「コミュニティ・レストラン」
現代の食をとりまく状況の中、行動につながる一例として、本書『コミュニティ・レストラン』を紹介したい。「コミュニティ・レストラン(以下、コミレス)」とは、「楽しく働き、おいしく食べる、くつろぎの場」をコンセプトに展開する地域の食卓であり、1998年から特定非営利活動法人 NPO
研修・情報センターが展開してきたプロジェクトである。詳しくは本書を参照いただきたいが、コミレスは次の5つの機能を包含している。
@人材養成機能、A生活支援センター機能、B自立生活支援機能
Cコミュニティセンター機能、D循環型まちづくり機能
また、コミレスは、いろいろなテーマをもって立ち上げ、NPOとして運営していく事業モデルである。たとえば、「安心安全な食の提供」「障害者の働く場づくり」「高齢者の会食の場づくり」「循環型社会の拠点づくり」など地域の人々の多様なニーズにあわせてテーマを決めていく。食材に関しては、食材をまるごと食べる「一物全体」や、「
医食同源」「身土不二」などの考え方がコミレスのコンセプトに反映されている。食べ物を大事にすることは、昔の日本の台所では当たり前に実践されていたことなのであるが、現代の台所では失われつつある。
人々が集い、楽しく食事をする。昔は家庭の中に当たり前に見ることができたのかもしれないが、現代では、家庭内でそれを実現するのが難しい状況の人も増え、地域が受け皿として、その役割を果たす時代となったのかもしれない。本書を読んだ後には、こんな居場所が自分の地域にもあったらいいなと思う読者も多いのではないか。
コミレスは、営利の追求ではなく、地域支援の社会的ミッション(テーマ)を持っているという点で、一般の企業が経営するレストランとは異なるものである。そのため、一般の営利組織の経営だけでなく、
NPO の経営の要素が必要となる。そのため、協働コーディネーター(詳しくは NPO 研修・情報センター HP 参照)として、 NPO
マネジメントの力が求められる場とも言える。
コミレスは、食を核にした地域づくりの拠点として、子どもからお年よりまで世代を問わず、地域を元気にする取組である。本書では、北海道、青森、静岡、和歌山、福岡など全国のコミレスの実践者から寄稿された現場のレポートが収録されている。苦労や課題、喜びややりがいなど、実践者の生の声は、コミレスに興味がある人、これからコミレスを立ち上げたいと思っている人にも、非常に参考になる内容である。 |