3.なんか足りない日中協力
「政冷経熱」が続くだろうと言われるなか「ムード」づくりが期待される民間交流であるが、いわゆる「日中交流団体」間の交流以外の民間組織間の交流は活発とは言えない。
民間団体が対等に協力し合い東アジアの市民社会の形成を推進していくというのは理想である。しかし中国での草の根団体の急速な発展はここ最近のこと、一足飛びに国際協力に至るのは容易ではない。これはどこの国の団体も同様であろう。市民団体はまず身近な社会問題に対して活動しているからだ。もしそこに、日中問題の打開策を求めるのであれば、政府なり助成団体なりからの最初のちょっとした後押しが必要である。
日本には「 草の根・人間の安全保障無償資金協力」という制度がある。「発展途上国の地方政府、教育 ・ 医療機関、及び途上国において活動している NGO(非政府団体)等が現地において実施する比較的小規模なプロジェクトに対し、当該国の諸事情に精通している在外公館が中心となって行う資金協力であり、開発途上国において草の根レベルの社会経済開発プロジェクトを実施している非営利団体であれば対象となり、資金協力の趣旨から、主として、ローカル及び国際NGO、地方政府、教育 ・ 医療機関等が対象団体」と説明されている。2003年度北京大使館分の供与額は、 330,359,164円(計36件)。そのうち民間組織への支援は60,064,260円(計7件)で全体の18%にとどまっている(大使館HPのデータから筆者が算出)。
米国フォード財団は、中国の草の根団体に対する援助を積極的に進めている。「ばらまき主義」や「米国民主主義の傲慢」といった批判もなくはないが、多くの草の根団体が一度は「公平な機会」を享受し、活動のステップアップにつなげている。 支援するということは、結構骨の折れることである。 同財団北京事務所のプログラムオフィサー達は足繁く団体をまわり、様々な会合に顔を出す。CIDA(カナダ国際開発庁)や欧州の大使館も積極的だ。「欧米とはあまりにも状況が違いすぎて」と民間組織関係者は聞かれれば口を揃える。しかし、いつも近くで見かける顔に馴染んできている。 理屈ではなく 「顔をみせる」活動の積み重ねを実践し、多くの国や海外支援団体が中国社会の認知と信頼を獲得しつつあること、そして相対的に日本の影が薄れている事実がどれだけ認識されているだろうか。
中国に迎合する必要はない。しかし理屈抜きで重要なのは中国との「知る」「知らせる」チャネルを築くための発想の転換と地道な活動を続ける意志である。関係修復と新たな関係の構築、また対中ODAの軟着陸に向けて実行してみる価値はあろう。 |