3.異文化との共存
もう一つ見落としてはならないのがトルコのEU加盟反対論だ。
EU加盟を希望しているトルコはアキ・コミュノテールに見合うように、法律・政策上の改革を行ってきた。死刑制度の廃止(死刑制度を維持する日本はこの一点だけでもEUには加盟できない)もその一つ。EUの理念が「多様性の中の結合」である以上、宗教や文化の違いが加盟を認めない理由になるはずはない。だが、現実には欧州諮問会議前議長のジスカール・デスタン氏はアイデンティティの違いを理由にトルコのEU加盟に反対している。
トルコは人口7000万人を超すが、国民1人当たりのGDPはEU平均の3割以下。それにトルコは国内に貧困地区を多数抱えており、経済的にEUの負担が増加することが予想されている。もっと大きな問題はトルコ人労働者がEU圏内に向かうことで引き起こされる「異文化との共存」の問題だ。長坂寿久氏が本誌3月号で「21世紀の課題」として提起したオランダの寛容性の文化が、EUが直面している問題として認識され始めていると言っても過言ではない。それを裏付ける記事がル・モンド・ディプロマティク3月号に掲載された。リール第3大学のマリクレール・セシル氏の「イスラムに耐えるオランダの寛容性」がそれだ。次号では、この記事を取り上げ、イスラムと寛容性の問題を取り上げる。(次号に続く)
註1)庄司克宏「欧州憲法条約とEU」(月刊「世界」2月号)
註2)アンヌ=セシル・ロベール氏「欧州連合の再構築のために」(ル・モンド・ディプロマティク日本語版2001年9月号) |