとなれば、子供を大事に育てるだろう。子供の虐待も減るであろう。

 

 人間の夢は一代ではかなわないことも多い。何代もかけてかなうこともある。

 

  家族というシステムの社会における重要さを考慮すると、相続税は廃止すべきだ。世界には相続税のない国が多い。日本も天皇の世紀(大化の改心以後の奈良大和朝廷時代から平安時代初期までと明治維新以後から現代まで)以外は、相続税がなかった。

 また、子供にも選挙権を与えよう。20歳までは親権者が、子供に代わって投票することにすればいい。 そうすれば、必然的に子供を大事にする政策をとる政党に票が集まるだろう。子供を大切にといいながら、事実上子供は政治からはずされているのが現況だ。

 同様に、認知症の老人を大切にと考えているなら、世話をする子供が、老親に代わって投票できるようにしたら、いいと思う。

 

2007/06/06  テレビ朝日出演、「皇太子殿下、十二指腸亜有茎性腺腫で内視鏡手術へ」という宮内庁発表の解説を行う。

 今日は、テレビ朝日のお昼の番組ワイドスクランブルに出演して、宮内庁発表を解説してきた。ポイントは亜有茎性とはなにか?腺腫とは何か?病気の原因は?症状は?取り方は?入院日数が1週間と長いのはなぜか?などなどであった。番組の出演メンバーは、大和田獏さんと大下容子アナウンサーが司会者で、山本晋也監督と川村晃司さんがコメンテイター、レポーターは荒木茂彦さんという構成であった。

 午前11時ごろ、テレ朝に担当ディレクターの渡邊崇さんの案内で入棟。ロビーから続く広い廊下に、大売出しのビラのように、朱書きされた、番組名と視聴率のビラが何十枚も張ってある。視聴率競争って、すごいんだ、なんだか予備校みたいと思いながら、控え室へ入る。控え室は8畳程度の広さで、一部が4畳半の青畳となっている。洗面台と鏡があり、オートロックの分厚いドアであった。そこでディレクターと打ち合わせをしてから、化粧コーナーへ。どこかテレビで見たような人たち、アナウンサーや俳優の人たちがいる。隣にいた、テレビでよく見る美人のアナウンサーさんと「おはようございます」と挨拶を交わして、ここは、テレビ局なんだと妙に納得してしまった。

 本番は、生出演。始まる前は、少し緊張して、動悸を感じた。皇室のビデオが流れている間に席につき、off-airの間、山本晋也監督から「ポリープと腺腫はどう違うのか?」とか「内視鏡の名人という基準は何か?」「先生は自分の検査はどうしているの?」とか、あれやこれやと質問攻めにあって、すっかりいつものお医者さん気分になって、ちょっとリラックス。本番では、皆さんの誘導にしたがって、打ち合わせの順ですらすらと話が進んだ。パネルを示しながら、「亜有茎性とは半球状の形です。腺腫は良性ですが、突然、悪性化してしまう可能性があるので切除の必要があります。十二指腸腺腫の原因は年齢と遺伝などです。十二指腸ポリープに症状は特にありません。入院日数が長いところから見ると皇太子殿下の十二指腸腺腫は大きいのでしょう。」と。さらに、山本監督はわざとボケをいい、パネルの説明を求めて、取り方を示すタイミングを与えてくれた。ボールペンで、ここを切るのだと、粘膜下層を指し示した。川村さんから、「切った後は再発がないのか?」と打ち合わせにない質問が飛んだ。一瞬戸惑ったが、「時々あります。」と答えた。東大のあのメンバーなら、切り残し て局所遺残ということはなかろうが、腺腫は多発しやすいので、別の腺腫が新たに発生して、再発ということが十分ありうるのである。

 それにしても、山本晋也監督の巧みな話術と頭の切れには、すっかり感心してしまった。

 

2007/06/06 皇太子殿下は名川教授の下でESD(内視鏡的粘膜下層切開剥離術)による十二指腸ポリープ切除に成功。穿孔と後出血(コウシュッケツ)のリスクは?  

皇太子さま、ポリープ切除手術が無事終了(2007年6月6日19時41分  読売新聞)

 皇太子さまの手術を担当した東大病院の名川弘一教授らが6日夕、記者会見し、十二指腸に見つかったポリープの切除について「予定通り順調に進み、成功裏に終わった」と説明した。 名川教授によると、手術は軽い全身麻酔をかけたうえで口から内視鏡を挿入し、先端の電気メスでポリープを切除する「内視鏡的粘膜下層切開剥離(はくり)術(ESD)」で行われた。ポリープは2センチに満たない人さし指の先ほどで、出血もなく、1時間10分で終了した。 麻酔から覚めた皇太子さまは呼びかけに「大丈夫です。もう終わったんですか」と尋ねられ、病室でベッドの周囲を歩かれて痛みもなかったという。 胃酸を抑える薬を投与し、早ければ8日夜からおもゆで食事を再開、1週間ほど経過を見た後、東宮御所でさらに静養される。切除したポリープは念のため病理検査するという。

皇太子さま:ポリープ除去の手術、無事終了  毎日新聞 2007年6月6日 22時19分 (最終更新時間 6月6日 22時41分)

 東京大医学部付属病院(東京都文京区)で行われていた皇太子さまの十二指腸ポリープを取り除く手術は、6日午前に無事終了した。午後、治療を担当した名川弘一・医学部付属病院教授らが手術の模様を説明した。手術は午前10時10分から始まり、約1時間10分で無事終了した。出血はほとんどなかったという。切除部分は念のために病理検査する。ポリープの大きさは人さし指の第一関節程度だった。流動食の後、数日後に普通の食事ができるようになるという。【真鍋光之】

皇太子さまのポリープ手術成功 (日経新聞2007年6月6日22:00)

 東大病院で6日実施した皇太子さまの十二指腸ポリープ切除について、担当医の名川弘一教授が同日午後に記者会見し「手術は成功した」と発表した。約1週間入院し、経過を見るという。
名川教授によると、手術は午前10時10分から約1時間10分で終了。内視鏡の電気メスで十二指腸にできた人さし指の先端ぐらいの大きさのポリープを切除した。教授が術後、「大丈夫ですか」と声をかけると、皇太子さまは「大丈夫です。もう終わったのですか」と答えられた。病室では雅子さまと会話し、ベッドの周りを歩かれたという。

 新聞各紙がインターネットで伝えるところを見ると、ポリープは約2cmぐらいだったようだ。ESDなのに出血が少なかった所を見ると、病変び付着部は十二指腸の大わん側にあったのではないかと思われる。術後の遅発穿孔は、確率は1%以下だが、48時間まではありえる。その期間は絶食が必要。それで、8日の夜(術後2日目)に初めておもゆ、ということである。後出血の確率は約5%ぐらいである。後出血の半数ははじめの3日までにおこるが、2週間までは起こりうる。それで、2週間の安静療養なのだ。ともあれ、手術が順調に終わって、ひとまず安心した。皆さん、ご苦労様でした。

 

2007/06/01 皇太子殿下 十二指腸腺腫になる。 十二指腸ポリープの内視鏡的治療のポイント 

皇太子さま、6日にポリープ切除手術 2007年5月31日19時53分  読売新聞)

 宮内庁は31日、十二指腸にポリープが見つかった皇太子さまが6月5日に東大病院に入院、翌6日に内視鏡を使った切除手術を受けられる、と発表した。手術後も約2週間の入院と静養が必要という。記者会見した金沢一郎・皇室医務主管によると、皇太子さまは3月24日の定期健康診断でポリープが一つ見つかり、5月12日には内視鏡で組織片を採取、顕微鏡で検査したところ、ポリープは良性と診断された。十二指腸のポリープ切除手術は胃などと違って切除部位が傷付きやすく、皇太子さまのポリープは非常に珍しい場所にあるという。金沢医務主管は「万全を期すため、東大病院で手術することにした」と述べた。手術後は同病院で約1週間の入院、退院後もお住まいの東宮御所で約1週間の静養が必要という。

皇太子さま、6月6日に東大病院でポリープ切除 (2007年5月31日23:00 日経新聞)

 宮内庁は31日、皇太子さまの十二指腸ポリープの切除を、6月6日に東京大学医学部付属病院で行うと発表した。内視鏡を使った切除術で、開腹はしない。5日から約1週間入院し、退院後も東宮御所で少なくとも1週間静養される。同庁によると、ポリープは「亜有茎性良性腺腫」で、大きなものではないという。ただ十二指腸のポリープは症例が少ないため、万全を期して東大病院で専門医らが切除する。皇太子さまは3月24日に宮内庁病院で健康診断を受けられた際に十二指腸ポリープが見つかり、5月12日に同病院で組織片を採取して詳しく調べていた。

皇太子さま、6日にポリープ切除=東大付属病院で−術後1週間入院・宮内庁  5月31日18時0分配信 時事通信

 宮内庁は31日、皇太子さまの十二指腸に見つかったポリープについて、6月5日に東大医学部付属病院(東京都文京区)に入院され、6日に内視鏡で切除すると発表した。皇太子さまは、3月24日の定期健診で十二指腸にポリープが見つかり、5月12日に宮内庁病院で内視鏡で検査を行った。その結果、ポリープは亜有茎性良性腺腫と確認された。十二指腸のポリープは1万人に2、3人程度の珍しいものであるため、万全を期すため設備や人員が整った東大医学部付属病院で切除し、術後の経過も慎重に診る必要があるという。切除後1週間前後入院し、退院後も少なくとも1週間はお住まいの東宮御所で静養する。

東大病院は万全の体制で内視鏡手術へ

 マスコミ各社が、5月31日、一斉に報じたところによると、皇太子殿下の十二指腸ポリープは、亜有茎性の良性腺腫で、発生部位は腺腫としては非常に珍しい場所とのことである。そして、6月6日に東大病院で切除されることになった。東大病院で行うのは術中の穿孔や大出血に備えてのことである。術後2週間の安静を予定したのは、後出血を危惧しているためである。私は十二指腸も含めて、各種ポリープを山のように取ってきたが、穿孔という偶発症は、万が一といったレベルだが、やはり、一定の率でおきてしまう。病変が大きくなると、穿孔や大出血という偶発症の危険率も上がる。偶発症発生のときは、開腹してでも助けようということなのだ。ちなみに、「十二指腸ポリープは1万人に2−3人」という時事通信の報道には、疑問がある。十二指腸ポリープは、2−3人に一人にはあるありふれた病変である。おそらく、今回の皇太子の十二指腸ポリープ、つまり、亜有茎性の腺腫に限ってのコメントを、解釈し間違えたものと考えられる。

 さて、一般に、十二指腸というのは、結構特殊なところである。管腔がせまく、空気の入れ方によっても、スコープの動かし方にかなり制限を受ける。また、十二指腸壁は、1mmの薄さの大腸よりもさらに薄い。特に、膵臓で裏打ちされていないところの、内視鏡的処置は穿孔しないように細心の注意が必要だ。筋層と病変の間に液体を注入して、穿孔のリスクを減らすEMR法を採用するのも一法だろう。十二指腸では、キャップ法やITナイフは穿孔例の報告が多いので、お勧めできない。スネアで切断するとき、通電して妙に硬い感じがしたら、筋層をつかんでいる可能性が高いので、スネアの握りなおしが必要だ。スネアは腰の強すぎるのは避けたほうがよい。病変が大きかったり、特殊な形をしていてスネアがうまくかからないときは、無理に一括切除しようとするより、分割切除のほうが穿孔のリスクは低い。また、十二指腸ポリープは切除後に病変が奥へ落ちていくと予想されるので、病理標本を確実に得るためには、2チャンネルスコープを用いて、ダブルスネア法でやるのがいいだろう。

 

2007/05/30  がん対策の政府案・厚生労働省案がまとまる。しかし、これでは癌死亡が減らないのは明白。真理に目をそむけず、学問の進歩を学んで、効果的な政策を取ってほしい。   

 本日、以下のような報道が流れた。

<がん対策>10年内に死亡率20%減少へ 推進協が計画案  5月30日22時17分配信 毎日新聞

政府のがん対策推進協議会(会長、垣添忠生・日本対がん協会長)は30日、がん対策基本法に基づく「がん対策推進基本計画」案をまとめた。がんによる死亡率(75歳未満)を10年以内に20%減少させ、患者・家族の苦痛軽減と療養生活の質を向上させることを全体目標に掲げた。計画は6月中に閣議決定される見通しで、患者の声を大幅に取り入れた初のがん対策が動き出す。がんは81年から日本人の死因第1位で、現在も年間30万人以上が死亡している。政府は84年度以降、3次にわたる「対がん10カ年総合戦略」を進めているが、今回の基本計画は、法律に基づく初の計画。策定には患者代表4人が参加した。計画は重点課題として、放射線療法と化学療法(抗がん剤治療)の充実▽痛みを軽減する緩和ケアの推進▽患者の予後などを調査する「がん登録」の整備――を提示。実現するための対策も提言している。一方、協議会がいったんは合意した「喫煙率半減」の目標は盛り込まれなかった。計画に付帯される委員の意見集に「数値目標として掲げることが望ましい」と記載するにとどまった。【須田桃子】
 <がん対策推進基本計画の骨子>
 ■全体目標
▽10年以内に死亡率の20%減少
▽患者・家族の苦痛の軽減と療養生活の質の向上
 ■重点課題と主な目標
▽放射線療法や化学療法の推進=5年以内に全拠点病院で実施体制を整備
▽治療の初期段階からの緩和ケアの実施=10年以内に、がん治療に携わる全医師が緩和ケアの基本知識を習得
▽がん登録の推進=5年以内に全拠点病院の担当者が研修を受講
 ■その他の主な施策と個別目標
▽在宅医療を選択できる患者数の増加
▽3年以内に全2次医療圏で相談支援センターを整備
▽5年以内に乳がんや大腸がんなどの検診受診率を50%以上にアップ

 結論から言うと、これではだめである。敗戦濃厚だ。

 重点課題として、1)放射線療法や化学療法の推進がうたわれているが、現時点の化学療法・放射線療法は、生存期間は延長するが、5年生存率は改善しないというのが定説。したがって、この方法では死亡率は減らない。内部矛盾している案だ。2)また、緩和ケアというのは、そんなに難しいものでなく、患者に愛情を持っていれば習得は簡単。薬も昔に比べて随分よくなっている。むしろ、医師が患者に愛情をもてるような環境を作れるかどうかが問題。いまや、医師の労働環境は劣悪化している。3)癌登録は悪くはないが、だからといって、集団で同じことをしていると、現況は打破できまい。いろんなことを試すものがいたほうが、ブレイクスルーは生まれやすい。進行癌や転移がんに対する治療は、以前に比べれば進歩しているが、大局的には手詰まり状態が続いている。4)むしろ、分子病理学の進展・応用による新薬の開発・促進が急務であろう。5)現況で、癌の数を減らすには、癌の原因を除去するのがもっとも効果的である。たばこ、ピロリ菌、肝炎ウィルス、アルコール、パピローマウィルス。分かっているのになぜやらないのか?やろうとしないのか?

 私が会長であれば、次のような政策を掲げるであろう。

1)たばこの販売禁止。

2)国民全員に対するピロリ菌の検査と陽性者の除菌。

3)国民全体に対する肝炎ウィルス、パピローマウィルスの検査と治療、ハイリスク者に対する濃厚検診。(一方ではローリスク者の検診免除)。 

4)胃癌、食道癌、乳癌、大腸癌などは、検診を社会保険加入の要件として、検診の受診率を上げる。

 

2007/05/29  東京 1)松岡農林水産大臣 自殺 2)社会保険庁:年金納付記録紛失 5095万件!

 5月28日米国から帰国したら、衝撃的な事件が2つ起こっていた。ひとつは、松岡農林水産大臣自殺。緑資源機構の官製談合事件の追及を逃れるための自殺であったのは誰の目にも明らかである。またひとつは、社会保険庁の年金納付記録紛失5095万件、すごい数字だ。社会保険庁も相当おかしい。解体が決まり、職員のモラル低下は目を覆うばかりの惨状である。

 1990年代初頭に始まったIT革命と、東西冷戦消失による世界貿易の活性化により、いまや、国はその体制を競い合う時代に突入している。資本、人材、情報が国境を越えてダイナミックに動いている。明日の発展が期待できない国には、資本や人材が集まらず、衰退している。明日の期待される国には資本も人も集まってますます繁栄している。高い公的強制納付金(税金や健康保険、年金)と低い行政サービス、不正の横行する非効率な政府があるわが国からは、今後、さらに資本や人材が国外に流出していき、このままでは、衰退の一途をたどることになるのは明白だ。衰退とは、他の国では治せる病気を、日本では治せないということだ。例えば、慢性胃炎のピロリ菌退治のように。

 不正を正し、無駄をなくし、効率的で機能的な政府を作るという政策こそが、わが日本国が滅びないための急務の課題であろう。

5)不正を正すため、予算執行におけるお金の流れを、すべて、ガラス張りにする必要がある。予算執行はすべて電子マネーを使い、誰がいつ誰に対していくら、どういう名目で、予算を動かしたか、インターネットに公表すべきだ。

6)また、行政サービスの効率化と機能化のために、米国のようなソーシャルセキュリティカードのような、個人を特定できるカードを作り、それを行政サービスの基本とする必要がある。

 しかし、よく考えてみると、

7)一番大事なのは、政治家や官僚からシロアリ精神を排除することだ。戦後、先輩たちが苦労の末に築きあげた建物を、えさとして、むさぼるのは止めてほしい。

 

2007/05/24 ワシントン  2004年現大統領ジョージWブッシュ建立 第二次世界大戦石碑、ミッドウェイ海戦 危機を乗り切った米国の信念と技術と勇気 

 5月19日から5月24日までワシントンで米国消化器病週間(DDW)が開催された。5月のワシントンは、気持ちのよい青空であった。リンカーン記念館から見る独立記念塔は、北国特有の5月の北西から強い夕日を浴びて輝き、天を突き刺し立っていた。今回のワシントンは、33年ぶりの訪問であった。以前は、ホワイトハウスの執務室まで見学できたのだが、今回は、ホワイトハウスをはるか遠く500mぐらいのところからしか見ることができず、残念であった。2001年の9/11世界貿易センター事件以来の、タリバンやイラクをはじめとするイスラムとの戦いが、ホワイトハウスを開放できない最大の理由であろう。昨年秋、モスクワのクレムリンには、数十メートルまで近づけたのだが・・・・・。ただし、その代わりに、スミソニアン航空博物館が面白かった。アポロ計画による月探査や、各種のロケットの展示に迫力があった。

 ところで、観光して驚いたことがあった。独立記念塔の脇に、現在大統領をしている、ジョージWブッシュが第二次世界大戦記念のモニュメントを建立していた。その中に、第二次世界大戦で米国と日本の勝敗の分岐点となったミッドウェイ海戦の一文があった。米国は、開戦前、負ける可能性が高いと考えていたようなのだ。その危機感の高揚と迅速性が、レーダーをはじめとする技術の優位と、空母をたたくという優秀な作戦をもたらしたらしいのだ。逆に言うと、日本軍の慢心と技術開発の遅れ、発想の貧困がこの海戦の敗因だったらしいのである。なんだか、今の日本の官僚や政治家たちと同じだなと感じた。残念で恐い話である。危機に瀕しての対応は米国に学ぶべきだ。医療でもそうだが、戦いは 技術と信念とタイミングを逃さない勇敢さが大事なのだ。真実や真理、科学技術の進歩に背を向けて、自らの利益を追求し続ければ、黒船に叩かれて、崩壊するしかあるまい。

BATTLE OF MIDWAY  JUNE 4-7, 1942

They had no right to win, yet they did, and in doing so they changed the course of a war.

Even against the greatest of odds, there is something in the human spirit - a magic blend of skill, faith and valor - that can lift men from certain defeat to incredible victory

 

2007/05/24 ワシントンDDW(米国消化器病週間)報告 NOTES誕生 

 さて、今回のワシントンDDW米国消化器病週間の目玉はなんと言っても、「NOTES」であろう。Natural Orifice Transluminal Endoscopic Surgery 略して NOTES。1999年、私が、破れた消化管をクリップで縫合した十数例をオーランドDDW米国消化器病週間で初めて発表した。そして、内視鏡でも破れた消化管を縫合できるという概念が生まれた。これが基礎になり、EMRがさらに進化して、より攻撃的なESDの技術が進歩した。その一方で、内視鏡で破れた消化管を縫合する技術の開発が進み、今度は逆に、消化管を破って何かできないかという、発想が生まれてきた。胃を切り開いて、内視鏡を腹腔内に進め、経胃的に腹腔鏡を行う、豚を材料にした動物実験が進められた。2年前のシカゴのDDWで、経胃的腹腔鏡を行い、虫垂を切除した人体での世界初の一例が(インドで実施)ビデオで、発表された。そのときは、口から出てくる虫垂を見て、大変驚いた。凄いことをするものだなと。

 そして、今回、胃経由だけでなく、大腸や膣経由の腹腔鏡も含めて、これらの腹腔鏡による手術に、新たな命名がされた。それが、「NOTES」である。今回は、人で行われた、経大腸的、大腸右半切手術や、豚に対する経大腸的左腎臓摘出術や、豚に対する経胃的膵尾部切除術などなどのすごいビデオが発表されていた。まだまだ、実験的なこのNOTESが今後どう育っていくのか、注目される。米国は、ESDを飛び越えて、NOTESへと進んでいる。

 

2007/05/12    第73回日本消化器内視鏡学会総会報告   カプセル内視鏡・経鼻内視鏡・ダブルバルーン式小腸内視鏡・拡大内視鏡・特殊光内視鏡(NBI・AFI・FICE)・超拡大内視鏡(endocytoscopy)・レーザー共焦点式内視鏡(confocal laser endoscopy)

 5月9日から11日まで、新緑薫る、東京のグランドプリンスホテル新高輪と国際館パミールで、東邦大学医学部消化器内科教授 三木一正先生会長のもと、第73回日本消化器内視鏡学会総会が開催された。いろいろと勉強になったが、個人的には、特別講演2の愛知癌センター腫瘍病理部長、立松正衞先生の話が面白かった。ピロリ菌には梅エキスの中のリグナンという成分がよく効くと発表していた。実験室レベルでのデータだったが、臨床的にはどうなのだろうか、引き続きの研究発表が期待される。また、系統発生のはなしで、鳥には大腸がないとか、胃の酸と消化酵素が別々の細胞から分泌されるのは、脊椎動物の中でも哺乳類だけ?!だとか、大腸腺管は腺管ごとにmonoclonalだとか・・・結構面白い話を教えてもらった。話題の主体は、胃の腸上皮化成のはなしで、sox2,cdx1,cdx2やmuc5ac,muc2+mac5ac,muc2・・・といったものとの胃癌発生母地である腸上皮化成の絡みや、胃癌は幹細胞レベルからではなく、もう一歩進んだ前駆細胞レベルででてくるとかといったことであったが、脇のほうが面白かった。

 経鼻内視鏡・拡大内視鏡・特殊光内視鏡・超拡大内視鏡・レーザー共焦点式内視鏡など各種の内視鏡がこの10年ほどの間に、開発され臨床応用されている。これらのスコープ開発の方向性は大きく3つあり、より簡単に、楽に検査をおこなうという第一の方向性と、より正確により精密にという第二の方向性と、見えなかったもところ(小腸)をなくすという第3の方向性である。第一の代表が経鼻内視鏡・カプセル内視鏡である。第二の方向性が拡大内視鏡・特殊光内視鏡・超拡大内視鏡・レーザー共焦点式内視鏡である。第3の方向性がカプセル内視鏡・ダブルバルーン式小腸内視鏡だ。それぞれの方向に、臨床的な経験やアイデアが積み重なって、発展していく経過を見るのは、楽しいことだ。オリンパスからモノバルーン式小腸内視鏡が新たに発売されていた。内視鏡の分野はすべて、わが社でやるぞ!というオリンパス社の気概を感じた。

 

2007/04/21    第93回日本消化器病学会総会報告 EMRとESDのすみわけ 

 4月19日から21日まで、青森県の青森市で、弘前大学第一内科教授 棟方昭博会長のもとで第93回日本消化器病学会総会が開催された。

 小さな町で、宿泊施設と飛行機便を確保するのにかなり苦労した。結局、行きは陸路新幹線となり、前日は八戸に一泊して、学会初日に青森市に乗り込んだ。

 学会では、多くの時間を、「ESDとEMRのすみわけ」というテーマに費やしていた。

 

 ESDはEMRに比べて、切除範囲を正確に切除できるが、時間がかかる。また、技術を習得するまでにも多くの症例と時間がかかる。そろえる道具も少なくなく、現行の胃ESD=12万円では病院経営を圧迫するという話もあった。去年、学会は胃ESDの保険収載を24万円で厚生労働省に希望したそうであるが、結果は半額回答の12万円であったとのこと。ESDには、スタッフは熟練したものが3−4人必要で、2−3時間かかり、十分な器具をそろえるとすれば費用もかかる。それらを十分考えれば、厚生労働省はESD=12万という価格は再検討が必要であろう。

 食道:発表数、症例数が少なく、結論や推薦ガイドラインもなし、あまり討論にならず。

 胃:一括全切除が病変を病変の再発・遺残をさせないポイントという、歴史的反省の上、EMRの上手な施設では、20mm、EMRが下手なところでは5mmを境にしてEMRとESDがすみ分けるべきと主張。胃におけるESDの穿孔率は、2−7%ぐらい。修練すると穿孔率は下がってくるようだ。

 大腸:拡大内視鏡検査によるpit pattern diagnosis (ピットパターン診断)で、正常と腫瘍の境界がはっきりとわかること。また、病変の悪性度の高いものがまれであることから、分割EMR(pEMRもしくはEpMR)でも、病変を残す確率が極めて低かったというpEMRの歴史的評価の上、スロープ形の陥凹(工藤進英教授はpseudo-depressionと呼ぶが、陥凹していることは事実なので、用語としては変だ!)を伴う2cm以上のLST(側方発育進展型腫瘍)病変のみがESDお勧め病変ではないかとの意見が強かった。大腸ESDの穿孔率は、5−15%。大腸では修練しても穿孔率はあまり下がらないとのコメントもあった。

 私としては、胃は1.5cmぐらいがすみわけの境。大腸では、ESDの穿孔率の高さと分割切除の安全性より、すべての病変について、pEMR=EpMRを第一選択とするべきで、ESDは 一般的には、かなり、危険だと考えている。

 

 帰り道の途中に、雪の八甲田さんにドライブし、さらに、三沢までいって、静かな湖と太平洋の荒波をみた。青森県は自然エネルギーの宝庫だった。

 

2007/04/20    日本内科学会報告 1)三谷絹子教授 2) 驚いた鳥インフルエンザ(H5N1)の実態 3)因縁、札幌医大のaberrant crypt foci-adenoma-carcinoma sequence theory 

 ちょっと遅くなったが、報告しておく。4月4日から4月6日まで、大阪の国際会議場で日本内科学会が開かれた。内科学会は、内科の各分野でのエキスパートが時の話題を講演するという形で行われている。今回の講演は約34個あった。私が拝聴したのは33個。

 血液分野の講演は、同級生の並木絹子さん、改め、三谷絹子独協医大教授の、「白血病の分子病態と分子標的療法」であった。内容は、慢性骨髄性白血病に対するグリベックやAPLに対するアトラを中心にしたものであった。私としては、最後にちょっとだけ見せた、新たに、治験している薬や、申請中の薬をもっと詳しく紹介してほしかった。グリベックやアトラは、何年も前に開発されたもので、消化管専門の私ですら、何回も講演を受けている。特にグリベックは、昔で言う胃肉腫の一部、今の言い方ではGISTの大半に効果があり、消化器の分野でもずいぶん紹介されているのである。厚生労働省の何とか班の班長さんなんでしょ、新しいことをもっと教えて! 

 

  鳥インフルエンザは、以前から社会的にずいぶん騒がれている。しかし、なぜそんなに騒ぐのか、いまいちよくわからないところがあったのだが、今回の東北大学押谷仁先生の講演を聴いてやっと納得がいった。報告された数は288例なのだが、死亡率が59%という高率なのだ。タミフルが効かないことあり!。しかも、細胞にくっつく部分の分子構造が突然変異を起こすと、人にも広まるらしいのだ。大量感染死亡で時代が変わるかもしれない。14世紀のヨーロッパはペストで滅び、21世紀の世界(特にアジアとアフリカ)はインフルエンザとエイズで滅びる? 

 

  札幌医大の新津洋司郎教授は、「大腸癌発育進展の分子機構とchemoprevention」を講演した。講演の中で、研究のきっかけは、「とある会社がもってきた、拡大内視鏡」とのこと。「これで何ができるかな?」と考え、研究が始まったとのこと。 約13年前、私は、当時世界ではじめて臨床的に使えるピットがみえる電子内視鏡(後のec7cm2)を、FUJINONと共同開発して、招かれて、北大と札幌医大に講演に行ったことがある。なんだ、私の拡大内視鏡の実演と講演がこの成果の始まりだったのか・・・。私が臨床の嵐の中で戦っている間に、北の大地では、新津教授指導のもと、高山哲治先生中心に新たなる大腸癌発癌メカニズムを解明したというわけだ。

 有名なVogelsteinの大腸発癌モデルとすこし違う経路を発見したのである。ポイントは、「1−2mmの小さな、メチレンブルーに濃染する病変=aberrant crypt foci=10数腺管の病変のなかにもすでに、RAS遺伝子の突然変異がある」という事実を見つけた点である。必ずしもAPCが先でなく、RASが先に変異する経路もあるのだ。名づけて、aberrant crypt foci-adenoma-carcinoma sequence theory。今は研究がさらに進んで、COX-2の阻害によるのではなく、RAS下流のひとつGST-Πの阻害による新たなる大腸発癌予防薬を開発中とのこと。是非成功してもらいたい。(ちなみに、COX−2阻害剤は、米国で精力的に開発されていたのだが、心筋梗塞が増えるということで、p3=フェイズ3=多数患者臨床治験の段階で2-3年前に頓挫している。)ただ、ras変異を起こさない大腸発癌経路、すなわち、平坦陥凹型癌はGST-Π阻害剤では理論的に予防できないよね・・・残念ながら。

 

2007/03/29      胃潰瘍の悪性サイクル(malignant cycle)と ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

 5年前2002年から東大で、医学部5年生を教えている。講義の前に、学生の知識レベルを知るためにいくつかの質問を学生にするのだが、学生諸君は、胃癌のボールマン分類、大腸癌の肉眼分類、早期胃癌の肉眼分類などは、結構、わかっている。ESD(粘膜下層剥離術)について答えられる学生もいる。しかし、 なぜか、胃潰瘍の悪性サイクル(malignant cycle)については、ほとんどの学生が答えられない。教科書から省かれてしまっているのかもしれない・・・?!

 胃潰瘍の悪性サイクル(malignant cycle)とは、癌が原因となって繰り返す、胃潰瘍のことである。癌組織のなかには、細胞保護作用の弱いものが多く、胃の中のような、食物を消化する高い酸濃度の中では、癌は消化されやすい。早期胃癌の表面に潰瘍がおこり、癌の一部もしくは大部分が消失する。この際、癌は潰瘍の辺縁に、三日月状や泣き別れ状態でしがみ付いている。そして、潰瘍が治った後に、再び、残った癌が増殖してくる。やがて、癌の部分が大きくなり、細胞保護作用が低下し、また、過酷な胃の環境の中で、潰瘍ができてしまうという繰り返しを、悪性サイクルと呼ぶのである。

 この現象があるので、胃潰瘍の良・悪性の判定には、注意と慎重さが要求される。潰瘍の辺縁から、組織をとって、良悪性の判定をするのであるが、たまたま、胃癌がないところを生検すれば、胃癌を良性潰瘍と誤診する危険性がある。だから、怖いのである。したがって、胃潰瘍を見たら、組織結果が良性であっても、2-3ヵ月後に必ず再検が必要なのである。ここまで、説明すると、学生さんたちは聡明なので、この悪性サイクルの理解なくして、胃潰瘍の診断はできないことを悟る。

 悪性サイクルを繰り返した胃癌は、固有筋層と粘膜の間に瘢痕組織ができて、くっついてしまい、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)やEMR(内視鏡的粘膜切除術)の極めて難しい状態となる。普通は、適応外病変であるのだが、諸般の事情から、きょうは、そんな瘢痕組織付きの胃腫瘍病変の内視鏡切除を試みることとなった。ESDのつもりが、結局HSE+pEMRとなってしまったが、穴をあけずに取りきれたようなので、優、良、可、不可の可ぐらいか・・・。

悪性サイクルの一例:左は早期胃癌分類V+Uc、右は潰瘍治癒後、左のわずか19日後の状態。しいて分類するならUc型か。分類不能とするのが妥当であろう。

 

2007/03/07      美智子皇后陛下、下血  その原因は?

皇后さま、腸から出血 精神的疲労が原因か、静養へ (共同通信)

宮内庁は6日、皇后さま(72)が最近、数回にわたり腸壁から出血された、と発表した。口内炎の症状や鼻血もあったという。精神的な疲労が原因とみられる。3月下旬から4月初旬にかけて2回、静養の機会を設ける。会見した金沢一郎皇室医務主管によると、皇后さまは専門医の診断で腸壁の表層に出血の痕跡が見つかった。現在は粘膜を保護する投薬を行っている。自覚症状はないという。

皇后さま、腸壁から出血=精神的な疲れが原因−21日から静養・宮内庁 3月6日19時0分配信 時事通信

宮内庁は6日、皇后さまに数回、腸壁に出血があったことなどから、静養期間を設けると発表した。精神的な疲れが原因とみられる。ただ、治療を急ぐ性質の病気ではないため、当面は公務を続け、21日から5日間、御所で静養される。 同庁によると、皇后さまは2月19日夜に風邪で38度台の発熱があったが、その後口内炎や鼻血のほか、腸壁から数回出血がみられた。自覚症状はないが、定期検診の際に2年連続で表層性胃炎の症状が指摘されており、出血も粘膜の炎症という点で延長線上にあると考えられるという。

皇后さま、腸壁からの出血などで静養へ…心労が原因か2007年3月7日1時8分  読売新聞)

 宮内庁は6日、皇后さま(72)が口内炎や鼻出血に加え、腸壁から数回の出血があることから、今月下旬から計10日の静養期間を設けると発表した。精神的な疲れ」が原因と考えられ、同庁は粘膜を保護する投薬治療を行いながら、心を休め、体の抵抗力を高めてもらうとしている。記者会見した金沢一郎・皇室医務主管によると、皇后さまは先月19日夜から風邪で38度台の熱が出て公務を2日休み、その後、公務に復帰された。しかし、最近になって口内炎や鼻出血のほか、腸壁からの数回の出血があった。専門医が診断したところ、腸壁の表面に潰瘍のような進んだものではないものの、出血の痕跡が認められた。皇后さまは過去2年間の定期健診で胃炎が見られ、最近の出血などの症状はこの延長線上にあり、精神的な疲れが原因で進行したとみられるという。金沢医務主管は記者会見で「少しでもお心を休め、お体の抵抗力を高めていただくために静養期間を設ける。今後はスケジュールを厳選したい」と述べた。宮内庁関係者は「精神的な疲れ」について、「ご一家をめぐって相次いでいる週刊誌の記事の見出しにかなり心を痛められていたようだ」としている。皇后さまの静養はお住まいの御所で今月21日から5日間とったあと、26日からは国賓として来日するスウェーデン国王夫妻の歓迎行事などをこなし、再び29日から来月2日にかけて栃木県の御料牧場で天皇陛下と静養される。宮内庁は治療を急ぐ性質の病気ではないことや、皇后さまの気持ちを尊重し、既に予定されている日程はこなされるとしている。皇后さまは1993年10月、雑誌の批判記事が相次ぐなか心労で倒れ、一時的に声を失われたことがある。

 以上の報道からすると、感冒後、何回か下血があり、その原因を探るべく、おそらく、昨日、大腸内視鏡検査を行って出血性の炎症所見が認められたということであろう。一般に皇后陛下ようなご高齢の婦人の出血性腸炎の原因としては、各種の感染性腸炎の他に、虚血性腸炎、抗生剤投与後腸炎、リンパ濾胞性腸炎、潰瘍性大腸炎、膠原病による腸炎、血管炎による腸炎、アミロイドーシスによる腸炎などがある。今回の腸炎は報道を聞く限り、抗生剤投与後の菌交替現象による腸炎の可能性が高いであろう。抗生剤投与後に口内炎が出るということは時々あるが、ただ、鼻血まで出るのは珍しい。鼻血は出血傾向を示唆しており、腸壁の出血も全身の出血傾向から来たとすると、さらなる重篤な病気に進展しないかとちょっと心配だ。報道では、精神的ストレスを強調しているが、前述の鑑別疾患のうち、ストレスが強く影響する腸炎は潰瘍性大腸炎である。潰瘍性大腸炎は20歳代の発症が多く、70歳代での潰瘍性大腸炎もないわけではない 。

 

2007/02/28   大腸内視鏡挿入時の大腸穿孔事故の回避方法 

 先ごろ、知り合いの先生の病院で、大腸内視鏡挿入時の大腸穿孔事故が2件立て続けに起こったそうだ。一例は、S状結腸の大きな憩室を大腸の管腔と勘違いしたのが、原因。また、一例は卵巣部の癒着により挿入が困難な症例であったそうだ。それぞれ、大腸内視鏡を始めて、約500例目の先生と、約1500例目の先生が起こしたそうだ。昨日、その病院に用件があって出向いたとき、知り合いの先生から、どうすれば、大腸内視鏡挿入時の大腸内視鏡穿孔事故を回避できるのかと尋ねられた。

 大腸内視鏡挿入は、簡単な症例もあるが、難しいときは本当に難しい。だいたいベテランの私でも、400例に1例くらいは困難、1000例に1例は超困難と感じる症例がある。難しくなったとき、内視鏡が進まなくなると、内視鏡医師はあせり、いらつく。その感情が理性に勝って、無理な操作をすると穿孔につながる。感情が高ぶると無意識に手に力が入ってしまうものだ。手にかかる力は、作用・反作用の法則で、まさに、腸壁にかかっている力だということを忘れないようにしてほしい。

 内視鏡医師は感情が高ぶったら、それを自覚して認識して、冷静に自己コントロールを図る必要がある。急ぐのをやめ、内視鏡から手を離し、鉗子挿入口を全開にして10分ぐらい休むとよい。お茶でも飲んで気分をかえる。腸管から空気が抜けて、大腸の形が変わり、突然、入りやすくなるということもある。また、体型にあったスコープに代えるのも手だ。やせた人なら、細いスコープに、太った人なら、太いスコープというぐあいに。もちろん、やっぱり、入らないということもある。500例目ぐらいだと、回盲部までの全大腸の挿入率は90ないし95%ぐらい(10ないし20件に1件は入らない)、1500例では、97ないし98%ぐらい(40件に1件くらい入らない)が平均的だから、入りにくいものは無理をせず、それ以上の挿入を諦め る。穴を開けるよりはマシだ。そして、日を変えて再トライするなり、更なる上級者にお願いするのが良いと思う。

 私は、これまで、約4万件の大腸内視鏡検査を行ってきたが、「やさしい操作」と「熱くなったら一休みの精神」を心がけることで、幸いにして、大腸内視鏡挿入時には大腸穿孔を起こしたことはないが、それでも、油断はしていない。

 

2007/02/28   病気腎移植について

 病気の腎臓を移植して、腎不全透析患者を救った万波先生が、非難されている。患者を救うのが医師の使命であるから、私は、患者を救った万波先生を非難するのは間違いだと思う。

  病気の腎臓が、レシピー(移植された側の患者)にとって、どれほど有害なのか、関連学会は、今後しっかり検討してみる必要があろう。移植しなければ死んでしまう腎不全患者と、ゴミ箱に捨てられる腎臓を目の前にして、移植の達人が、社会的にも生物学的にも崩れていく患者を救おうとして、成功した医療行為を、手続違反という理由だけで、非難すべきではない。非難すれば、医師自らの使命と倫理の放棄になろう。病気腎でも人が助かることがあるという事実を重く受け止め、その適応と限界を研究することこそ、関連学会に、今、求められている課題ではないだろうか。

 

 

2007/02/04   第3回 日本消化管学会総会学術集会 報告

 2007年2月1日・2日の二日にわたって、東京港区芝の東京プリンスホテルパークタワーで、杉原健一東京医科歯科大学大学院腫瘍外科教授に会長により、第3回日本消化管学会総会学術集会が開かれた。消化管全般のトピックがコンパクトにまとめられて、結構効率よく情報が得られた、よい会であった。

  まず、中国のエイズの感染の広がりや、タイでのStrongyloidiasis(糞線虫症)の実態などについて、現地の先生の話を聞くことができた。  

 上海のSu Zhang先生によると、中国ではエイズの感染者は確定で183773人、推定でなんと86万人もいるという。エイズ予防の中国の国家予算も鰻上りだそうだ。

(何も対策を採らなければ、中国では2010年までに、エイズ感染者が1000万人以上になる?By Dr Su Zhang)

 

 糞線虫症は日本ではほとんど見かけない病気だが、タイでは多く、皮膚から侵入し十二指腸などの消化管に潜む病気である。急性症では皮膚の下を這い回り、肺を侵し、診断が遅れると死ぬことまである。全身を寄生虫が食い荒らした、日本では見たこともないような悲惨なスライドを、バンコクのSombat Treeprasertsuk助教授が見せてくれた。

 また、独協医科大学(藤盛孝博教授ら)から、癌の発生について従来の常識を覆すような面白い症例が発表されていた。白血病で骨髄移植し、お姉さんから骨髄をもらった男性患者に発生した口腔内の扁平上皮癌の性染色体を分析したところ、XXの女性型であったという報告である。つまり、癌は骨髄にある癌幹細胞cancer stem cellからやってくるのではないかという報告である。胃癌でもそのような学説が唱えられており、異性間での骨髄移植後に発生した癌の性染色体解析の症例蓄積が期待されるところだ。癌にも性別があったのである。大腸癌や大腸腫瘍はどうなのか? 今後の発表が期待される。

 潰瘍性大腸炎の難治化とサイトメガロウィルスの関係についても、京大や東大などからいくつかの発表があり、大変興味深いものがあった。京大のNakase Hiroshi先生の発表では、炎症のあるところにだけ、サイトメガロウィルスが必ず見つかるのだそうだ。研究が進めば、潰瘍性大腸炎も胃炎のように、感染症だったというような時代が来るのだろうか?

(PCR法によるCMVサイトメガロウィルスの検出率 炎症部17/17:100%、非炎症部0/13:0% by Dr. Nakase Hiroshi)

 

 私が関連した発表は、同僚の東京大学腫瘍外科講師、北山丈二先生のアディポネクチンadiponectinの胃癌抑制効果に関する発表であった。男性において、脂肪が高い人には、大腸腺腫や大腸癌などの大腸腫瘍が多く発生するという、私の大腸腫瘍のデータ解析結果(詳細)を受けて、それはなぜかと考えていくうちに、アディポネネクチンadiponectinの抗腫瘍効果を発見したようだ。アディポネクチンadiponectinは動脈硬化を抑える働きがあると知られている生体内物質で、もともと比較的多くある物質である。したがって、アディポネクチンadiponectinの補充による癌抑制の臨床実験も、理論的に安全にできる可能性が高い。アディポネクチンadiponectinの補充による癌抑制効果は、ねずみと同じく人でも癌抑制効果が臨床的に認められるのか、また、その効果の強さはどれくらいか、今後の展開が期待されるところだ。

 1日目の夜には学会主催の懇親会を行われて、高名な先生方 (北海道大学消化器内科教授 浅香正博先生、杏林大学医学部第3内科教授 高橋伸一先生、獨協大学総長 寺野彰先生、通産産業省診療所所長、星原芳雄先生、名古屋経済大学人間生活科学部管理栄養学科 教授 伊藤誠先生 助教授 早川麻理子先生、日本消化器病学会理事長を長年お勤めになった、元女子医大教授 竹本忠良大先輩など)ともワイン片手にフランクに話ができた。ピロリ菌退治による胃癌予防の厚生労働省による見送りの経緯や、偏在し甘やかされる研修医問題、病院から熟練医が逃げ出す医療崩壊、低い医療費、サプリメントなど怪しい情報をたれ流すテレビ広告などなど、日本全国の医療事情の悪化が話題の中心であった。

 

 

 

2007/01/21   あるある大辞典 ねつ造 発覚

2007年1月7日放映のあるある大辞典「納豆ダイエット」がねつ造であったことが発覚した。本日の毎日新聞の朝刊を見ると、

「関西テレビ(大阪市北区)は20日、今月7日にフジテレビ系で全国放送したテレビ番組「発掘!あるある大事典2」で、事実とは異なる内容が含まれていたと発表した。「納豆を食べるとダイエットができる」との内容だったが、研究者のコメントや被験者の検査データをねつ造していた。同テレビは社内に調査委員会を設け、原因の究明を行うとともに過去の放送分についても検証を行い、番組を継続するかどうかを含めて検討する。また、21日に放送予定だった同番組は、テーマは納豆ではないが、別の番組に差し替え、冒頭で一連の経緯を説明する。」

とある。

 昨年2月、あるある大辞典の番組制作に協力を依頼されたときに、発表するにしては、症例数が少なすぎることを指摘していた。いい加減な取り組みの姿勢に、不快感を覚えたものである。クロロフィル投与で毒素が追い出されるという番組のテーマであった。私へのミッションは小腸組織の採取であった。小腸の内視鏡を行ってみると、クロロフィル投与した人の小腸のほうが、投与していない人の小腸よりも荒れていたのである。症例数がどちらも1例ずつで、実験の名に値しないものであったが、番組では、さも命題が証明されたかのように述べられていた。誇張し過ぎである。

 いま、マスコミに放映されている、健康補助食品の効果も、その多くは眉唾である。きっちりと科学的に実証されていないにもかかわらず、商品を売ろうとして、お題目を垂れ流す姿勢は、社会に大きな害悪をもたらす。黒酢やLG21の広告も怪しい。

 

2007/01/03   謹賀新年 

 ホームぺージの読者の皆様の健康と安全、仕事の発展と子孫の繁栄をお祈り申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。

今年の干支は、猪です。猪にたっぷりとえさを与えて食用に家禽化したものが、豚です。ちなみに、鴨を家禽化したものがアヒル(この皮のところを食べるのが北京ダック)。雁を家禽化したものが、ガチョウ(十分なえさを与えて太らせて脂肪たっぷりにした肝臓がフォアグラ)です。脂肪摂取量と大腸癌の発生には、正の相関関係が有ります。美食の集団に大腸癌が発生しやすいという疫学的データも数多くあります。ただし、その相関関係はゆるいもので、肥満の人に大腸癌が出やすい傾向があるのは事実ですが、肥満でない人にも大腸癌は出ます。さて、大腸癌死を100%ブロックするにはどうしたらよいのでしょうか?

 現在、企業や地域で広く行われている大腸癌検診は、便潜血反応です。約10年ほど前の厚生省の武藤徹一郎班会議(私もメンバーの一人でした)のデータですが、便潜血を契機に発見した進行大腸癌の5年生存率は約70%、症状を契機に発見した進行大腸癌の5年生存率は約30%でした。ちなみに、進行大腸癌と診断されて、外科に入院してきた患者の便潜血反応の、陽性率は約70%で、約30%は陰性でした。便潜血反応だけでは進行大腸癌でも見逃される場合が約三分の一もあるのです。以上のデータから考えると、100%予防を目指すなら、便潜血による大腸癌検診だけでは不十分といわざるを得ません。現に、私の臨床経験でも、便潜血による検診を受けていたにもかかわらず、進行大腸癌になってしまい、挙句の果てには死んでしまった人が何人もいました。

 一方、定期的に大腸内視鏡を行い、腺腫等の前癌性病変の全切除を行う集団における、進行大腸癌の発生はごくまれです、死亡する例は有りません。こういう事情を考慮して、アメリカ合衆国では、大腸癌を自己責任の病気もしくは自分次第の病気と呼んでいます。 40才以上になったら、症状のないうちに、内視鏡による大腸ドックを受けて、腺腫などの前癌性病変をすべて切除しておくことをお勧めします。「転ばぬ先の杖」・「後悔先に立たず」です。

100%がん予防を目指したい方は、当院でも内視鏡による大腸癌ドックを行っていますので、メールか電話でお申し込みください。詳しくは無痛消化管ドックのページへ。

 

2006/12/30  日本医療の問題点

 昨今の医療は、口を開けば、医療費抑制という言葉が出てくる。これは、財務省・厚生労働省のお題目のようなもので、この15年続いている。その効果で、この1−2年の医療費は30−31兆円前後である。人口の老齢化の進展により、医療費はますます増えると予想されていた。実は、10年前の医療費も30兆円ぐらいで、その十年後の今は医療費が、40兆円ぐらいと予想されていたのである。では、どうやって減らしたのか?簡単に言えば、医療単価を下げたうえに、医療の抑制を行ったのである。

 私に関係したところでは、以下のような抑制策が行われた。

 

 薬の制限

1.7剤以上の薬を出すと、医療機関と患者に罰金的な損が発生するシステムの導入。

2.薬価単位の切り下げ。

3.院内薬局の単価大幅切り下げによる院外薬局の奨励(薬剤師会の圧力により行わた薬剤師優遇政策。実は、これは、医療費を増やす結果になっている。製薬メーカーには薬剤師が多く、退職後の就職先の確保。つまり、2.とのバーターかもしれない。)

4.卸売価格の統制。薬価差益が薬多用の原因になると考えて、製薬会社と卸売り会社に、政治的圧力をかけて、官僚主導の卸売り価格の統制を行った。これにより、約3割位あった利益が、1割程度になった。言い方を変えると、利益が医療機関から、製薬会社、卸売り会社へと動いた。官製の独占禁止法違反の闇カルテルみたいなものである。したがって、この政策も本当の意味での価格切り下げにはなっていない。これも、2.とのバーターかもしれない。

 

 診断・治療の制限。

5.薬投与制限の大幅変更。ずっと以前は、薬はその副作用や、効果判定の診断のため、大半の薬が2週間しか投与できなかったのであるが、3年ぐらい前から4週までが認められ、2年前ぐらいからは、何ヶ月でも投与できるようになった。これにより、受診回数の低下がおこり、医療費が抑制された。

6.ピロリ菌:ピロリ菌の治療の導入の遅れがあった。ピロリ菌が発見されたのが1983年、今から、もう23年前。日本の学会でその消化性潰瘍に対する病原性が確認されたのが1990年ごろ。WHOで胃癌の原因と宣言されたのが、確か、1994年。国民皆保険といっておきながら、胃癌予防のためのピロリ菌退治すなわち慢性胃炎の除菌治療は、未だに、社会健康保険や国民健康保険では認められていない。

7.大腸ポリープの切除の抑制。小さなポリープは癌化しないという、間違った理論を推奨している。5mm以下のポリープは医療費がかさむので取らないでほしいと、各種保険組合から、私に直接的な圧力が、1996年以降数年間、頻回にあった。

8.カプセル内視鏡、ギブン社のカプセル内視鏡が、2000年ころにアメリカの消化器学会で初めて発表された。3-4年位前に、韓国や中国でも使えるようになり、東アジアで使えないのは日本だけ。国産のオリンパスもカプセル内視鏡の開発を行ったが、一昨年の秋に売り出したのは、日本ではなく、欧州(EU)であった。

9.血管新生抑制剤のアバスチンは、末期がん患者の生存期間を約1.5倍延ばす効果がアメリカ臨床癌学会で報告されているが、日本での承認は大幅に遅れている。抗がん剤の分野で、同様のものがいくつかある。

 

 審査の強化

10.医療費がかさんで、保険組合の資金が不足してくると、社会保険基金や保険組合の審査で、医療費が闇雲に減点される。前の月までは認められていたものが、急に減額されるのである。理不尽なものなのが多く、医療機関経営者には悩みの種である。審査員の友達から実態を聞くと、この医療機関からは何%引けと、基金の事務局員から指示がされるのだそうだ。したがって、理不尽な減点が急に発生するのである。昨年は、東大病院でも手術前のエイズウィルス検査が保険から削られた。審査をめぐる官民の癒着と賄賂の問題も指摘されている。

 

 これらの他に、他の分野でも、いろいろと同様のことが行われている。つい最近では、整形外科の受診回数制限やリハビリの回数制限が打ち出され、社会問題化している。これらの、経済的問題に加えて、医療ミスや医療事故の問題もあって、医療従事者の逃亡も目立つようになった。産科、小児科をはじめとする、各種の病棟や外来閉鎖は、単に経済的な問題だけでなく、スタッフが集まらないのである。医療費抑制策は、ついに、保険医療そのものの抑制になってい来たのである。言い方を変えると、皆保険制度があるために、世界の先端的医療と一部の標準的治療が日本では受けられなくなっているのである。保険医療を維持しようとして、その結果、医療レベルが低下しているのである。上記のような、理不尽な医療政策の下では、医師はやる気がなくなってしまう。今度の参議院選挙では日本医師会は自民党には協力しないであろう。

 

 価格の統制、薬や医療機器の認可など、日本の医療はまさに社会主義体制なのだが、その軋みが、患者の治りたいというニーズに応えられなくなってきた。一方で、患者側にも、自己負担分の未払いや病気予防への態度(喫煙や多飲酒など)の社会主義特有のモラルハザードの問題がある。また、命に対する価値観の多様化もある。官僚のモラルや能力も低下している。健康保険機構の維持にも大きな事務経費がかかっている。

 本来、医療は個別のものである。同じ病状でも、患者の生活信条や社会的状況で、同じ治療にはならないものである。わたしは、シンガポール型の医療制度に賛成である。

 

2006/12/06   大腸腺腫の癌化率は一年で1.3%

 大腸腺腫の癌化率は、大腸腺腫の臨床的な価値、危険さを考える上で、とても大切な情報である。では、どうすれば、観察できるのか?測定できるか?まさに SCIENTIFIC な問題である。単純に考えると、大腸腺腫を放置しておいて、その経過を観察していけば、腺腫がどうなるかわかるはずである。ところが、これには、一定の倫理的問題が立ちはだかる。癌になる危険があるとわかっている病変を、そのまま放置するのである。患者が死のリスクを負うことになる。また、原理的な問題も立ちはだかる。はじめに見た大腸腺腫と考えた病変のなかに、すでに、癌があるかも知れない。組織検査をしてしまうと、病変はなくなってしまう。病変の一部をとることで、刺激を受けて何らかの反応が起こり、自然の姿を観察できないことが予想される。極端な場合は、病変がなくなってしまうことになる。これは、まさにハイゼンベルグの不確定性原理である。(ピットパターン診断で100%近い診断が付くという反論もあろうが、現実のデータは、腫瘍と非腫瘍の鑑別正診断率は、だいたい95−98%、癌か腺腫かの鑑別診断の正診率は、だいたい50%−70%ぐらいのものである。)

 では、どうすればよいか?私が、1990年代初頭に考えた方法は、有病数を発生数で割って有病期間を求めるというものである。大腸腫瘍(大腸癌と大腸腺腫)の有病数とその後の年間発生数を測定して、はじめに見つかった病変群の有病期間を推定する。そして、その期間に、腺腫が一年に何%癌化するとすれば、「最初に観察した大腸腫瘍の癌と腺腫の割合を一番うまく説明できるか?」という数学的問題を解くという方法である。具体的には、大腸癌や大腸腺腫が多発した患者の腸を、内視鏡的に大腸癌や大腸腺腫を切除して、一旦腫瘍のない状態にする。専門的には「CLEAN COLON」という。その後、定期的に内視鏡的観察を行い、見つかった大腸腫瘍を片っ端から、切除していき、観察するたびに、CLEAN COLON にしていくのである。そうすれば、腺腫や癌の年間発生個数を測定できる。この方法は、腫瘍を切除していくので、患者が癌になる心配はなく、倫理的には、一切問題ない。また、病変が腺腫か癌か、組織診断学的に決定できる。原理的問題は、大腸癌や大腸腺腫を切除してしまうことと、大腸腫瘍の発生が独立の事象であることを仮定している点である。

 そのデータの詳細は、私の業績(とくに、大腸微小腺腫の自然史、胃と腸 医学書院 30(12) 1531-1542 1995をごらんいただきたいが、コンピューターにデータを入れて、腫瘍の累積個数と、CLEAN COLON後の期間をグラフにしたとき、期間と個数が一直線に並んだときの感動は、まさに筆舌に尽くしがたいものがあった。大腸腫瘍の発生率はある一定の範囲で、一定なのだ!

 結果、大腸腺腫の癌化率は一年に約1.3%であった。大腸腺腫を30年放置し続けるとその約30%が癌化すると推定された。

 5mm以下の小さな腫瘍を残してよいという考えは、まず、その病変が、癌でないことが100%確証できない、具体的には5mm以下でもすでに1%ぐらいは癌化している。また、腺腫であってもこれだけの癌化率があり、経過観察さえしないという考えは、明らかに間違っている。5mm以下の小腺腫が3個ある患者を放置すれば、平均15年後に大腸癌が1つできると推定されるからである。10年前の工藤理論に、社会保険者の世俗的圧力が加わってできた、「5mm以下の小さな腺腫を取らなくてもよい」とする危険な理論に基づいた、臨床がここ10年日本で行われてきた。つまり、5mm以下の大腸腺腫は放置された。しかし、この年間癌化率をみれば、なぜ、10年後たった、いま大腸癌死が次第に増え始めたか、お分かりになると思う。腺腫は見つけたら取るのが原則、もし、臨床的に忙しすぎて取れなくても、1−2年のうちに経過観察をし、切除をするのが医者の良心 、人の理性というものであろう。

 

 

2006/11/03  世界の大腸癌検診の動向  今秋の日本及び欧州消化器病週間 から 

 大腸癌は予防が大切である。大腸進行癌は、FOLFOX、FOLFILIやアバスチンなどの化学療法、ネオアジュバンド療法が進歩して生存期間の延長が認められるとはいえ、死亡率は改善されていない。

 欧州消化器病週間で、ドイツ消化器病学会の大御所クラッセンが、指定講演で、大腸癌検診について述べた。がん検診が未発達の旧東欧諸国の大腸癌5年生存率は、約30%、がん検診がある西欧諸国では大腸癌5年生存率は約50%と述べた。検診をすることで、大腸癌死から助かるチャンスが増大するのである。

 札幌で開かれた日本消化器週間で、アメリカの大腸癌検診協会長の招待講演があった。アメリカでは、便潜血反応よりも、S状結腸鏡や大腸内視鏡検査を用いることが多く、とくに、ここ2−3年、大腸内視鏡を受ける人が増え、検診対象年齢の人口の30%が受けるまでになっていると発表した。耳を疑うほどの高率であるが、これにより、大腸癌の死亡率が急激に減ってきているという。レーガン大統領がポリープを取ったときから、大腸内視鏡が広まり、大腸癌は内視鏡検査で完全に予防できるので、「自己責任の病気」と呼ばれて、大腸内視鏡がさらに広まっているという現状なのだそうだ。ちなみに、アメリカでは発見したポリープ(腺腫)はどんなに小さくても、すべて切除するのが原則であるとのこと。

 日本では、便潜血反応陽性者が内視鏡検診に廻される。日本で便潜血反応による大腸癌検診が始まったのが1988年。中曽根内閣の老人健康保険法に基づく。そのころは、腺腫は前癌病変なのですべて切除すべきというのが常識であった。それまで、5年で2倍に増えていた大腸癌死亡者数が、この検診の開始を境にして、増加しなくなりむしろ減少し始めた。日本全体で年間大腸癌死亡者数は4万人から3万5千人ぐらいに低下してきていた。当時、私は先輩の先生勧めで、東急百貨店でCLEAN COLONを目指す内視鏡による大腸癌検診を行い、東急百貨店保険組合の被保険者を大腸癌から10年にわたり完全予防してきた実績を残している。

 それが、90年代後半、工藤先生が「隆起型のピットパターン3L型の5mm以下の腺腫はすぐに取らなくても良い。」と学会で述べた後、医療費抑制の波とあいまって、学説が一人歩きして「5mm以下のポリープは取らなくてもいい」という考えが広まって、かなりの先生方が、小さなポリープを無視しはじめた。それで、どうなったかというと、近年、日本の大腸癌死亡者数は再び増加傾向に転じているのである。日本とアメリカの大腸癌死亡者数の動向を見ていると、日本も、大腸癌検診の中心を、便潜血反応から大腸内視鏡検査にシフトさせる必要があろう。

 また、腺腫はやはり全部取るべきであろう。 私は当初から工藤先生の考えには反対であり、すべての腺腫はどんなに小さくても見つけたら切除してきたし、切除するべきと唱えてきた。つまり、CLEAN COLONを目指した内視鏡を実践してきた。私の小さなポリープまで取るやり方は、各保険組合から不況時にいろいろと批判された。しかし、今回のアメリカと日本の大腸癌死亡者数の動向をみて、大腸内視鏡はCLEAN COLON を目指すのが、やはり、大腸癌予防の王道であったと確信した次第である。

 

2006/11/03  平成18年厚生労働白書を読んで 

 この10月からの保険医療では、老人の窓口負担金が増え、診療報酬が減った。高齢者の負担は重くなり、医療サービス供給者の待遇はさらに悪化し続けている。その根本的な流れはどこから来るのか?厚生労働省白書を読むと実にわかりやすく書いてあった。

「今回の医療制度構造改革は、これまでの医療制度構造改革の中で課題として指摘されてきた高齢者医療制度の創設や医療費適正化について、道筋を示すものである。まずはその円滑な施行に向けて、万全を期して準備していくこととしている。今後とも、安全で質の高い医療を確保し、皆保険制度を持続可能なものとしていけるよう着実に努力していかなければならない。」

 つまり、「皆保険制度を守るために、老人も医療機関も苦労しなさい、我慢しなさい。」ということなのである。「皆保険制度さえ守れば、安全で質の高い医療が確保されるのだから。」ということである。では、なぜ、皆保険制度が安全で質の高い医療につながると考えているのかというと、「我が国の医療制度は全ての国民が健康保険や国民健康保険といった公的な医療保険制度に加入し、保険証一枚で誰もが安心して医療を受けることができる国民皆保険制度を採用している。こうした仕組みは、経済成長に伴う生活環境や栄養水準の向上などとも相まって、世界最高水準の平均寿命や高い保健医療水準を実現する上で大きく貢献し、今日我が国の医療制度は、国際的にも高い評価を受けている。」と。 つまり、これまでうまくいったから、これからもうまくいくという韓非子の逸話「守株」の論理である。でも、現実には日本の医療は、崩壊してきている。日本の国民所得が減少しているからだ。

 80年代までの経済の高度成長期には、医療技術の革新のスピードと国民所得の伸びが一致して、皆保険制度はうまく機能したのだが、いまは、医療技術の革新が、日本経済の発展のスピードをはるかに上回っている。世界のトップレベルの医療が、日本の保険医療で実践できない事例は、枚挙暇がない。今の政府は、ここ10年、皆保険制度を守ろうと、日本国民所得の低下と一致して、日本の医療単価を切り詰め、結果、医療の質はどんどん低下してきている。今回の改訂で、これまでにも増して、オカルト医療話が日本全土を覆うであろう。医師・看護師・介護師の離職や嫌職が進むであろう。守りたいものは、制度ではなく、命と健康である。

 グローバル化した産業界、IT技術革新による情報革命、株式市場を中心とした後期資本主義、飛躍的に進歩する生命工学の時代にふさわしい医療制度を早く構築しないと、日本はますます世界トップレベルから取り残され、日本にいるから病気が治せない、日本にいるから死んでしまうということが、ますます多くなる。皆保険制度を守り続けるという考えを捨てねば、今の時代、命と健康は守れないというのが、医療現場の医師の実感である。

 

2006/10/28   欧州消化器病週間・学会報告 その2

 今回は知人のつてもあって、ベルリンに入る前に2006年10月20日から2日間、モスクワに立ち寄った。ついでに、モスクワの国立がんセンターの内視鏡部門を訪れて、大腸内視鏡の技術指導を行った。大腸内視鏡検査のデモを2例行った。がんセンターというだけあって、2例とも進行直腸癌であった。モスクワの医療事情を現地の医師から直接聞いたが、レベルは発展途上国並みの寒さであった。政府が全国の病院に配る内視鏡は未だにファイバースコープなのである。私が行ったがんセンターは、17年前の最新型の電子内視鏡であったが、それでも、ロシア全土から見れば、最高レベルなのだそうだ。しかし、医師の向上意欲は強く、 原油、天然ガスなどの経済力があり、ロシアの医療は早晩、急速に改善をするだろうと感じた。

 

2006/10/28   欧州消化器病週間・学会報告 その1

 2006年10月20日から26日まで、ドイツの首都ベルリンICCにて、欧州消化器病週間が開かれた。10月22日のオープニングセレモニーで、Prof. Peter Malfertheiner 会長は、挨拶の中で、「日本からの演題発表が多く、欧州勢もがんばって研究成果をあげてほしい」と発言した。確かに、小腸内視鏡やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)といった日本から発信されたものだ。内視鏡作成・販売は、オリンパス、フジノン、ペンタックスが有力3社である。すべて日本の会社である。また、ピロリ菌の発見により2005年にノーベル医学賞を受賞した、Prof. Barry Marshall が講演した。自分より先に、胃に細菌がいることを指摘した研究者は、4−5人いた。とりわけ、日本の Ito という研究者が電子顕微鏡の写真を撮って報告していた。実に惜しいところまで行っていたのだが、しかし、彼はピロリ菌の病原性(胃炎や胃潰瘍を起こすこと)については気がつかず、私が、ノーベル賞をいただくことになったと述べた。研究成果は、単に事実の発見だけではなく、その意味を考えながら進めるべきものでなのである。目の前の事実も角度を変えて意味を考え直すと、科学の革命的進歩をもたらすかもしれないのである。

 ところで、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の治療薬の開発などについては、欧州勢のほうが圧倒的に優勢であった。

 

2006/10/15    戦争に負けるということ 日本消化器病週間・学会報告  その2                                                 

    2005年の日本の年間死亡者数は約100万人で、内32万人、約3分の1が癌で死んでいる。癌を予防する方法は、医科学の進展により、ずいぶんと進歩してきた。しかし、リーダーの能力不足により、その進歩が、日本人のがん予防に十分に役立っていない。

  昨日、学会の帰りに、赤レンガ造りの北海道庁に立ち寄ってきた。二階に樺太資料室があった。昭和20年8月9日、ソ連が日ソ不可侵条約を破棄して、ポツダム宣言に基づき、北緯50度の国境を越えて、南樺太に進軍。当時、南樺太の日本人住民と兵士は延べ41万人。昭和20年9月5日の同島の日本軍の武装解除までに、大半が死亡。

  写真は、旧ソ連兵から寄贈された、日本兵の遺品である。ヘルメットが無残にも打ち抜かれている。合掌。ビルマ、フィリピン、沖縄、満州(中国東北地域)、サイパン、広島、長崎、東京、大阪- - - -でも、同様の悲劇があった。当時の日本政府の間違った政策とリーダーの無能で、国民は塗炭の苦しみと悲しみと地獄を体験した。

 今の政府の取り組み方で、がんとの戦争に勝てるのであろうか?

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2006/10/13     The Final Answer ピロリ菌と胃癌 日本消化器病週間・学会報告                                                  

     浅香正博北海道大学消化器内科教授が、札幌で開かれている日本消化器病週間で、10月12日に、ピロリ菌と胃癌について、「ファイナルアンサー」と題して、講演を行った。浅香正博先生とは、私が1993年に北大で「大腸腫瘍のピット診断」の講演を行ったときからの知り合いである。当時は、講師で、消化器部門のハウプトであった。彼はテニスが趣味の貴公子である。

 講演の中で、教授は全国集計の結果、年齢訂正の日本人が生涯を通じて胃癌になる確率は、ピロリ菌抗体陽性者で11.2%、ピロリ菌陰性者で1.8%であったと 発表した。ピロリ菌の感染(もしくは感染の既往)は、胃癌の発生を6.2倍に増やしているというわけだ。また、教授自身の胃内部を示した。10年前はピロリ菌がいて、荒れた年寄り風のでこぼこ状態であったが、ピロリ菌除菌して、10年経過したいまは、つるつるてかてかの若くて健康な胃に戻っていると述べた。除菌は、若返りの一環でもある。

 胃癌の死亡者数は全国で約6万人である。除菌政策を採用すれば、少なくとも、胃癌の死亡者は2万人以下になるであろう。若年者のピロリ菌感染は、とくに、危険なので、ぜひ、退治すべきである。これ以上の政策の 。遅れは、重大な責任問題だ。ピロリ除菌政策を即時に採用しなければ、現在の厚生労働大臣をはじめ、同省役人は、近い将来、罰せられることになるであろう。

 当院では、ピロリ菌のチェックと除菌を行っています。1000例を超える経験があります。ご希望の方は、ご一報ください。

 

2006/10/11     「がんの罹患率と死亡率の激減を達成するには」日本癌学会シンポジウム 報告                                                  

     癌学会のこのシンポジウムは、6人の発表があった。第一話、富永先生の内容は、私が、予想したとおりであった。私が、このホームページで予想した内容よりは、禁煙にウエイトが置かれていて、ピロリ菌のウエイトは低かったが、ほぼ同じ内容であった。第二話は、杉村先生の話であった。杉村先生は、ご高齢で、スライドも使わず、べらんめい調の、よく言えば洒脱な、悪く言えば、乱暴な話し方であった。まず、たばこの値段が安いといって、もっと、諸外国並みに高くするべきと述べた。次に、胃癌検診について述べ、バリウム検診の技術レベルの低下について嘆いた。内視鏡検診の優位性などはよく認識なさっているようであったが、経済的な問題とか、いろいろと難しく、「何でもいいから、何か検診を受けてればよい。」などと、述べておられた。また、私は検診を受けているのに、妻は私が勧めても、検診を受けないとも、ぼやいていた。最後に、検診というのは学問だから、東大にでも、検診学という講座ができないものかと提案なされていた。データに基づいた話がなくて、真実を探求し政策に生かすという考えが希薄だと感じた。悪く言えば、御都合話であった。日本人の悪いところを凝集したような感じであった。情緒的、場当たり的、非分析的、八方美人的、秘密主義的・・・。やっぱり、これでは癌との戦争には勝てない。日本は東条英機で大東亜戦争、太平洋戦争、第二次世界大戦に負けた。

  残りの4人のうち一人は、厚生労働省前医療政策局長、中島先生であった。中島先生は、つい最近別の部局に移られており、「前」の肩書きが付いたそうである。物腰が官僚特有の柔らかさであった。ちょっと疲れた感じの話し方であった。彼は主に、先の国会で採択された癌対策基本法をまとめられた経緯から、その紹介とその取り組みについて述べた。聞いていると、すべてはがんセンターを中心として、厚生労働省が仕切る、「がん行政は全体主義で行くぞ」という感じであった。癌診療を経済的に安く上げ、「臨終のときは自宅で。」とのことである。癌で死にたくない、癌になったら最善の医療をうけたいという、国民の願いが、法案の始まりであったはずが、いつの間にか、政府財政を守るためにがん患者の医療サービスを切り捨てるという内容に、すり替わっていた。いまの政府は財政事情から老人を捨てたいのである。癌が治せる医師は、がんセンターの中にいるだけではないのに、経済的理由から、実質的には、拠点病院でのみ先進的癌化学療法を許すつもりらしい。全体主義はリーダーが大事である。リーダーがよければ、最も早く効率的な組織となるが、リーダーが悪ければ、インパール作戦のように、兵隊は無駄死にするばかりである。癌との戦いに勝利するには、戦略的、科学的、論理的、合理的な優秀なリーダーが必要であろう !

 

 インパール作戦:第二次世界大戦、中国との戦争、中盤において、苦戦を強いられた日本軍が、戦局打開のため採った作戦。中国軍の武器補給路を絶ち、戦局を有利に展開しようと考えた。海沿いを日本軍に押さえられた中国軍の武器補給路は、イギリスの支配するインドからビルマ(現在のミャンマー)を経る陸路であった。日本軍は、中立国であったタイから、ミャンマーに攻め込んだが、イギリス軍と遭遇する前に、多くの兵隊がマラリアで死亡。作戦は惨憺たる結果であった。タイの熱帯医学研究所を訪れたとき、マラリアの多発地帯の話になった。タイの教授いわく、「なぜ、日本軍は、タイでも有名なマラリアの多発地帯・浸淫地に大事な将兵を送り込んだのか、理解に苦しむ」と。タイとミャンマーの間の森は、マラリアの多発地帯・浸淫地であったのである。泰緬鉄道は日本人の無知と傲慢と失敗を示す象徴なのだ。実は、この作戦、昭和天皇自らの発案という話。天皇を支える有能な参謀がいなかったのが残念である。

 

2006/09/22     「がんの罹患率と死亡率の激減を達成するには」第2話 がん検診を含めてがん問題全般 その1 がん検診 

  私は4年前から、内視鏡診断を中心に、東大の医学部学生を相手に講義を担当している。その際、必ず教えるのが、がん検診の問題である。

 

1) バリウムによる上部消化管検査では、食道癌は助けられない。食道癌は凹凸が出ると、粘膜下(SM)浸潤している。sm癌の5年生存率は40%以下である。したがって、食道癌を100%助けようと思えば、粘膜内に留まるうちに見つけなくてはならない。 ところが、粘膜内の癌は大半が平坦で形態的な変化がない。バリウム造影検査は、形態の変化を捕まえる検査である。したがって、バリウムで 見つかった癌は、理論的にsmよりも深い癌である。つまり、助けられないのである。

2) 胃癌の発見率について、内視鏡検診は、平均して、バリウム造影検診の3倍である。

3) 便潜血反応の進行癌を見逃す率は30%である。進行大腸癌だとわかって手術目的で入院してくる患者に対して、便潜血反応を行ったところ、陽性70%、陰性30%。つまり、進行大腸癌の30%は便潜血反応 で、見落とされる。

4) バリウム検診では、慢性胃炎は正常として取り扱われる。慢性胃炎は胃癌発生のリスク状態なのに、正常と言うコメントがなされる場合が多い。

5) ピロリ菌の感染の既往がない人には胃癌ができない。胃癌の出ない人に胃癌検診をする必要はないのに、ピロリ菌の感染既往の有無にかかわらず、日本では全員バリウム検査をしている。

 

 以上の内容は、臨床医として必須の知識なので、学生に教えるわけである。これらの内容が示すところは、バリウム検診・便潜血による消化管癌検診は実は穴ぼこだらけということなのである。よく考えてみるとお分かりだと思うが、これは、今の権力にとっては不都合である。なぜなら、「がん検診をうけていれば大丈夫。お上の指導する内容に誤りはありません。あるはずがないじゃないですか!」という立前なのだから。「穴ぼこだらけなものを、権力が民に押し付けている」なんて、いえない。権力の座、利潤の仕組みから落ちこぼれてしまう。

  権力が真実を曲げて報道する。権力の嘘を真に受けてしまい、現場にいないと、医師でも、間違った常識を持ってしまう。もっと怖いことは、権力に良心を売った医師や看護師、レントゲン技師、カウンセラーが、自分たちの利益のために、仮面をかぶって平気で、嘘を振りまいてい く。そんな姿をずいぶんと見てきた。美しいのはうわべだけ、闇の心だ。真実は悲しみに満ちたがん患者の家族の涙、がん患者の苦痛という悲惨な現実である。それもずいぶんと見て来た。なにが、「美しい日本」なのか?

 真実は「お上から推奨されて実施されているがん検診は、経済的理由から、そんなに大丈夫ではない」のである。このがん検診をめぐる諸問題は、官僚の無謬神話と同根の問題なのであり、現在、日本の最大の問題(強権官僚の無責任性・無罪性)と強く 関係している。官僚の行ったこと・言ったことが間違いでも、官僚は罪を問われない。

 

 癌学会の演者は、国立がんセンターの杉村先生である。この権力の中枢に近い方が、どこまで、本質をえぐるか?興味深い。

 

2006/09/21     「がんの罹患率と死亡率の激減を達成するには」第1話 がんにならないためには その3 多重がん 

  大腸癌に罹った人は、胃癌を併発しやすく、胃癌に罹った人は、大腸癌をよく併発する。だから、大腸癌の手術前には、上部内視鏡検査を行い、逆に、胃癌の手術前には大腸内視鏡検査を行って、大腸癌の併発がないか調べるのである。大腸に腺腫(前癌病変)がある人は、大腸腺腫がない人に比べて、大腸に限らず、全身どこの癌も発生しやすい。一回癌になった人は、しばらくすると 、その他の場所にも癌が出やすい。したがって、癌に罹った人は、別の場所に、癌が重ねて出てこないように、十分注意しなければならないのである。

  私が診た患者で、一番の多重がんは、カルチノイド腫瘍(大腸癌の一種)が、直腸に46個以上、異時性異所性に、多発した人である。第2位の多重がんは転移を繰り返しながらもすべて、早い段階での発見により外科的切除が行われて、いまだに生きている、大腸癌2個ー肝臓癌ー肺癌ー食道癌という人 である。そのほかに、大腸癌ー胃癌ー前立腺癌。乳癌ー胃癌ー肺癌。大腸癌ー食道癌ー肝臓癌。食道癌ー大腸カルチノイドー十二指腸癌。異所性異時性に、食道癌ー食道癌ー食道癌ー食道癌。また、大腸癌を6個同時に異所性に発見といった症例もある。奇妙な言い回しであるが、何回も癌になる人は、幸運である。なぜなら、癌に何回もなれるということは、前の癌で死ななかったからこそ、次のがんに罹患 できた?のである。3回以上の癌に罹った患者さんたちは、実は、ほとんどが生き延びている。

 私の経験のうち、死んだのは、乳癌ー胃癌ー肺癌の一人だけかもしれない。この人は、 大腸腺腫が合計30個程度あった。家族歴にも癌が多数あり、明らかに癌体質であった。2発目の胃癌は、内視鏡で発見され、内視鏡で切除できた。この方はヘビースモーカーであった。私は、癌体質だから、たばこをやめないと肺癌になると、説得し続け た。普通、癌になっていると、忠告するまでもなくたばこを止めてくれるものであるが、この人は、しかし、「社会的ストレス回避」といって、たばこを止めなかった。そして、9年目に ついに肺癌が発生して、 骨転移・脳転移と壮絶な2年間の闘病の末、お亡くなりになった。自分は癌になるはずないと無防備な人に、症状が出て癌が発見されるような場合、7割ぐらい死ぬ。仮に、運良く3割に入っても、2発目がその5年後くらいに来て、さらに、無防備のままだと、ほとんど が2発目の癌で死ぬ。「がん患者」という語句の響きのとおり、不幸を味わうことになる。ちなみに、膵臓癌の致死率は高く、この癌は、異時性の多重癌を許さない。

  癌が見つかった後、きちんと消化管ドックを定期的に受けている方々は、大腸癌・胃癌・食道癌が見つかっても、ほとんど が内視鏡的に完治している。私は、大腸に腺腫や癌が多発したり、胃癌・食道癌を内視鏡で取った患者に対しては、必ず禁煙を勧めている。しかし、先の症例のように、癌体質なのに、「たばこやめるくらいなら死んだほうがまし」とか「たばこがないと社会のストレスは乗り切れない」とか、私の前では「わかりました」と応えて、たばこのにおいが消えない人は、せっかく、内視鏡で助 けても、5年後10年後には肺癌で死んでいる。消化管の癌をできるだけ早期に見つけて助けようと必死になっても、禁煙してもらわなければ、「ざる」なのだ。たばこ が止められなくて、肺癌で死んでいった方々の顔が次々と思い浮かぶ。死に際しての、家族の涙の表情が思い浮かぶ。

  たばこは販売禁止だ!。

 

2006/09/18     「がんの罹患率と死亡率の激減を達成するには」第1話 がんにならないためには その2 感染症 

  感染症を契機として、発癌の危険が高まることが報告されている主なものは以下のとおり。感染していなければ、該当する癌の発生リスクは極めて低い。不幸にして、すでに感染している場合は、治療できるものは、発がん予防として、治療しておくべきである。

  感染経路 予防ワクチン 感染の治療法 特徴
1.ピロリ菌(胃癌)。詳細のページ 土、土に接した飲食物、患者の胃液 ×

現在、治療技術が確立されているのに、公的医療で受けれない。

2.B型肝炎ウィルス(肝臓癌) 血液、産道感染、針事故、輸血 ○▲ 特効薬ができて、治療技術は進歩してきた
3.C型肝炎ウィルス(肝臓癌) 血液、針事故、輸血、血液製剤 × ○▲ 近年では7〜8割治せるようになった。
4.乳頭腫ウィルス(子宮頸癌) 接触、性交 ×  
5.EBウィルス(胃癌) 接触、キス、性交 × ×  
6.HTLV−1(成人T細胞性白血病) 性交、母乳、輸血 × × 九州を中心として西日本に多い。
7.HIV(カポジ肉腫、悪性リンパ腫) 性交、輸血 ×,▲ 近年の薬の進歩で、致死の病気ではなくなた。

隣国、中国ではHIV/AIDSに対する、ワクチン投与が試験的に始まっているそうだ。(2007.2月,第3回日本消化管学会情報)

 

2006/09/17     「がんの罹患率と死亡率の激減を達成するには」第1話 がんにならないためには その1 生活習慣

 「がんの罹患率と死亡率の激減を達成するには」は、第3次対がん10か年総合戦略の標語である。9月27日から横浜のパシフィコ横浜で開かれる、日本癌学会学術総会で、この標語についてのパネルディスカッションが28日午後から開催される。癌の死亡者数は、毎年増加しており、男性の2人に1人、女性の3人に1人が癌に罹患し、約33万人が、癌で死ぬ時代に、癌をいかに克服して行くかは、緊急の課題なのである。パネルディスカッションには、6人の演者が登場するが、どんな話が出てくるのであろうか、今から楽しみである。

 PD1.がんにならないためにはー生活習慣、感染症、多重がんー演者 富永祐民(愛知健康づくり進行事業団)

富永先生のところは、がんの疫学的な研究や予防に熱心な施設で、研究発表も多い。かつて、意欲満々の看護師さんがいて、郵送による便潜血反応、郵便検診からのがん予防事業で、協力させてもらっていた。この問題についての、私なりの解答を考えてみたい。

 

生活習慣 1)節酒もしくは禁酒

 節酒は、大腸癌、肝臓癌、胃癌、食道癌、咽頭癌、膵臓癌の抑制につながることが報告されている。肝臓癌、食道癌は昔から、教科書にも記載されていることである。大腸癌、胃癌、膵臓癌については、自らの経験と、学会の報告などを総合しての判断である。

 C型慢性肝炎は、アルコール摂取により、肝臓の炎症がより強くなって、肝硬変になるまでの時間が早くなる。肝硬変になると血小板数が減少してくるが、肝臓癌のハイリスク状態の目安は血小板数8万以下である。食道癌(咽頭癌)のハイリスクは、50歳以上、男性、喫煙、飲酒習慣である。最近の研究では、リスクグループがさらに絞り込まれて、アルコールが代謝されてできる毒素アセトアルデヒドを解毒代謝するアルデヒド脱水素酵素の作用が弱い人に食道癌ができやすいとされている。ただし、最近は、昔と違い、女性も喫煙、飲酒する時代であるので、男性のファクターは、ほんとに食道癌が性ホルモンなどと関連しているのかは、疑問だが・・・。そういえば、不治の進行食道癌と診断されて、昨年、築地の国立がんセンターから逃れてきた、プライベートレストランの50才台前半の女性オーナーは、20年来毎日、ワインを夫と一緒に1ボトル以上開けていたという。ちなみに、夫にも咽頭癌がみつかった。夫婦内 二重癌。

 10年ほど前に行った私の研究で、大腸ポリープが癌化している確率は、日本酒の摂取量に比例して上昇し、毎日5合で、約2倍であった。また、ポリープの数自体も、ビールを大量に飲む人に多く、毎日、ビール1.5リットル飲むと大腸ポリープの発生は、約2倍になっっていた。臨床的にも、一般に接待接待で毎晩明け暮れる方々には、だいたい、大腸ポリープが見つかる。

 最近の学会報告では、ピロリ菌除菌後の3年以後の胃がん発生率は、飲酒群で33%ぐらい、非飲酒群で5%以下と報告されている。

生活習慣 2)禁煙

  肺がんのリスクは、喫煙で上昇する。喫煙者の罹患率はアメリカでは約20倍、日本では約5倍ぐらいと報告されている。今の癌年齢の日本人は、車や工場の排気ガスがもっともひどい時代に生きていたので、肺がん発生に対する、喫煙の寄与率がアメリカよりも低いのであろう。アメリカは広い国で、空気は日本よりもきれいだ。 しかし、私が大腸を見たことのある患者で、肺癌で死んだ人はほとんどが喫煙者であった。ちなみに、大気汚染のひどい中国は、近い将来に肺がん大国にもなるであろう。

生活習慣 3)低脂肪食

 大腸がんと乳がんは、脂肪の摂取量上昇により、罹患率が高まることが報告されている。

 

2006/08/04  内視鏡的噴門部形成術に成功 

 昨年から、オリジナルに開発した、針糸を使わない、内視鏡的噴門部形成術に、また一例成功した。難治性の逆流性食道炎で、PPIとH2ブロッカーを同時投与しても治らなかった患者に、この内視鏡的噴門部形成術を用いたところ、噴門部(胃の入り口、食道と胃の境目)が細くなり、食道の慢性難治性潰瘍がきれいに消失した。難治性の逆流性食道炎にお悩みの方は、ご相談ください。詳細は2005/07/24の項へ、こちらをクリック。

 手術前炎症の内視鏡像:     内視鏡的噴門部形成術後の内視鏡像:

PPI(プロトンポンプ阻害剤)とか飲んでいたが治らないの図。                             縦走する潰瘍が消失しているの図                        

 

 

2006/08/02  王貞治監督、 慶応大学病院を退院する 

 王監督の病状は、胃上部の前壁に、約5cm大の癌があり、腹腔鏡手術をしたところ、リンパ節転移が1つ認められたと報道された。医療関係の報道はプライバシーのため、ときにゆがむので、報道が正しいかどうかは不明だが、この報道は専門家にとって、いくつかの疑問が残るものであった。胃体部上部前壁の癌で5cmといえば、普通は進行癌である。つまり、癌は筋肉層以下に浸潤していて、転移のリスクの高い状態である。術前にリンパ節転移を確実に診断する方法がないので、術中に触診しながら、リンパ節の切除範囲の広さをきめるものであるのだが、腹腔鏡手術では、リンパ節の触診ができないので、はじめから、根治を目指していなかったのかといぶかしく思うのだ。つまり、もしかして、完治不能な状態なので、胃癌からの癌性出血のコントロールのために、胃を腹腔鏡的に切除して、過大な侵襲を避けたのかもしれない。

 今日の会見で、王監督はずいぶんとやせていた。もともとソクラテスのような深刻な顔が、さらにソクラテスになっていた。8−9kg体重が減ったという。糖尿病でもあるのだろうか?もしなければ、どんな栄養管理だったのだろうか?ちょっと心配になってきた。 報道によると奥さんは胃癌でお亡くなりになったとのこと。最近の研究で、ピロリ菌はいろんな種類があり、その発癌因子CAG−Aの遺伝子解析結果から、菌ごとに、発癌の強さの違いがあることがわかってきている。奥さんと同じものを食べていた王監督が、発癌因子が同じピロリ菌を持っていた可能性は高い。 王家のピロリ菌は、超悪玉であろう。子供さんたちもハイリスクであり、もし、まだ、ピロリ菌チェックをしていないのなら、早くして、ピロリ菌がいたら、除菌すべきである。

 ご家族が胃癌になった人は、がん予防のため、ピロリ菌をぜひ退治してください。ピロリ菌について詳細はこちらをクリック

 

2006/07/11  王監督、胃癌になる 

 王監督といえば、世界のホームラン王で、私が小学・中学・高校のころにちょうど大活躍していた。私は当時、大の巨人ファンであった。王が打席に立つとホームランの期待でわくわくしていたし、4回に1回はその期待に応えてくれていた。今回、王監督が胃癌になって、慶応病院で腹腔鏡手術を受けることになったという。毎年、検診を受けていて、癌が見つかったということだそうだ。してみると、おそらく、早期がんであろう。腹腔鏡手術をうけずとも、内視鏡でなおりそうなものであるが、腹腔鏡手術をするということは、sm以下に浸潤しているのであろうか。sm癌であれば、大まかに10中8−9助かるが、手術には成功してぜひ助かってもらいたいものだ。ところで、王さんは胃癌予防のために、ピロリ菌退治していたのであろうか?

 

2006/07/05  内視鏡検診、大腸ポリープ切除の大腸癌予防の威力 

 進行大腸癌になった人は、ほとんど内視鏡による大腸検診を受けていない。先月の2例もそうだった。そして、おぞましい病名を告げられると、決まってこう言う。「どうして私が進行大腸癌なの?なにか悪いことした?」 「いえいえ、悪いことをしたわけではありません。「いいこと」をしなかったのです。「いいこと」とは無症状のうちの内視鏡検診です。」 

 ある保険組合から、53歳以上の社員全員の内視鏡検診と完全ポリープ切除を依頼されたことがある。1980年代後半、その会社の人徳の取締役が大腸癌で死に、社員一同大いにあわてた。大腸癌を完全にブロックしたいと思った役員たちは、社員全員の大腸ポリープの切除を、私に依頼してきた。私は合計630名あまりを約3年にわたり、社員全員の内視鏡を行い、すべてのポリープ(陥凹型腫瘍を含む)を完璧に切除した。病理検査の結果、腺腫以上の腫瘍性病変が432名に見つかり、癌は46名に見つかった。進行癌は2例であった。その後、腫瘍の個数や異型度に応じて、定期的な内視鏡検査とポリープ切除を丁寧に繰り返した。癌があったりや腫瘍の多かった人は年に1−2回、腫瘍の少ない人は1.5年に1回ぐらい、腫瘍のない人は3年に一回の 間隔で繰り返しおこなった。それを、約十年間続けた。その結果、その保険組合では、それまで平均して毎年2例ずつ大腸癌で死亡していたが、この検診を始めてからは、大腸癌で死ぬ人は0となった。当初の目的が達成できたのである。この功績で、保険組合の理事長は、大腸癌を克服した組合の指導者として、朝日新聞に取り上げられた。理事長 は自分の写真の大きく載った朝日新聞を私に見せながら、「先生ありがとうございました。」と大変な喜びようであった。

 内視鏡検診と大腸ポリープ切除は、大腸癌予防に大変な威力がある。大腸癌になりたくない人は、実績がある当院の内視鏡による大腸検診・大腸ポリープ切除を、癌による症状が出る前にお受けください。大腸癌を克服したい保険組合の方も、どうぞご相談ください。

 

2006/07/05  PET検診に疑問符、癌の85%を見落とし?!・・・がんセンター調査 

 時々、PET検診について質問を受けることがある。「ペット検診って癌がすべて見つかる理想の方法なので、内視鏡検診をやめてPETだけでいいですか?」と。少し古くなるが、2006年3月3日の読売新聞の健康欄に上記のような見出しが躍った。記事の一部を下に記載する。結論は、PETは消化管の癌の発見には不十分であるということである。コマーシャリズムの嘘に騙されないようにしてください。

 

早期発見 切り札のはずが……

国立がんセンター(東京)の内部調査で、画像検査PET(ペット、陽電子放射断層撮影)によるがん検診では85%のがんが見落とされていたことが分かった。PET検診は「全身の小さながんが一度に発見できる、がん検診の切り札」と期待され、急速に広がっているが、効果に疑問符がついた形だ。

 PETは、放射性物質が含まれた薬剤を注射し、がんに集まる放射線を検出してがんを発見する装置。同センター内に設置された「がん予防・検診研究センター」では、2004年2月から1年間に、約3000人が超音波、CT、血液などの検査に加えPET検査を受け、150人にがんが見つかった。ところが、この150人のうち、PETでがんがあると判定された人は23人(15%)しかいなかった。残りの85%は超音波、CT、内視鏡など他の方法でがんが発見されており、PETでは検出できなかった。

 がんの種類別では、大腸がんが見つかった32人のうち、PETでもがんと判定された人は4人(13%)。胃がんでは22人中1人(4%)だった。PETによる発見率が比較的高いとされる肺がんでも28人中6人(21%)、甲状腺がんで11人中4人(36%)にとどまった。PETは1994年ごろから使われ始め、現在は100近くの医療機関が導入、多くでがん検診にも使われている。がん検診には保険がきかないため、10〜20万円程度の費用がかかる。日本核医学会の調査では、2004年9月の1か月間だけで4600人が受診した。PET検診と温泉ツアーなどをセットにした旅行企画も売り出されている。

 国立がんセンターの村松幸男検診部長は「PETでは『小さながんを見つけやすい』と言われてきたが、早期がんでは他の検査に比べ検出率が低かった。PET検診の意義は小さいのではないか」と話している。民間医療機関のがん検診では、がんのうちPETで検出されたのは64%、48%などのデータがある。国立がんセンターの超音波、CTなどを併用した検診では、がん発見率は一般の医療機関に比べ高いため、相対的にPETでの発見率が低下した可能性がある。

 PET(Positron Emission Tomography) がん細胞が糖分を多量に消費する特性を利用し、放射性物質と糖を含んだ薬剤を注射して放射線を検出し、がんを映し出す画像診断装置。全身を一度に撮影し、他の画像装置では発見しにくい転移も発見できる。脳卒中や心臓病の検査にも使われる。

2006年3月3日  読売新聞)

 

当院の提供する無痛で精密な消化管ドックのページはこちらから

 

2006/5/24 ロスアンゼルスDDW(米国消化器病週間)報告

 5月20日から5月25日までロスアンゼルスで米国消化器病週間(DDW)が開催された。5月のロスアンゼルスは、からっと晴れ上がって、素敵な青空であった。私は、去年の秋のコペンハーゲンと同様、色素拡大内視鏡による核診断について発表した。最新型の拡大内視鏡を用いると、核が見えること。さらに、その所見からの大腸腺腫と大腸癌の鑑別診断が、よくできることを発表した。聴衆の反応は、予想よりも好評であった。

 ところで、今回の学会で、内視鏡について主に話題になったのは、診断や治療に関する、新たな、さまざまな道具である。大腸内視鏡挿入については、気体で大腸を膨らませてプロペラで入っていくエアロ内視鏡や、先端につけるキャタピラ型内視鏡、硬化と軟化が一瞬で変えられて、形態が自由に固定できるスライディングチューブなどの発表があった。診断面では、カプセル内視鏡の更なる進化(前進後退、旋回運動の遠隔操作、食道観察、胃観察、大腸観察)やその臨床応用の結果が、数多く発表されていた。また、DBE(ダブルバルーン内視鏡)、コンフォーカル(confocal)内視鏡(=共焦点式レーザー内視鏡)、NBI(峡帯域強調画像)とAFI(自己蛍光画像)の更なる進化と臨床応用結果が数多く発表されていた。また、ラマンスペクトルによる特殊生検カンシの開発も初めて発表されていた。治療面では新型カンシ様ステイプラーや各種縫合装置による全層縫合の進化と、それに伴う、各種臨床応用の報告のほかに、経消化管的腹腔手術の動物実験も報告されていた。

 癌予防薬については、NO-NSAID(一酸化窒素付加非ステロイド抗炎症剤)の有望な実験結果が示されていた。ちなみに、ここ数年、力が入れられていた、CoX2阻害剤は治験の段階で、心不全の頻度が増加するということで発売取りやめとなり、NOが付加されたようだ。それで返って、より強い癌予防効果を持つかもしれない薬にたどり着いたようだ。米国の研究の方向性は、日本消化器内視鏡学会とはかなり異なっていた。

 最後のアメリカ消化器内視鏡学会会長(任期一年)の演説では、今後の消化器内視鏡を取り巻く、医療環境が述べられた。消費者のニーズを超える技術の開発は、消費者の 支持を受けないで廃れていく。30年前、トヨタの車はぼろで、ニーズに追いつかない代物であった。GMは30年前いい車を売っていたが、、その後、消費者のニーズを越える、性能がいいのだが高価な車を作ってしまい、ちょうど消費者のニーズに合う、それなりの価格の車(レキサス)を売るようになったトヨタに、今現在、負けている。内視鏡業界も消費者のニーズを越える余分で高価なことを戒める必要があろうと、コメントしていた。演説の最後に感極まって、涙をぐっとこらえて、声が何回も裏返っていたのが印象的であった。まじめで熱いのだ。また、アメリカは日本も含めて世界に負けないのだという意思を感じさせた演説でもあった。

 

2006/5/12 TBS「主治医の見つかる診療所」 キスでピロリ菌は伝染するの?

  5月7日日曜日のゴールデンタイムのTBSテレビ「主治医が見つかる診療所」をみていたら、 昨年胃がんの手術を受けた大橋巨泉さんが登場した。2回除菌を受けたが、ピロリ菌が治らないという。ピロリ菌は胃癌の原因なので、何とか、治したいらしい。そこで、巨泉さん、コメンテーターの癌研有明病院JF先生にいろいろと質問した。ピロリ菌の感染ルートを尋ねられた彼女は、キスで伝染するとコメントした。つかさず、大橋巨泉さんが「僕は、ワイフと毎日しっかりキスしているが、彼女はピロリ菌除菌に成功したよ。」と突っ込みを入れた。番組ではすぐに茶々が入り、結論でなしで、話題は次に移っていった。私の2500例を超える臨床経験でも、キスでピロリ菌は伝染しない。巨泉さんの突込みが正しいのである。JF先生の名誉のために言っておくと、研究初期には、確かにピロリ菌患者の口腔内から、ピロリ菌の性質を持った菌が見つかるという報告があるにはあった。しかし、人間は、歯を磨いたりアルコールを飲んだりして、ピロリ菌は口の中では極めて生存しにくい。

 では、ピロリ菌の感染ルートは何かというと、土である。土の中には、ピロリ菌が丸く小さくなって(コッコイド型)になって、冬眠しているのである。これが、ゴキブリやハエにつき、最終的に、食べ物などに付いて胃に入ってくるのである。胃に入るとピロリ菌は、鞭毛を広げて、ヘリコプターのような形になって、増殖するのである。(この形からヘリコバクターと命名された。ちなみに、以前は、キャンピロバクター・ピロリと呼ばれていた。)

  私の臨床経験では、歯を磨いたり、アルコールを飲んだりしない、「犬」とキスする、ご婦人方の除菌は必ず失敗した。犬は、土でもどこでも舐めるのである。

最後にもう、一言、ピロリ菌に感染したときの胃癌発生率が1%以下とJF先生は述べていたが、これも間違いで、一生を通じてみると、13%ないし18%ぐらいである。今の日本は年間100万人死亡する人がいて、ピロリ菌感染率が6-7割で、年間約10万人が胃癌になるのである。内、5万5千人が胃癌で死ぬ。

  テレビは大きな影響力を持つので、内容の間違った健康番組を垂れ流すのは、殺人にも等しい。わからないことは、せめてわからないというのが、科学者の掟であろう。プロデューサーも襟を正して品位のある、内容も十分吟味した番組を作るべきである。

 

2006/4/16 内科学会報告 分子標的療法が難病を克服する新たな時代に突入。リウマチ様関節炎もSLEも完治する。

  4月14日から16日まで、内科学会が横浜国際会議場で開かれた。分子標的療法のシンポジウムがあった。今回、話題となった薬は、抗TNF-α抗体(レミケードなど)、抗IL-6抗体、抗CD20抗体などである。抗TNF-α抗体はリウマチ様関節炎、クローン病に著効し、抗IL−6抗体は、キャッスルマン氏病、リウマチ様関節炎、若年性特発性リウマチ様関節炎、クローン病、などに著効することが示された。また、抗CD20抗体は、 B細胞性リンパ腫をはじめ、一部の多発性骨髄腫やSLE(全身性紅斑性狼蒼)などに著効を示していることが報告された。その効果は顕著で、従来のステロイドや免疫抑制剤治療に 比べて、大変優れた効果を示していた。その優れた効果と病気の初期に効きやすいという特性から、アメリカでは、これらリウマチ系の自己免疫疾患に対しては、安い薬から順に使う (ボトムアップ)のではなく、効果の強い分子標的療法薬をはじめから使う(ヘッドダウン)の投薬法が提案されている。リウマチ様関節炎・SLEはステロイドで上手に管理する病気から、 分子標的療法で完全に治ってしまう病気になった。シンポジウムの終わりに、座長は「パラダイムシフトが起こった。」と表現した。

 私が大学卒業後に最初に研修したのは、東京大学附属病院物療内科であった。物療内科(今のアレルギー・膠原病内科)には多くの難治性の患者さんが入院していた。中でも、若い女性が罹患するSLE、しかもSLE脳症は悲惨であった。SLEとは、紫外線を浴びた皮膚が赤く変化する病気で、顔に蝶形紅斑がでて気づかれることが多い。関節痛や発熱、腎炎、脳炎などもおこる難治の病気で、患者さんたちの人生は破壊され る。病気の本態は、原因不明の抗体産生の異常亢進で、Bリンパ球系の病気である。CD20は前Bリンパ球に出現する分子で、これを攻撃することで、異常なBリンパ球が正されるという。 したがって、理屈からいうとBリンパ球を病気の本態とする病気では、病気が簡単に治る可能性があるということである。報告では、SLE脳炎が見事に治癒した症例が2例示されていた。私は、22年前の研修医のころを思い起こした。あのころ に、この薬があったら、助かったはずの若い娘さんたちの顔が自然と瞼に浮かんできた。彼女たちのSLE脳症は治癒せず、文字通り、かわいそうな人生であった。合掌。

 

 

2006/4/12 北朝鮮から送られてきた骨は横田めぐみさんのものっだたのか?焼かれた骨のDNA鑑定は可能か?  

 このタイトルの問題は、2005年7月20日のTOPICSでも取り上げたように、医師の間では、結構大きな話題を呼んでいる。DNAを熱すれば、燃えて酸化して、化学構造が壊れるはずというのが、科学者の常識であるからである。この問題は、イギリスの有名な科学雑誌「Nature」でも取り上げられた。Natureでは、焼かれた骨のDNA鑑定は不可能であり、日本政府の先の発表、すなわち、北朝鮮から送られてきた骨が、DNA鑑定により横田めぐみさんの遺骨ではないとした発表は、うそであるとされた。もちろん、北朝鮮から送られてきた骨が、横田さんのものであると言ったわけではないが、焼かれた骨のDNA鑑定は不可能と主張したのである。当の日本ではあまり報道されていないが、国際的には、残念なことに、日本政府の面目丸つぶれという事態に発展してしまった。日本政府が根拠とした科学的鑑定は、帝京大学法医学教室で行われていた。

 先日、4月8日の土曜日PM6:30から、大手町の経団連会館で、東大医学部医学科昭和59年卒業の同級会が開かれた。二次会の席で、帝京大学法医学部の野上誠助教授(現在、教授空席で教授代行)と隣り合わせになった。懐旧の挨拶のあと、さっそく、焼かれた骨のDNA鑑定の問題を、野上教授代行に問い正した。居並ぶ、教授・助教授・講師・部長・社長・院長、注視のなか、野上先生は「あれは、隣の部署で、まったく、わかりませんよ。」と答えた。鑑定したのは講師であって、野上君ではないのだそうだ。その講師はこの鑑定の後、退任して、今は警察の鑑識関係の職についているそうだ。かれには、日本の名誉のために、DNA配列も詳述して、Natureに反論してもらいたい。反論できないのなら、真実を明らかにして科学者としての責任を取らなければならない。

 

2006/3/15 超音波による前立腺がん治療(HIFU)に協力 

 前立腺癌の先端的治療のひとつに、超音波による前立腺がん治療(HIFU)がある。前立腺がんに対しては、手術や放射線療法、ホルモン療法があるが、HIFUの特徴は、他の療法では勃起不全は必発なのに比べて、勃起不全の合併率が30−40%であるということだ。東京大学医学部医学科の同窓生、現在、社会保険中央病院の泌尿器科部長、鈴木誠先生が、「HIFUは勃起不全を起こさない可能性のある唯一の前立腺がん治療法であるが、未だ保険認可されていないため社会保険中央病院ではできない。特に性機能を維持したい患者のために協力してくれないか」と持ちかけられて、処置室と入院病室を提供したものである。また、HIFUの重篤な合併症の一つに、直腸穿孔がある。当院では、大腸内視鏡がすぐにできるので、術前・術後に直腸を観察することにより、合併症予防にもなるとのことで、協力することにした。本日、HIFUの教祖、東海大学八王子泌尿器科内田教授にも来ていただいて、初の2例が行われ無事終了した。HIFU:泌尿器科、併設前立腺センターのページはこちらから

 

2006/3/12 あるある大辞典「小腸デトックス」に協力出演

 緑の植物クロロフィル(葉緑素)には、からだに有害なダイオキシンやカネミ油症事件のPCBを体の外に追い出す働きがある。クロロフィルは食材をゆでると効果が発揮されやすい。「だから、緑の野菜をゆでて食べましょう。そうすると、有害物質が小腸から追い出されて、やせるのに有効な物質の吸収がよくなって、いままであるある大辞典で紹介した各種ダイエット法が成功しますよ。」という主旨の番組であった。摂南大学薬学部、宮田秀明教授の論文をいろいろ読んでみると、ねずみで調べたところ、クロロフィル摂取がダイオキシンの排泄に有効であった。また、培養小腸細胞で調べてみると、クロロフィルがダイオキシンの吸収を抑えたと書いていたので、間違いではないようである。しかし、「」で囲まれた部分は、2例だけでは証明できない。作業仮説である。証明には最低でも40例ぐらい必要であろう。ちなみに、私の役割は、クロロフィル投与前後で小腸細胞のダイオキシン濃度を測るために、小腸内視鏡を行って小腸上皮を採取してくることでした。

 さらに、蛇足ですが、当院では、小腸からのカロリー吸収を抑制をメインとするダイエット療法を行っています。これはつまり、食べながらやせられるということです。肥満や糖尿病などでお悩みの方はご相談してください。

 

2006/2/2 見落とされる表面・平坦型癌・腫瘍  

先週、他の病院で、大腸内視鏡を行い、ポリープが見つかった患者が来院した。患者いわく「便潜血反応で、2回のうち1回が陽性になり、大腸内視鏡をしたところ、痛くて大変だった。終わったら先生から、「ポリープが1個だけS状結腸にあります。日にちを変えて、入院し、もう一度内視鏡をして、ポリープを取りましょう」といわれた。でも、あんなに辛くて痛い内視鏡は二度と嫌だと思い、兄弟から評判を聞いていた私のところに来た。」とのこと。本日、大腸内視鏡検査をしたところ、ポリープは全部で12個以上あり、内一番大きな病変は、横行結腸の、15mmの平坦型腫瘍であった。この事実を知った患者は、「この前の大腸内視鏡検査はいったい何だったのでしょう。怖い話ですね」とコメント。前医は、若い先生だったとのこと。内視鏡の技術が未熟で、落ち着いてじっくりと内視鏡観察ができないレベルなのであろう。大腸内視鏡は、熟練するまで、みっちり2年はかかる。先生によりレベルの差が大きな検査である。実は、このような「腫瘍や癌」見落とし話は、よくある話なのである。5mmぐらいまでなら、罪も軽めだが、10mmを超える腫瘍や癌では罪は重い。命が飛んでしまうこともあろう。大きくても特に平坦型は簡単に見落とされやすい。他院で見落とされた最近の二例の写真を掲載するので、発展途上の先生は特によく勉強していただきたい。

他院の見落とし症例1: 横行結腸20mm表面型早期大腸癌

 

他院見落とし症例2: 横行結腸15mm平坦型大腸腫瘍

 

私は現在、東京大学腫瘍外科の講師で、学生や初学の医者相手に、内視鏡の講義をしているが、平坦型癌や腫瘍の発見のこつを以下のように述べている。1)腸管を過進展しない。つまり、空気を入れすぎない。 2)色素を散布する。メチレンブルーを大腸全部に散布して見落とさないようにしている。 3)丁寧にみる。 4)前処置をきれいにする。汚れているときは洗いながら行う 5)拡大内視鏡でピットパターンを必ず確認する。

 

2006/1/20  ホラー話の原因は包括医療制度(DPC)  

詳しくはここをクリック

2006/1/12 癌撲滅政策の提案

ここ1−2年、中国人と付き合うようになった。彼らを見ていて感じることは、中国人は、目的を理解すると、決断と行動が素早く、日本人は決断と行動が遅いということだ。ちなみに、中国人というのは、総称で、40−50の民族からなり、中国の戸籍には、どの民族か明記されている。有名な一人っ子政策は、モンゴル族とかウィグル族とか満族とかいった少数民族には適応されていない。中国とは多民族集合体なのである。他民族からの侵入がいつあるとも限らない、生命の危険な環境が、理に基づいた、すばやい決断、そういう性格を選び出したのだろう。

 

 先日、日本の癌診療について、NHKが番組を制作していた。アメリカの癌診療が進んでいて、日本の癌診療が遅れているとかのイメージを持たせるような、番組構成であったが、現場から言わせてもらうと、お互いに相手に優る点と劣る点をもっていて、癌診療についてアメリカの体制が一方的にいいというわけではない。乳がん検診体制は、アメリカが日本に優るのかもしれないが、胃癌検診体制は、日本がアメリカに優る。ただし、日本の胃癌検診体制には改善点が多いが・・・。

 

 それから、とても気になったのは、アメリカで開発されているさまざまな癌に対する薬に対する評価である。グリベックという薬は、慢性骨髄腫という血液の癌と消化管の肉腫の一部(GISTの多く)に特効的な効果を示した。イレッサは肺がんの一部を治せるようになった。全部ではない。保険承認をめぐってNHKの番組でも問題になっていた血管新生増殖抑制薬:アバスチンは延命効果をもつが、癌を完治することはできない。その他の新たな化学療法の薬は、延命効果、ADLの改善があり、効果のある症例の割合が増えて、たしかに良くなっているが、全体としてみると、残念ながら、いまだ癌を治せない。助からないステージではやはり95%以上は死ぬ。

 

現在、日本は「2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で死ぬ」時代である。特効薬のない癌を予防する、すぐできる「癌撲滅政策」は、医学的に考えて何であろうか。

1)     癌死ランキング1位=肺癌に対して「たばこの販売禁止」。たばこは、肺がん、食道癌の原因になると知られている。喫煙の肺癌発生オッズは20ぐらいである。肺がんは年間約6−7万人死亡している。たばこをやめれば、20年後には肺がんの数は20分の1になる可能性もあるだろう。肺がんの死亡者数が年間3000-4000人に減るということだ。

2)     癌死ランキング2位=胃癌に対して「ピロリ菌の退治」。胃癌の大半は、ピロリ感染が元になっている。ピロリ菌を退治したグループは、退治しないグループに対して、胃癌発生がどのくらい減るのであろうか?いろいろと研究結果が発表されてきたが、ピロリ菌退治成功して3年後以降は、5分の1から3分の1に減るという。最近の研究では、除菌後お酒を飲まないグループでは10分の1以下になるようである。私のクリニックで、ピロリ菌退治した人たちの癌発生は、年0.5%ぐらいである。この政策が実施されれば、胃癌の死亡者数は約5−6万人から、1−2万人に減るであろう。

3)     癌死ランキング3位=大腸癌に対して「大腸内視鏡検診」。40−50才時の大腸内視鏡検診を開始して、ハイリスクグループの絞込みとポリープ切除をおこなうと大腸癌はほとんど予防できる。私の経験では、このプログラムにのって大腸癌で死んだ人はいない。この政策が実施されれば、年間3−4万人死んでいる大腸癌は、年間2000人以下になる。

これが、私がすぐに思いつく、がん死のランキング1位から3位までの対策である。現在、日本人の癌死年間33万人中、約14万人が救われるだろう。医療費の削減効果も大きい。癌の特効薬のない今、疫学的な強力な健康政策が必要だろう。

その他、肝癌はB型C型肝炎ウィルス、子宮頸がんはパピローマウィルスなど、感染症による癌は、より強力な感染予防対策により、長期的な癌発生低下が見込めるであろう。

 

昨年、アメリカDDWに行き、中国の地方政府の中には、先進的ながん予防政策を採用しているところを知って驚いた。病気を治すということは、体の中にある自然との闘いである。癌は洪水災害みたいなものである。今の日本に必要なのは、国民の健康と幸福を希求し、道理に基づいた素早い決断をして、それを実施できる政治組織であろう。

 

2005/12/12 11月に大腸進行癌2例、予防できる大腸進行癌をこの2人はなぜ予防できなかったのか!?

11月に大腸進行癌の患者さんが2例受診してきた。

はじめの一例は、54才の女性で、保険の外交員として長く付き合いのあった人である。自覚症状はなく、毎年受けている会社の検診で、便潜血反応が陽性となったのがきっかけである。長く付き合っていたにもかかわらず、大腸内視鏡検査は、今回初めてであった。大腸内視鏡検査をしたところ、直腸下部に進行癌が見つかった。「毎年便潜血の検診を受けていて、どうして進行癌なのか?」と質問された。素人から見れば、尤もな疑問である。便潜血反応の感受性は、早期癌で10ないし20%ぐらい、進行癌で70%ぐらいである。進行癌ですら、30%は便潜血反応が陰性になるのである。長廻先生(前群馬県立がんセンター長)は、「50歳になったら自覚症状の有無、便潜血の有無にかかわらず、一度はちゃんとした先生に大腸内視鏡検査をしてもらいなさい。」と、いつも講演で述べておられたが、まさにそのとおりの症例であった。彼女が、もし、50歳で内視鏡検査を受けていたなら、癌はポリープか早期がんの状態で、内視鏡的に簡単に切除されていたことであろう。

次の2例目は、67才女性で、ご主人を直腸癌でなくされた未亡人である。この方は、一年前から「妙におなかが張る」という自覚症状があった。ご本人も自分は大腸癌ではないかと疑っていたのだが、ご主人の大腸内視鏡検査が痛く苦しく、また「生まれてこの方、自分は清く正しく生きてきたのだから、自分には癌などという災厄が訪れないだろう。」という希望的思い込みから、検査を受ける勇気がなかなか湧いてこなかったご様子である。秋口から、おなかの張りがだんだん悪くなって、ご友人から私の大腸内視鏡検査はまったく痛くないと聞いて、ようやく受診なさったようである。大腸内視鏡検査をしたところ、癌は上行結腸にあり、既に大腸を閉塞するまでに増殖していた。

お二人とも、症状や所見のないうちに、大腸内視鏡専門の先生の大腸内視鏡を受けていれば、進行癌にはならずに済んだことであろう。大腸癌で死にたくない人で、一度も大腸内視鏡検査を受けてないかたは、早く検査を受けるようにお勧めします。とくに、大腸内視鏡検査は痛く辛いものだと思って、大腸内視鏡検査を逃げている方は、私が無痛大腸内視鏡検査をしていますので、どうぞ、連絡してください。大腸腫瘍のページへ

 

2005/10/31 ヨーロッパ消化器病週間でオリジナルの核パターンによる大腸癌・大腸ポリープの内視鏡診断を発表

 10月14日から10月19日まで、ヨーロッパ消化器病週間がデンマークのコペンハーゲンで開かれた。8月28日のトピックで書いたように、最新の拡大内視鏡は7μmの解像度を持ち、核も見える。今回はその内視鏡で見える核のパターンを分類して、その臨床的有用性を検討した口演発表をおこなった。内視鏡診断が、また一歩、組織診断に近づいた。詳細スライドショウ

 

2005/10/30 ヨーロッパ消化器病週間報告

10月14日から10月19日まで、コペンハーゲンで開かれたヨーロッパ消化器病週間で、注目された新技術はフジノンの発表したFICEシステム。任意の可視波長を画像化するシステムで、今後の発展が期待できそうだ。また、オリンパスのカプセル内視鏡が日本に先立って、ヨーロッパで販売承認されたようである。全体には、IBD(潰瘍性大腸炎やクローン病)の発表が日本に比べて圧倒的に多く、実際、多くの聴衆が集まっていた。

聴衆は少なかったが、私としては大変注目される発表が、日本からあった。東邦大学消化器内科三木一正教授の発表である。萎縮性胃炎でCAG-A陽性のピロリ菌に感染している人は、萎縮のない胃でピロリ菌に感染していない人の約40倍の胃癌発生率があった。この数字は、C型肝炎から肝硬変になった人の肝臓癌発生危険度に匹敵する値である。C型肝炎ヴィルスなみの感染予防と治療が、CAG-A陽性のピロリ菌にもおこなわれるべきである。厚生労働省の遅い対応が、これまでも、いまも、多くの胃癌患者発生とその死に結びついており、これ以上の対策の遅れは「行政による不作為の殺人」ともいえ、犯罪的ですらある。エイズのミドリ十字のときのように。

 

2005/10/03 ピロリ菌発見者(マーシャル先生とウォーレン先生)にノーベル賞

スウェーデンのカロリンスカ医科大学は3日、今年のノーベル医学生理学賞を、オーストラリアのバリー・マーシャル西オーストラリア大教授(54)と、病理専門医ロビン・ウォーレン博士(68)に贈ると発表した。ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発生に関与している可能性を1983年に提案したことが22年を経て評価されたものである。その後、世界各地の研究で、ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんとの関係も明らかになってきている。ピロリ菌は地域によって、亜種があり、日本をはじめ、中国東北地区、朝鮮半島になど、東アジアに分布するピロリ菌は、cag−Aという発ガン因子をもつことがわかった。日本でのピロリ菌感染率は、戦前・戦中・戦後混乱期世代(50歳以上)に高く、これが、日本の高い胃癌発生率に結びついている。ピロリ菌の除菌によって、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の慢性化はなくなり、胃癌の発生率も低下する。現在、日本の健康保険制度では、ピロリ菌除菌療法は胃・十二指腸潰瘍 治療にしか適応がなく、胃癌の前段階の慢性胃炎に対しての適応はない。残念なことである。ウォーレン先生らがノーベル賞を受賞なさったのを機に国を挙げて、ピロリ菌退治をし、胃癌患者を減らしたいものである。戦前、結核予防法が策定されたように、胃癌予防法を策定し、慢性胃炎患者のピロリ菌の駆除に行ったらいかがであろうか!ちなみに、当院では、これまで2600例を越えるピロリ菌退治をしてきました。慢性胃炎でピロリ菌除菌をご希望の方は、御来院ください。

 

2005/09/30 消化管癌(大腸癌、胃癌、食道癌)にならない生活習慣とは?とくに飲酒について

大腸癌の死亡者数がじわりと上昇してきている。現在、一年間に約9ないし10万人が大腸癌に罹って、約4万人が死んでいる。大腸癌を避けるためにはどういう生活習慣がよいのであろうか?大腸癌に罹りやすいリスク因子としては、1)アルコールの過剰摂取、2)脂物の過剰摂取、3)食物繊維の不足、4)癌家系などが上げられる。かつてよく、肉の食べすぎもリスク因子といわれたが、これは、研究者によりデータが異なり、半数は関係有、半数は関係なしとの状況である。(ちなみに、女優オードリ・ヘップバーンは菜食主義者であったが、大腸癌で死んでいる。)

10年ぐらい前になるが私独自の研究としては、アルコールは飲む量に比例して、大腸癌や大腸ポリープの頻度が上がり、ビールは毎日500ml以上飲むとリスクがあがり、毎日1500ml飲むと約2倍のポリープの発生をみた。また、日本酒では、容量依存的な悪影響が見られた。一日5合飲むと、大腸ポリープが大腸癌になる確率が2倍になった。長期にポリープを取りに通院してくる人たちをみると、営業で酒を飲む生活から退職すると、大腸ポリープの発生する頻度も低下するような印象がある。

最近、ピロリ菌退治後の胃癌の発生について、アルコールを飲んでいない群では、除菌後3年後以降の発生率は0に近いが、アルコールを飲む群では除菌後3年たっても、ピロリ菌の退治の胃癌抑制効果は、あまり見られないという発表がいくつかあった。アルコールを飲んでいると、胃炎が治まらず、癌発生のリスクが維持されるということなのであろうか?

食道癌(扁平上皮癌)のハイリスクは、50歳以上の男性で、濃い酒を飲んで、煙草を吸い、熱いものを食べる習慣のある人である。

いずれにせよ、過剰な酒は食道を含め、胃腸によくない。ただし、酒を飲む人は、歯周病や虫歯になりにくいという統計があり、酒は口だけによいということみたいである。ちょっと変だが、医学的に見ると、「酒類は口に含んで味わった後、吐き出す。」というのが、もっとも健康的な習慣と言うことになる。

 

2005/09/10 経鼻式内視鏡 本当に楽にできるか? 正確な診断は可能か?  

現在、楽に胃カメラ(上部内視鏡検査)をしたいという要求から、極細径の内視鏡(直径5.6mmぐらい)が開発されて、内視鏡の有力企業、オリンパスとFTS(フジノン東芝システム)から、発売されている。鼻から入れられるので、楽だと言うふれこみである。本当に楽にできるのか?どれくらい正確な診断ができるのか?ということで、先ごろから何回か試用してみた。

まず、画像を見て、これは、20年前のファイバースコープだと思った。このスコープでは、この20年の内視鏡学の進歩の恩恵を、患者に与えることができない。ピットパターン診断(腺管口文様による診断)や毛細血管観察による診断などは無理である。腺管構造や血管構造だけが変化して、形態が変化していないタイプの病変は、簡単に見落とされてしまうスコープである。こういった、画像精度の低さは、今後、電子技術の進歩により、解決される日も遠くないかもしれないし、またそれに期待するところである。しかし、今、解決されていないのも事実だ。経鼻内視鏡の後に、高性能拡大内視鏡を行った。経鼻式内視鏡ではよく見えなかった、バレット上皮内のピットパターンを、いつものように観察して、ほっと安心した。

次に楽か否かであるが、内視鏡の直径が細いので確かに楽になっているが、それでも、鼻の穴が痛くなるのを避けるのは難しい。本当に楽にやるためには、スコープに工夫を加えるだけでなく、内視鏡時の適切な麻酔技術も要求される。当院の技術では、内視鏡をしたことすらわからないくらい楽にそして無痛に、内視鏡検査を完了することができる。あえて、精度の低い経鼻式内視鏡を採用する機会はかなり限定的だ。

 

2005/08/28 高性能拡大内視鏡 解像度7ミクロンの世界  

当院で現在使用している拡大内視鏡は、解像度が7ミクロン。画素数130万。顕微鏡でいうと約200倍の画像に匹敵する。毛細血管が鮮明に見える。小腸絨毛のなかのループ状の毛細血管も鮮明に見える。赤血球の流れが見えることもある。ループを通過する時間は、0.2秒程度である。ただし、条件により、見えたり見えなかったり、早かったり遅かったりする。また、特殊な色素を使うと核の形態も見える。大腸癌の核の形は特徴的で、良性に比べて大きくなり、散在する。癌の種類により、核の形態も異なるようだ。高性能の拡大内視鏡が切り開いた世界は、今後、病態・生体機能の解明や内視鏡診断の助けになりそうである。

 

2005/08/04 ペットがん検診の限界

 PET(positron emission tomography)による癌検診が、注目されています。原理は、癌が光る物質(正確には代謝の盛んな場所に取り込まれる陽電子を放出する物質)を注射して、癌を探るという仕組みです。2005/01/10に述べたように、現在のPETでは、1cmを越えた腫瘤を形成しないと、癌は見つかりにくいと言われています。最近、ペット癌検診をうけて胃に不明瞭な集積があり、念のため胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を受けてくださいということで、来院した患者さんがいました。内視鏡検査を実施したところ、胃にはピロリ菌による慢性胃炎があり、また、食道には約3cm大の早期癌がありました。なぜ、食道癌がペット検査で見つからなかったのでしょうか?第一の原因は食道癌が早期のため薄っぺらで、映らなかったのです。実は、問題はそれだけではなく、癌を光らせる物質は代謝の盛んな心臓にも大変多く取り込まれるため、心臓周囲の病変は良く見えないのです。今回の食道癌はちょうど心臓の裏側にありました。ペットがん検診を受ける方は、必ず、消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)のチェックを内視鏡で行い、ペット検査の弱点である、消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)の早期がんの見落としを補完してください。当院の提供する無痛で精密な消化管ドックのページはこちら

 

2005/07/24 内視鏡的噴門部形成術、安全なオリジナル手術法を開発。

逆流性食道炎が国民病である、米国では、胃液の食道への逆流を防ぐための噴門部形成術が盛んである。(噴門部とは胃の入り口のこと)。薬が自費の米国では、薬を長期にわたって服用続けるのは経済的負担が大きいという裏事情もあり、噴門部形成術の価格は70万円ぐらいと聞いている。(米国では、薬代が原則すべて自費で月約2−4万円かかり、内視鏡検査は一流の内視鏡医に頼むと診断だけで27万円相当ぐらいもかかる為、患者は薬も飲まないで治る方法を希望するとの話です。)米国の内視鏡学会では、内視鏡的噴門形成術として4種類ほどが提案されているが、実効性と安全性・簡便性の点で検討すべき点が多いのも現状である。今回、オリジナルに安全で簡便な方法を考案して、臨床的に行ったところ、成功した。手術前は内視鏡が4本入るくらい、開いた噴門が、手術後は内視鏡が一本ちょうど収まる形となった。グレイドDの逆流性食道炎がグレイドAまで改善した。手術料金は10万円から40万円(噴門の開き具合の程度により価格が異なる)。逆流性食道炎をお悩みの方で、この手術法をご希望の方は、外来までお越しください。

 左は手術前、右は手術後です。

これまでの方法を挙げると、

1)内視鏡の先に特別の円筒の筒を装着して、そこに、食道壁を吸い込み、吸い込んだ食道壁に鍼を貫いて、糸を通し結ぶ方法(Bard社)EndoCinch

2)特殊な蟹バサミのような装置を、内視鏡観察下に胃に入れて、噴門部壁にワインのコルク抜きのような螺旋型の金属を突き刺して、壁を引き上げて挟んで縫い付ける方法。NDO Plicator

3)食道の粘膜下に特殊な樹脂を注入して、食道壁・噴門部を厚くする方法。Enteryx

4)4方向に広がる鈎針のついた特殊な装置で、食道筋層を焼いて傷つけ、食道壁を収縮させる方法。Stretta などがある。

1)と2)の方法は、壁を貫いて鍼が進むので、胃の壁の外の臓器を傷つける危険性がある。たとえば、太い血管を傷つけ大量出血の危険性がある。操作が煩雑で、高価な特殊な装置を必要とする。3)は、現在利用されている樹脂は、生体との適合性が悪くて、しばらくすると離脱して効果がなくなる。4)鈎針が食道壁に穴を開けたりする危険性がある。

今回開発した内視鏡的噴門部形成術は、以上の問題点を克服した方法です。1−2年後に学会で発表する予定です。

 

2005/07/20 第二回芳医会で陥凹型大腸癌の講演をしてきました

 2005/07/16に、第二回芳医会が岡山で開かれました。芳医会とは、私の母校である岡山芳泉高校を卒業した医師の会です。専門分野を超えての情報交換と同窓生の親睦を目的としています。今回は、第一期の卒業生である私に講演のお鉢が回ってきて、「陥凹型早期大腸癌」について約90分、講演しました。要旨は、「陥凹型早期大腸癌は、発見しづらく転移の早い癌で、臨床的に重要である」ということでした。質問も多く、結構盛り上がりました。専門分野外の先生方にも、わかりやすかったと結構好評で、ほっとしました。

その二次会では、「冠動脈ステントは何本入れるのかという話(9本ぐらいまで入れることあり)から、死体のペースメーカーを取り出しの話(火葬場の温度が高い電気炉だと燃えてしまうので取り出さなくて良いが、低い石油炉だと燃えないので取り出さないといけない)になり、さらに火葬場の温度から、焼いた骨のDNA鑑定は可能か」といったように多彩な話題が、飛び出しました。専門外の疑問をそれぞれの専門家にいろいろと尋ねて、大変面白い会でした。ちなみに、現場の法医いわく、「私の教室では焼いた骨のDNA鑑定はできないと考えています。」とのことでした。北朝鮮から提出された骨が、その人でないと判定された科学的プロセスを、帝京大学法医学教室に公表してもらいたいものです。大学同級の野上誠先生(助教授)よろしくお願いします。

 

2005/06/16アメリカ消化器病週間(DDW)報告

アメリカの消化器病週間が、5月14日から19日まで、イリノイ州シカゴにある、ミシガン湖のほとりのムコーミックコンベンションセンターで開催された。いろいろと、新しい発表があった中で、私がもっとも注目したのは、炎症にかかわる因子(i-cam1)の合成を特異的に阻害する、siRNAという新たなパラダイムの潰瘍性大腸炎の新薬(Alicaforsen)である。臨床試験の結果、従来のステロイドと同等の効果を持ち、副作用がほとんどないという。siRNAという新たなパラダイムの薬が既に大規模臨床試験まで来ていることも驚きであった。

 

2005/06/16日本消化器内視鏡学会報告

日本消化器内視鏡学会が、5月26日から29日まで東京赤坂見附のホテルニュウオータニで開催された。いろいろと面白い発表がある中でもっとも注目したのは、オリンパス社製カプセル内視鏡である。画質は既存のギブン社のものより優れたものであった。従来、カプセル内視鏡はその特性から、小腸の診断に主に使われていたが、オリンパス社製のものは、胃も観察できるほどのイメージを持っていた。今後しばらく、カプセル内視鏡の進化が起こり、10年後には、内視鏡の世界も大きく変わりそうである。

 

過去のトピック

 

2005/04/10:「人生いろいろ」の中山大三郎さん死去………下咽頭癌、予防できるか?・・・・(詳細)

 

2005/04/10:ピロリ菌を心配して、胃癌を早期発見—開腹胃切除を免れる。・・・・(詳細)

 

2005/03/04:原因不明の腹痛や血便・下痢の原因は小腸にあることが多い。・・・・(詳細)

 

2005/03/03:カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の開発で可能となった全小腸内視鏡検査…(詳細)

 

2005/02/02:中尊寺ゆつこさん大腸癌で死亡。・・・大腸癌死を予防するには・・・(詳細)

 

2005/01/18:自由診療は高いので損!?・・・治らない診療が最も高い。(詳細)

 

2005/01/13:なぜ自由診療なのか?・・・保険診療は最先端でない。(詳細)

 

2005/01/10:ペット(PET)検査vs内視鏡検査・・・癌の発見能力はどちらが上か? (詳細)

 

2005/01/03:難しい大腸ポリープ(difficult polyps)・大腸癌を内視鏡で切除する。(詳細)

 

2004/11/29:ピロリ菌を放置してスキルス胃癌になる。・・・残念!(詳細)

2004/10/12:みのもんたさんが私の学会発表内容をテレビで紹介・・・脂肪と大腸腫瘍(詳細)
 

 


医療法人社団 至楽正会 中目黒消化器クリニック

院長 田淵正文履歴