5.平和市長会議の活動――2020年核兵器廃絶へ向けて
さて、本稿の目的である「NGO」的視点に基づいて、筆を進めよう。上記の秋葉市長が述べている「平和市長会議」について紹介し、「被爆の実相」を学んだ私たちが、どのようにこれからの社会を築いていくか、ともに考えていきたい。
「平和市長会議」(旧・世界平和連帯都市市長会議)は、1982年、第2回国連軍縮特別総会において、荒木武・広島市長(当時)が提唱したところから始まった。世界の都市が国境を超えて連帯し、ともに核兵器廃絶への道を切り開こうと、広島・長崎両市長から世界各国の市長宛に、「核兵器廃絶にむけての都市連帯推進計画」への参加が呼びかけられた。これに賛同する世界各国の都市で構成された団体が「平和市長会議」であり、1991年に国連に「特殊協議資格」NGOとして登録されている。2007年10月末現在、世界122カ国・地域から、1793都市が参加している。
目的は、核兵器廃絶の市民意識を国際的な規模で喚起すると共に、人類の共存を脅かす飢餓・貧困などの諸問題の解決、さらには難民問題、人権問題の解決、環境保護のために努力することによって世界恒久平和の実現に寄与することとなっている。
事務局は広島市に置かれており、「連帯都市」間の調整なども広島市が行なっている。事業としては、毎年国連事務総長を始め核保有国などに対してメッセージを送ること、平和・軍縮に貢献する集会・行事の開催、宣言・決議の採択、関係資料・図書の交換などである。特に各国の都市で開催される「原爆写真展」は活動の重要な柱であり、被爆のありのままの実相を世界各地に伝え続けている。
第1回の1985年以降、4年に1回の総会を開催しており、被爆60周年にあたる2005年には第6回総会が広島で開催された。この総会には、20カ国92都市・4団体、欧州議会を含む14カ国政府、NGO7団体、計243人が出席した。
第6回総会では、『2020年の核兵器廃絶を目指して』の取組みが議論された。2005年5月のNPT(核不拡散条約)再検討会議で核兵器廃絶に向けた成果が得られなかったことを踏まえ、2010年までの「核兵器禁止条約の成立」および2020年までの核兵器廃絶に向けた取組みについて議論を行ない、『ヒロシマアピール』を採択した。2020年は被爆75周年にあたる年である。
また、2006年は「国際司法裁判所の勧告的意見」から10周年を迎える年であることから、オランダのハーグの平和宮で平和市長会議主催の記念行事を開催し、「核兵器廃絶のための緊急行動 2020ビジョン」の第二期として『 Good Faith Challenge 』 ( 誠実な交渉義務推進キャンペーン ) を発表した。このキャンペーンの具体的な行動して、CANTプロジェクトを世界的に展開することになった。
CANT「 Cities Are Not Target 」プロジェクト(「核兵器廃絶へ向けた誠実な交渉開始と都市への攻撃目標解除(CANT)プロジェクト」は、核兵器は絶対悪であるとの認識のもとに、世界中の各都市が核保有国に対して、「我が都市が攻撃目標となることは容認できない」というメッセージを発信することにより、「子どもたちをはじめ、市民が暮らす都市を標的とすることの非人道性を訴え、核保有国の政策変更を求める」キャンペーンである。ここでいう都市とは、「単に地域を示す名称ではなく、自都市のみならず、人々の日常生活営む場所を総称した意味」で使っている。
この「2020ビジョンキャンペーン」にはEU議会、全米市長会など、多くの内外の団体や都市が賛同している。日本国内では、2007年5月に日本非核宣言自治体協議会により賛同が採択されたのに続き、全国市長会では、2007年7月に賛同決議が採択されている。
「平和市長会議」は、公共自治体のネットワークであると同時に、それ自体が、国家・政府に従属しない、NGOネットワークである。私たちは、この「都市間ネットワーク」という、しなやかで強固なネットワークにもっと注目し、支援と連携を強めていく必要があるだろう。「平和市長会議」自身が、すでに1998年に 『平和和市長会議と NGO の連携についてのアンケート調査』を国際的な軍縮 NGO186 団体を対象として実施している。また、『総合的な行動計画』の一つの柱として、NGOとの連携を掲げている。
「都市との連携」によって平和を紡ぎ出し、「被爆者の哲学」を現実社会に具体的に築き上げていく可能性は極めて高い。2本の映画からそのことを学び、21世紀を生きる展望を与えられた。
平和市長会議HP:http://www.mayorsforpeace.org/jp/index.html
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