5.まちづくり協議会と行政との連携
まちづくり協議会と行政は月一回の例会で必ず意見交換を行うことになっている。これは協議会発足の平成7年からずっと継続していることで、この場で事業の計画や実施方法の検討を行っている。協議会委員は地区内において道路整備のための啓蒙活動をあらゆる機会を利用して実施し、その中で一人ずつ整備に協力する人を増やしていった。
行政側はそういう情報を受けて、移転時に道路整備がスムーズに実施出来るように、事業の調整を行うようにした。だから、毎年夏までには協議会役員達の協力のもと、地区住民の次年度における移転協力を取り付けた上で、次年度の移転実施計画を作成し、事業費の予算を確保するようにした。常にネットワークを地区内に張りめぐらせて、協議会と行政が情報を共有することで、 2〜3年先までの家屋の移転計画の情報を入手することが出来た。そのことにより、事業を全体的にとらえながらの年次計画が立てやすくなった。
最初はポツポツと庭などのセットバックが始まり、徐々にセットバックが完了した道路が目立ち始めると、地区住民はセットバックに掛かる費用を念頭に資金計画を考えるようになった。
「今年は年回りが悪いから、もう一年待ってくれるか」
「定期の満期がもうすぐやから、それまで待ってほしい」
地区内に道づくりに協力しなければならないという空気が充満し始めたのである。
しかし、どうしても反対であるという人も中にはいた。そういう場合、会長始め協議会のメンバーは解決を急ぐことはしなかった。まず外堀から埋めていこうという訳である。
こんなエピソードがある。
ある老人がどうしても土地の提供に反対していた。先祖代々伝わる土地を手放したくないというわけだ。手前までは道路が整備されていたにもかかわらずである。その老人が急に家の中で倒れて救急車のお世話になった。道路が家の手前まで拡幅されていたので、緊急車両の進入が可能で、老人は家の玄関からすぐに救急車に乗ることが出来、迅速に病院に運ばれていった。
道路整備の有り難さを身をもって体験した老人が、早速土地を道路拡幅に提供したことは言うまでもない。
このような逸話がもはや過去の話となるほど、むらの中の道路拡幅整備は予想以上の速さで進んでいった。まちづくり協議会の役員達の、日ごろからの地域住民とのコミュニケーションがこのような結果を生んだのであろう。地域が明らかに変わろうとしていた。
シリーズ第二回は道路整備に関して、まちづくり協議会と行政の役割と連携についてお話しました。次回はこのようなまちづくりに目覚めた住民達が公園づくりに挑戦します。第三回は筆者がコーディネーターを務めた「自分たちの公園をつくろう」にご期待ください。 |