4.クリエーター(著者)にとって著作権とは
知的財産権とは、人の知的創作活動によって生み出された発明や表現などを保護するための財産権のことで、知的所有権とも称せられる。大きく分けると著作権と工業所有権に大別できる。
著作権は、学術的または芸術的な表現 (著作物) を保護する権利で、著作権のほか、 楽曲の演奏や演劇などなどを対象とした著作隣接権 (上演権、上映権、公衆送信権など)がある。工業所有権は、特許や実用新案などの工業技術、意匠(デザイン)、商標やサービスマークなどの識別標識の発明や考案を保護する権利である。
ここからは、私たちに特に関係の深い著作権に焦点を絞って話を進める。イラストや写真・映像・ゲーム・本などを制作するクリエーターは、元来模倣されることに対して否定的ではなかった時代がある。自分の創り出したスタイルを他の作家が模倣して流行となる。自分のスタイルが普及して××派といった制作者集団ができあがるといった場合である。同様に、習作として模倣することで技術を習得することも重視されてきた。
そもそも、著作などは何もないところから生まれてきたわけではない。先立つ著作や発明を土台にして新しい創作や研究がなされるのである。その意味から、クリエーターは誰かの模倣をし、影響を受けながら自分のスタイルを作り上げていくものである。
クリエーターが不快感をもつ模倣の仕方とは、どのようなものであろうか。2つのケースがある。1つは自分の制作物が改ざんされたり、著者の意図を無視して引用されたりといった場合である。著作物は、著者の感情や思想の表現なので、使用の仕方によっては著作者の社会的評価や感情を害することもある。
もう1つは、自分の制作物が勝手に複製され流通することで経済的な不利益を被る場合である。コンピュータソフトを勝手に複製して販売する、あるいは貸し出すといったことがこれにあたる。
前者を著作者人格権、後者を財産権としての著作権という。ヨーロッパの国々は著作者人格権を重視する立場をとり、アメリカは財産権を重視する立場をとっている。クリエーターが訴訟を起こす場合は人格権を侵害されたケースが多く、企業が訴訟を起こす場合は財産権を侵害されたケースが多いようである。
自分の山岳写真に巨大なタイヤが重ねられた山岳写真家がパロディー作家を訴えた訴訟などが有名である。後者は、マイクロソフトが学校の無断コピーに対して訴訟を起こしたケースなどがある。
前述の通り、著作権でがんじがらめにすることが文化を創造に寄与することにはならない。私の立場は、社会的な価値を高めていくために著作権が重視されるべきであり、著作権を乱用することによって社会における価値創造の力を削ぐものであってはならないというものだ。
クリエーターが模倣されて「おぬしやるな」といった気持ちになる創造力の発露ならば摩擦は起こらない。実際に、クリエーターにとって自分のスタイルをいい意味で模倣される(模範になる)ことは気分のよいことでもあるからだ。
最後に、著作権は工業所有権とは違って、アイデアや頭の中の考えを守る法律ではない。あくまでも、目に見える形・耳で聞こえる形になった表現物や制作物に対する権利である。目に見えない財産( intangible assets)である情報財は、あくまでも財産であり、それを守る法律であることにご注意を願いたい。
参考 -----------------------------------------------------------------------
青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/
Project Gutenberg http://www.gutenberg.org/
The Free Software Foundation (FSF) http://www.gnu.org/home.html |