1.指定管理者制度とは 指定管理者制度とは、2003年9月、地方自治法244条の「改正」が行われ、導入された新しい制度である。指定管理者制度はこれまでの「民間委託」よりその規模も狙いも対象も格段に強力なものだ。 この制度の導入は小泉「構造改革」のなかで進められている「官から民へ」という官民役割の再構築(公共部門のスリム化)、公共部門への企業経営的手法の導入というNPM(ニューパブリックマネジメント)の流れの中で位置づけられるものだ。 「自治体の"構造改革"の動きは、図書館・保育園・病院・スポーツ施設の管理の民営化にとどまらず、所有の変更をも射程に入れ、戦略化されている。」 この制度は、既存の公共施設の「所有」の変更により、公有財産が企業所有化する制度でもある。 公の施設の管理に関する制度の改正のポイントは次の5点である。 (1)条例の制定 個々の公の施設に指定管理者制度を導入することとした場合に次の事項を条例で定める 1)
指定の手続き(申請、選定、事業計画の提出等) 2) 業務の具体的範囲(施設・設備の維持管理、個別の使用許可) 3)
管理の基準(休館日、開館時間、使用制限の要件) (2)指定方法 条例に従って、個々の指定管理者を、議会の議決を経て、期間を定め、指定する (3)利用料金制 (公の施設の利用に係る料金を指定管理者が自らの収入として収受する制度) (4)事業報告書の提出 指定管理者の指定された団体は、毎年度終了後、事業報告書を提出。これで、当該公の施設の目的に沿った利用をチェックする (5)地方公共団体の長による指示、指示の取り消し、業務の停止命令 地方公共団体の長は、指定管理者に対し、必要な指示を行うことができる。指定管理者が指示に従わない場合等指定の継続が不適当な場合は、指定の取り消し、管理業務の全部または一部の停止を命令。
これまで公の施設の管理は、地方公共団体の管理権限のもと、次の3つの団体しか具体的な事務・業務を受託できない「管理委託制度」というものだった。 ・地方公共団体の出資法人のうち一定の要件を満たすもの(2分の1以上出資)、いわゆる3セク ・公共団体(土地改良区、一部事務組合等) ・公共的団体(社会福祉協議会、農協、等) 改正自治法によって生まれた「指定管理者制度」は地方公共団体の指定を受けた「指定管理者」が、管理を代行する制度だ。指定管理者は「法人その他の団体」であるため、個人を指定管理者として指定することはできない。ただし、法人格は必ずしも必要ではないとされている。また、一つの公の施設の管理について、同時に複数の者を指定管理者に指定することはできないきまりだ。
指定管理者が管理を行うために必要な経費については (1)全て利用料金で賄う (2)全て設置者である地方公共団体からの支出金で賄う (3)一部を地方公共団体からの支出金で、残りを利用料金で賄う、 の3通りの方法が考えられる 「公の施設の効率的な管理を実現する観点から、現在の管理受託者よりも低いコストで高いサービスを確保できるのであれば、民間事業者が公の施設の管理を通じ適正な利潤を上げること」を想定しての制度導入であった。
また指定管理者の指定については期間を定めて行うことが明文化されている。 指定に期間が設けられたのは、最小のコストで最大の効果を上げているかなど、指定管理者による管理が適切に行われているかどうかを地方公共団体が見直す機会を設けることが必要との趣旨からだそうだが、指定の期間については法令上、特に何年以内と書いてあるわけではなく、実際は、数十年にわたることも可能である。
|