2.行政依存からの脱皮
当時の区長が、北宿地区での地域の課題を住民にアンケートしたところ、90%以上の人々が道路拡幅整備を望んでいることがわかった。
「これだけのたくさん人が道路整備を望んでいる。これはなんとかしていかなければならない」
区長はさっそく役所に出向き、集落内全ての道路の整備を要望した。しかし、いきなりのこの要望には、行政側としても頭を抱えざるを得なかった。整備するためには、家屋が密集しているため、物件移転に莫大な費用がかかる。まして、道路が整備されたとしても、集落内の道路であるため、不特定多数の人が常時通行に使うわけでもなく、道路の利用者は基本的にはその地区の人に限られていることなどから、主要幹線道路の整備もまだ十分でない現状から勘案すると、直ちに整備することを了解できるような内容では到底なかったのである。
役所からの帰り道、区長はため息をつきながら
「この様子では役所を頼りにしていてはダメだ。まずは自分たちで出来ることから始めよう」
区長はそう思ってさっそく行動を始めた。むらの集会はもちろん、道で住民と顔を合わせば
「あんたの所の土地、道路広げるために少し提供してほしいんじゃ」
と訴え続けた。しかし、アンケートで賛成した人も総論賛成、各論反対という人が多く、いっこうに話は前に進まなかった。しかし、区長は粘り強く対話を続けていった。
「孫子の代の人から“わしらのおじぃちゃんたちはいいことしてくれたなあ”と喜んでもらえるような事をしようや」
「まちづくりは100年の大計、100年先に出来上がったらいい、あせりは禁物」
これが区長の口癖であった。
そんな中、一部の住民が自分の家のブロック塀を取り壊して、部分的に道路を広げていくという行動に出た。自力で拡幅整備を実行する人が出てきたのである。
そういう機運が高まってきた平成5年の春、ついに北宿自治会は集落の将来像を示す「北宿町長期基本計画」を制定した。
特に集落内道路については
「家の立替時には建築基準法を守り、道路中心線から2mの幅員は道路敷として確保し、将来はむらの中の道を全て4m幅員にすること」
という事項がむらの総会において可決されることとなった。平成5年 4 月17日のことである。 |