元紅楓女性心理相談センターの瞿雁らにより結成されたソーシャルワーク組織 「北京恵澤人コンサルタントサービスセンター(略称:恵澤人)」は、協作者同様、SARS流行時に結成され、「天使の家ホットライン」など患者や救護スタッフへの心理ケア活動を推進した。市民教育の名の下に人権教育を展開する同団体は、 03年10月より「北京市東城区司法局」とともに、「コミュニティ矯正」の試験プロジェクトに取り組み、04年より受刑者の受入れを開始した。草の根団体による国家プロジェクトの試験運営となった「コミュニティ矯正」とは「監獄矯正と対極にある刑執行 方式で、コミュニティ矯正の条件に適合した犯罪者をコミュニティに置き、専門の国家機関、社会団体、民間組織、ボランティアの協力の下、判決、裁定、決定が確定した期間内、犯罪心理、行為悪習を矯正し、順調な社会復帰を促進させる活動 」である。恵澤人の活動の主要な対象は「参加意志のある社区住民」であり、ボランティアの育成にも積極的である。 瞿雁は「もし政府の承諾が得られれば、社会治安プログラムに着手したい」と05年の活動目標を示している。大衆による騒乱が多発し、04年秋以降「社会との調和」「調和のとれた社会」が経済・社会発展のスローガンとなっているが、かつてない社会不安を目の前に、 「社会協同」「公衆参加による社会管理構造」などがその方策として掲げられている。その提言作成や意見聴衆のため、恵澤人に対し、北京市人大代表から頻繁に面会の要請があるという。
草の根組織第一世代は、そのシンボル性、カリスマ性を活かしつつ、国際レベルに及ぶネットワークを蓄積し、その資源を活用し、活動の普遍性、動員性を求め始めている。それを援軍として、それまでのマイナー官庁が規制権力の行使に動いている。一方、第二世代は、政府が参入しきれない専門的な領域でまず優勢を示し、政府の関心と認知そして参加を促し、徐々に政策に影響を与えつつある。これは第1世代も通過してきた、中国の民間組織にとっての必須のプロセスと思われるが、国家の直面する課題がより複雑化・専門化し、さらに微妙な問題については多様な「外圧」がそれを一押しする趨勢から政府側の積極的志向を引き出しやすくなってきているようである。
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