もう一つフェアトレードが重視している取引形態が「前払い」である。コーヒーの場合、収穫し、輸出してお金を手にするまでには半年近くかかる。その間の生活をしのいだり、必要な苗木や肥料を買うために、地元の高利貸しからお金を借りる必要が出てくる。こうして彼らの収穫・輸出後の収入は借金返済と金利にもっていかれ、自立は難しくなる。そこで、フェアトレード運動は、原則として前払い金を支払うことを重視しているのである。しかし、この前払い金の支払いは必ずしも必要かどうかは問題だと感じているNGOが多い。高利貸しシステムからの離脱を必要とする場合は明らかにそうだが、そうでない場合は、お金ではなく、食料費としてお米などを支給する方式がいいとみる場合もあるし、払う必要ないと判断する場合もある。
また、フェアトレード活動を通じて、自立に向かいうる高目の価格で買い付けることになるが、その際、買付け料金を全額農家に支払ってしまうと、農家は潤うが、後で気づくと、農家はフェアトレード団体に売って隣村より高い収入が入ることになるが、農家はそれらを冠婚葬祭に使ってしまい、自立のために使うということをしていない場合もある。そこで、買付け価格の一定比率(あるいは高く買った分)を協同組合に入れていく方式をとっておくことが重要となる。
地域(村)の協同組合にこうした自立支援基金が溜まっていくようにする。そこで、その自立基金をどう生産者のためのプログラムへと発展させていくのかが、もう一つ大きな課題となる。これは現地側協同組合やNGOの役割が中心となるが、日本側のフェアトレードNGOも大きく関わることになる。
そのためのリーダー養成や、自立プロジェクトやプログラムの遂行への村の人々の参加など、開発協力が目指す開発途上国の人々のエンパワメントの向上を計るようなやり方が必須となってくる。具体的には、例えばPRA(参加型地域評価)手法などをマスターした上で、村に入っていっているNGOもある。
さらに、他に重要な基準はいくつかある。とくに労働環境のあり方が重要である。児童労働、女性の強制労働、団体交渉権、組合の組織化などである。 |