この連携アドボカシーの成功の後、9月には環境9団体が連合で雲南省虎跳峡電力プロジェクトの停止を呼びかけている。
2005年1月3日付ニューヨークタイムスは「怒江ダム建設棚上げは工事再開を提言する開発推進派と、公聴会および更なる検討を要請する環境保護側の官僚間闘争が焦点‥閉鎖された中国の政治システムにおいて、非常にまれなステップである公聴会は、環境部門が、経済発展に関与してきた政府部門が圧勝してきた後の大きな規制権力の獲得に乗り出していることの表れ」と報じ、1月18日、国家環境保護総局は金沙江渓洛渡水力発電所ほか13省の30の違法建設プロジェクトの停止を宣告した。長い間、他部門に制止され、批判を行うのみであった同局が法の執行を強権発動する背後には、07年から施行される全国党政幹部人事考課への環境指標の導入など中央からの保証もある一方、民間組織の潜在能力への期待が大きい。副局長潘岳は04年の全国環保系統庁局長工作会議にて「2年内に全国すべての合法的な環境非政府組織とボランティアの協力網を形成する‥非政府組織の大部分は自発、分散、孤軍の状況にある。整合させ潜在能力を発揮させるために、具体的な措置により引導し、環境保 護への全民参加を実現することが急務」と示した。潘は元「中国青年報」の副編集長であり、国家国有資産管理局副局長、国家質量技術監督局副局長、国務院経済体制改革弁公室副主任と改革の大鉈をふるうポストを歴任し03年3月より現職となった。「非政府組織」と示した意図については、停 止宣告後のインタビューの中でもうかがい知ることができる。潘は「環境NGOは環境保護の重要力量であり社会的健康群体である、環境NGOが制度に入るための条件を検討し、学生NGOを育成し、連合で公益活動を展開する」と言及している。
経済発展とは対極軸にある「社会のコスト」を扱う部門が、民間組織との協力を強く打ち出し始めた。四中全会で「和諧社会(社会との調和)」が提示されたのち、政府部門も公式メディアも「経済社会発展の核とする」として、民間組織の地位高揚を示している。その背後には、国家と社会との二極対立だけでない様々なパワーバランスが動きつつある。
参考文献及び資料:
松本郁子( 2004)「第8章NGOとアドボカシー」,今田克司、原田勝広編『連続講義 国際協力NGO』日本評論社
「潘岳:中国将積極支持非政府組織参与環保事業」『新華網』 2004 年 3 月 12 日付 .
「潘岳:中国無法支?先発展後汚染」『 21 世紀経済報道』 2005 年 1 月 19 日付 .
「中国 NGO :我反対!」『中国新聞周刊』 2004 年 7 月 5 日 .
「怒江:新一輪関注」(情系怒江 http://www.nujiang-river.ngo.cn ) |