キーワード・・・ CSR、NGO、NPO、コード・オブ・コンダクト、国連グローバル・コンパクト、
GRI、SA8000、倫理取引
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企業がNGOから攻撃を受けた時、あるいはNGOとの協働を考えた時、企業がとる一つの方法が、NGOが作成し参加を求めている「コード・オブ・コンダクト(企業行動基準)」に参加することである。それによって、しっかりした対応を行っている企業と世界中のNGOからみなされるようになりうる。企業の行動基準は多くのNGOが作成しているが、国際機関が作成しているものもある。以下、主要なものを紹介しておこう。 |
1.
国連グローバル・コンパクト (国連と企業の「地球盟約」)
国連コフィ・アナン事務総長のイニシアチブで、 1999年1月のダボスでの世界経済フォーラム(WEF=ダボス会議)で、世界のビジネスリーダーに対し、「国連諸機関と企業との間の提携関係」を追求する新しい枠組みとして呼びかけたもの。 環境・人権・労働の3領域について9原則(現在は1項目追加され10項目)からなる。現在では、CSRを促進する国際キャンペーンの一つとなっている。企業はこのコンパクト(盟約)に署名して参加する。 内容は以下のとおりである。
原則1 国際的に宣言された人権の保護を支持し尊重する
原則2 企業自身が確実に人権弾圧に荷担しないようにする
原則3 結社の自由および集団交渉の権利を実質的に承認する
原則4 あらゆる形態の強制労働を撤廃する
原則5 児童労働を実質的に廃止する
原則6 雇用および職業に関する差別を撤廃する
原則7 環境上の課題に対する予防的な取り組みを支持する
原則8 環境に対するより大きな責任を負うための取り組みを行う
原則9 環境に優しい技術の開発および普及を奨励する
原則10 汚職・贈賄の禁止(追加)
NGOからは本協定の問題点として、企業の行動を監視する仕組みがないこと、 過去に問題を起こした企業は免責されるかの印象を与える、ガイドラインの中身が漠然としすぎている、などの批判も出ており、現在再検討をすすめている。
グローバル ・コンパクトへの関心表明機関数は、世界で1798 団体 (2004年9月時点)。日本企業では、キッコーマン、富士ゼロックス、リコー、アサヒビール、アミタ、ジャパンエナジー、屋久島電工、国土環境、王子製紙、アルファ・イーコー、坂口電熱、朝日新聞社、東芝、日産自動車、 NECフィールディング、三井住友海上火災保険、セイコーエプソン、イオンの18 社(2004年9月)が同コンパクトに加盟している。
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2.OECD「多国籍企業行動基準(ガイドライン)」
99年に、多国籍企業行動基準として、多様なステークホルダーとの関係樹立を指摘した「コーポレート・ガバナンス原則」を発表しており、基準の中でも次第に有力なものになってきている。OECD (経済協力開発機構)加盟国は、このガイドラインに基づき各国に「ナショナル・コンタクトポイント」を設けている。ステークホルダーはここに苦情を出すことができる。提訴に基づき、ナショナルポイントで協議が行われ、全てのステークホルダーが受け入れられるような結論を導き出し、仲裁に入る役割を担う。国によっては、労働組合がナショナル・コンタクトポイントをよく利用している。 |
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3.GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)
GRI( Global Reporting Initiative)は、企業のサステイナブル経営への取り組みと世界共通のサステイナブル(CSR)報告書の作成ガイドラインを策定することを目的に設立されたNGOである。1997年に、セリーズ(CERES)とUNDP(国連環境計画)などが中心となって設立。2002年に常設事務所(本部)をオランダのアムステルダムに設置している。
ガイドラインは「 トリプル・ボトムライン」の考え方を導入し、企業の透明性を追及するレポーティングのフレームワークやツールを作成している。株式市場のインデックスや評判の高い企業ベンチマークにおいて、GRI を使用することは高い評価につながると考えられている。多国籍企業では、特にステークホルダー(株主、労働組合等)やNGOから、GRIの使用を求められる傾向にある。GRIは 日本企業も多くリストされており、CSRツールとして最もポスュラーなものとなっている。
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4.SA8000(社会的責任 8000)――労働、人権にかかわる認証システム
ソーシャル・アカウンタビリティ・インターナショナル( Social Accountability International=SAI)は、1997年に、ソーシャル・アカウンタビリティ8000(SA8000)を発表している。開発途上国における児童労働や強制労働などの不公正、非人道的な労働慣行を撤廃することを目的として、人権や倫理による国際規格を初めて設定した。SA8000は、ILO(国際労働機関)条約の実施に関する詳細な手順を示そうとしたもので、体系的に定められた基準に基づく企業の参加と監査を行おうとするものである。
SA8000の骨子は、@児童労働の禁止、A強制労働の禁止、B健康と安全の保障、C結社の自由と団体交渉権の保障、D差別の禁止、E懲罰の禁止、F労働時間の厳守、G基本的な生活に必要な賃金の保障、H以上の労働環境を維持するためのマネジメントシステムの構築、である。 |
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5. エシカル・トレーディング・イニシアチブ (倫理取引規範)
英国の倫理的 業者推進NGO( Ethical Trading Initiative ) は、1998年にロンドンで企業、労働組合、NGOが多数参加して、公正貿易の問題と企業の倫理規範について話し合いを始め、2000年1月に取引の倫理規範を策定した。これに参加する企業には、所定のラベル表示が可能(認証制度)で、こうしたラベル表示運動は企業が社会や環境に対して、より望ましい行動をとることへの誘因となっている。
現在ではもっとも影響力ある行動基準の一つとなっている。 |
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6.その他
その他に、労働関係では、米政府の「モデル・ビジネス原則」 (1995年)、公正労働協会 (FLA) の 「職場行動規範」(1997年)、 「クリーン・クロース・キャンペーン」(CCC)、「ベルン宣言」、「ラップ原則」、国際自由労働組合連盟(ICFTU)の「基本的規範」(1997年)、 米国の「経済優先課題協議会(カウンシル・フォー・エコノミック・プライオリティーズ)」など。 人権関係では、 アムネスティー・インターナショナルの 「企業のための人権諸原則」 (1998 年)、「グローバル・サリバン原則」 (SULLIVAN Principle) など。環境関係では、セリーズ原則 (CERES: Coalition for Environmentally Responsible Economies) (環境保全に関する企業の社会的責任原則)など。ガバナンス関係ではBSR(Business for Social Responsibility)の基準、英国保険協会、Social Venture Network(SVN)(1999年)、 コー円卓会議(The Caux Roundtable)の「企業行動指針」などがある。
また、現在策定中の行動基準/原則としては、 国際標準化機構(ISO)がCSR規格の策定を決定している。さらに、EU(欧州連合)や Euro SIF(欧州のSRI推進団体の連合体)なども行動規範、企業評価ガイドラインを作成中である。 |
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