コメント ケニアの独立までの苦しい戦いの中に生きた女性たちの物語「ケニアの女の物語」(ムトニ・リキカンニ著、明石書店刊 ) の中に、村の女性たちがみんなでお金を出し、 1 人の少年に教育を受けさせる話がある。女性たちは 1 人の少年に高等教育まで受けさせることは、自分たちの希望の種になると信じて、苦しい中でお金を出し合う。国際識字年に公開された映画「アイリスへの手紙」では、ロバート・デ・ニーロが読み書きのできないコックの役を演じていた。コックは文字が読めないことを周囲に隠して生きていた。その中で、薬ビンに書かれた文字が読めないというシーンがあった。文字が読めないことは尊厳を傷つけるとともに、命をも脅かす。
私が育った田舎でも近所に読み書きができない女性がいた。女性は教育よりも労働力として1日中働かされていた時代、農村に育ったために、自分の名前を書くこともできないのだ。私はそのことを知って、衝撃を受けた。自分が戦前に生まれていたら、同じように教育を受ける時間を奪われ、自分の名前も書けない人生を送ったかもしれないと。
「貧困」はお金がなくて、貧しいということだけを言うのではない。機会、尊厳、愛情、さまざまなものを奪われ、回復のチャンスさえないことも貧困と言う。
教育を受けられる、情報を自分の目で読み、自分の手で発信できる。現状を寄りよくするための一番の基礎となるものが教育だ。貧困から抜け出すためにも教育は必要であり、自分の誇りを獲得すためにも教育は必要だ。
教育とは人生という暗い道を照らす明かりのようなものなのだ。
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