2.勢いを増す改憲論
9月11日に行われた総選挙の結果を受けて、まず産経新聞が9月14日付朝刊1面トップで「巨大与党 憲法改正に弾み」「新議員7割超が9条改正容認」と打ち上げた。衆院選での自民圧勝で巨大与党が出現し、「憲法改正の流れが勢いを増した」というのが記事の趣旨だ。
その後も産経は改憲の動きを後押しする記事を主張や正論などで繰り返すのだが、こうした地ならし的な報道に続いて、読売新聞が9月22日の社説で「憲法と安保 現実的議論の環境が整ってきた」と書いた。続いて24日の社説では「憲法特別委 国民投票法の早期成立を図れ」と政府・与党を後押しする論評を載せている。
22日の読売社説は民主党の前原代表就任に言及。憲法や安全保障について与野党が同じ枠組みで推進する環境ができたことを手放しで歓迎している。自民党は11月に新憲法草案を発表するが、懸案の9条改正案については、1項は変えないが、9条2項を削除し、自衛軍の保持を盛り込む−といった内容が予想されている。集団的自衛権の行使について明文化される可能性もある。前原氏も改憲について積極論者であることから、読売新聞は前原氏に指導力を発揮してもらい、党内の旧社会党勢力を切り捨てて、自民党の改憲案に協力するよう求めている。
さらに24日の社説。衆院の憲法調査特別委員会について与党と民主党は常任委員会設置で合意していた。それが、公明党の横やりで潰され、特別委員会に格下げされた。社説はこれにかなりの憤りを示している。まず、憲法論議にブレーキをかける公明党を「責任政党の責務に反する」と切って捨てた。次いで、憲法改正に慎重な立場を堅持している河野議長と横路副議長を「職務を逸脱するもの」と叱りとばしている。
新聞が政策提言し、世論形成を図るといったアドボカシー・ジャーナリズムはありうるだろう。しかし、その場合、新聞が公器であり、大きく紙面を使って報道する以上、幅の広い論議の場を提供することで合意形成を進めることが必要なはずだ。異論を認めず、反対勢力を排除する恣意的な報道はファシズムの言説でしかない。
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