「南」の世界拾い読み 第17回

 このコーナーは、主に南の国々(開発途上国)のメディアやNGO/NPOで流されている情報を中心に独断で選んで、そのサマリーをコメントをつけて紹介していきます。情報の詳細を知りたい場合は、併記のホームページにアクセスしてください。
 今回は、開発途上国の債務についての記事を取り上げた。 7 月にイギリスのスコットランで開催された先進 8 カ国首脳会議に合わせて世界中で貧困救済、債務取り消しのコンサートや会議等の様々なイベントが繰り広げられた。(本田真智子  ( 特非 ) NPO研修・情報センター常務理事)

1. チャリティのためではなく、正義のための行動を
Making the G8 History
http://www.focusweb.org/main/html/Article635.html

Edinburgh (スコットランド)  G8 サミットに併せて開催された、‘貧困の歴史を作ろう (Make Poverty History) の中でのスピーチから。
 私たちは貧困の中にいる30億人の人間性を宣言するためにここにいる。ただし、チャリティのために行進をしているのではなく、正義のために行進をしているのだ。 G 8は「 27 の貧しい国の債務を帳消しにしている」というが、これまで既に多額の債務を返済してきた開発途上国に対して、債務の帳消しをしてはどうかと、私たちは G 8に対して提案する。
 アフリカの困窮の中にいる私たちの兄弟姉妹の苦痛を感じること、外国の占有に苦しむイラクの兄弟姉妹の苦痛を同時に感じる事が私たちにできますか。苦痛は分けられない、正義は分けられない、約束は分けられない。イラクの犯罪的占有や人権の妨害から目をそらすために、アフリカの貧困救援を修辞学的に使うことは認めない。世界の貧困の解決に向けての取り組みに専念しなければならないし、イラクの外国の占有も直ちに終わらせなければならない。
( Focus on the Global South より)

2. 「私たちは今、空の籠になった」食糧危機、エネルギー危機の中にいるジンバブウェ
POLITICS-ZIMBABWE:To Loan, or Not To Loan
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=29618

Johannesburg (南アフリカ)南アフリカへ貸し付けを求めるジンバブウェ政府の決定は、多くの議論を呼んでいる。南アフリカ政府にジンバブウェへの貸付を断るようにすすめた人もいれば、貸し付けるべきだという人もいる。ジンバブウェが、その経済を蘇生させるためには、 15 〜 200 億ドルを必要とするが、南アフリカに貸付を申し入れた 10 億米ドルの借款は、クリスマス前にはなくなってしまうだろう。今年、国連の期間と 13 の国の南部アフリカ開発共同体 (SADAC) の報告書によると、アフリカ南部で食糧援助を必要とする 1000 万人のうち、 290 万人はジンバブウェにいるという。
 ジンバブウェは現在食料やエネルギーが不足しており、政治的にも混乱している。ジンバブウェの状況は国際的な圧力だけでにとって大なく、ジンバブウェ人自身による解決策を必要としている。
( IPS “ INTER PRESS SERVICE NEWS AGENCY ” より)

3.開発援助が草の根の人々の生活を変えるためにはまず債務の取り消しを
The Need for Debt Relief and the HIPC Initiative
http://web.idrc.ca/en/ev-67836-201-1-DO_TOPIC.html

 様々な社会目的、経済目標、及び環境目標を達成するための必須条件としての債務救済の緊急性は、既に 10 年以上前に WCED やユニセフによって唱えられている。社会正義と持続可能な経済成長を組み合わせるイニチアチブのより広いパッケージの一部として、債務取り消しのプログラムが求められている。債務返済は、開発途上国が社会資本を健康、教育、水、保健衛生、及び他の人間開発のための社会資本整備に投資するための障害になっている。  
 現在のままでは、重債務貧困国は債務の支払いに追われ、新しくお金を借りても、社会資本の整備には使われずに、借金返済にまわってしまう。
( IDRC より)

コメント   21 世紀を迎えるにあたって、開発途上国の債務を取り消して、借金の輪から解放することで、資金を人間の開発にまわせるようにしようという運動「 Jubilee 200 」があった。 21 世紀を迎えても、重債務貧困国はそのままであることに、市民社会が債務救済の大きな声を上げているのに、肝心の G8 や OECD が様々なプログラムを作っては条件付けをして、本当に必要な債務取り消しが進まない。

 7 月にスコットランドであった G8 サミットでもアフリカの救済や債務取り消しの話し合いが行われたが、市民社会が納得いく成果が得られなかった。このことについては、 『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語・電子版の中の「政府開発援助のまやかし  ダミアン・ミレ ( CADTM フランス代表) & エリック・トゥーサン(同ベルギー代 表)( http://www.diplo.jp/articles05/0507-2.html )」にも詳しい。

 2番目の記事では、南部アフリカのジンバブウェが隣国の南アフリカに借り入れを申し込んだ記事だが、ここでジンバブウェの窮乏の様子が少し語られている。実際に私が得た情報でも、もともとなかなか入らなかったガソリンが政府高官でも入手困難になっており、町のスーパーなどでも食料が少なくなってきているということだ。もちろん、ジンバブウェは債務だけでなく、国内政治の問題もある。独立の英雄だったムガベ大統領が現在は自分の地位に恋々として、独裁化していること、それによって旧宗主国のイギリスをはじめ欧米政府から圧政国家と呼ばれていることなどで、輸入や外貨獲得が困難になっていることも窮乏に拍車を掛けている。ただ、欧米各国政府のアフリカに対するダブルスタンダードな対応もあるので、私自身はジンバブウェが圧政国家と呼ばれるたびに、‘むっ'としていたりする。

 さて、私たちが国際協力として考えている政府開発援助 (ODA) が、開発途上国の一部とを苦しめていないのか、苦しめているのなら彼らの生活を思い私たちが日本にいながらどのような行動をとるべきなのかを、じっくり考え、正しい選択をしなければならない。

 Not for charity, For justice が、 7 月の G8 サミットの際の市民社会のスローガンだったが、 10 年以上前、アフリカのネットワーク NGO の代表が、日本で「私たちはお金をくれといっているのではない。開発の決定に加えてくれ」といっていた。

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