7.企業の取り組み――コードプロジェクト
ECPAT は、ユニセフや世界観光機関(WTO) と協力して国際キャンペーン「コードプロジェクト」 を開始した。旅行業界の企業が遵守すべき行動基準(コード・オブ・コンダクト) 「旅行・観光における子どもの性的搾取からの保護に関する行動倫理規定」を設定し、各国の企業がこれに参加し、その行動基準に基づいて行動 (経営)するよう働きかけるキャンペーンである。これは1998年に ECPAT スウェーデンが WTO( 国際観光機関 ) との協力を得て立ち上げたもので、その後国際キャンペーンとして定着していった。
コード・オブ・コンダクトは 6 項目で、以下のとおりである。
「旅行・観光における子どもの性的搾取からの保護に関する行動倫理規定
コード・オブ・プロジェクト」の 6 つの倫理規定
1.子どもの商業的性的搾取に反対する企業倫理規定・方針を確立する。
企業、会社の方針などの中で、商業的性的搾取に反対するという立場を明らかにする。
2.出発地および目的地の両国内の従業員を教育・訓練する。
旅行者の送り出し国と受け入れ国の両方で行う。
3.供給業者と結ぶ契約の中に契約両者が子どもの性的搾取を拒否することを記した条項を導入する。
海外の旅行先地で業務提携をしている業者と業務上の契約を結ぶ際に、契約書の中に、 子どもの商業的性的搾取に関わらないこと、関わった場合には契約を打ち切るということを明記する。
4.カタログ、パンフレット、ポスター、航空機内映像、航空券、ホームページなど適正な手段によって、旅行者に関連情報を提供する。
旅行者に直接触れるツールの中で、商業的性的搾取に反対する姿勢を謳い、この問題に関する啓蒙を行う。
5.目的地の現地有力者に関連情報を提供する。
組織内で決定権のある人に対し、この問題について日本の旅行業者がどのような対策をとっているか、また我われはどのようなアクションをとらなければならないのか、ということを伝える。
6.これらの基準の実施状況について年次報告を行う
これらの活動を毎年続け、どういうアクションをとったかということを各社でモニターし、報告書を提出する
出所:ユニセフ http://www.unicef.or.jp/code-p/how.htm
企業(観光旅行業者やホテル業者など)はこのコード・オブ・コンダクトに参加を表明(署名・契約)することによって、この規範の順守と実施の義務を負う。2005年初め時点では17ヵ国58団体が調印していた。
これに2005年3月に日本の旅行業界が一挙に参加することになった。 ( 社 ) 日本旅行業協会( JATA )と ( 社 ) 日本海岸ツアーオペレーター協会( OTOA )の加盟主要企業がコードプロジェクトへの参加合意書に調印した。日本企業の参加数は、2006年12月初め時点では、 JATA 会員68社、 OTOA 会員13社、そして2団体、計83団体・社となっている。
まさに日本企業の参加で、コードプロジェクトへの参加企業数は一挙に倍増した。世界の旅行業のマーケットに占めるシェアが世界一といわれる日本の旅行業界の参加で、キャンペーンに弾みがつくことになった。2005年12月時点での参加状況は、25カ国277企業および業界団体へと増えている。
日本はそれまで、1996年のストックホルムでの「第1回世界会議」では名指し批判され、「日本は世界有数の子ども買春加害国」として国際的な非難を浴び続けてきた。米国務省が毎年公表している人身売買年次報告(2003年版)では、日本は「要警戒国」と位置付けられ、2004年版でも「依然、日本は児童買春や女性の人身売買が問題」と指摘されてきた。
日本政府も99年に児童買春・児童ポルノ禁止法を制定したが、こうした政治・法律レベルの取り組みだけでは、児童買春の根を絶やすことはできない。「 “ 旅の恥はかき捨て ” とばかりに海外で子ども買春に手を染める日本人旅行者の多くは、その行為を明確に犯罪と意識していない」(日本ユネスコ協会)からだ。「法律以前の問題として、日本人旅行者の意識を変えることがまず必要」(同)である。そのために果たすべき企業の役割は大きい。
この日本の多くの主要企業の参加によって、これまで児童買春国と批判されてきた日本への評価は一挙に変化し、世界で最も取り組んでいる国と評価されるようになった。この事例は、国際NGOのコード・オブ・コンダクトに参加することによって、いかに国際的イメージを変えうることができるか、まさにNGOの国際的影響力を知る事例となっている。
日本では、本件を推進するため2005年5月にコードプロジェクト参加企業を中心に 「コードプロジェクト推進協議会」を立ち上げている。協議会では、プロジェクト推進と実行のため、ロゴマークの策定や研修キッドの製作などに取り組んでいる。 推進協議会のメンバーは、 ジェイティービー、ジャルパック、ジャパングレイス、(社)日本旅行業協会( JATA )、(社)日本海外ツアーオペレーター協会( OTOA ) 、 ECPAT/ ストップ子ども買春の会、(財)日本ユニセフ協会、である。 |