3.真の「協働」を実現するために必要な社会的仕組み、ルールづくり
真の「協働」を実現するためには次のような社会的仕組みやルールづくりが必要である。
@ NPOのネットワークによるNPO活動を促進するための連絡・調整機関、及びNPO活動に関する専門家のネットワーク
・NPOのネットワークによるNPO活動を促進するための連絡・調整機関
地域のNPO間のネットワーキングによるアドボカシー活動を行うとともに地域の行政から「協働」の依頼があったときに個々のNPOで受けるのではなく中間支援組織がその仕事がどのNPO、もしくはNPO間の協働で実施すべきかをコーディネートし、委託や補助金等の利害調整もできる中立的な立場の中間支援のNPOが必要である。
日本では各地で行政主導でつくられたNPO支援センター等のNPOの支援組織ができているし、また民間の中間支援組織もできているが、いずれも行政との協働をすすめるためのコーディネート機関としての独立性、中立性に欠けている。また、ネットワーク組織としての利害関係の調整能力をもたない。
NPO活動を促進するための中立的な立場の連絡・調整機関が不可欠である。
米国では財団協議会やインディペンデント・セクターなどの団体がそれにあたる。
・NPO活動に関する専門家のネットワーク
NPO活動のプロとしてNPOの現場、最前線で働く人々でコンサルティングやPRの専門家(非営利、営利を問わない)のネットワークとNPOセクター支援の仕組みづくり。企業内のCSRやフィランソロピー部門の担当者等とNPOが協働していくためのラウンドテーブルをつくることも今後の日本の市民社会形成に必要だ。
例えば米国にはフィランソロピー(開発、環境、貧困、人種差別、異文化理解等々の社会問題)を認識させ、フィランソロピー活動に参加していくことの意義について教育活動を行うNPOが各分野ごとに多数あるが、日本社会にもそうしたNPOが必要であり、そうしたNPOがきちんと運営できる資金や寄附を得られるしくみが必要である。
A NPO活動に関する調査・情報提供機関、NPOメディア
・NPO活動に関する調査・情報提供機関
NPO組織のダイレクトリーの発行や関連図書資料を整備して提供する機関や、各地の多様で多元的なNPOの活動を調査するコンファレンス・ボード(協議会など)が必要である。
各地の官設民営、官設官営型のNPO支援センターでは一様に地域のNPOの情報は集めているが、ダイレクトリーとしてきちんと年次ごとに発行しているところはほとんどない。また多様で多元的なNPOの活動を調査する機能をもっていない。関連図書資料をおき、会議スペースの貸し出しと各NPO等のイベントやNPO法人申請の支援、講座案内のちらしの設置、印刷機等の提供で終わっているところがほとんどというのが現状である。
調査機能をもつにはネットワークの要になり、紙ベースでの情報収集は勿論、インターネットでの情報があつまる仕組みづくりとそれを専門とする人材の配置が必要である。
・NPOメディア
NPO/NGOの情報を報じる専門の新聞、雑誌、TV等が必要だ。日本でもそうした雑誌や新聞があるがまだミニコミの域を出ないか、各NPOの機関紙にとどまっているといわざるを得ない状況である。
例えば韓国はNPO活動(韓国では市民運動といい発音もシミンウンドウそのままの発音)が非常に盛んで、特にアンブレラNPOと呼ばれるインターミディアリーNPOが発達しているが、韓国ではNPO新聞(日刊、月刊)、オーマイニュースというインターネット新聞等が非常に活発でNPO/NGOの活動を報道することで、市民のNPO/NGOの支援につなげている功績が大きい。
日本でも独立したNPOメディアが是非とも必要である。
B ボランティア紹介機関
2007年問題、いわゆる団塊の世代と呼ばれる人々の大量の退職などによって、ボランティアをしたい人、できる人の数は多くなると予想されるが、ボランティアをしたい人、できる人とボランティアを求めているNPOとのマッチングをする機関が必要になる。
現在でも各地の社会福祉協議会(社協)や官民それぞれのボランティアセンターがあるが、まだまだマッチングの機能が弱い。そのための媒体や専門のコーディネーター等の養成も急務である。
米国、英国、カナダ、デンマーク、ベルギー、オランダ等々のNPO、ボランティア先進国ではボランティアの求人情報紙をだして、マッチングを専門にやっている中間支援のNPOが多数存在する。
C 募金促進機関
日本のNPOにおける資金源の多くは会費、少し大きな事業型のNPOになると行政からの委託や補助金である。どのNPOも寄附収入を増やしたいと願っているが寄附が集まらないのが現状である。
募金活動を促進、支援するための機関や募金活動を実施してくれる団体や機関が必要である。また募金活動をどのようにすすめたらいいかの相談にのってくれるコンサルタントの育成も日本の市民社会を強化していくのにひつような課題である。
米国ではAAFRC(米国募金協議会)等が上記の役割を担っている。
D 社会のNPOに対するニーズ調査・支援機関
NPOの支援を必要とするプロジェクトや団体を調査、情報収集し、該当するNPOと助成財団等の助成団体や寄附したい人々につなげ、コーディネートする機関が必要である。
米国では福祉、教育、芸術、医療、マイノリティ等々の各部門ごとに多数ある。
E 助成機関、融資機関、政府の補助金制度、税制優遇措置
・助成機関
日本にもトヨタ財団、三菱財団、日本財団等NPOの活動に助成する助成財団はあるが、NPOセクター先進国といわれる欧米にくらべてまだまだ少ないのが現状である。
・ 融資機関、制度
NPOに対して低利、無担保で資金を融資する金融は日本にも未来バンク、市民バンク等があるがまだほんの一握りである。欧米のNPOセクター先進国では一般の銀行がNPOへの低利の融資の枠をもっていてそれをきちんと実行することが銀行の評価にもつながるといった仕組みも発達している。
・政府の補助金制度等
NPOセクターを支援するための政府の支援制度、補助金の拠出の日本ではまだまだ未発達だ。
例えば米国ではODA(政府開発援助)をNPO/NG0経由で拠出していく制度をもっているが、日本でもそうした仕組みづくりが必要である。
またそれはそうしたしくみに携わる専門家を政府、NPOセクター双方に養成することとセットである。
・ 税制優遇制度
税制優遇措置について、日本ではNPOに寄附した人が優遇税制をうけられる認定NPO法人制度があるが、NPO法人が2万9千団体あるのに対して認定NPO法人はわずか 39 法人( 2006 年 8 月現在)にとどまっていることからもわかるように、税制優遇制度がNPO支援制度として機能していないのが実態だ。
NPOへの寄附に対する個人・法人への税制優遇制度をもっと実質的に使える制度に改革することと、日本のNPOセクターの力量形成をはかるためにはNPOそのものへの税制優遇措置も必要である。
F NPOの評価機関
NPOが社会に役立つ有効な活動をしているか、活動、組織運営、会計処理、情報公開のあり方をチェックし、評価する独立、中立のNPOが必要である。
例えば米国ではウォッチドッグ・格付け機関としてNCIBとCBCCがある。
NPOの評価にあたっては受益者評価、第三者評価の必要性がいわれることが多いが日本のNPOセクターを強化し、協働の担い手として自立した運営をしていけるようにするためにはまず自己評価が必要である。
自己評価の基準、評価指標について NPO が協働で開発し、それを活用し、その結果を公表していくことが必要である。
同時にNPOの自己評価をサポートするNPOや専門家、NPOが自己評価をするために必要な資金を支援する助成金の仕組みも必要である。
また企業や行政がNPOを評価するためにはNPOの中間支援組織との協働で評価をおこなうことが不可欠である。
一方的な格付けはNPOの自立性を阻害し、NPOを行政や企業の下請け化する可能性もあり、NPOセクターの強化にはつながらない。格付けが必要ならば社会的合意を得られるNPOの参加型、協働型の方法論をとることが前提となる。 |