1.地域自治組織の活用に取り組む飯田市
地域自治組織の法人化タイプの活用による地域づくりの可能性を前号で述べたが、その制度が一般制度ではなく合併特例区という時限的なものになってしまったためにその活用にふみきろうとする自治体がなかなかあらわれないが、長野県飯田市は、個性豊かで活力ある地域を築く契機にしようと地域自治組織づくりに積極的に取り組んでいる自治体である。
先日「地域自治政府構想」を掲げ、地域自治組織活用の先鋒となって活躍している飯田市の企画課長の平澤和人さんに会い、飯田市での地域自治組織活用の状況をうかがった。
長野県南部の飯田・下伊那地域は、南アルプスと中央アルプスに囲まれた地域で、その面積は香川県より広大で、かつ険しい地形で千人未満の5村を含む1市3町14村の人口は18万人弱というという地域である。
平澤さんは「私たちは厳しい条件の中で、各地域の多様性を生かしながら、ゆるやかな統合を目指した地域自治政府構想を提案した。」ただし、18市町村の合併は近い将来には実現しそうにないため、飯田市は現在2村その合併教義を進めようとしている状況だ。 現在すすめようとしている合併に関しては、旧村が法人格をもった自治組織となることを前提に、住民主体のまちづくりをどのように進めて行くかを議論しているという。
「次の段階としては、現在の市の各地でも、過去に合併した旧町村単位に『地域内分権』をすすめ、住民自治の確立をめざそうとしている」「例えば生涯学習、福祉バスの運営、公共施設の簡易な維持補修など、地域でできることは自治組織の自由な判断と責任で行うことにより、地域の可能性を引き出していくことが肥大化した行政のスリム化にもつながる」
「事業計画に基づき負担金徴収も可能であり、住民に負担とサービスの関係が見えやすいことは、地域運営に関心が高まるなど、法人格タイプのものは様々な有効性、可能性がある」と筆者が前号で「地域自治組織は使える!」と書いた趣旨そのものの心強い自治体の現場からの発言だ。
また、こうした構想は合併特例区といった枠組みで、「5年間というしばりをもうけては実現は難しい」という意見も筆者と同様である。
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