( 1)気候変動
京都議定書が単なる総論的な条約ではなく、数値目標を設定した条約になりえたのは、NGOの国際ネットワークである「気候行動ネットワーク」(CAN)の貢献が大きかったとされる。米国は、政府として京都議定書を批准しない意向を明示しているため、NGOは政府への影響力に限界を感じ、企業に目を向け、企業が実行しているかどうかの監視を強めている。とくにエネルギー会社(石油、石炭、ガス等)がNGOのターゲットとなり攻撃を受けてきた。しかし、現在では、環境NGOとエネルギー企業との協働関係は相当進展してきている。
( 2)必須医薬品入手問題
国境なき医師団、OXFAM、ヘルス・インターナショナル等のNGOは、医薬品の多国籍企業をターゲットに多くの成果をあげてきた。NGOの「必須医薬品入手キャンペーン」によって、ファイザー、ロッシュ等の医薬品会社が収益性の低い(あるいは収益のない)熱帯地域の感染症用医薬品の生産中止に対して反対する活動をし、成果を上げた。また、開発途上国がジェネリック薬を生産できるよう、WTOのTRIPS(知的所有権)条約を改正するキャンペーンを行ってきたが、これも一定の成果をあげている。
世界の多国籍医薬品メーカーは、その巨大な研究開発費を心臓病や糖尿病、バイアグラや毛生え薬等の先進国向けの開発に投じており、開発途上国の人々の病気であるマラリアや結核などの感染症などの研究開発には投じていない。
しかし、NGOの活動を通じて、世界の医薬品メーカーはNGOとの協働関係の構築をすすめている。OXFAM 、ケアインターナショナル、セーブザチルドレン等のNGOが、協働関係の相手側NGOとして注目されている。
( 3)フェアトレード
開発途上国の農家などの生産者の自立を支援する、「もう一つの貿易」を求めるフェアトレード運動は、欧州ではこの数年大きな伸びを示している。NGOは、コーヒー農場の農民への利益の配分が不公平であり、コーヒー農場に十分に還元されていないと主張し、クラフト、サラリー、ネスレ等の5企業(全世界のコーヒー豆購買の80%を占める)をターゲットに改善のキャンペーンを行っている。OXFAMなどNGOの提案に基づき、クラフト社などはコーヒー農場の農民に対して代替収入源(他の作物等)を提案しその指導を行っている。
( 4)消費者の権利
製品包装の仕方やラベルに掲載される製品の安全、品質、製品の情報に対してNGOは強い関心をもっている。近年NGOは食品会社をターゲットにするだけでなく、それをデザインしている広告会社もターゲットとするようになっている。
( 5)農業と遺伝子組替作物(GMO)
GMOではモンサントがステークホールダーとの対話を欠いたために、NGOのターゲットとなり、生産中止に追い込まれた。
( 6)児童労働
ナイキやGAPなどがNGOのターゲットとなり、大きなダメージを受けた。企業はグローバルに2層、3層のサプライチェーンを監視し、責任を果たす必要がある。現在では、児童労働問題では、企業も自覚し、NGOとの協働関係も進展している。
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