2. ロイヤル・ヌミコ社の対応事例
ロイヤル・ヌミコ社( Royal Numico、以下ヌミコ)は1895年設立のオランダ企業である。主力商品は、ベビパウダー(日本では森永乳業と提携)、臨床チューブフィーディング、ベビーフード等である。売上は25億ドル、40%が欧州域内、残りは中国、ロシア等に販売する多国籍企業である。
同社はNGOとの協働関係の中から大きくメリットを受けている典型的な企業の一つである。同社のCSR担当筆頭副社長 (デヨング氏)は、NGOとのつきあいについて次のように述べている。
「NGOはいろいろと指摘してくる。現在NGOは“世界の良心”として活動している。オランダには多くのNGOが存在して企業にとって厄介そうであるが、実は企業にメリットがある。オランダのNGOとは対話がしやすく、建設的な会話が展開しやすい。そうすることでNGOが寄付提供者から反感を買うこともない。動物保護団体にしても、英国等と比べてオランダの団体は対話がしやすい。オランダは企業にとっても非常によいトレーニングの場所になるのではないか。」
同社とNGOとの付き合い方には、例えば以下のようなものがある。ヌミコは、とくにNGOのグリーンピースやアムネスティ・インターナショナルなどときわめて緊密な関係を築いている。
(1)グリーンピースとは同社のバイオテクノロジー開発に当たって、開発に関する情報を逐次交換することで一定の関係(開発についての合意形成のパートナーシップ関係)を築き上げており、グリーンピースからも信頼が厚い。
1996 年、遺伝子組み換え作物(GMO)が欧州市場に参入してきた時、同社としても、GMOをフードチェーンに入れないわけにはいかず、グリーンピースと徹底して話し合い、1%を最大の許容範囲という合意に至った。その後、海外での製品販売においてGMOが争点となった場合、オランダのグリーンピースが直接各国のグリーンピースと話し合ってくれることとなった。そのため、イタリアや中国で問題が起こった場合でも、オランダのグリーンピースは逆に守ってくれた。グリーンピースは国際的であり、グリーンピース同士が話し合ってくれることで解決してくれることもある。
(2)ミャンマー進出問題では、アムネスティ・インターナショナルなど人権NGOからの非難で、1998年にハイネケンは撤退を余儀なくされた。IHCカーラント(造船会社)は、そこでの造船事業が生み出す利益が軍事政権を支援していることになるとして非難された。同社は今後は新しい契約を結ばないという決定をすることで決着した。しかし、ヌミコはアムネスティと緊密な関係にあり、事前の対話の場を持っていたため、その時は事なきを得た。 (注:但し、ヌミコは、現在はミャンマーから撤退している。これはNGOからの圧力ではなく、株主の意向により撤退した)
(3)オーストラリアでもオランダの動物保護協会との事前の話し合いにより、オランダの動物保護協会がオーストラリアの動物保護協会と話し合ってくれた。
(4)オランダには食品関連企業のCSR推進団体として、2000年に設立された。「DUVO」がある。2000年のダイオキシン事件をきっかけに設立された。アホールド、ハイネケン、RBB、カンピーナ、ユニリーバ、ヌミコ、マクドナルド、ハインツ、CSM、DSMなどの企業が参加している。その主たる目的は、業界グループ全体として、サステイナビリティ(CSR)の立場をNGOに対して開示し、NGOとの関係を強めていこうとするものである。
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